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アクアリウム
10.
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「プライドを傷つけているなら謝ります。でも、今は俺に奢られていてください」
律の背中を回り込むように腕を伸ばしたので、津田の顔がすぐ目の前にあった。その距離の近さに、彼が言葉を失くす。
そのまま吸い寄せられるように唇を重ねると、ぐっと胸を押し返された。
「ばっかお前、こんなとこで…… 」
うろたえて辺りをうかがう津田に、愛しさとおかしさが同時にこみ上げた。
「こんな後ろの方、誰も見てませんよ。それに、こんなところじゃなきゃいいんですか?」
戸惑ったように目を泳がせて、津田の視線が斜め下へ落ちる。その反応に、乾は寂しさを覚えた。
気持ちを受け入れられているわけではない。先日まで、自分は津田にとってただの、いやきっと、感じの悪い上司、でしかなかったのだ。まだ、好意を返してもらえる段階ではない。拒否はされていない、そのことに今は満足して、距離を縮めていこうと決めたのに。
「ひとつ、お願いしてもいいですか?」
内心の苦悩を笑顔の後ろに隠し、乾は訊いた。
「何…… ?」
「俺のこと、あんたって呼ぶの、やめてほしいんです」
元妻は、ヒステリックになったとき、乾をそう呼んだ。そのせいだけではないのだろうが、津田にそう呼ばれると、突き放されたような冷たさを感じる。本当は主任と呼ぶのもやめてほしいけれど、今の段階で名前で呼んでくれと言っても困らせるだけだろう。
「お前、でいいですよ。さっきみたいに。俺の方が年下なんですから」
津田は何かもの言いたげにしていたが、短く「分かった」と言っただけだった。
律の背中を回り込むように腕を伸ばしたので、津田の顔がすぐ目の前にあった。その距離の近さに、彼が言葉を失くす。
そのまま吸い寄せられるように唇を重ねると、ぐっと胸を押し返された。
「ばっかお前、こんなとこで…… 」
うろたえて辺りをうかがう津田に、愛しさとおかしさが同時にこみ上げた。
「こんな後ろの方、誰も見てませんよ。それに、こんなところじゃなきゃいいんですか?」
戸惑ったように目を泳がせて、津田の視線が斜め下へ落ちる。その反応に、乾は寂しさを覚えた。
気持ちを受け入れられているわけではない。先日まで、自分は津田にとってただの、いやきっと、感じの悪い上司、でしかなかったのだ。まだ、好意を返してもらえる段階ではない。拒否はされていない、そのことに今は満足して、距離を縮めていこうと決めたのに。
「ひとつ、お願いしてもいいですか?」
内心の苦悩を笑顔の後ろに隠し、乾は訊いた。
「何…… ?」
「俺のこと、あんたって呼ぶの、やめてほしいんです」
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「お前、でいいですよ。さっきみたいに。俺の方が年下なんですから」
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