クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

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第96話 教室の片隅から始まる、文化祭革命

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10月上旬。
放課後の校舎には、文化祭の準備を始めたクラスの声が響いていた。
どこの教室も机を動かしたり、ダンボールを切ったりと騒がしい。
ガムテープの匂いと笑い声が、秋の夕方の空気に混ざって漂っている。

だが、そんな中でも――この場所だけは静かだった。
校舎の一番奥、情報処理部の部室。
扉を開けた瞬間、カチカチとキーボードを叩く音がいくつも重なる。



「お、来たか。新入部員たち」
相川がイヤホンを外し、くるりと椅子を回した。

「新入部員たちって……白々しいな」
佐藤が苦笑する。

「仮入部の佐久間です。今日からよろしくお願いします」
「同じく佐藤っす。よろしくお願いします!」

俺と佐藤は軽く頭を下げた。
部室の奥には2人の部員がいて、それぞれパソコンの画面に集中している。
キーボードを叩く音が静かに重なり、画面の光が彼らの横顔を照らしていた。

外の文化祭準備の喧騒とは対照的に、この部屋だけは落ち着いていて――
不思議と“ものづくりの空気”が漂っていた。

相川は軽く肩をすくめて、部室の奥を指した。
「一応紹介しとく。こっちは吉田。文化祭当日の展示サポートを頼んでる。ポスター作成とか会場レイアウト担当だ」
「よろしく。グラフィック系はちょっとかじってるだけだけど、がんばるよ」
吉田が穏やかに笑って、マウスから手を離した。

「それと、村上。機材のセッティングとか、展示中のトラブル対応を任せてる。機械系に強いからな」
「当日は機材トラブル起きないように祈っとけよ」
村上がぼそっと言って笑い、再びノートPCに視線を戻した。

相川が腕を組みながら言う。
「吉田は三年、村上はお前らと同じ二年だ。
試作の開発自体は俺が進めてるけど、文化祭当日はチームでやる。展示を“形にする”ってのも立派な制作だ」

その言葉に、部室の空気がわずかに締まった。

(開発、展示、発表……
やることは山ほどある)

「今日は文化祭の出展計画をまとめる。座ってくれ」
相川がホワイトボードの前に立ち、ペンをキャップから抜いた。
白い板の上にはすでに大きく、こう書かれていた。

《TRY-LOG 展示計画》

「ここからが本番だな」
相川の声に、自然と背筋が伸びた。



「まず文化祭の出展は、情報処理部の“部活展示”枠を使う。
体育館横の特設ブースを一つ確保した。電源もWi-Fiも通る」
そう言いながら、相川が部室の奥のプリントを取り出す。
そこには文化祭の会場レイアウト図が印刷されていた。

「展示のテーマは、“TRY-LOGで努力を見える化する”」
相川がペンで円を描きながら、ホワイトボードに太い線を引いた。
「来場者に実際に“努力体験”をしてもらう。たとえばスクワット10回とか、腕立て伏せでもいい。
それをアプリに入力すると、すぐに“グラフ”と“応援メッセージ”が画面に出る」

「つまり、“自分の頑張りが目に見える”ってことか」
佐藤が腕を組んでうなずく。

「そう。で、その結果は“TRYカード”っていう小さなカードにして渡す予定だ」
相川がもう一枚のプリントを示した。
そこには白地のカードデザインが印刷されていて、下の方にQRコードがある。

「スマホで読み取ると、自分の結果ページが開く。
“今日の努力”がちゃんと残るってわけだ」

佐藤が感心したように笑う。
「へぇ、体験して終わりじゃなくて、ちゃんと“持ち帰れる”んだな」

「……いいですね、本格的だ」
俺は思わずつぶやく。
これまで“夢”だったアプリが、いま現実の展示計画として進んでいる。
その感覚が、じわりと胸に広がっていった。

「……一つ提案があります」
俺はホワイトボードを見ながら言った。
「努力の数値やグラフだけじゃなくて、“キャラクター”を育てるようにできないですか?
たとえば、運動を続けると体力系のキャラに、勉強なら知識系のキャラに進化するとか。
努力の方向で性格や見た目が少しずつ変わるような……そんな仕組みです」

相川が目を細めて、少し考える。
「……なるほど。“努力の可視化”を“キャラ成長”で見せるわけか」
佐藤が笑った。
「それ、めっちゃ文化祭ウケするやつじゃん。見た目でも分かるし!」

相川はホワイトボードに“TRYキャラ(仮)”と書き足した。
「方向性としては悪くない。時間との兼ね合いもあるが、シンプルな進化パターンなら実装できるかもしれない」



「次に、展示イメージだ」
相川がホワイトボードの前に立つ。
「――大体こんな感じだな」
ペンを走らせるたび、ブースのレイアウトが少しずつ形になっていった。


《展示ブース構成(案)》
•左側:TRY-LOGのロゴパネル
 → アプリのロゴとキャッチコピー「努力を、形に。」を表示。
•中央:体験コーナー(PC・タブレット)
 → 来場者がアプリを直接操作。
  「今日の努力」を入力すると、グラフやキャラクターが動いて反応する。
•右側:大型モニター
 → 入力結果をリアルタイムで映す。
  “努力が見える”瞬間をみんなに見せる仕掛け。
•奥の壁:開発ポスター&写真展示
 → TRY-LOGの制作過程や試作写真、メモなどを展示。


