クラッシュゼリー

さほり

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契約

6.

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俺がそう言うと、本郷は驚いた顔をした。目があった直後に少し視線が下りたのは、俺の首を見たんだなって、なんとなくわかった。

「俺もう、あんなのカッコ悪いとか言わねぇから。てゆうかおまえもさ、へタレ過ぎんだろ。『危なっかしいから首輪カラーしろ』くらい、言えばいいだろそんな心配なら。」
「だって…… お前絶対やだって言うと思ったから…… 」
「正直、すげえしたいってわけじゃ、ねぇけど。でも首輪カラーしとけば、ちゃんとパートナーいるからって、アピールにはなるんだろ。」

本郷は、時間が止まったみたいに固まった。俺のより一回り大きい手が、戸惑いを語るようにピクピクと動く。

「パートナー…… ?」

聞き返した声が、掠れていた。

「俺のこと、そう思ってるんじゃねぇの?ってゆうかあんな独占欲丸出しにしといて、スキとか言っといて、別にそういうんじゃないとか言われたら俺めっちゃ恥ずいんですけど!?」

本郷は突然、繋いでいた手をスッと引いた。
えっ!?っと思った俺を残して、その身体がベッドから下りる。離れたところからチラ見されて、離された指先が冷たくなった。

(まじか…… )

恥ずかしいというより、痛い。ここで手を離されるとは思ってなかった俺は、禊ぎみそぎまでしてきた全身から、熱が一気に冷めた気がした。

「海老沢。」

俯いた俺の目の前に、黒い箱が差し出された。10㎝四方くらいの平べったい箱だ。
本郷の手がその蓋を開けると、中には黒い革紐が輪になって入っていた。

「何…… これ…… 」

顔を上げると、本郷は機嫌が悪いみたいに目を逸らして、低い声でボソボソと呟いた。

「ごめん、買ってた。お前がつける日なんかこないよなって思ってたけど、こういうのだったら、ありかなって、思って…… なんか、自己満足で。」

「…… 見せて。」

それは首輪というよりは、シンプルなチョーカーだった。細い革紐に、小さな銀色の飾りが1つついてる。
Subの首輪としてでなく、アクセサリーとして着けるようなデザインのもので、かつDomが見れば、それとはっきりわかるだろう。

自分のダイナミクスの受け入れ段階にいる俺の状態を、本郷が真剣に考えていてくれていたのが伝わってきて、胸が熱くなった。

箱から取り出すと、細い筒型をした銀の飾りの部分が、窓から差し込む陽光にキラリと光った。
黒い皮の素材も柔らかくて、着けていても痛くならなそうだ。

「着けろよ。」
「え?」
「だってこれ、俺のなんだろ?」

本郷は泣きそうに情けない顔をした。全く、イケメンが台無しだ。いつから引き出しにしまってあったんだろう。何度も、何度もこの部屋には来たのに。
ほんとヘタレ…… でも、本郷こいつはこれでいい。カッコ良くなくて、全然いい。
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