霧の森のリゼロン

なずとず

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「ぅう、あ、っ、くぅ、う……っ」

 指を動かし、内壁を擦る度にリゼロンが苦しげな声を出す。彼は壁のほうに向きを変えさせられ、手は壁に、膝を床に着いた苦しい体勢を強いられており、酷く屈辱的な姿を晒していた。レオーネに秘部のその全てを余すところなく見られているのだから。

 エルフの身体は不老不死にして不変だ。何百年生きようとも、彼らは美しく清らかな姿を保ち続ける。傷は一日も有れば治るし、つまり彼らは永久に童貞であり処女である身体ということだ。

 しかし、あくまでそれは身体のみ。感覚や、その身に起こったことを彼らは記憶している。たとえ、明日には何事も無かった身体に戻ったとしても。つまりそれは、下種な言い方をすれば彼らを「開発」できるということだ。

「レオ、ネ、レオーネ……ッ、もう、よせ……ひ、ぅっ」

 後ろから淡々とリゼロンの胎内を解しているレオーネは、何度名を呼ばれても返事はしなかった。媚薬を絡ませた指はもう3本もリゼロンのナカへと呑み込まれていて、入り口が苦しげに絡みついてくる。しかし奥は熱く、指を動かす度にうねって受け入れるのは歓喜のようにも思えた。

 リゼロンは震える声で制止を繰り返し、矯正を抑えきれず腰を跳ねさせていた。全身がしっとりと汗ばみ、金の長い髪が肌に張り付いている。今は後ろにいるから見えないけれど、きっと蕩けた顔をしているに違いない。あられもない姿はレオーネに暗い興奮をもたらしていた。

 作業のようにリゼロンを責め続ける。逃れるように揺れる腰を押さえ、反応が大きくなる辺りを撫でてやった。

「く、ぁ、……っレオーネ……っこのような、このような、ことぉ……っ」

 すっかり快楽を受け入れた熱っぽい声で、それでも拒絶を口にするのが腹立たしいやら、愉快やら。一体いつまで、主導権が自分にあると思い込んでいるのだろう。エルフなど、ただ長生きしているだけで人間より上でもあるまいし。もう子供扱いされるような歳でもないのだから。

「ここを撫でたら少しは黙るか?」

「ひっあ、あ、ならぬ、ソレは、だめ、……っならぬぅう……っ!」

 ぐりぐりと強くソコを押さえると、仰け反って首を振る。金の髪が、白い身体が揺れて、この上無く艶かしい。整えることのできない荒い呼吸が、喘ぎ声を抑えることさえ許さないようだ。もう、余裕が無いのだろう。出すことを許していない前は濡れそぼって、透明な液を滴らせ、太腿を濡らすほどだ。

 レオーネも男だからこそわかる。かなり辛いだろう。それでも、リゼロンは制止を求めるのだ。開放ではなく。彼に言わせれば、レオーネが穢れるから。

 穢れると言うのなら、こんなことを始めた時点でとっくに穢れているのだ。純真な子供ではなくなり、懐いていた男を捕縛し、監禁することを目論んだ時から。

 ずるり、と指を引き抜くと、それだけでリゼロンの腰が戦慄いた。名残惜しげにヒクつくソコは、彼の意思に反して誘っている。はあはあと呼吸を繰り返しながら脱力しているリゼロンに近付き、その臀部に己の熱を押し当てた。

「――ッ、レオーネ、よせ、ならぬ、ならぬから……っ」

 それが何かわかったらしい。リゼロンはこれまでで一番の抵抗をした。とは言っても、鎖に繋がれて不自由な身体を揺らしただけだ。何の意味も無い。むしろ、加虐者を煽る。

「やめよ、レオーネ……っ! ダメだ、だめ、……っあ、あ……!」

 尻肉を指で開きながら、ゆっくり、ゆっくりとソコに熱を押し込む。先端に入り口が吸い付き、それだけで気持ちよくてレオーネは静かに眉を寄せた。

 熟れている。そう感じながら、奥へ、奥へと、敢えて少しずつ侵入した。リゼロンが、今まさに侵されているのだと実感するように。

「あぁ、う、レオーネぇ……っ! とめて、くれ、……っ頼むから……っあ、あ……っ」

「……お前が、口を割れば、いつでもやめてやる」

 ゆるゆる奥へ進みながら、レオーネもまた眉を寄せて耐える。熱いナカは絡みついて、レオーネを喜んで受け入れているようにも思えた。もう少し進めば、恐らくリゼロンの一番反応する場所に届くだろう。彼もわかっていて、抵抗を強めていた。

