クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

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第83話 スキル30突破で新称号【若き経営者】を獲得した

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カフェを出たのは、22時を少し回った頃だった。
扉を閉めると、街の喧騒が一気に遠のく。
夜風が熱を帯びた頬を撫で、ほんのりと夏の匂いを運んできた。

足元に落ちる街灯の光が、まるで道標みたいに揺れている。
「……いい夜だな」

隣で佐藤が伸びをした。
街灯の下、笑い声と自販機の音が交じり合う。
そんな何気ない音が、今夜は妙に心に沁みた。

「なぁ、佐久間」
「ん?」

「……俺さ、ほんとにお前ならやれる気がする」
「え?」
「いや、まだ何も形になってないけどさ」
佐藤は頭をかきながら、少しだけ笑った。

「お前が本気のときって、空気が変わるんだよな。
さっきのカフェでもそうだった。
……お前の話聞いてると、なんか、世界がちょっとマシになる気がした」

その言葉に、胸が熱くなる。

「佐藤、さ……俺、マジでやるよ。
“Re:Try”を現実にする」

「……だろうな」
佐藤はポケットに手を突っ込み、夜空を見上げた。
「だったら俺は――お前の歯車になる」

「歯車?」

「ああ。お前が動くなら、俺が噛み合って回る。
それでいい。お前がエンジンなら、俺は車輪になる」

「……はは。なんかカッコいいじゃん、それ」
「バカ、言ってて恥ずかしいわ」

それでも、街灯に照らされた佐藤の横顔は、どこか誇らしげに見えた。

「……ありがとう」

「礼なんかいらねぇよ」
佐藤はポケットから手を抜き、ゆるく笑った。
「俺、頭は良くねぇけどさ。現場は任せろ。
人の顔見るのは得意だし、SNS回すのも苦じゃねぇ。
数字は苦手でも――人の“温度”なら、たぶんわかるから」

「……十分だよ、それで。俺にはできないことだ」

佐藤が笑った。
「おう、そろそろ解散するか。また連絡しろよ」

そう言って、夜の街に消えていった。
背中が、街灯の影にゆっくりと溶けていく。

俺は、しばらくその場に立ち尽くしていた。
街のざわめきが遠のき、代わりに――
夜風の音と、鼓動だけが静かに響いていた。



帰宅すると、部屋は静まり返っていた。
カーテンの隙間から月の光が差し込み、机の上のノートを照らす。
ページには、昼間書いた“Re:Try構想”の文字。

「努力を、見える形に」

その言葉を指でなぞる。
(……あの時は“夢”だった。だけど、もう夢で終わらせない)

今必要なのは、“心”じゃない。
“構造”だ。
この世界を動かす“仕組み”を理解して、使いこなす力。

深く息を吸い、意識を集中させる。

「……スキルウインドウ、開け」

ピコン。

青白い光が部屋に広がる。
空気が震え、電子音が静寂を切り裂いた。



【SP:47】
【スキルショップを開きますか?】



「……開く」

光が弾けた瞬間、無数のスキルウインドウが宙に浮かぶ。
それぞれが淡い鼓動を放ちながら、微かに揺れていた。

筋力でも耐久でもない。
今、俺が求めているのは――“導く力”。

数値ではなく、人を動かす知。
殴る力ではなく、動かす力。
そのために必要なスキルを、俺は静かに選んだ。



【経営演算Lv1】
〈消費SP:8〉
企業の構造を見抜き、最適な判断を導く。
経営判断力+10%上昇/リスク分析精度+10%上昇。

タップ。ピコン。

頭の奥で、静電気が弾ける。
数字が一斉に走り、線が交差し、複雑な流れが“俯瞰図”になる。
資金の動脈。人材の配置網。信用と損益の循環――。
(……これが、“上から見る視点”か)

見上げていた世界が、見渡せる世界へ反転した。



【カリスマ性Lv1】
〈消費SP:10〉
人を惹きつける核となる気配。
発言力+15%上昇/交渉成功率+10%上昇/仲間士気+10%上昇。

ピコン。

胸の奥で、鼓動がひときわ強く跳ねた。
脳裏に浮かぶのは、あの頃の自分。
結果が出なくても、笑われても、
それでも手を止めずに続けていた日々。
あれは、誰にでもできることじゃなかった。

(……あの時の俺に言ってやりたい)
“続けることは、才能だ。
今日を積み重ねるその力が、誰かの勇気になる。”

