ただΩというだけで。

さほり

文字の大きさ
33 / 417
Another Side of View

7.

しおりを挟む
  家から漏れだす津田のフェロモンに誘引されたαが、自宅に押し入ろうとしたこともあった。警察を呼んで取り押さえてもらい大事には至らなかったが、もみ合いになった上の兄が殴られてけがをした。
   一番怖い思いをしたのは津田自身だが、家族はみなΩの末っ子のせいで被る迷惑に疲弊していた。

  津田はままならない身体に鞭打って懸命に勉強し、難関と言われるT大薬学部に現役で合格した。このつらい発情を、危険な誘引力を抑える薬を研究開発するのが夢だった。
  進学を機に家を出ると告げた津田に、家族は安堵を隠さなかった。

  1年の頃からいくつかの研究室に顔を出し、学部2年でヒート抑制剤の研究をテーマとする平井研究室に所属した。
  平井はαばかりの学内では珍しい、βの准教授だった。自身もβだということで不当な扱いを受けているであろう平井は、Ωの津田の熱意を正当に評価してくれた。
 その平井のもとに集ったチームのメンバーはみな優秀で人柄がよく、Ωだからという理由で津田を蔑視するものはいなかった。
   一人を除いて。

  河野かわのは平井の研究室において、異質な存在だった。
  津田の2年先輩にあたる河野は、祖父の代からT大卒というαの名家の出身で、父親が医学部の教授だった。
  彼は平井准教授に対しても格下と見ているような横柄な態度で接し、他のβの研究員のこともあからさまに差別した。

実験動物ラットの準備まであるんだな」

  河野がそう言った時、津田は自分のことを指しているのだと気づかなかった。キョトンとした津田に、河野はチーム皆の前で聞いた。

「おまえ、次の発情期はいつだ?」

  にやにやと笑う河野の顔を、今でも忘れられない。19歳の津田は、あまりの恥辱に頭が真っ白になって、何も言えなかった。

 
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

さよならの向こう側

よんど
BL
【お知らせ】 今作に番外編を加えて大幅に加筆修正したものをJ庭58で販売しました。此方の本編を直す予定は御座いません。 BOOTH https://yonsanbooth-444.booth.pm/items/7436395 ''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った'' 僕の人生が変わったのは高校生の時。 たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。 時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。 死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが... 運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。 (※) 過激表現のある章に付けています。 *** 攻め視点 ※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。 扉絵  YOHJI@yohji_fanart様 (無断転載×)

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

処理中です...