自分「らしさ」と「らしくなさ」の謎

月澄狸

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自分「らしさ」と「らしくなさ」の謎

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 最近なんだか、私「らしく」ない気がした。気のせいだろうか。今まで味わったことのない感情や考え方が、唐突に起こった気がするのだ。

 傍目には別にそうでもなく、いつも私はこんな感じなのだろうか。「なんか変だよ」とは言われていないので勘違いかもしれない。
 まぁ私は何か言われたら怒るようなピリピリしたヤツなので、まわりの人が意見できないような空気を自らこしらえてしまっているけど。


 ちょうど考え方が煮詰まってきて、同じ言葉ばかり繰り返してマンネリ化してきたところだったので、まぁいい。いつもの自分なら感じないような気がする、なんか妙な精神状態のうちに、思いを書き留めておこうと、投稿に込めた。

 普段からなんかよく分からんことばかり言っているから、らしいと言えばらしいのかもしれない。ただちょっと奇妙だった。ほんの少し、制御不能なような。そこで、こうなった原因を考えて並べてみる。



【何らかの霊に取り憑かれ、私の思いではないものが流れ込んできた】
 オカルト好きなもので。

【ホルモンバランスが大幅に乱れて抑えきれなくなった】
 黒歴史だよ……っていつものことか。

【今まで無意識下で思っていたことが、ドッと流れてきた】
 それもあり得るか。

【なんか毛色を変えたいと思っていたから】
 毛色というか色気を履き違えているような。

【発情期】
 遅いんだってば。

【最近多重人格に憧れていたから】
 憧れて起こすもんか?



 なぜ奇妙だと思ったかというと、普段私は「唐突に考えが変わる」というのを自覚しないように思うからだ。

 矛盾はいっぱいある。というより上手く感情や考えを整理・説明し切れていなくて、あとで読み返すと色々と説明が抜けているのだ。それで我ながらツッコミどころがいっぱいある。

 あと、「思っているけど言わなかったこと」を、「もういいや」と言葉に出すこともある。そうすると傍目には意見や雰囲気が変わったように見えるかもしれないが、自分としては「言っていない意見も持っている」ので変化はない。

 矛盾した考えも、たくさん持ちたがっている気がする。自分という一つの肉体を所持した上で「色んな意見を持つ」ことをやってしまうと、優柔不断になるだけな気がするけど。

 と、そんなこんなでも私は「ここからここまで」という自我の範囲から出なかったし、出る気がなかった。「変わりたい」などと言うことはあったとしても、あまり変わりたくなかった。



 この間、ネット上の詐欺師から「もう若くないから結婚したい」みたいなニュアンスのことを言われた。
「あなたと」とは言われていないのだけれど、明らかに相手は詐欺師であるので、話をロマンスに持ち込む気だろう。
「若くないから結婚したい」発言に対して「なんでそんな言い方するんだろう」と少々小馬鹿にしていた。ほぼ初対面で「もう若くないから結婚したい」などと言われてときめくはずがないぞ、と。

 ところがそれからひと月ほどしか経っていないのに、今度は自分自身が急激に「私はこの年になるまで恋愛も結婚もできなかった。35歳以上での出産だともう高齢出産らしい。もうこの先チャンスがないぞ」という考えに取り憑かれたのだ。

 詐欺師は詐欺師であって、年齢も言い分もキャラも全部作り物だろうけど、「必死の焦り」を抱えたキャラを表現するセリフ、「もう若くないから結婚したい」に妙に共感してしまった。


 これじゃまるで私が、今まで覚悟も自覚もなしに「私は恋も結婚もしないもんね~」と浅はかに言ってきたみたいではないか。
「熱したフライパンに手を押し当てたらヤケドした」みたいなアホに見える。それが私には妙で、悔しかった。



 そりゃ、孤独を貫き通す「覚悟」までできているとは言えないし、未来だの現実だの、私はちゃんと把握していない。けれど、ただ「傷ついた自分を演じて『恋しないキャラ』でいるうちに、いつの間にか月日が経っちゃった~」と嘆くほどのアホではなかったつもりである。それなりにずっと考えてきて、たどり着いた「今」だったはずなのだ。
 その理由、納得をずっと、書くついでに整理してきたつもりだった。書くことで自分に言い聞かせてきた。

