ただΩというだけで。

さほり

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逡巡

2.

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「寂しくて耐えられそうにないので、うちに津田さんがいてくれたらなぁって、思ってるんです」

  ときどき驚くほど甘いことを言う、と津田は思った。重ねられた手が温かい。そばにいてほしいと請われることは素直に嬉しいけれど、簡単には頷けない問題がいくつもある。
  返事のできない津田に、乾は微笑みかけた。

「だから例えば、3月末からとか、を目処めどに、考えてみてくれませんか?」

  もちろん律君も一緒にですよ、と、乾は慌てて付け足した。

  天然木の積み木を3つ積んでは壊す律を見ながら、津田は小さく息を吐いた。
  律は乾にあまり懐いていない。一緒にいるときに乾が話しかければ返事はするし、特別嫌がるようなそぶりも見せない。それでも、3人で会った日は決まって夜泣きがひどい。よく知らない乾と時間を共有することは、おそらく幼い律にとってはストレスなのだろう。

  律は生まれてから、津田以外の成人男性と接したことがあまりない。乾も、自分の二人の子どもとほとんど一緒に暮らしたことがないと言っていた。そんな二人が、一緒に暮らせるだろうか。

  だいたい乾は、発情期にはどうするつもりなのだろう。抑制剤ピルを飲んでいても、αがそばにいればフェロモンは強くなる。それを発散させるには、自慰よりは性交する方が効率は格段にいい。
  でもその間、律はどうすればいいのだ。

  生まれてからずっと、1枚の布団で一緒に寝てきた。律が夜目覚めたときに一人でいたことなど、たぶん一度もない。もしも行為の最中に目を覚ました律が泣いたら、ちゃんと中断して抱き上げてやれる自信はない。

  つがいになれば。
  αと番えば、他の人間にフェロモンを撒き散らさないだけでなく、発情自体が軽くなる。個人差はあるが、発情休暇など取らずに働けるようになるかもしれない。
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