6 / 11
世界の回り方も知らないまま
しおりを挟む
少女と出会い、乗客の様子に興味を持ち、自我が芽生えたと言えるかもしれないこのような状態にならなければ、始まりについても終わりについてもなんとも思わないままだったかもしれません。しかし観覧車は既にザワザワとするような感情を抱いていました。それは不安、恐怖のようでした。
そんな観覧車がふと気づくと、いつの間にか少女がゴンドラに乗っていました。ぼんやりと考え事をしていたせいでその日は彼女の乗車に気づかなかったのです。
いつも独り言をつぶやいている少女ですが、その日は黙ったまま遠くを眺めていました。観覧車も彼女の視線をたどり、同じ方向に目を凝らしてみますが、少女がどこを見ているのかまでは分かりません。
そうしてゴンドラが頂上にたどり着く頃、少女は不意に顔を上げました。
その時観覧車と少女はまっすぐ目が合ったのです。
それは有り得ないことでした。
そもそも観覧車には目がなく、決まった視点もないのです。まわりのことやゴンドラ内などすべて、見ようとすれば見える、感じられる状態でしたが、「目が合う」などということはあるはずがありませんでした。
それでも一点を見つめる彼女。
その視線に耐えかねて、観覧車はゆっくり視線を外します。
このような緊張感は初めてでした。
少女の方はというと、目を逸らすでもなくそのまま観覧車を見つめ続け、やがてボソッとつぶやきました。
「ごめんね」
話しかけてくるはずがないものが話しかけてきた……この事態に観覧車はどうしていいか分かりませんでした。想定外のことに動揺を隠すことができません。
人間が本気で物に話しかけることなどあるはずがないと、自分に言い聞かせて冷静になろうとしても、実際目の前の少女は自分に話しかけてきたとしか思えません。
「ごめんね」とは何のことでしょうか。
今、本気で声が届くようにと願って少女に話しかければ届いてしまうかもしれない……。しかしどこか、そうしない方が良いような気もしました。
しばし沈黙が流れ……
彼女はゆっくりと視線を窓の外に戻します。
観覧車はホッとしたような、無視してしまって申し訳ないような気持ちになりました。
人間と会話をすることは可能だったのか? 何か一瞬魔法のように、不思議なことが起こったのか? 観覧車には確かめようがないままでした。
そんな観覧車がふと気づくと、いつの間にか少女がゴンドラに乗っていました。ぼんやりと考え事をしていたせいでその日は彼女の乗車に気づかなかったのです。
いつも独り言をつぶやいている少女ですが、その日は黙ったまま遠くを眺めていました。観覧車も彼女の視線をたどり、同じ方向に目を凝らしてみますが、少女がどこを見ているのかまでは分かりません。
そうしてゴンドラが頂上にたどり着く頃、少女は不意に顔を上げました。
その時観覧車と少女はまっすぐ目が合ったのです。
それは有り得ないことでした。
そもそも観覧車には目がなく、決まった視点もないのです。まわりのことやゴンドラ内などすべて、見ようとすれば見える、感じられる状態でしたが、「目が合う」などということはあるはずがありませんでした。
それでも一点を見つめる彼女。
その視線に耐えかねて、観覧車はゆっくり視線を外します。
このような緊張感は初めてでした。
少女の方はというと、目を逸らすでもなくそのまま観覧車を見つめ続け、やがてボソッとつぶやきました。
「ごめんね」
話しかけてくるはずがないものが話しかけてきた……この事態に観覧車はどうしていいか分かりませんでした。想定外のことに動揺を隠すことができません。
人間が本気で物に話しかけることなどあるはずがないと、自分に言い聞かせて冷静になろうとしても、実際目の前の少女は自分に話しかけてきたとしか思えません。
「ごめんね」とは何のことでしょうか。
今、本気で声が届くようにと願って少女に話しかければ届いてしまうかもしれない……。しかしどこか、そうしない方が良いような気もしました。
しばし沈黙が流れ……
彼女はゆっくりと視線を窓の外に戻します。
観覧車はホッとしたような、無視してしまって申し訳ないような気持ちになりました。
人間と会話をすることは可能だったのか? 何か一瞬魔法のように、不思議なことが起こったのか? 観覧車には確かめようがないままでした。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
王女と2人の誘拐犯~囚われのセリーナ~
Masa&G
ファンタジー
王女セリーナが連れ去られた。犯人は、貧しい村出身の二人の男。だが、彼らの瞳にあったのは憎しみではなく――痛みだった。
閉ざされた小屋で、セリーナは知る。彼らが抱える“事情”と、王国が見落としてきた現実に。
恐怖、怒り、そして理解。交わるはずのなかった三人の心が、やがて静かに溶け合っていく。
「助けてあげて」。母の残した言葉を胸に、セリーナは自らの“選択”を迫られる。
――これは、王女として生きる前に、人としての答えを、彼女は見つけにいく。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる