13 / 29
4.5 sideセレ エルフ村にて
しおりを挟む
私は朝から落ち着かない心地だった。
エルフ村に赴いてサヴァン兄様から助言を受けると共に、人間に関する本を買わねばと思い立ったはいいものの、やはり外を出歩くことには抵抗があったのだ。しかも意を決して服を着たところ、アズマに止められてしまった。
挙句にアズマが、彼の衣服を貸すというものだから、私は動揺してしまった。
つい昨日のこと、恋愛対象として意識しているのだと理解したばかりのアズマから、衣服の貸し出しを申し出られたのだ。私なら意中の相手に服を貸すなどという行為はできないが、アズマは誰にでも服を貸すのだろうか。それとも、意識してしまうと言っているだけで、どうでもいいから貸せるのだろうか。私は困惑しつつも、アズマの親切を受け入れた。
アズマの衣類はエルフの精霊絹よりも粗雑で固い肌触りだが、どことなくアズマの香りがした。そう意識すると何故だか私は落ち着かない心地になり、胸がざわめくのを知られまいと、サングラスをかけっぱなしにしなくてはならなかった。
久方ぶりに家を出ると、やはり眩い太陽と人々の喧騒にクラクラしそうだ。しかし、確かにこの姿のおかげで以前より視線を集めずに済んでいるかもしれない。時折「あの、モデルさんですか」と知らない人々から声をかけられたが、違うと言ってできる限り足早に逃げた。
私達エルフは悠々としていることを美とするが、その気になれば獣人と並ぶほど早く駆けられる。もっとも、いつものローブでは脚がもつれるのだが、アズマの衣類は動くのに適しており、なるほど脆弱な人間はこの平和な時代でもいつ何時危険に晒されても逃げられるようにこういう服を着ているのだと感心した。
エルフ村にはこちらへ引っ越した時に何度か足を運んだから、行き方は知っていた。相変わらず、列車とかいう金属にマナを駆け巡らせて走る箱のことは薄気味悪いが、移動は早くて便利だ。あっという間に私はエルフ村へと辿り着いた。
人類が混ざって暮らす街の一角に、唐突に我らが故郷を模した一角が広がる。木々が生い茂り、石造りの流麗な白い建築物が並ぶ街並みだ。冬に襲われている人類の街は寒いけれど、ここには精霊たちも暮らしていてほのかに温かみがある。そのせいか、観光客と思わしき他の人類たちもそれなりの数がエルフ村を訪れていた。
私はエルフ村の町並みをあまり気にかけることもなく、一直線へとある建物へ向かった。エルフ語と人類共通語で「観光案内所」と書かれた木の看板が立てられており、薄布のカーテンを開け中へ入ると、エルフ建築らしい木と石の調和がとれた美しい部屋が広がっている。入ってすぐのところに白い木造りのテーブルが置かれており、その前の椅子には、サヴァン兄様が腰かけていた。
「やあセレ。今日はどうしたんだい?」
サヴァン兄様は私の来訪を驚くでもなく、そう微笑んでいる。きっとサヴァン兄様ほどの長命なエルフともなれば、私がここへ近付いている気配ぐらいわかるのだろう。
「人間についての知識を教えて頂きたいのです。できれば、なにか書籍も紹介してほしくて」
「おや? 前に渡した本では不足だったかい?」
サヴァン兄様が悪戯っぽく笑っている。以前兄様から渡された本といえば『人間との付き合いかた~見守り、助ける方法』のことだ。今にして思えば、兄様はきっとこの本だけでは足りなくなる日を待っていたのではないかと感じる。私がきちんと人間に向き合おうとする日を。
「……はい。新しく、人間と対等に接する方法を学びたいのです。長命なエルフとしてではなく、ひとつの人類として……」
アズマと、どう接するべきなのか。これから私は、どうするべきなのか。それを知りたくて。
サヴァン兄様は私に向かい、優しい笑みを浮かべると、何も言わずに私の前に数冊の本を置いた。『人間文化史』や『人類が共に歩むために』と言ったタイトルの本はエルフ語で書かれており、著者名には『サヴァン・ロ・シェルロフィ』と記されていた。
