背徳のアルカディア

さほり

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Brothers

1.

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「兄さん……」

 アゼルの目にみるみる涙が溜まり、白い頬を伝う。

「悪かった。一人でずっと、つらい思いをさせて」

 エメットの言葉に、彼は首を横に振った。

「もう会えないと思ってた」

 泣きながら笑う弟があまりに愛しくて、エメットはその薄い唇にそっと口づけをした。

「ん……」

 触れるだけのキスを繰り返すと、アゼルが両腕を兄の首に回す。唇を合わせたまま背中を支えて抱き起こし、彼を膝に乗せて抱きしめた。
 碧い目に堕天使が映っている。その姿でもアゼルが兄だと気付いてくれたことに、胸が震えた。

「お嫁さんは?」

 濡れた唇を遠慮がちに開き、アゼルが聞く。

「嫁?」
「僕、兄さんはお嫁さんもらって幸せに暮らしてるって、言われて……」

 彼はエメットの腿の上で長いまつ毛を伏せた。
 神殿に閉じ込めたアゼルから帰る場所を奪うために、神か兵士が吹き込んだのだろう。兄弟はそれぞれ、相手の身の安全を盾に恐喝され、互いの幸せを願うばかりに離れていたのだ。

「そんな嘘を信じたのか。俺がお前以外の誰かを欲しがると思うなんて」

 そう言うとアゼルはうつむいて、複雑な心境に揺れる目を隠した。

「嘘、なの……?」

 彼の顔を両手で包み、前を向かせる。その目に自分だけが映るようにして、エメットは脅すような声音で囁いた。

「分からせてやる。俺がどんなに、お前だけを求めているのか」
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