机上の空論から抜ける気なし

月澄狸

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すべての矛盾を抱え込んだとき矛盾は消えるか

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 個人のことでも、国や地域のことでも、戦争や災害や事故など、大きなことを乗り越えていこうとしている人を前にして、私の悩みや人生などは生ぬるいものだと思います。

 はだしのゲンを読んだって、本を閉じれば日常が戻るこちら側の世界で、大きな破壊を経験した人の感覚を、きっと理解してはいない。

 現代人の言葉ならば一言一句、共感する可能性が上がるけれど、それだってきっと大きな隔たりがあります。誰かからこちら側に投げかけられても、通じていない部分が多くある。

 誰かに悔しい思いをさせたこともきっと多々あります。だって私は基本的に「世界なんか滅べばいいのに」と、すごく後ろ向きで、破滅的な感覚でいるから。


 踏みとどまって、踏ん張って、こらえて……心無い人々や、越えられない気持ちの溝、身近な死を数々目にした中で、毎日毎日気持ちを立て直している人がいる。

 私はネガティブなのは変えられませんが、本当に破滅の恐怖を目にした人の前で、人類は地球のために滅ぶべきだなんだと、創作であっても言葉にするなど、無礼極まりないと思います。

 2012年人類滅亡説が一時流行り、テレビで度々話題にされましたが、東日本大震災が起こった途端静まり返り、「みんなで手をつなごう」という路線に変わりました。
 ならばなぜ最初から全員で、滅亡だ何だと騒がずに、手をつなぎ世界平和を願わなかったのか。なぜいつも起こってから悲しみ、平和を祈るのか。


 あの人がどうだの、この人がどうだの、そんなこと。みんな芯は大差ない人間なのに。
 平和になれば小さいことでゴチャゴチャと、平和でなくなれば大きくドカンと。

 なぜ心穏やかでいられないんでしょう。なぜ人と人が無条件に愛し合えないんでしょう。
 愛することに、家族だ恋人だ友達だと、名前や理由が必要でしょうか。初対面の人はどうでもいい他人でしょうか。
 嫌いな人は死ねばいいのか。同じ地球で何億年もずっとやってきたっていうのに、なぜ未だにほとんどの人が赤の他人なのか。どこまで閉ざせば気が済むんだ。

 しかし人間不信で閉ざしているのは私です。


 SNSで、フォロワー様が誰かに絡まれているのを見ました。でも、責めている方は、遊び半分に誰かを貶めようとしているわけではなかった。
 みんな自分の視点、感覚の中で、もがいている。そして時々、抑えきれなくなる。


 私のネガティブ思考は変わりません。ただ、どれだけ自分がひどいことを言っているかという重みを分かっていなければ、突然跳ね返ってきたものの大きさに戸惑うことでしょう。これも自分の業だとすべて思えたなら、「何故なの? 理不尽な!」と怒ることはないと思うのです。「ああ、毎日名もなき牛たちが涙を流している、死の痛みと孤独に苦しんでいる、そのことに馳せる思いが足りなかったんだ」と。

 苦しんでいるのは、こげんたちゃんたちのように、「愛されるべき者」が虐待されたときだけではない。愛されるべき者と、愛される者という立場すら確立できない者。と言うとまた、肉牛を愛して育てる方に無礼なのでしょう。


 自分が自分のまま生きていく。どこかの誰かが私の言葉に、ぐっと怒りを堪えている。
 だから噛み付かれ批判される可能性もあることも当然なのだと、感覚的に少し理解できました。

 こんな腑抜けが、創作で誰かを感動させようとか、気を引いてアクセス数を上げようとか、上手くいくはずもないなと分かっていれば、作品が誰にも見られないことも「当然ですね」と笑えるはずなのです。
 分かっていないことを、机上の空論を、誰のために語るのか。人のためであれば知るはず、動くはず。ですが私は机上の空論を練り上げることに、日々を費やします。


 感覚の隔たりはまだまだ埋まりません。私は耳を塞いで恐れている。
 しかし、感謝いたします。
 いつも好き放題言ってごめんなさい。


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