うだつの上がらないエッセイ集(たまに自由研究)

月澄狸

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夢の花火・夢の棚田

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 夢の中で、その日は花火大会だった。私は家の窓から外を覗いていた。目の前に花火が打ち上がるらしい。
 私の家は少し高いところにあり、眼下に道が広がっていた。それを見て私は、「あれっ、こんなふうになっているなんて以前見た夢と一緒だな」と思った。

 実際、以前家の前が道になっていたり公園になっていたり、遊園地になっていたりする夢を見た。夢の中で他の夢を思い出したのは初めてかもしれない。そういうことが可能なんだな。

 しかし残念ながら「以前見た夢と一緒」というところまでは気づいても、「これは夢だ」とは気づかなかったらしい。いつもそうだ。夢の中で夢だと気づく人も多いのに、私は夢だと気づかない。空を飛ぶ力を身につけた夢を見たとき、「この状態が終わってしまう前に誰かにこの力を見せよう」とは思ったが……。

 さて、夢の中では花火大会が始まった。するとお向かいの家のすぐ近くから花火が上がり……火の粉が落ちてお向かいの屋根が燃え始めた。

 間髪入れず「今回の花火は中止になりました」と、テーマパークみたいなアナウンスが入った。家が燃え始めたんだからそりゃそうだろう。というかこんな住宅地で花火を上げたら燃えるの当たり前だ。なんて夢だ。

 燃え始めた家に向かって数人が駆けていき、家の中の住民を呼んでいる。呼んでいる数人はどうもご近所さんらしい。私も向かいのお家のおばあちゃんを知っているので燃えた家に駆け寄った。

 燃えている屋根の上には、油だか燃料だかが入った大きな缶があり、そこに火が移っていた。まだ燃え始めたばかりだから消せるかもしれない。パニックになった私は、水のあるところから手ですくってバシャバシャとかけた。が、こんな量の水ではダメだろう。

 私は近くにあったホースに目をとめ、それで水をかけ始めた。
 ……よく考えたら、油だか燃料だかが燃えているときって水をかけちゃいけないんじゃなかったっけ? だがよく知らないので思い出せない。とりあえず、燃えている二ヶ所ほどに水をかけ続ける。

 そのうちようやく火はおさまった。……ようなのだがよく分からない。私は自分の家に駆け戻って、階段を上がった。家の中にも煙が入ってきていた。

 私は「火事だ!」とかすれる声で何度か叫び、二階で寝ていた家族を起こした。下に降りてみるともう騒ぎは終わったようで、起こす必要はなかったようだが、ちゃんと火が消せていないかもしれないので起こして良かった。

 私はこういう、火を恐れるような夢を何度か見ている。近くで火事があったらしいとか、どこかが燃えているような建物の中を歩いていく夢とか。現実で少し溺れかけたことはあったけれど、今のところ夢で溺れかけたことはないように思うので、水より火が怖いのかもしれない。

 火事の夢は何度か見ているが、これだけは正夢になってほしくない。「だけ」ってことはなく、悪夢みたいなものは全部嫌だが……。

 さて、それから急に夢の場面が飛び、次は家族と一緒に自分の家の前に出ていた。さっきはここは道で、お向かいの家があったはずだが、向かいの家々がなくなって見晴らしのよい場所になっている。遠くには棚田が何層にも広がっており、木々も多くて一面緑っぽかった。山の斜面のようなところに棚田が並ぶ様子は、マチュピチュのようにも見えた。

「綺麗でしょ。これが◯◯(地名)の本当の姿だったんだ」
 家族はそんなことを言いながら、しきりに感動している。火事と、目の前が一面田んぼになったことは関係ないらしい。

 たしかに……。これがかつてのこの地だったのか。美しい。
 そんなことを思いながら目が覚めた。

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