本を受け取ろうとすると、サヴァン兄様は私の手を取り「まあまあ、そう急くものじゃないよ」と立ち上がった。それから兄様は、私にエルフ村を案内してくれる。
思えば、私はここが人類の街で居場所を失くしたエルフの集まる場所だと認識していた。しかし、説明を受けながらよくよく見てみると、どうもそういうことではない気がしてくる。
例えばすべての看板にはエルフ語と共に人類共通語が記されており、どうやらこの村はエルフ以外の人類を歓迎しているようだった。衣料品店には精霊絹でできた本格的な我々の衣服のみならず、人間たちの扱う布やファッションに寄せたものも並んでいる。それらを人間や獣人たちが体に当てて、鏡で確認している様子も見られた。
食料品店にはナガルルリの実など我々の食べ物が並んでいるけれど、それらを他の人類も食べやすいように味付けしたものも売られているようだ。樹や水のそばには精霊たちの姿もあったけれど、精霊の好むランプが設置してあり、そこへ集まっている。きっと無闇に人類へ悪戯をしかけないよう工夫したのだろう。
「近頃は結構観光客も増えてきてねぇ。歩み寄れるように努力はしているんだけど。やっぱり、最大の問題は言葉だよね。私たちにしてみれば日常的に使っている言葉なのに、人類にはとても高慢に聞こえてしまう。それにエルフの文化は、他の人類と違いすぎる。どう共生していくかは、私も未だに悩んでいるよ」
サヴァン兄様はそう言って、私に笑いかけた。
「だからね、君も自分ひとりで思い詰めずに、誰かに相談するといいよ。幸い君のルームメイトは、君と理解を深めようと努力してくれる人なんだろう。大切に、よく話しよく歩み寄るといいよ。そんな出会いは稀なのだからね」
それは私もそう思う。アズマはきっと、特別な人間だ。私が口を開くと、皆私に嫌悪するような表情を見せ、離れていくのに。彼だけは、一度はそうしたそぶりも見せたが理解を示してくれた。そして今も、共にいてくれる。
彼とそばにいたい。これからもずっと。あの優しく穏やかな、幼い青年と対等でありたい。そう考えると胸がじんわりと温かくなり、どうにも頬が熱くなる。その感覚がなんであるか、私にはまだわからない。
「私も、彼との関係を大切にしたいと願っています」
素直に頷いてみせれば、サヴァン兄様は私の頭を撫でた。サヴァン兄様とは数百歳も離れているから、兄様にしてみれば私などほんの小さな子どもだろう。
「良い子だ。今日は良ければ、夕飯を共にしないかい。せっかく実の血縁が揃ったのだし。他のエルフたちも君を歓迎してくれるよ」
私はその提案に迷ったけれど、そういえば今夜はアズマもいないと言っていた。家に帰ってひとりで食事を摂るのも寂しいものだ。私はサヴァン兄様の提案を受け入れ、久方ぶりのエルフの食卓を楽しんだ。
兄様に頂いた本を鞄へ入れ、帰路についた頃はもう陽がすっかり落ちて、サングラス越しの視界は酷く暗い。ここが人類の街であることを失念していた。エルフの郷とは違い、精霊がどこででも飛び回っているわけではないのだ。
しかしサングラスを外す勇気はない。そうこうしているうちにドワーフにぶつかって……そして、私はアズマに助けられた。
彼には良くしてもらいっぱなしだ。この恩を返す為にも、早く人間を理解し、良き隣人として対等にならなくては。そう思った矢先に転げそうになり、結局私はアズマに手を引かれながら帰ることとなった。まるで親子のように。
いや、まさしく私はアズマにとっては子と同じだろう。人間の、人類のことなど何も知らない、愚かで無知な私をアズマは導いてくれているのだ。何の心配もない、きっとアズマは私に恋愛感情など寄せてはおらず、温かい目で忠告をしてくれたにすぎないのだろう。
私はそう納得しつつ、ようやっとたどり着いた我が家に安堵の溜息を漏らしたのだった。
エルフ村に赴いてサヴァン兄様から助言を受けると共に、人間に関する本を買わねばと思い立ったはいいものの、やはり外を出歩くことには抵抗があったのだ。しかも意を決して服を着たところ、アズマに止められてしまった。
