クラッシュゼリー

さほり

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Dom

8.

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でも、そう告げたら海老沢は、全力で否定するだろう。

Subじゃない。
俺はSubなんかじゃない、って。

それでオレを避けるようになったら…… 
やっと手に入れたのに逃げられるようなことになったら、オレはもうどうなるかわからない。

それが不安で、オレは海老沢にちゃんとした話ができないでいる。

海老沢は、オレがエロ目的で自分に手を出してると思ってるらしい。手近な相手で、性欲処理。全然違うけど、その勘違いを、オレは利用してる。そういう「利害の一致」でも、一緒にいられるなら、それでいい。

本当は、ちゃんと告ってパートナーにして、海老沢に首輪を贈りたい。

首輪は、Subに固定のDomがいるっていう印だ。それを着けていれば、他のDomに手を出される心配もなくなる。

わりといろんなところに専門店があるし、アクセサリーの売り場でもよく見るから、いつも目がいってしまう。

あいつには黒より茶色が似合うかもとか、女じゃないからキラキラした石はついてないのがいいかとか、つい考えたりして。

ものすごい、虚しくなる。

海老沢は絶対に首輪なんか着けないだろう。
贈っても、喜ぶどころか怒り狂って、二度と会ってくれないかもしれない。

おまえはSubだよ、自分で気付いてないだけなんだよ。
そう思うけれど、言えない。
手放すのが怖いから。

そばにいられなくなるくらいなら、オレの気持ちなんか、一生伝わらなくたっていいんだ。


静かな寝息を立てる海老沢に、パンツを履かせて薄い布団をかけてやる。オレも軽く身体を拭いて、部屋着を着た。

ベッドの端に座り、柔らかい髪に触れる。頭を撫でると、海老沢が眠ったままでうっすら微笑んだ。

今日は、撫でてやれなかったな……
それに、褒めてもやってない。

意地はって言わないから、褒めてやれなかった。
でも、2時間もがんばったんだから、寝落ちする前に褒めてやれば良かったよな。

Subは、Domに服従したことを褒めてもらえないと、欲求不満になる。ただ従わせるだけじゃダメなんだ。Subは性癖を満たす道具じゃない。

今日のオレは、全然ダメだったな……

もし海老沢のSub性が強かったら、満たされない承認欲求で不安にさせてしまったかもしれない。

DomやSubの性質の強さには個人差があると、オレは思ってる。

例えば、Domが黒で、Subが白。そしてNormalが透明だとすると、海老沢はたぶん白濁。
ちょうどヨーグルト味のゼリー飲料の色だ。
限りなくNormal寄りのSub。そこに、海老沢がいるんだと思う。

Subらしい性質の薄い海老沢は、自分がそれとは気付きにくい。だから思春期を過ぎた今でも自覚はないし、決まったDomがいなくても精神の安定を欠くことがなかったんだろう。

そんな相手を好きになってしまったオレは、Domの本能を、湧き上がる支配欲や嗜虐性を、抑え込んでいなきゃいけない。

本人にSubとしての自覚があれば、海老沢のSub性がもっと強ければ、Domに支配されることはあいつにとっても至高の喜びであるはずで。

オレだって、その欲求を抑え込む必要はないのに。

これをしたら、怖がらせる?
もっとしたら、逃げられる?
これ以上求めたら、離れていってしまうだろうか……

そんな不安との、毎日が闘い。
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