「この配置なら、通りがかった人にも“何のアプリか”が伝わる」
相川がマーカーを置きながら言う。

佐藤がうなずいた。
「確かに。体験できるのが真ん中ってのがいいっすね。自然に目が行く」

「そうだな。見せたいのは“努力の結果”じゃなく、“努力の形”だ」
その一言に、部屋の空気がわずかに引き締まる。

俺はホワイトボードを見つめながら、小さく息をのんだ。
(……まさにそれだ。いまの俺たち自身が、その“努力の形”を作ってる)



相川がホワイトボードの左端に線を引いた。
「じゃあ、当日の担当をざっと決めておくか」

ペン先が走る。白板には次々と名前と役割が並んでいく。


《文化祭当日・担当わり》
•展示リーダー(まとめ役):佐久間
 → 全体の進行、来場者への説明、発表タイムのプレゼン担当。
•開発・操作チェック:相川
 → アプリの動作確認、パソコンやタブレットの準備、トラブル対応。
•広報・呼び込み:佐藤
 → 来場者の案内、パンフレット配布、SNSでの宣伝や写真投稿。
•デザイン・装飾:吉田
 → 展示ブースの飾りつけ、ポスター・紹介ボード作成。
•機材サポート:村上
 → 電源や機器のセッティング、ケーブル管理、動作チェック補助。


「こんな感じで行く。細かい部分はリハーサルしながら調整だな」
相川がボードを見ながら言う。

佐藤が腕を組んで笑った。
「つまり当日一番動くのは佐久間ってことか」
「社長なんだから当然だろ」
相川の冷静なツッコミに、部室に小さな笑いが広がった。

俺はホワイトボードを見つめながら、深くうなずいた。
(これはもう“部活発表”じゃない。俺たちの“本気の作品発表”だ)



「で、問題が一つある」
相川がペンを止めた。
「印刷代と備品費。その他もろもろ、予算が足りない」

「文化祭の部費、いくらです?」
「5,000円。……全然足りない」
部室に乾いた笑いが広がる。

「ポスターと説明パネル、あとQRカード印刷。
見積もり出したら――20,000円はかかる」

「もちろん、会社の運営費から出しましょう」
思わず口をついて出た。

相川が少し驚いたように目を細めた。
「……助かる。でも、できるだけ節約する。
必要なとこだけ、使わせてもらう」

「じゃ、俺らのポスターも自作でいくか」
佐藤がノートを開きながら言う。
「背景は白ベース、タイトルは“TRY-LOG~努力の見える世界へ~”。
サブタイトルは……『その努力、数字にしてみない?』でどうだ」

「いいじゃん、それ」
俺は笑いながら答えた。
その言葉、妙に響いた。
まるで、俺たち自身へのメッセージみたいだった。



全員の確認が終わると、窓の外はもう赤く染まっていた。
グラウンドからは野球部の掛け声が聞こえ、夕陽が机をオレンジ色に照らす。
部室の空気が少しずつ静まり、パソコンのファンの音だけが残る。

「よし、展示計画はこれでいこう」
相川がホワイトボードに大きく線を引いた。
「次は、実際に動くデモを仕上げる。ここからは開発と並行だ」

「了解」
「任せろ」
自然と声が重なった。

相川が最後にホワイトボードの一番上に書き足す。

TRY-LOG ~努力の見える世界へ~

ペンを置いたあと、相川がふっと笑って俺のほうを見た。
「……じゃあ、社長。最後に一言、頼む」

一瞬、言葉が詰まる。
でも、気づけば自然と口が動いていた。

「目に見えない努力を、誰かの“力”に変える。――それが、俺たちのやることだ。
ここから、俺たちの世界を変えていこう」

静まり返った部室の中で、その言葉だけが響いた。
一拍置いて、相川がふっと笑う。
「……いいな。社長の言葉、締まるじゃねぇか」

佐藤が肩をすくめて笑った。
「よし、じゃあやってやるか。なんか文化祭、本気で燃えてきたな」

吉田がモニターから目を離して言う。
「巻き込まれた形だけど、悪くないよ。こういうの、嫌いじゃない」

村上も苦笑いしながら頷く。
「機材のチェックは任せろ。絶対トラブらせねぇから」

自然と笑いがこぼれた。
その輪の中で、俺は小さく息を吸う。

(仲間って、こういうことなんだろうな)

夕陽の光がホワイトボードの文字を照らす。
TRY-LOG ~努力の見える世界へ~
その文字が、まるで新しいスタートラインのように輝いていた。



【Project Re:Try:動く形にする/第二段階レポート】

※【 】内は今回上昇分
◆日時:10月2日
◆目標:試作版稼働
◆進行状況:Phase.02 進行中

◆目的:
「“努力記録”を実際に“動く形”として再現する」
“見る”努力から、“触れる”努力へ。

◆メンバー構成:
・佐久間陽斗(CEO/代表・企画)
 行動指数(筋力):38.5/継続性(耐久力):34.0/構想力(知力):34.2/共感力(魅力):46.2
 SP:25/スキル保持数:31
・佐藤大輝(COO/営業統括/信頼度:83)
・相川蓮(CTO/開発・解析/信頼度:58)

◆資産状況:
総資産:1,380,000円
内訳:試作版開発費 800,000円(使用中)/残資金 580,000円

◆進行状況:
・TRY-LOG 試作版 Ver.0.1 開発中
・文化祭展示計画確定(展示テーマ:「その努力、数字にしてみない?」)

◆次段階予定(Phase.02)
TRY-LOG 試作版完成
主な機能構成:
・努力を記録する
・グラフで“見える化”する
・休む日を記録できる
・AIが成長を言葉で返す
・努力タイプに応じた“TRYキャラ”の簡易進化

――これは報告書でもあり、俺たちの“航海日誌”でもある。
(記録者:佐久間陽斗)
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