胸の奥で、あたたかい灯がともる。
小さな“核”が、確かに芽吹いた気がした。

(この力は、上に立つためじゃない。
迷ってる誰かを導くために使う――それが、俺の“カリスマ性”だ)



【計画立案力Lv1】
〈消費SP:5〉
複雑な課題を段階に分解し、道筋を敷く。
戦略構築・目標達成精度+10%上昇。

ピコン。

指先に淡い光が集まり、ノートが勝手に開く。
バラバラだったメモが並び替えられ、線でつながっていく。
“夢”が、“現実に近づく道筋”へと変わっていく。

(……理想を語るだけじゃ、もう足りないんだ)

情熱だけじゃ届かない場所がある。
だからこそ、“考える力”で夢を支える。
それが、今の俺に必要な力だ。



【発想拡張Lv1】
〈消費SP:4〉
固定観念を剥がし、新しい結合を生む。
創造力+10%上昇/新規発想率+10%上昇。

ピコン。

後頭部の奥が、じんわり熱くなった。
まぶたの裏に、浮かんでくる。
TRY-LOGの画面。指で押したときの反応。
「今日もがんばったね」と笑う小さなアシストキャラ。
淡い色の背景に、あたたかい言葉が並んでいた。

(……見える。まだ形はないけど、もう“動き始めてる”)

胸の奥が、ゆっくりと熱を持った。
夢だった景色が、少しずつ“現実”に近づいていく。
それが、たまらなく嬉しかった。



【チーム統率Lv1】
〈消費SP:3〉
仲間の士気と連携精度を高める。
チームメンバーのスキル効果+5%上昇/協働時の成功率+10%上昇。

ピコン。

光がふたつに割れて漂い、やがて人影を結ぶ。
佐藤の笑顔――「お前がエンジンなら、俺は車輪になる」。
相川の視線――「世界を腹一杯にさせろ」。

(……信じてくれたやつらのためにも、必ず形にする)

光は静かに収束し、心の奥で“Re:Try”という名の歯車が噛み合った。



スキル取得が完了した瞬間、
ウインドウの端に小さく新しい通知が点滅した。



【システム通知】
スキル登録数が30を突破しました。
条件達成により、新称号が解放されます。

【新称号:「若き経営者」獲得】
効果:全ステータス+1/仲間の成長速度+5%/チーム士気+10%上昇。



一瞬、全身に電流が走った。
視界のノイズが一気に消え、
世界の“雑音”が、驚くほどクリアに変わる。
聞こえるのは、外を渡る風と――自分の鼓動だけ。

鏡に映る自分を見た。
髪が少し乱れている。
だが――目の奥に、確かな光が宿っていた。

「……これでようやく、“経営者のスタートライン”に立てた気がするな」

ペンを取り、ノートの端に書き加える。

『Re:Try 第一段階――準備開始』

窓を開けると、夜風が入ってきた。
月が照らす光が机の上を滑り、
ノートのインクが銀色に反射する。

まるで、未来へのサインみたいだった。



【ステータス:8月上旬】
(※【 】内は今回上昇分)
◆基本情報
名前:佐久間 陽斗(17)
身長:180.8cm 体重:63.0kg(体脂肪率9.0%)
◆能力値
筋力:34【+1】 耐久:32【+1】 知力:34.2【+1】 魅力:45.2【+1】
SP:15【-32】 スキル:31(展開可能)【+5】
◆資産
総資産:1,543,000円
投資中:60,000円 利益:+100,000円
◆称号
注目の存在/ヒーロー/聖夜を共に/女子人気独占/自己信頼/若き経営者
◆Re:Tryメンバー
COO:佐藤大輝(信頼度75/加入済)【+5】
CTO:相川蓮(交渉進行中)
◆イベント
Project Re:Try(発生中)
水城遥(好感度89/恋愛条件未達)
一ノ瀬凛(好感度89/恋愛条件未達)
星野瑠奈(好感度89/恋愛条件未達)



夜の静寂に、ピコンという音が一度だけ響いた。
システムの反応でも、通知でもない。
――これは、“心が動いた音”だ。

「……さぁ、次は“根拠”を作る番だ」

風が吹き抜け、
ページがひとりでにめくれる。
そこに現れた白紙が、
まるで“次の挑戦を待つキャンバス”のように見えた。
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