回避とサイコとツトム外伝~ゾムビー~

時田総司(いぶさん)

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第十一話 特訓

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「さて、ツトム。あそこにゾムビーのような柄のサンドバックがあるだろ? あれに超能力を使って攻撃するのだ。破壊しても構わない」

「コクリ」

主人公が頷く。

訓練場には、超能力の威力を測る、7セグメントの表示器がある。主人公の目標は、500kgの威力を出す事となっていた。

「ツトム、この間の、学校の体育館裏で超能力が発現した時はどのような状況だった?」

爆破の問いに答える主人公。

「はい、親友のコガレ君が、ゾムビーの体液に襲われそうになっている、正にその瞬間でした。それで、嫌だ、絶対にコガレ君を、死なせない、と強く思った時にゾムビーを吹き飛ばす位の力が出せました。それと、スマシさんに初めて会った日にも、微かですが力が使えた気がします」

「そうか、その時の様子も聞こう」

頷いた後、続ける主人公。

「その時は、嫌だ、死にたくないって強く思いました。それで、ゾムビーの体液を体から少しそらすことができました」

「ふむ」

2、3秒考える爆破。

「嫌だ、というキーワードが共通しているな。分かった、ツトム、今度は何かを強く拒絶する意識でもう一度サンドバックに攻撃してくれ」

「はい、分かりました」

返事をした後、考え込む主人公。

(拒絶……拒絶……ゾムビー達にみんなを襲わさせたくない!)

主人公の両手が、大きな光で包み込まれる。

(おお、これならいけるか)

期待を寄せる爆破。しかし、両手の光はしぼんでいってしまった。

「どうした? なぜ止めてしまったんだ」

爆破が問う。

「ちょっと待ってて下さい。これが無いと、なんか落ち着かなくて……」

そう言うと、革製の手袋を取り出した主人公。手にはめる。

「今度こそやってみます(……拒絶)」

再び大きな光で包み込まれる主人公の両手。



「ハッ!」



主人公が力を籠める。瞬間、



「ドッ‼」



サンドバックが大きな衝撃を受けて、飛ばされた。辛うじて破壊はされていないサンドバック。3人は表示記を見る。表示記は269kgを表示していた。

「ハァ……ハァ……やった」

汗をぬぐう主人公。

「やったな、ツトム」

主人公に話し掛ける爆破。

「スマシさん……」

「ツトム、お前の場合は何かを拒絶することによって発動する超能力なのだな。私の場合はモノを爆破させる超能力だからそれを『バースト』と呼ぶことにしているんだ。お前の方は……そうだな、『リジェクト』と、名付けよう」

考え事をする主人公。

(500か……道のりは厳しそうだけど、これで力を手に入れられれば、みんなを救うことができる)

「グッ」

拳を握り、決意を固める主人公。

「次だ! ツトム、行くぞ!」

「はい!!」

爆破の呼びかけで特訓が再開された。



――3時間後、

「ハァ……ハァ……ハァ……」

ぐったりと疲弊しきっている主人公。

「ふむ、平均の威力は260kgといったところか……まだまだ改善せねばな」

今までの結果を概算し、軽く講評する爆破。

「ツトム、こっちに来い」

「は……はい? 何でしょうか」

主人公を近くに呼ぶ爆破。

「超能力でも何でもだな、集中力が肝心なんだ。こうやって手を見てだな……!」

何かに気付く爆破。

「何だ、いいしるしがあるじゃないか、ここだ」

「?」

爆破は主人公の手袋の手の甲にある、星を指差した。

「ここに意識を集中させて、力を発動させるんだ。手を合わせてみろ」

言われるがままに手を前に向けて、合わせる主人公。右手が左手の上になっている。

「この右手の星に意識を集中させて、もう一度やってみろ」

「はい」

頷き、サンドバックに体を向ける主人公。

(集中……この星に、集中!)

主人公の両手が、今までにないくらいに光輝き出す。

「リジェクト!」



「ドゴッ」



サンドバックが攻撃される。その時、あまりの威力にサンドバックを支えていた鎖が外れた。サンドバックが吹き飛ばされる。

「ゴッ……ドサ」

壁まで飛ばされ、壁にぶつかり、地面に落ちるサンドバック。表示記を見る3人、結果は……450kg!

「やったな! ツトム」

「スマシさん!」

爆破のねぎらいの声に喜ぶ主人公。

「ツトム、スポーツでも何でも、上達するときは反復して行っていく中、少しずつ上手くなるのではない。コツを掴んだとき急成長するものだ! 今の感覚を忘れるなよ」

「はい! スマシさん!」

特訓は続く。





――特訓が始まってから3日が経とうとしていた夜、逃隠の計らいで、主人公は回避の術を習得しようとする。

それはまず、動体視力を上げる特訓、基礎体力を向上させるといったものだった。主人公は数字の書かれた用紙を使って動体視力を鍛え、サーキットトレーニングで筋力をはじめとした体力を付けていった。



――ある日の午後、狩人ラボの廊下。爆破、逃隠そして主人公が歩いている。

「ツカ……ツカ……」

「スマシさん!」

「何だ?」

主人公が爆破に話し掛ける。

「どこへ行くんですか? 今日の特訓は?」

「まぁ待て、今日はまず話しておきたいことがあるんだ」

主人公の問いに爆破が答える。

「ツカ……」

「ここだ」

爆破が足を止める。そこは第4会議室と書かれた部屋の前だった。

「入るぞ」

「ウィ――ン」

扉が開く。そこは楕円状の机と数個の椅子、壁にはモニターらしきものがある部屋だった。

「まぁ座れ。これから重要な話を始める」

爆破の正面に座る主人公と逃隠。続けて爆破が話を始めた。

「我々が戦っているゾムビーだが、その成り立ちを知っているか?」

爆破の問いに答える主人公。

「確か、若返りの医学薬品『ワカヤグ』の実験による事故によって発生したとか……」

「それは俺もテレビで聞いたことがあるゼ」

逃隠も口を開く。

「そうだな……一般的にはそういう認識が広まっているが、そうではない」

爆破はその説を否定した。

「真実は、ゾムビーの発生源とは宇宙からやってきたウイルスによるものなのだ」



「!」

「!?」



爆破の言葉に驚愕する主人公と逃隠。

「それってどういうことですか!?」

「まぁ聞け、ツトム」

そう言って爆破が話を続ける。

「火星移住化計画を知っているか? MASAが数年前から行っている、人類移住計画だ。人類が地球の環境を破壊し続け、居心地が悪くなったら地球を捨てて火星に移ろうだなんていう結構なお話だ。その計画の最中、何度かMASAは宇宙にロケットを飛ばした。そして宇宙にある物質をサンプルとして採取した。その中に、人をゾムビー化させるウイルスが潜んでいたのだ。上層部ではそういう話になっている」

「そ……そんな事が」

爆破の告げる真実に驚きを隠せない主人公。

「まぁ俺は薄々そんな事なんじゃないかと勘付いていたけどナ」

一方で知ったかぶりをする逃隠。

「でも、なんでそんな話を?」

爆破に問う主人公。

「そうだな、これは狩人と政府の一部機関しか知らないトップシークレットだ。それをお前達に教えたという事は、私はお前達を認めたという事だ。ツトム、そしてサケル。今日をもってお前達を部隊狩人の正式な一員とする!」

「な、なんですって!?」
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