ただΩというだけで。

さほり

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番(つがい)

13.

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  あまりの浅慮に、後悔はしてもしきれず。貪欲に幸せを求めすぎた罰だとしても、失ったものが大きすぎて。
  津田は、抑制剤が切れる、という事態を過剰に恐れるようになった。

(怖い…… )

  情けない、と思う。それでも、抑制剤を飲まずにいるという状態が、怖くて仕方がない。

  誰かが襲ってくるのではないか。発情したら性欲で我を忘れ、αを求めて部屋を飛び出してしまうのではないか。また大切なものを、失うことになるんじゃないか。

  背中に、黒く冷たい影のような何かが張り付いているような妄想さえしてしまう。そしてその何かは、津田から幸せを根こそぎ奪って行こうと、虎視眈眈と機を伺っているのだ。

  津田は掃除機をかけ終えると元の位置に片付け、乾が多めにいれていったコーヒーの残りをカップに注いだ。洗濯はまだ終わらない。リビングのソファに座り、すっかり冷えて香りの落ちた液体の半分ほどを、一気に喉に流し込んだ。

  発情が近いのはもう、誤魔化しようがない。
晴れて比較的暖かい日とはいえ、気温計は16度を示している。暖房もかけていない真冬の部屋で、津田はスウェットシャツの下にうっすらと汗をかいていた。しかし、肉が発熱しているのに骨が冷えるような、妙な感覚だった。

(まさか風邪ってオチはねぇよな…… )

  発情期にはまだ早い。
  でも、早まるかも、という予感はあった。あれだけフェロモンを刺激する夜だったのだ。自分の身体が、αの精を貪欲に欲することは既に知っている。
  ときおり背筋に悪寒が走るのは、こびりついた恐怖のせいだろう。それでも、体温がゆるやかに、しかし確実に上昇していくのを感じていた。

  ちょっとでもそうかなと思ったらすぐに連絡を、と乾に言われている。津田はちらりと携帯を見た。乾なら、例えばコール一回で切ったとしても、すぐに飛んでくるだろう。

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