クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

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第111話 雪の夜、仲間と誓った“次の挑戦”

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年の瀬の空気は、どこか柔らかかった。
朝、カーテンを開けると、白い雲のすき間からやさしい陽が差し込む。
外は相変わらず冷たいのに、部屋のストーブが静かに息をしていた。
――12月31日。
TRY-LOGのイベントとスポンサー契約から、数日が経つ。

午前中は家族と買い出し。
母が「おせちの黒豆が足りない」と言い、父が「黒豆は別にいらないだろう」と反論する。
テレビからは特番の笑い声が流れ、妹はこたつでミカンを食べながらスマホをいじっている。
いつもと変わらない年末。
けれど、どこかで世界が少しだけ広がった気がした。
俺たちの“努力”が、ほんのわずかでも社会とつながった――
その実感が、まだ胸の奥でぽうっと灯っている。

昼すぎ、母が言った。
「陽斗、初詣は友だちと行くんでしょ? 夕飯食べてから出なさいよ」
「うん。Re:Tryのメンバーで行く」

コタツの向こうで、妹がみかんを剥きながら顔を上げた。
「高校生起業家かぁ。すごいね、お兄ちゃん」
「お前それ、おだててお年玉もらおうとしてるだろ」
「バレた?」
「バレバレだよ」

妹はケラケラ笑って、みかんの皮を丸めて置いた。
――ほんと、ちゃっかりしてるやつだ。



夜。
紅白が始まり、父がビールを開ける。
俺はこたつでそばをすすりながら、何気なくスマホを開いた。

TRY-LOGの話題を検索すると、イベントの記事がいくつも出てきた。
「高校生が作った“努力アプリ”」「地域企業も注目」――そんな見出しが並んでいる。
コメント欄には、
「うちの会社でも使えたらいいのに」とか「息子が興味持ってます!」なんて言葉もあった。

数字じゃなく、“誰かの声”として届いている。
その重みが、じんわりと胸に沁みた。

21時すぎ。
グループチャットの通知音が鳴った。

【佐藤】
集合は駅前23時な! 初詣行って、屋台でなんか温かいもん食おうぜ!

