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第22話 文化祭本番、裏方から前線へ
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文化祭の朝は、校門を越えた瞬間から熱気に包まれていた。色とりどりの看板、調理室から漂う甘い香り、体育館から漏れる音楽。廊下には他校の制服や保護者の姿も混じり、普段の学校とはまるで別世界だった。
俺たちのクラスは「喫茶」。机を寄せてテーブルを作り、黒板にチョークでメニューを書き、入り口には手作りの看板とメニュー表を立てた。エプロンを腰に巻いて鏡を覗いたとき、いつもの自分とは違って見えた。
今までの俺なら、こんな場面で自分の姿を確認することなんてなかったはずだ。
「開店でーす!」
クラス委員の掛け声で扉が開き、最初の客が足を踏み入れる。拍手と笑い声が起こり、ざわざわと活気が広がる。俺たちの文化祭が、本格的に始まった。
―
午前のうちは順調だった。俺は会計係を任され、釣銭を素早く渡し、伝票の計算も抜けなくこなす。暗記力スキルのおかげで値段もすぐに頭に浮かぶし、ミスは一度もなかった。クラスメイトが「助かるわー」と言って笑顔を向けてくれるたび、心の中で小さくガッツポーズをした。
だが昼が近づくと、状況は一変した。
「佐久間! ホールが全然足りない!」
扉の外には長蛇の列。通路は客で埋まり、席を探す人、立ち止まる親子、運ばれない料理を待つ視線。
ざわつきが不満に変わり始め、教室の空気が一気に重くなる。案内役も配膳も追いつかず、焦りが募った。
【クエスト発生】
・内容:接客を手伝い、客の流れを改善せよ
・報酬:魅力+1/SP+3
(……やるしかない)
レジを仲間に任せ、俺は前に飛び出した。
「二名様、こちらの席へどうぞ!」
「三名様は奥のテーブルです、椅子を追加しますね!」
声を張り、身振りで客を誘導する。会話術スキルが背中を押してくれる。短く、わかりやすく。客の足取りが少し軽くなるのが分かった。しかしまだ混乱は収まらない。
子供を連れた母親が困ったように立ち尽くしている。俺は駆け寄り「奥の席ならベビーカーのまま入れます」と案内した。
サラリーマン風の父親には「しばらく混みますので、先にメニューをどうぞ」と伝える。
カップルの高校生には笑顔を添えて「お待たせしました」と声をかける。
【スキルショップ(既存)】
・SP10 → 笑顔強化Lv1(自然で疲れにくい笑顔を保てる/魅力+1扱い)
・SP5 → 魅力+1(ステータス直接上昇)
(今必要なのは……これだ)
迷わず購入。
【スキル購入:笑顔強化Lv1(SP-10)】
【スキル購入:魅力+1(SP-5)】
頬が自然に持ち上がり、ぎこちなさのない笑みが形になる。胸は高鳴っているのに、不思議と落ち着いていた。
「お待たせしました! 奥の席へどうぞ!」
「ありがとうございます!」
返ってくる笑顔が増え、教室全体が柔らかい空気に包まれていく。小さな子供が真似をして「いらっしゃいませ」と言い、客席から笑いがこぼれた。列の苛立ちが消え、クラスメイトの表情にも余裕が戻っていく。
【クエスト達成/魅力+1/SP+3】
(……よし、やり切った)
―
閉店後、片づけを終えると拍手が起こった。
「佐久間、マジで助かった!」
「今日のMVPは間違いなくお前だ!」
背中を叩かれるたび、くすぐったいような誇らしさが胸に広がった。普段なら俺を無視していたやつが「また頼むな」と笑う。その一言が心に刺さった。
その時、教室の入口から声が聞こえた。
「……佐久間くん」
振り返ると、水城遥が立っていた。黒髪がさらりと揺れ、両手には紙袋を抱えている。クラス中が一斉にざわめいた。
「今日の接客、本当にすごかったよ」
「え、あ……ありがとう」
「弟も真似してたんだよ『いらっしゃいませ!』って」
「悠真が……?来てたのか」
思わず笑みがこぼれる。スキルの効果かもしれない。けど、素直に嬉しかった。
「これ、差し入れ。うちのクラスで作った焼き菓子」
紙袋を受け取ると、甘い香りがふわっと広がる。
「ありがとう」
「ふふ……やっぱり、頑張ってる姿がかっこいいね」
遥の言葉に胸が高鳴り、息を呑んだ。
―
【現在のステータス(文化祭一日目・夜)】
・名前:佐久間 陽斗
・年齢:16
・身長:168.1cm(+8cm)
・体重:62.0kg
・体脂肪率:15.0%
・筋力:18.7(+1)
・耐久:18.5
・知力:13.7(+1)
・魅力:20.2(+0.5/+1/+1)
・資産:¥168,080(+2000/日)
・SP:3.0
・スキル:早食いLv1/資産ブースト(+2000/日)/暗記力+10%/身体強化Lv1/恐怖心克服Lv1/瞬発力アップ(小)/スタミナ持久力+1/会話術Lv1/笑顔強化Lv1
・特別イベント:文化祭本番(進行中)
・特別イベント:水城遥との出会い(進行中)
(数字は伸びた。でも今日は、“みんなの役に立てた”のが一番の成果だ)
俺たちのクラスは「喫茶」。机を寄せてテーブルを作り、黒板にチョークでメニューを書き、入り口には手作りの看板とメニュー表を立てた。エプロンを腰に巻いて鏡を覗いたとき、いつもの自分とは違って見えた。
今までの俺なら、こんな場面で自分の姿を確認することなんてなかったはずだ。
「開店でーす!」
クラス委員の掛け声で扉が開き、最初の客が足を踏み入れる。拍手と笑い声が起こり、ざわざわと活気が広がる。俺たちの文化祭が、本格的に始まった。
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午前のうちは順調だった。俺は会計係を任され、釣銭を素早く渡し、伝票の計算も抜けなくこなす。暗記力スキルのおかげで値段もすぐに頭に浮かぶし、ミスは一度もなかった。クラスメイトが「助かるわー」と言って笑顔を向けてくれるたび、心の中で小さくガッツポーズをした。
だが昼が近づくと、状況は一変した。
「佐久間! ホールが全然足りない!」
扉の外には長蛇の列。通路は客で埋まり、席を探す人、立ち止まる親子、運ばれない料理を待つ視線。
ざわつきが不満に変わり始め、教室の空気が一気に重くなる。案内役も配膳も追いつかず、焦りが募った。
【クエスト発生】
・内容:接客を手伝い、客の流れを改善せよ
・報酬:魅力+1/SP+3
(……やるしかない)
レジを仲間に任せ、俺は前に飛び出した。
「二名様、こちらの席へどうぞ!」
「三名様は奥のテーブルです、椅子を追加しますね!」
声を張り、身振りで客を誘導する。会話術スキルが背中を押してくれる。短く、わかりやすく。客の足取りが少し軽くなるのが分かった。しかしまだ混乱は収まらない。
子供を連れた母親が困ったように立ち尽くしている。俺は駆け寄り「奥の席ならベビーカーのまま入れます」と案内した。
サラリーマン風の父親には「しばらく混みますので、先にメニューをどうぞ」と伝える。
カップルの高校生には笑顔を添えて「お待たせしました」と声をかける。
【スキルショップ(既存)】
・SP10 → 笑顔強化Lv1(自然で疲れにくい笑顔を保てる/魅力+1扱い)
・SP5 → 魅力+1(ステータス直接上昇)
(今必要なのは……これだ)
迷わず購入。
【スキル購入:笑顔強化Lv1(SP-10)】
【スキル購入:魅力+1(SP-5)】
頬が自然に持ち上がり、ぎこちなさのない笑みが形になる。胸は高鳴っているのに、不思議と落ち着いていた。
「お待たせしました! 奥の席へどうぞ!」
「ありがとうございます!」
返ってくる笑顔が増え、教室全体が柔らかい空気に包まれていく。小さな子供が真似をして「いらっしゃいませ」と言い、客席から笑いがこぼれた。列の苛立ちが消え、クラスメイトの表情にも余裕が戻っていく。
【クエスト達成/魅力+1/SP+3】
(……よし、やり切った)
―
閉店後、片づけを終えると拍手が起こった。
「佐久間、マジで助かった!」
「今日のMVPは間違いなくお前だ!」
背中を叩かれるたび、くすぐったいような誇らしさが胸に広がった。普段なら俺を無視していたやつが「また頼むな」と笑う。その一言が心に刺さった。
その時、教室の入口から声が聞こえた。
「……佐久間くん」
振り返ると、水城遥が立っていた。黒髪がさらりと揺れ、両手には紙袋を抱えている。クラス中が一斉にざわめいた。
「今日の接客、本当にすごかったよ」
「え、あ……ありがとう」
「弟も真似してたんだよ『いらっしゃいませ!』って」
「悠真が……?来てたのか」
思わず笑みがこぼれる。スキルの効果かもしれない。けど、素直に嬉しかった。
「これ、差し入れ。うちのクラスで作った焼き菓子」
紙袋を受け取ると、甘い香りがふわっと広がる。
「ありがとう」
「ふふ……やっぱり、頑張ってる姿がかっこいいね」
遥の言葉に胸が高鳴り、息を呑んだ。
―
【現在のステータス(文化祭一日目・夜)】
・名前:佐久間 陽斗
・年齢:16
・身長:168.1cm(+8cm)
・体重:62.0kg
・体脂肪率:15.0%
・筋力:18.7(+1)
・耐久:18.5
・知力:13.7(+1)
・魅力:20.2(+0.5/+1/+1)
・資産:¥168,080(+2000/日)
・SP:3.0
・スキル:早食いLv1/資産ブースト(+2000/日)/暗記力+10%/身体強化Lv1/恐怖心克服Lv1/瞬発力アップ(小)/スタミナ持久力+1/会話術Lv1/笑顔強化Lv1
・特別イベント:文化祭本番(進行中)
・特別イベント:水城遥との出会い(進行中)
(数字は伸びた。でも今日は、“みんなの役に立てた”のが一番の成果だ)
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