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T.Tとの会話
「お前、『僕』って言うのヤメロ」
「え?」
高校1年の春休みを迎える頃、T.Tが俺にとある助言を言い渡した。当時の俺は、一人称が『僕』だったのだ。
「お前、タメの間で『僕』って一人称使ようるじゃろ? あれヤメロ」
「何で?」
「もうすぐ新1年生が入ってきて、俺ら1つ先輩になるだろ? そんとき情けないからやめとけ。練習しろ、はい!」
「オレ、時田」
「お前の血液型は?」
「ぼ……俺はAB型」
「間違えんな! もっかい!」
「オレ……」
T.Tは俺に何か特別なモノを期待していたのか、はたまた頼りない俺に気を掛けてくれた優しい性格なのか、ちょくちょく話し掛けてくれていた。
――、
いつものように、先輩からの雑務を任される日々で、T.Tに愚痴をこぼすコトもあった。
「なんで僕ばっかり、こき使われとるんじゃあ? 明日もマッサージ、その次は背番号縫い。はぁ……」
「……」
T.Tは一瞬、視線を落とした。愚痴を言ったところで、何の解決にもならないが、言っただけで気持ちは軽くなるものだなと、俺は少し息を吐き、落ち着きかけた頃――、
「時田」
「!」
「お前が先輩の用事とかしてくれるお陰で、俺の負担が減るから、感謝している」
T.Tのその言葉に、ぱぁっと表情が明るくなった。こんな言葉をかけてもらえるとは……。
「そんなコト言ってくれるの、T.Tだけじゃ」
――、
時田の人生のルーツ、スイング10万本チャレンジを始めて1週間くらいの時だって、T.T が時田に話し掛けてきた。
「監督が1日380とか言ったか……アレじゃ10万本は間に合わん。俺は計算した」
「そうなん……」
監督がミーティングで、スイング10万本を夏までに振る目安を話していたが、それは誤りだったことにここで気付いた。俺が余りに素直だったので、人は嘘を吐くとか、テキトーだとかに気付くのは、これよりもっと後のことになるのだが――、
「お前、ちゃんと計算して振れな。……ホントに10万本振る気か?」
「うん!」
「……お前には負けねぇぞ……!」
「……!!」
「……」
「……」
「なんか言え!」
この時のことを、20年経った今でも、俺は後悔している。
あの時、その一言が何故でなかったのか――?
あの時、言えばよかった。
『俺も、負ける気はない! どっちが先に振り切るか、勝負だ!!』
積極的になれなかった、青春時代の失敗だ。
「え?」
高校1年の春休みを迎える頃、T.Tが俺にとある助言を言い渡した。当時の俺は、一人称が『僕』だったのだ。
「お前、タメの間で『僕』って一人称使ようるじゃろ? あれヤメロ」
「何で?」
「もうすぐ新1年生が入ってきて、俺ら1つ先輩になるだろ? そんとき情けないからやめとけ。練習しろ、はい!」
「オレ、時田」
「お前の血液型は?」
「ぼ……俺はAB型」
「間違えんな! もっかい!」
「オレ……」
T.Tは俺に何か特別なモノを期待していたのか、はたまた頼りない俺に気を掛けてくれた優しい性格なのか、ちょくちょく話し掛けてくれていた。
――、
いつものように、先輩からの雑務を任される日々で、T.Tに愚痴をこぼすコトもあった。
「なんで僕ばっかり、こき使われとるんじゃあ? 明日もマッサージ、その次は背番号縫い。はぁ……」
「……」
T.Tは一瞬、視線を落とした。愚痴を言ったところで、何の解決にもならないが、言っただけで気持ちは軽くなるものだなと、俺は少し息を吐き、落ち着きかけた頃――、
「時田」
「!」
「お前が先輩の用事とかしてくれるお陰で、俺の負担が減るから、感謝している」
T.Tのその言葉に、ぱぁっと表情が明るくなった。こんな言葉をかけてもらえるとは……。
「そんなコト言ってくれるの、T.Tだけじゃ」
――、
時田の人生のルーツ、スイング10万本チャレンジを始めて1週間くらいの時だって、T.T が時田に話し掛けてきた。
「監督が1日380とか言ったか……アレじゃ10万本は間に合わん。俺は計算した」
「そうなん……」
監督がミーティングで、スイング10万本を夏までに振る目安を話していたが、それは誤りだったことにここで気付いた。俺が余りに素直だったので、人は嘘を吐くとか、テキトーだとかに気付くのは、これよりもっと後のことになるのだが――、
「お前、ちゃんと計算して振れな。……ホントに10万本振る気か?」
「うん!」
「……お前には負けねぇぞ……!」
「……!!」
「……」
「……」
「なんか言え!」
この時のことを、20年経った今でも、俺は後悔している。
あの時、その一言が何故でなかったのか――?
あの時、言えばよかった。
『俺も、負ける気はない! どっちが先に振り切るか、勝負だ!!』
積極的になれなかった、青春時代の失敗だ。
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