クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

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第110話 スポンサー契約成立。TRY-LOG、社会へログイン

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商工会のイベントが終わって、三日後。
TRY-LOGのデモブースが撤去されたあとも、
会場で体験した子どもや親たちの声は止まらなかった。

「うちの子、あれから毎日腕立て伏せしてるんです」
「会社の健康プログラムに入れたら楽しそうだね」
「高校生がこんなアプリ作るなんて、すごい」

そんな声がSNSや口コミで少しずつ広がっていった。
そして――その波は、想像以上に大きかった。



「……三件、ですか?」
スマホを握る手が震えた。

夕方の教室。放課後のざわめきが、いつもより遠くに感じる。
電話の向こうでは、商工会の黒田さんの声が弾んでいた。

『そうだ。スポンサーの打診が三件来てる。企業からだよ。
TRY-LOGを見て、ぜひ話がしたいって』

「三件も……?」
心臓の鼓動が一気に早くなる。
まるで、社会のほうから手を伸ばしてきたみたいに感じた。



翌日の朝。相川の家。
Re:Tryのメンバー全員が集まり、リビングのテーブルには資料とノートパソコンが並んでいた。
ストーブの音が、一定のリズムで鳴っている。

「……スポンサーって、つまり、金がもらえるってことか?」
佐藤が興奮気味に言った。

「いや、“もらう”じゃない。“信頼を預かる”だ」
篠宮が冷静に答える。
「支援の代わりに、企業のロゴを載せたり、イベントで紹介したり。Win-Winの関係だ。」

「すごいことだよ……TRY-LOGを“社会の人”が認めてくれたってことだからな」
俺は静かに言った。
“努力を社会に届ける”――あのとき掲げた言葉が、少しだけ現実に近づいた気がした。

相川が資料を開く。
「三社って、どこからだ?」

黒田さんのメールには、三つの企業名が記されていた。


• 未来総建株式会社【地域建設会社】
 →「TRY-LOGの理念に共感。社員教育や健康イベントに活用したい」
 → 協賛金:30万円

• つばさケアグループ【調剤・介護事業】
 →「地域高齢者の“歩数記録+服薬管理”連携に興味あり」
 → 協賛金:20万円+モニター協力

• Body Fit【スポーツジム】
 →「TRY-LOGとの連動システム開発を検討。施設提供も可」
 → 技術協力型スポンサー(資金なし)


「……バラけてるな」
相川が唸る。
「建設、医療、フィットネス。方向は違うけど、どれも“継続”がテーマだな」

「面白いな」
篠宮がペンを走らせる。
「つまり、TRY-LOGが“努力を続ける仕組み”として見られてる。数字以上の価値を感じてるってことだ」

佐藤が目を丸くする。
「てかマジですげぇよ。高校生のアプリにスポンサーって。もう社会人じゃん」

「社会人ってほど甘くないさ」
俺は小さく笑った。
「でも――本当に、“社会”が動き始めた気がする。
このあと、商工会館で黒田さんと打ち合わせだ。
そして、三社の代表の方たちも、黒田さんの紹介で来てくれるらしい。
地元の若手プロジェクトとして、直接話を聞きたいって」

篠宮がノートにまとめながら言う。
「大事な商談だ。ミスは許されないな」

相川もうなずく。
「好意的だとは思うが、発言は慎重に。な、佐藤?」

佐藤が苦笑いする。
「なんで俺なんすか!」

「じゃ、役割。俺=全体説明、篠宮=条件と費用、相川先輩=技術デモ、佐藤=導入イメージと現場の声。――抜けはないな?」
俺は立ち上がり、みんなを見る。
「行こう。落ち着いて、やり切るぞ」



