217 / 417
逡巡
2.
しおりを挟む
「寂しくて耐えられそうにないので、うちに津田さんがいてくれたらなぁって、思ってるんです」
ときどき驚くほど甘いことを言う、と津田は思った。重ねられた手が温かい。そばにいてほしいと請われることは素直に嬉しいけれど、簡単には頷けない問題がいくつもある。
返事のできない津田に、乾は微笑みかけた。
「だから例えば、3月末からとか、を目処に、考えてみてくれませんか?」
もちろん律君も一緒にですよ、と、乾は慌てて付け足した。
天然木の積み木を3つ積んでは壊す律を見ながら、津田は小さく息を吐いた。
律は乾にあまり懐いていない。一緒にいるときに乾が話しかければ返事はするし、特別嫌がるようなそぶりも見せない。それでも、3人で会った日は決まって夜泣きがひどい。よく知らない乾と時間を共有することは、おそらく幼い律にとってはストレスなのだろう。
律は生まれてから、津田以外の成人男性と接したことがあまりない。乾も、自分の二人の子どもとほとんど一緒に暮らしたことがないと言っていた。そんな二人が、一緒に暮らせるだろうか。
だいたい乾は、発情期にはどうするつもりなのだろう。抑制剤を飲んでいても、αがそばにいればフェロモンは強くなる。それを発散させるには、自慰よりは性交する方が効率は格段にいい。
でもその間、律はどうすればいいのだ。
生まれてからずっと、1枚の布団で一緒に寝てきた。律が夜目覚めたときに一人でいたことなど、たぶん一度もない。もしも行為の最中に目を覚ました律が泣いたら、ちゃんと中断して抱き上げてやれる自信はない。
番になれば。
αと番えば、他の人間にフェロモンを撒き散らさないだけでなく、発情自体が軽くなる。個人差はあるが、発情休暇など取らずに働けるようになるかもしれない。
ときどき驚くほど甘いことを言う、と津田は思った。重ねられた手が温かい。そばにいてほしいと請われることは素直に嬉しいけれど、簡単には頷けない問題がいくつもある。
返事のできない津田に、乾は微笑みかけた。
「だから例えば、3月末からとか、を目処に、考えてみてくれませんか?」
もちろん律君も一緒にですよ、と、乾は慌てて付け足した。
天然木の積み木を3つ積んでは壊す律を見ながら、津田は小さく息を吐いた。
律は乾にあまり懐いていない。一緒にいるときに乾が話しかければ返事はするし、特別嫌がるようなそぶりも見せない。それでも、3人で会った日は決まって夜泣きがひどい。よく知らない乾と時間を共有することは、おそらく幼い律にとってはストレスなのだろう。
律は生まれてから、津田以外の成人男性と接したことがあまりない。乾も、自分の二人の子どもとほとんど一緒に暮らしたことがないと言っていた。そんな二人が、一緒に暮らせるだろうか。
だいたい乾は、発情期にはどうするつもりなのだろう。抑制剤を飲んでいても、αがそばにいればフェロモンは強くなる。それを発散させるには、自慰よりは性交する方が効率は格段にいい。
でもその間、律はどうすればいいのだ。
生まれてからずっと、1枚の布団で一緒に寝てきた。律が夜目覚めたときに一人でいたことなど、たぶん一度もない。もしも行為の最中に目を覚ました律が泣いたら、ちゃんと中断して抱き上げてやれる自信はない。
番になれば。
αと番えば、他の人間にフェロモンを撒き散らさないだけでなく、発情自体が軽くなる。個人差はあるが、発情休暇など取らずに働けるようになるかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
さよならの向こう側
よんど
BL
【お知らせ】
今作に番外編を加えて大幅に加筆修正したものをJ庭58で販売しました。此方の本編を直す予定は御座いません。
BOOTH
https://yonsanbooth-444.booth.pm/items/7436395
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った''
僕の人生が変わったのは高校生の時。
たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。
時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。
死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが...
運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。
(※) 過激表現のある章に付けています。
*** 攻め視点
※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。
扉絵
YOHJI@yohji_fanart様
(無断転載×)
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる