ただΩというだけで。

さほり

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終章

5.

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「ホントに…… 律もう起きて来っから…… 」

  発散できない火をいたずらにつけられても困る。津田が目を逸らして、今は乾の下着に包まれている自身の位置をさりげなく直すと、彼は眼鏡の奥の目を細めた。

「なんか、いいなこれ。俺の服着てる津田さんってすごい…… 脱がせたくなります」
「言ってること矛盾してんだろ」
「してないと思いますけど。性的に興奮するって意味ですよ?」
「わざわざ言うな!わーってるよそれは!」

  なんなら今脱いで返すけど、と言うと、乾はコーヒーの香りのする口の端を上げた。

「今日はそれ履いててください。それで…… そうですね、律君のお昼寝の時にでも、返してもらいますから」
「それって…… 」

  意図を図ろうと顔を上げると、乾は反応を楽しむような目で津田を見つめていた。とはいえ、完全に冗談というわけでもないことは、その視線に宿る温度で感じられる。

「お前さ、なんつーかもっと、淡白なやつかと思ってたよ」

  職場で見る彼は、冷徹な鉄面皮で体温を感じさせない。自分が彼に熱烈に求められ、その熱を何度も体内に受け入れることになるなんて、想像もできなかった。

「俺も、そう思ってました」

  長い間、性を研究対象としか捉えていなかった、自分の生殖本能を嫌悪していたと、以前聞いたことがある。その乾の笑顔に、淡白ではない自分に気づいたことが嫌ではないんだなと、津田はとりあえず安心した。

昨夜ゆうべ、津田さん抑制剤ピル飲んでたんですね」
「ん?…… あぁ」
「漁ったわけじゃないんですけど、今朝見たらゴミ箱にPTPが捨ててあったので」

  抑制剤ピルはPTPシートと呼ばれる包装容器に、七錠一列で個包装されている。市販薬と同様に銀紙の部分に商品名が印字してあるそれを見て、乾が気づかないはずはない。

「昨日、お前が風呂行ってる間に飲んだ」

  もちろん避妊薬としてだ。
  乾は微笑んだまま目を伏せ、「よかったです」と呟いた。






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