 それが性欲ごときで一瞬すべてが揺らぐなど。「何も考えずにセックスしたら子どもが生まれちゃった」というような、後先考えない、無神経で理性もへったくれもない人間に成り下がりたくない。


 父が私ができたとき「堕ろせ」と言ったという話を憎んでいるのか。

 命を軽々しく扱う。かたや売れるからとペットブーム、経済効果だの何だの言い、一方で殺処分……こんな愛のない、無責任な、人間社会を憎んできたはずだった。


 が。自分の謎モード突入後にまず思ったのは、上記のような嫌悪ではなかった。
「これは人間を理解する上で大切な感情かもしれない」と思った。だからあっちこっちに書き留めた。

 これが人間として、女性として得たかった「何か」なのかもしれない。

 ……そりゃ、肉体はメスとしての機能を揃え、せっかく生きてきたのだから、子孫を残せないことを無念だと思っているかもしれないけど。この切なさも悲しみも、何か非常に重要なことだと思った。



 今は感覚が和らいでいきつつあるが。「急な焦り」、これはこの年代のあるあるか?

「まわりがどんどん結婚し始めて焦る」というエピソードは聞いていたが、私には連絡を取り合う友達がいないので、「友達の結婚報告を聞く」というイベントは一切発生しない。それなのにこのような感情になる、これがこの年齢特有の感情だとしたら、「友達の結婚報告をたくさん聞くから」焦るのではなく、本能的に焦るようにできているのかもしれない。生物的な作りに感心するなぁ。



 性的なことから逃げまくってきた。女である自分が嫌だった。

「幸せの形は人それぞれだ。恋だの結婚だの価値観を押し付けないでほしい」と、今まで、それはもう散々言ってきたのだが。一瞬すべてが吹っ飛ぶレベルだった。「私は女としての幸せが欲しかったんだ」というような気持ちになったのだ。

「私はこの世に生を受けて、この一度しかない人生の中で、私の子どもに会えないまま終わってゆくのだな」という悲しみに付きまとわれた。「素晴らしい人間性のある男性と出会う努力、見極める努力をすれば、幸せな結婚生活もあり得たかもしれないのに」というような感覚。


 だいぶおかしい。普段の私がそんなこと思うはずない。そんなこと思うはずがないであろうことが、一気に流れてくる。「霊にでも取り憑かれたんじゃないか」と心配になっても不思議はないだろう。

 だって私はゴキブリと触れ合って遊んだりしているが、これは「人に嫌われても別に良い。生き物の観察の方が重要度が上だ」というような判断をしてきたからだ。もしもちょっとでも「私を理解してくれる人とならば結婚してもいいかも」などと心のどこかで思ってきたのなら、あえてヤバい行動を取ったりはしないはず。人間が奇行と呼ぶであろう行動は控えるはずだ。子どもが生まれたときにまわりにゴキブリがいるようでは、衛生状態、完全アウトだし。


 少し前に詐欺師から言われた「もう若くないから結婚したい」も、完全に「は?」という感じだった。そのときは何も心に響かなかった。

 私は「考えること」を積み重ねてきた。唐突に変わったりはしない、はず。
 だからやっぱりおかしい。今までの考え、言動、納得、との辻褄だか整合性だかがない。



 で、性欲と恋愛感情の違いって? 自然界では交尾だけして別れる生き物も多いようだけど。人間はそこに恋だの愛だの理由を付けるから分かりづらいな。

「私」と「本能」の違いは? というのも気になったが、これはもう、私というものは存在せず本能だけで生きている気がする。だって私は働きたくもないのに生きるために働いているし、肉を食べるために動物を殺すことは可哀想だと思いながら、大好物の肉を食べることをやめられない。屠殺の映像を何度か検索して見て、その度に悲しい気持ちになっても、だ。


 そっか。動物が可哀想でも殺すことをやめられないほど本能が強いなら、そりゃ、人間関係を築く能力や、子どもを生み育てる力がない自覚があっても、無責任に性欲に溺れる人間である可能性は、大いにあるわけだ。


 もしも何かに取り憑かれたんなら、しばらくしたら治るだろう。時間が経てばいつも通りの私になるはず。

 ならないとしてもいずれにせよ私は意見を変えない。私は自分が生まれたことを憎んでいるように思う。そんな私が子どもを産むつもりはない。

 夏の暑さで脳がイカレたんなら。文字通り、頭を冷やした方が良いかもしれない。


 しかし人間って、生物って、性別って、興味深いなぁ。
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