「……っ、い、言えぬ、のだ……っ。レオーネ、頼む、わかってくれ、私、は……っ」

「なら、続けるしかないな」

「……! や、やめてくれ、やめ……っあ、ァア!」

 一気に奥まで腰を進めると、リゼロンは身を反らせ、甲高い悲鳴を上げる。衝撃が強かったのか身体が震えていた。内部はレオーネを締め付け、唇を噛み締めて耐えねばならないほどだった。

 結果として、リゼロンが落ち着くまで待つことになった。汗ばんだ背中にそっと手を置くと、それだけでびくりと震える。何かされるのかと身体を強張らせたようだったけれど、ただなだめるように撫でるだけだと気付いたのか、リゼロンは次第に身体の力を抜いていく。

 どうしてこうなったのだろうな……。

 その細く白い背中を見下ろしながら、レオーネは思った。

 真実を知りたかった。その言葉に偽りは無い。それは逆に、レオーネがリゼロンを今尚信じていることの裏返しでもある。何か彼にも事情が有ったのだろう、と考えていなければ、行うの「復讐」のはずで、「尋問」ではない。

 12年もの歳月、憎み、悲しみ続けた。それと同じだけ、彼は繰り返してきたのだ。「何故」と。どうしてリゼロンは自分を拒絶したのか。それが知りたかった。知ってどうするのかなどわからない。ただ、ただなんとしても、それを聞きたかった。リゼロンの口から。

 それがどうして。

 レオーネはリゼロンの長い髪を手に取って弄ぶ。子供の頃、リゼロンに抱き着いて甘えるのが好きだった。彼からはいつも花のような心地よい香りがして、こうして彼の髪に戯れたことも数えきれない。優しく名を呼ばれ、抱きしめられるとたまらなく幸福な気持ちになった。

 何故、あの満ち足りた日々が失われたのか。知りたい一心だった。言葉で切り離され、拒絶の霧が森の入口を閉ざしても、レオーネはその森に向かった。何とか方法を探そうと、書物を読み耽り、エルフについて詳しい者に話を聞き。ようやく、霧を抜けてリゼロンを捕まえることに成功したけれど。

 そうまでして。そうまでして、何を取り戻そうとしているのか――。

「レ、オーネ……」

 リゼロンの震える声に、現実にかえる。リゼロンは落ち着きを取り戻したのか、不自由な身体でなんとか視線をこちらに向けていた。エルフの尖った耳の先まで赤く染め、眼を潤ませて。それでも彼は、堕ちてはいなかった。

「もう、こんなことは、やめて……っ、ぬ、抜きなさい……」

 喋るだけで胎内が微かに動くものだから、リゼロンは辛そうにそう言った。その姿に目を細める。快感に翻弄されて淫らな姿を晒していながら、まだ自分が優位であると思っているのだ。

「……わかった」

「ぅ、……っあ、あああぁ……っ」

 レオーネはリゼロンに求められた通り、極めてゆっくりと腰を引いていく。ずるずると抜けていく感覚がたまらないのか、リゼロンは悲鳴を上げて身を縮めながら耐えていた。言葉では拒絶を繰り返しているくせに、内壁は熱く絡みついてレオーネを逃がすまいとする。弄ぶように揺すりながら抜いていくと、リゼロンの悲鳴は甲高く、絶え間なく漏れた。

「ひっ、ぁ、はあ、はあっ……、レオーネぇ……っ」

 ずるり、とついに全てが抜けると、ようやく力が抜けたリゼロンが名を呼んだ。何か言おうとしているようだったけれど、レオーネは無言のままリゼロンの腰を掴み、再び胎内に侵入する。今度は先程より、早く。

「ひ、あああぁ……っ! レオーネぇえ……っ」

「もう入れるなとは言わなかっただろ」

「あぅ、っうぅ、れ、お、……っああ、あ……!」

 そのまま小刻みに揺さぶると、リゼロンは泣き出しそうな声で喘ぎながら首を振った。嫌なのか、気持ちいいのかは定かではない。表情が見えないことを残念に思った。

 今、リゼロンはどんな顔で快楽に溺れているのだろうか。想像するだけで、身体に暗い火が灯る。もっと気持ち良くしてやったら、リゼロンはどんなふうに乱れるのか。

「れお、ね……っあ、あああ、だめ、だ……ひぅうう」

 ぐちゅり、と濡れそぼった前を握ってやると、リゼロンの細い体がビクビクと跳ねる。握っただけで出そうなのかもしれない。わかっていて、レオーネはそのまま腰を動かす。身体が揺られて内部を抉られ、前が刺激されるのだからたまったものではないだろう。リゼロンは背を反らせて悲鳴を上げた。

「ああっ、あ、れお、っ、ダメだ、だめ、……っア!」

 戯れに先端を撫でると、中がきゅうきゅうと締め付けてくる。その刺激にレオーネも眉を寄せた。程度の差は有るだろうが、気持ちがいいのはお互い様だ。耐えなければ、尋問が終わってしまう。

「……なあリゼロン、話してくれ。そうしたら、楽にしてやれる」

「……っ、うう、ぅ、レオーネ……」

「どうして俺を遠ざけたんだ。どうして俺を拒んだ。……俺のことが、……嫌になったのか……」

 ポツリと漏れたその言葉に、レオーネはハッと口を噤んだ。そんなことを言うつもりではなかった。だがその言葉は、何百回とレオーネの頭の中で繰り返されたものでもある。

 リゼロンに事情など無い。ただ、自分に嫌気がさしたのではないか。それは本当に恐ろしい可能性で、だからこそ問いたかった。嘘でもいい。違うと言ってほしかったのかもしれない。そしてそれを、リゼロンに問うつもりはなかったのだ。

 聞こえていないことを願ったけれど、リゼロンは荒い呼吸を繰り返した後に、小さく答えた。

「……そなたは、……この世で一番愛しい子だ……」

 そなたを厭い、疎む事など、どうしてあろうか。こうしている今でさえ。

 震える声。レオーネは一瞬、その言葉をどう受け取っていいかわからなかった。ややして、リゼロンの胎内から一息に自らを引き抜く。

「ひあ、ああぁ……っ」

 悲鳴を上げるリゼロンに構わず、手枷と足枷を鎖から外す。それにより重力に逆らえず床に崩れ落ちた彼を抱き上げて、近くに有った寝台に放り込んだ。

「レオーネ、」

「なら、どうして俺を拒絶した!」

「レオーネ、ならぬ、レオ、――ッ」

 仰向けにさせて、正常位で繋がる。また大きく仰け反ったリゼロンの胸に顔を埋めて、腰を揺さぶった。

 嘘を言ったのなら、もがき逃げればいい。鎖は解かれたのだから。こんなことをされてなお、愛しいという男が、何故自分を拒絶したのか。ますますわからない。何故頑なに言わないのか。どうしてこんなことになってしまったのか。わからない。何もかも。

 そんなレオーネ背中に、リゼロンの腕が絡んだ。は、と息を呑む間にも、ぎゅうと抱きしめられる。

 まるで子供の頃のように。あの、満ち足りた幸福な日と同じように。

「……すまぬ、レオーネ……私の愛しい子羊よ……」

 リゼロンがそう零して。レオーネは一度ぎゅっと唇を噛み締めると、それから顔を上げ、貪るようにリゼロンに口付け。

 そして、悲鳴さえも食らいつくすように、犯した。ついにリゼロンが、何の反応も返さなくなるまで。
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