ただΩというだけで。

さほり

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発情期

6.

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   医務室にたどり着くと、津田はそのままベッドに倒れこんだ。
  エレベーターに乗っている間中、乾は津田の鋭い視線を感じていた。彼は乾から一番離れた奥の角にもたれて立ち、潤んだ目で乾をじっと見ていた。

(警戒されてる…… )

  無理もない。発情したΩにとって、αは肉食獣だ。発情した身体では思うように逃げられず、しかも本能では自らもαを求めてしまう。

  乾は念のため、医務室のドアに内鍵をかけた。津田のフェロモンに誘われたαが押し入ってきたら厄介だ。

  アクア製薬の医務室に、医師は常駐していない。同じビルの開業医3名と契約を結んでおり、必要な際には連絡して駆けつけてもらうことになっていた。

  密室であるエレベーターに乗って、分かったことがある。
津田の飲んだ抑制剤ピルは全く効いていないわけではない。彼本人がつらそうにするほど、フェロモンが外に流れ出していないからだ。
  かつて、発情期のΩのフェロモンでヒートを起こした経験のある乾にはそれが分かった。
同じエレベーターに乗り合わせた他の人も、我を忘れるほどの影響を受けた人はいないようだった。

  動悸はする。下半身もうずく。甘い匂いに頭がくらくらして、津田ほどではないがとても暑くじっとりと汗をかく。でも、抑制剤ピルが全く効いていなかったら、この程度では済まないだろう。

  津田は荒い息で少し腰を浮かしてベッドにうつぶせになり、ときおり低くうなっている。

(特効薬はどこに…… )

  薬棚には、主に自社製品の鎮痛剤や消毒薬などが並んでいる。一番上の段の隅に、卸売り用の白い箱に入った特効薬が見つかった。個包装されたカートリッジを一つ掴む。
  乾は袋を破りながら津田のいるベッドに向かった。

    
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