(年の瀬でもテンション高いな……)
思わず笑ってしまう。

【相川】
了解。

【篠宮】
寒い。……だが行く。

(この二人は、ほんとブレない)
画面を見ながら、俺も《行く》とだけ送った。



23時前。
外に出ると、息が真っ白に広がった。
街全体が、ゆっくりとした熱を帯びているようだった。

駅前のロータリーには、年越しを待つ人たちがちらほら。
ネオンの光が風に揺れ、冬の空気の中でぼんやり滲んでいる。

「おーい、佐久間ー!」
人混みの向こうから、半袖の佐藤が手を振っていた。
その隣には相川、そしてマフラーに顔をうずめた篠宮。

「佐藤、お前、大晦日に半袖はないだろ」
「そりゃ冬だからな!」
「……いや、会話になってない」

相川が呆れたように言う。
「初詣で風邪ひいたら、笑えんぞ」
すると篠宮が冷静に返した。
「バカは風邪ひかないから大丈夫ですよ、相川先輩」

一瞬の沈黙のあと、三人の笑い声が夜空に溶けていく。

いつもの三人。
だけど、今年の俺たちは少し違う。
“挑戦する側”として一年を駆け抜けた――そんな仲間たちだ。



神社へ続く参道には、屋台の明かりが連なっていた。
焼き鳥、たこ焼き、甘酒――湯気と香りが混ざって、寒いのにそこだけあったかい。

「うわ、全部うまそう!」
佐藤が目を輝かせる。
「先に参拝してからな」相川が制す。
「……一年の計は元旦にあり、だからな」篠宮が小さく付け足した。

「じゃ、行くか」
鳥居をくぐると、澄んだ空気が頬を撫でた。

列に並んでいると、相川がぽつり。
「夏にRe:Try立ち上げて、もう年越しか。早かったな」
「マジそれ。あっという間っすね」佐藤。

俺はちょっと空を見上げる。
「でも、あの頃と今は違う。TRY-LOG、ちゃんと届き始めてる」

篠宮がメガネを指で押し上げた。
「僕は合流して日が浅いけど、手応えはある。数字の先に“人”がいるのを学んだ。
年が明けたら、資金の段取りを進めよう」

「お前、年越しまで分析かよ」
佐藤のツッコミに、三人とも笑った。



やがて、俺たちの番が来た。
賽銭を入れ、手を合わせる。
目を閉じて、静かに願う。

――TRY-LOGが、もっと多くの人の力になりますように。
そして、この仲間たちと、来年も笑っていられますように。

カーン、と澄んだ鐘の音が夜空に響いた。
0時を越えた瞬間、空気が少し柔らかく変わる。

「……あけおめ!」
佐藤が声を上げる。
「おめでとう」
「……今年も、よろしく頼む」

みんなで笑いながら頭を下げ合う。
遠くで、小さな花火がひとつ、夜空に咲いた。



参道を下りながら、屋台で温かい甘酒を買った。
手の中で湯気がゆらゆらと揺れる。

「寒いけど、こういうのが“年越し”って感じだな」
「……たぶん、こういう時間がいちばん大事なんだろうな」
篠宮が、珍しく穏やかな声で言った。

その横で、相川がスマホを見ながらつぶやく。
「……黒田さんから“あけおめ”って来てるぞ」
「マジっすか?軽いっすね」
「お前の数十年後、黒田さんみたいになってるかもな」
「それ、喜んでいいんすか?」

笑い声が、屋台の明かりの下で広がる。
俺は甘酒をすすった。
ほんのりとした甘さが、少しだけ未来の味がした。



解散して家に着いたのは、午前2時を過ぎていた。
部屋は静まり返っていて、ストーブの灯が小さく揺れている。
窓の外では、雪がちらちらと舞い始めていた。

俺はコートを脱ぎ、机に座ってスマホを手に取った。

まずは――遥。
《あけましておめでとう。今年もよろしく。
受験、いよいよだな。頑張って》

すぐに返信が届く。
《おめでとう!うん。ありがとう!
陽斗くんもTRY-LOGがんばってね。応援してる。
寒いから風邪ひかないでね!》

思わず口元が緩んだ。
(ほんと、前向きだな)

次に――一ノ瀬。
《あけましておめでとう。去年はいろいろありがとう。今年もよろしく》

数分後、既読がつく。
《こちらこそ。来年の“答え合わせ”、楽しみにしてる》

短いけど、一ノ瀬らしい。
(来年の“答え合わせ”か……また勝負、だな)

そして最後に――瑠奈。
《あけましておめでとう。撮影忙しいと思うけど、体に気をつけて》

しばらくして、ポン、と通知が鳴る。
《ありがと!今年も全力でがんばるー!先輩もねっ!》

画面の光が、静かな部屋を照らした。
三人それぞれの言葉が、胸の中でふっと灯る。

俺はスマホを伏せ、ゆっくりと息を吐いた。
(……今年も、前に進もう)

外では、雪が音もなく降り続いていた。
TRY-LOG、仲間、そして彼女たち。
すべての“つながり”が、この冬の夜に静かに重なっている気がした。

俺は小さく息を吐いて、天井を見上げる。
「……よし」

年が明けた。
次は、“挑戦”の番だ。



――数日後。
リビングのテーブルに資料とノートパソコンが並び、
Re:Tryメンバー全員が顔をそろえる。

――“クラウドファンディング作戦会議”が始まる。



【Project Re:Try:“資金集め”/第四段階レポート】

※【 】内は今回上昇分
◆日時:1月4日
◆目標:300万円の資金調達
◆進行状況:Phase.04 進行中

◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。

◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
 行動指数(筋力):45.5
 継続性(耐久力):39.0
 構想力(知力) :43.2
 共感力(魅力) :49.2
 SP:29/スキル保持数:32

・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:91
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:74
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:60

◆資産状況
総資産:1,185,000円(+500,000円/協賛金)

◆進行状況
・三社協定締結 → 協賛金50万円獲得/設備協力1社
・資金計画の試算完了(目標金額:300万円)
・クラウドファンディング構想、検討段階

◆次段階予定(Phase.04:資金調達・組織拡張)
・TRY-LOGアプリ版制作準備
・資金調達(必要額: 約200万)

――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
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