挙句にアズマが、彼の衣服を貸すというものだから、私は動揺してしまった。
つい昨日のこと、恋愛対象として意識しているのだと理解したばかりのアズマから、衣服の貸し出しを申し出られたのだ。私なら意中の相手に服を貸すなどという行為はできないが、アズマは誰にでも服を貸すのだろうか。それとも、意識してしまうと言っているだけで、どうでもいいから貸せるのだろうか。私は困惑しつつも、アズマの親切を受け入れた。
アズマの衣類はエルフの精霊絹よりも粗雑で固い肌触りだが、どことなくアズマの香りがした。そう意識すると何故だか私は落ち着かない心地になり、胸がざわめくのを知られまいと、サングラスをかけっぱなしにしなくてはならなかった。
久方ぶりに家を出ると、やはり眩い太陽と人々の喧騒にクラクラしそうだ。しかし、確かにこの姿のおかげで以前より視線を集めずに済んでいるかもしれない。時折「あの、モデルさんですか」と知らない人々から声をかけられたが、違うと言ってできる限り足早に逃げた。
私達エルフは悠々としていることを美とするが、その気になれば獣人と並ぶほど早く駆けられる。もっとも、いつものローブでは脚がもつれるのだが、アズマの衣類は動くのに適しており、なるほど脆弱な人間はこの平和な時代でもいつ何時危険に晒されても逃げられるようにこういう服を着ているのだと感心した。
エルフ村にはこちらへ引っ越した時に何度か足を運んだから、行き方は知っていた。相変わらず、列車とかいう金属にマナを駆け巡らせて走る箱のことは薄気味悪いが、移動は早くて便利だ。あっという間に私はエルフ村へと辿り着いた。
人類が混ざって暮らす街の一角に、唐突に我らが故郷を模した一角が広がる。木々が生い茂り、石造りの流麗な白い建築物が並ぶ街並みだ。冬に襲われている人類の街は寒いけれど、ここには精霊たちも暮らしていてほのかに温かみがある。そのせいか、観光客と思わしき他の人類たちもそれなりの数がエルフ村を訪れていた。
私はエルフ村の町並みをあまり気にかけることもなく、一直線へとある建物へ向かった。エルフ語と人類共通語で「観光案内所」と書かれた木の看板が立てられており、薄布のカーテンを開け中へ入ると、エルフ建築らしい木と石の調和がとれた美しい部屋が広がっている。入ってすぐのところに白い木造りのテーブルが置かれており、その前の椅子には、サヴァン兄様が腰かけていた。
「やあセレ。今日はどうしたんだい?」
サヴァン兄様は私の来訪を驚くでもなく、そう微笑んでいる。きっとサヴァン兄様ほどの長命なエルフともなれば、私がここへ近付いている気配ぐらいわかるのだろう。
「人間についての知識を教えて頂きたいのです。できれば、なにか書籍も紹介してほしくて」
「おや? 前に渡した本では不足だったかい?」
サヴァン兄様が悪戯っぽく笑っている。以前兄様から渡された本といえば『人間との付き合いかた~見守り、助ける方法』のことだ。今にして思えば、兄様はきっとこの本だけでは足りなくなる日を待っていたのではないかと感じる。私がきちんと人間に向き合おうとする日を。
「……はい。新しく、人間と対等に接する方法を学びたいのです。長命なエルフとしてではなく、ひとつの人類として……」
アズマと、どう接するべきなのか。これから私は、どうするべきなのか。それを知りたくて。
サヴァン兄様は私に向かい、優しい笑みを浮かべると、何も言わずに私の前に数冊の本を置いた。『人間文化史』や『人類が共に歩むために』と言ったタイトルの本はエルフ語で書かれており、著者名には『サヴァン・ロ・シェルロフィ』と記されていた。
本を受け取ろうとすると、サヴァン兄様は私の手を取り「まあまあ、そう急くものじゃないよ」と立ち上がった。それから兄様は、私にエルフ村を案内してくれる。
思えば、私はここが人類の街で居場所を失くしたエルフの集まる場所だと認識していた。しかし、説明を受けながらよくよく見てみると、どうもそういうことではない気がしてくる。
例えばすべての看板にはエルフ語と共に人類共通語が記されており、どうやらこの村はエルフ以外の人類を歓迎しているようだった。衣料品店には精霊絹でできた本格的な我々の衣服のみならず、人間たちの扱う布やファッションに寄せたものも並んでいる。それらを人間や獣人たちが体に当てて、鏡で確認している様子も見られた。
食料品店にはナガルルリの実など我々の食べ物が並んでいるけれど、それらを他の人類も食べやすいように味付けしたものも売られているようだ。樹や水のそばには精霊たちの姿もあったけれど、精霊の好むランプが設置してあり、そこへ集まっている。きっと無闇に人類へ悪戯をしかけないよう工夫したのだろう。
「近頃は結構観光客も増えてきてねぇ。歩み寄れるように努力はしているんだけど。やっぱり、最大の問題は言葉だよね。私たちにしてみれば日常的に使っている言葉なのに、人類にはとても高慢に聞こえてしまう。それにエルフの文化は、他の人類と違いすぎる。どう共生していくかは、私も未だに悩んでいるよ」
サヴァン兄様はそう言って、私に笑いかけた。
「だからね、君も自分ひとりで思い詰めずに、誰かに相談するといいよ。幸い君のルームメイトは、君と理解を深めようと努力してくれる人なんだろう。大切に、よく話しよく歩み寄るといいよ。そんな出会いは稀なのだからね」
それは私もそう思う。アズマはきっと、特別な人間だ。私が口を開くと、皆私に嫌悪するような表情を見せ、離れていくのに。彼だけは、一度はそうしたそぶりも見せたが理解を示してくれた。そして今も、共にいてくれる。
彼とそばにいたい。これからもずっと。あの優しく穏やかな、幼い青年と対等でありたい。そう考えると胸がじんわりと温かくなり、どうにも頬が熱くなる。その感覚がなんであるか、私にはまだわからない。
「私も、彼との関係を大切にしたいと願っています」
素直に頷いてみせれば、サヴァン兄様は私の頭を撫でた。サヴァン兄様とは数百歳も離れているから、兄様にしてみれば私などほんの小さな子どもだろう。
「良い子だ。今日は良ければ、夕飯を共にしないかい。せっかく実の血縁が揃ったのだし。他のエルフたちも君を歓迎してくれるよ」
私はその提案に迷ったけれど、そういえば今夜はアズマもいないと言っていた。家に帰ってひとりで食事を摂るのも寂しいものだ。私はサヴァン兄様の提案を受け入れ、久方ぶりのエルフの食卓を楽しんだ。
兄様に頂いた本を鞄へ入れ、帰路についた頃はもう陽がすっかり落ちて、サングラス越しの視界は酷く暗い。ここが人類の街であることを失念していた。エルフの郷とは違い、精霊がどこででも飛び回っているわけではないのだ。
しかしサングラスを外す勇気はない。そうこうしているうちにドワーフにぶつかって……そして、私はアズマに助けられた。
彼には良くしてもらいっぱなしだ。この恩を返す為にも、早く人間を理解し、良き隣人として対等にならなくては。そう思った矢先に転げそうになり、結局私はアズマに手を引かれながら帰ることとなった。まるで親子のように。
いや、まさしく私はアズマにとっては子と同じだろう。人間の、人類のことなど何も知らない、愚かで無知な私をアズマは導いてくれているのだ。何の心配もない、きっとアズマは私に恋愛感情など寄せてはおらず、温かい目で忠告をしてくれたにすぎないのだろう。
私はそう納得しつつ、ようやっとたどり着いた我が家に安堵の溜息を漏らしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
閉ざされた森の秘宝
はちのす
BL
街外れにある<閉ざされた森>に住むアルベールが拾ったのは、今にも息絶えそうな瘦せこけた子供だった。
保護することになった子供に、残酷な世を生きる手立てを教え込むうちに「師匠」として慕われることになるが、その慕情の形は次第に執着に変わっていく──
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
災厄の魔導士と呼ばれた男は、転生後静かに暮らしたいので失業勇者を紐にしている場合ではない!
