クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

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第34話 冬を駆け抜けろ、マラソン大会

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一月二十日。冬の朝はいつもより冷え込みが厳しく、白い吐息が空に溶けていく。校庭にはジャージ姿の生徒たちが集まり、緊張と寒さが入り混じったざわめきが広がっていた。今日は年明け最初の大行事――マラソン大会の日だ。

スタートラインに立ち、俺は深く息を吐いた。足元の地面は硬く凍っていて、踏みしめるたびにざり、と音を立てる。
前の俺なら、この瞬間から逃げ出したくて仕方がなかっただろう。でも、今は違う。

【クエスト発生】
・内容:マラソン大会を完走せよ
・報酬:筋力+1/耐久+2/SP+5

【サブクエスト】
・内容:学年30位以内に入れ
・報酬:魅力+1

(クエスト来たな……やっぱり、今日が勝負の日か)

胸の奥で小さな炎が燃え上がる。逃げていた頃の自分に、もう戻るわけにはいかなかった。



ピストルの乾いた音が冬空に響いた瞬間、一斉に生徒たちが走り出す。靴底が地面を叩く音が波のように押し寄せ、体が自然と前へ引っ張られる。

「うおお、いくぞー!」
「うわ、寒っ……マジで足動かねえ!」

序盤から全力で飛ばす奴もいれば、開始早々に息が上がっている奴もいる。俺は一定のペースを保つことに集中した。
無理に前を追う必要はない。ここからの十数キロは、体力をどれだけ温存できるかにかかっている。

(焦るな……今までも地道にやってきたじゃないか。今日だって同じだ)

冷たい空気を肺に吸い込むたびに、体の奥から熱が湧き上がってくる。



コースは校外へ。道路沿いには教師が立ち、通り過ぎる生徒に声をかけていた。
「ペースいいぞ、佐久間!」
思わず顔を上げる。体育教師の声援が、氷のような空気を突き抜けて胸に届いた。

残り半分を切った頃、汗が額を伝い始める。体は重い。足も思うように動かなくなってきた。それでも――。

「っ……まだ、行ける!」

前を走る背中を一人、また一人と抜いていく。驚いた表情を浮かべるクラスメイトの視線。それが不思議と力に変わった。

「佐久間!? お前……やっぱ速いな……!」

声をかけられても、返事をする余裕はなかった。ただ、黙って前を見据える。



やがて、ゴール地点の校庭が視界に入る。観客席から歓声が上がり、胸が熱くなる。息は荒く、足は限界を訴えている。それでも――。

「佐久間、いけー!」
「抜け、抜け!」

最後の直線で背中を並べた生徒と、全力で競り合う。喉が焼けるように熱い。心臓が破裂しそうだ。

(あと少し……絶対に負けない!)

足に残った力をすべて絞り出し、ゴールラインを駆け抜けた。



「22位、佐久間!」

教師の声が耳に届いた瞬間、膝が崩れそうになった。両手を膝について荒く息を吐く。
肺が燃えるように熱い。それでも――数字を聞いた途端、笑みがこぼれそうになった。

(……22位。やった……! 30位以内、達成だ!)

【クエスト達成/筋力+1/耐久+2/SP+5】
【サブクエスト達成/魅力+1】

視界にウィンドウが浮かび、疲労とともに達成感が全身を包み込む。



控室に戻ると、同級生たちが口々に声をかけてきた。
「おい佐久間、すげーじゃん! どっかで特訓でもしてたのか?」
「前までは体育のとき、ビリ争いしてたのにな……」
冗談めかした言葉に、俺は肩をすくめて笑った。
「ははは……まぁ、ちょっと努力しただけだよ」

本当のこと――ステータスやスキルの存在なんて、言えるわけがない。それでも、今の俺の姿を見て驚いているみんなの表情。それが何よりも嬉しかった。



翌日、教室に入ると女子たちのひそひそ声が耳に届いた。
「昨日のマラソン、佐久間くん22位だったんだって」
「すごくない? 前は全然目立たなかったのに、文化祭も体育祭も球技大会も、マラソン大会まで活躍して」
ちらりとこちらを見て笑い合う。胸の奥がむず痒くなった。

(……こうして少しずつでも、俺は変わっていけるんだ)



【現在のステータス(一月二十日・マラソン大会後)】
・名前:佐久間 陽斗
・年齢:16
・身長:168.1cm
・体重:62.0kg
・体脂肪率:15.0%
・筋力:22.9
・耐久:23.7
・知力:20.2
・魅力:29.7
・資産(現金):¥247,000
・投資中:¥60,000(評価額:¥65,500/利益:+¥5,500)
・総資産:¥312,500
・SP:19.0
・スキル:13(展開可能)
・称号:注目の存在/ヒーロー/聖夜を共に
・特別イベント:水城遥との関係(進行中/好感度:76)/一ノ瀬凛との関係(進行中/好感度:48)



疲労で体は限界を訴えていたが、心は妙に澄み渡っていた。
(もっと上を目指せる……来年は20位以内だ)

そう呟き、俺は静かに拳を握った。
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