ただΩというだけで。

さほり

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年の瀬

4.

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「今年のうちに律君に会えるのは今日と明日しかチャンスなんいですよ?!あたし今日、上がりのとき津田さんについてって託児所でこんにちはしちゃおっかなぁ」

  弾むような声で言われ、津田はちょっと焦った。増井なら本当にやりかねない。これといった不都合はないのだが、あまり踏み込まれても対応に困る。

「増井さん」

  背後から、低い声が降ってきた。

「その資料、10時半の会議用なので、よろしくお願いします」

  いつのまにか津田と増井の背後に立っていた乾が、通りすがりに冷ややかな目で釘を刺した。彼はそのまま、エレベーターの方へ歩き去っていく。上着を着ているということは、また役員に呼ばれて行ったのだろう。

  増井がデスクに向き直り、あたふたと仕事に取り組む。

  津田が休んでいる間、その穴を埋めてくれるのは主に増井だ。監禁、入院、自宅療養と都合2週間も欠勤してしまった津田の代わりに、増井はその間ほぼ毎日残業してくれたと乾から聞いていた。

「あたしぃ、暇なんで、残業代さえもらえれば別に何時でもいいんです。美馬さんもいるし」

  そう言って嫌な顔もせずに普段の1.5倍の仕事を引き受けてくれたという増井に、津田は素直に感謝していた。

「それ、手伝いましょうか?」

  差し当たって急ぎの仕事のない津田がそう申し出ると、
「今から作業説明するより自分でやっちゃった方が早いからいいです」
  そう、スパッと断られた。歯に衣着せぬ若い女性の物言いに苦笑がもれる。

  増井は、津田から見たら自分よりも凛花の歳に近い。凛花だって、生きていればいつかはどこかのオフィスで働く未来があったかもしれない。増井の隣で仕事をしていると、時々ぼんやりとそんな風に思うことがある。

  休んで迷惑をかけた自分が、感傷に浸っている場合でもないな。
  津田はそう思って、まずは社内メールに目を通すためにマウスを動かした。
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