椿谷あずる
BL
かつて“災厄の魔導士”と呼ばれ恐れられたゼルファス・クロードは、転生後、平穏に暮らすことだけを望んでいた。
ある日、夜の森で倒れている銀髪の勇者、リアン・アルディナを見つける。かつて自分にとどめを刺した相手だが、今は仲間から見限られ孤独だった。
平穏を乱されたくないゼルファスだったが、森に現れた魔物の襲撃により、仕方なく勇者を連れ帰ることに。
天然でのんびりした勇者と、達観し皮肉屋の魔導士。
「……いや、回復したら帰れよ」「えーっ」
平穏には程遠い、なんかゆるっとした日常のおはなし。
もう観念しなよ、呆れた顔の彼に諦めの悪い僕は財布の3万円を机の上に置いた
谷地
BL
お昼寝コース(※2時間)8000円。
就寝コースは、8時間/1万5千円・10時間/2万円・12時間/3万円~お選びいただけます。
お好みのキャストを選んで御予約下さい。はじめてに限り2000円値引きキャンペーン実施中!
液晶の中で光るポップなフォントは安っぽくぴかぴかと光っていた。
完結しました *・゚
2025.5.10 少し修正しました。
【連載版あり】「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩
ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。
※加筆修正が加えられています。投稿初日とは誤差があります。ご了承ください。
【完結済】氷の貴公子の前世は平社員〜不器用な恋の行方〜
キノア9g
BL
氷の貴公子と称えられるユリウスには、人に言えない秘めた想いがある――それは幼馴染であり、忠実な近衛騎士ゼノンへの片想い。そしてその誇り高さゆえに、自分からその気持ちを打ち明けることもできない。
そんなある日、落馬をきっかけに前世の記憶を思い出したユリウスは、ゼノンへの気持ちに改めて戸惑い、自分が男に恋していた事実に動揺する。プライドから思いを隠し、ゼノンに嫌われていると思い込むユリウスは、あえて冷たい態度を取ってしまう。一方ゼノンも、急に避けられる理由がわからず戸惑いを募らせていく。
近づきたいのに近づけない。
すれ違いと誤解ばかりが積み重なり、視線だけが行き場を失っていく。
秘めた感情と誇りに縛られたまま、ユリウスはこのもどかしい距離にどんな答えを見つけるのか――。
プロローグ+全8話+エピローグ
果たして君はこの手紙を読んで何を思うだろう?
エスミ
BL
ある時、心優しい領主が近隣の子供たちを募って十日間に及ぶバケーションの集いを催した。
貴族に限らず裕福な平民の子らも選ばれ、身分関係なく友情を深めるようにと領主は子供たちに告げた。
滞りなく期間が過ぎ、領主の願い通りさまざまな階級の子らが友人となり手を振って別れる中、フレッドとティムは生涯の友情を誓い合った。
たった十日の友人だった二人の十年を超える手紙。
------
・ゆるっとした設定です。何気なくお読みください。
・手紙形式の短い文だけが続きます。
・ところどころ文章が途切れた部分がありますが演出です。
・外国語の手紙を翻訳したような読み心地を心がけています。
・番号を振っていますが便宜上の連番であり内容は数年飛んでいる場合があります。
・友情過多でBLは読後の余韻で感じられる程度かもしれません。
・戦争の表現がありますが、手紙の中で語られる程度です。
・魔術がある世界ですが、前面に出てくることはありません。
・1日3回、1回に付きティムとフレッドの手紙を1通ずつ、定期的に更新します。全51通。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる