ほの明るいグレーに融ける

さほり

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土曜日

1.

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一晩おいてやるだけのつもりだったのに、ナギサはそのまま和臣の部屋に居座った。

昨夜は3回…… 4回?断続的にアルコールや短い睡眠をとりながら珍しく明け方まで男を抱いた。

ナギサが頑なに消灯を拒み、明るい中でよく眠れなかったせいもあるが、一晩中淫蕩にふけるなんて。
和臣は自分の行動に驚いていた。

結論から言うと、ナギサは悪くなかった。
どこに触れても敏感な身体で、小さく跳ねるように反応するのは男の自尊心をくすぐったし、イくときに恥ずかしいのか顔を隠そうとするのも、かわいいと言えなくもなかった。

もっとも、明るい中でした方が燃える、などと言う金髪の男がそんなことを恥じらうわけもないが……
イくときの顔が変、なんて、女に言われたとか……?
男って、そういうちょっとしたことがトラウマになるよなぁ。

和臣がそんなことを考えながら携帯から目を上げると、ちょうど目の前のローテーブルに湯気を立てたコーヒーが置かれた。小さなミルクピッチャーに入れた、温かいミルクも添えられている。
ちゃんと豆を挽いてから淹れたらしく、フレッシュな香りが部屋中に広がっていた。コーヒーメーカーの使い方も聞いてこなかったのに、意外と知識があるらしい。

ナギサは昨夜と同じ、迷彩柄の騒々しい服を着ていた。蛍光色の上着は丸めて部屋の隅に置いてある。
どうやらすぐに帰る気はないらしいと悟った和臣が適当に服を貸してやると言ったのに、「コイビトでもないのに、やだよ。彼シャツなんて、イタイしぃ」とばっさりやられた。

「朝ごはん?昼ごはん?作るけどさぁ、冷蔵庫の物、勝手に使っていいのぉ?つーか、ろくなもん入ってねえけどなぁ。」

ナギサだって寝不足だろうに、相変わらずにやにやと笑っている。若いせいか、疲れも見えない。

―― 昨夜はけっこう激しかったんじゃないか?

女の子で忙しくって、男は久しぶりだからさぁ、なんて、強がって笑っていたけれど、挿れたときに痛がっているのに気づいていた。
食いちぎられそうにきつくて、でもそれが好くって、気遣わずに動いてしまったけれど……

ナギサは服についた金属をカチャカチャいわせながら、軽い足取りでキッチンに入っていった。

酷使した身体が翌日ぎくしゃくしているのは、おっさんの俺の方だけか。和臣は自虐的にそう思った。

休日に他人が家にいるのは久しぶりだ。その存在を煩わしく思うのに、なぜ自分はナギサを強く追い出そうとしないのだろう。
もう電車も動いている。身体も辛くなさそうだし雨も降ってない。さっさと出て行けと言ってもいいのに。

―― コーヒーが美味いから……

とりあえず、そういうことにしておこう。

キッチンからはナギサが何かの調理をしているらしい、かすかな音が響いてくる。あのナリで、どんなものを出してくるのやら…… ソファに深く沈んで株価のページを繰りながら、和臣は我知らず微笑んでいた。
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