13時。商工会館の会議室。
ガラス越しに見える冬の空は、どこか透き通っていた。
黒田さんの前に、俺たちは並んで座る。

黒田さんが笑った。
「お前たち、モテモテだな。三社から同時に話がくるなんて、なかなかないぞ」

「……恋愛じゃなくてよかったです」
佐藤が冗談を言って、場が少し和む。

「未来総建の山田社長、イベントのとき見に来ててな」
黒田さんが続けた。
「“若い人がこんな発想を持ってるなら、日本の未来は明るい”って言ってたよ」

相川が真剣な目で言う。
「TRY-LOGは“努力を楽しむ仕組み”です。
会社でも、子どもでも、お年寄りでも――続けることを支えたい」

「いい言葉だな」
黒田さんが笑った。
「じゃあ今日は、三社の話をまとめよう。
協賛内容の確認と契約の流れを詰める。
まずはこのあと13時半に未来総建さんが来てくれる。しっかりな」

「はい!」



13時半。
未来総建の山田社長が入室してきた。
作業着の上から黒いジャケットを羽織り、手には分厚い資料ファイル。
挨拶もそこそこに、社長は俺たちの資料に目を通した。

「……なるほどな。
“努力を見える化する”か。社員教育にも通じる考え方だな」

低く落ち着いた声。長年現場で鍛えたような手が、静かにテーブルを叩く。
「うちは人手が減って、若手のやる気が課題だ。
TRY-LOGを使えば、日報や安全確認の継続にも応用できそうだな」

相川が資料を指し示しながら答える。
「ありがとうございます。社内研修や健康イベントにも対応できます。
目標の達成率をグラフで見せる機能も試作中です」

山田社長が小さく頷いた。
「いいね。――まずは応援の気持ちだ。
TRY-LOGの理念が気に入った。協賛金は30万円。
会社のロゴをアプリ内に入れてくれれば、それでいい」

俺は慌てて立ち上がり、深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」

一瞬、場が静まる。
心臓の鼓動が、耳の奥で鳴っていた。
黒田さんが微笑む。
「よかったな。これが“社会とつながる”ってやつだ」

その言葉が胸の奥に残った。
――本当に、現実が動き出したんだ。



続いて、つばさケアグループの松本部長。
「高齢者の服薬管理と歩数計をTRY-LOGに連携できないか。
もし技術的に実現できるなら、こちらからも協力金を出したい」

篠宮が即座に答える。
「現状、歩数と時間データを扱えます。
スマホや健康アプリとデータをつなぐ“API”を使えば、
服薬記録とも紐づけることが可能です」

「高校生でAPIとか言うんだねぇ……頼もしいな」
松本部長が感心して笑う。

佐藤が小声で俺に尋ねた。
「なぁ、“API”ってなんだ?」
「アプリとアプリをつなぐ線みたいなもん。
例えば“歩数アプリ”の数字をTRY-LOGに送れるようにする仕組みだ」
「へぇ……なんかすげぇな。電気の線みたいなもんか」
「まぁそんな感じ」
二人で小声で笑った。



最後に、Body Fitの藤木社長が口を開いた。
「TRY-LOGは最初、若者向けの遊びかと思ってた。けど――違ったな」
目の前の資料を軽く叩きながら続ける。
「うちの会員にも、“続けたいけど続かない”って人が山ほどいる。
このアプリは、それを“見える努力”に変える力がある。
試しに、うちのジムで実験的に導入してみよう。設備もスタッフも出す」

「え……本当ですか?」
思わず声が上ずる。

藤木社長は笑って言った。
「本気の努力には、本気で応えたいんだよ。君たちの挑戦、俺も一緒にやってみたい」

心臓の奥がじんわりと熱くなった。
TRY-LOGが“夢のアプリ”じゃなく、“現実のツール”になっていく瞬間だった。



交渉が終わる頃には、夕陽が窓の外を染めていた。
黒田さんが立ち上がり、静かに言った。

「――おめでとう。正式に、三社協賛が決まった」

その瞬間、言葉が出なかった。
TRY-LOGが、ついに“社会に認められた”――その実感が胸の奥を熱くした。

「……すげぇな」
佐藤が呟く。

篠宮は資料をまとめながら、小さく言った。
「これで資金合計は約50万。設備協力も一社。……十分だな」

相川が息を吐いて笑う。
「でも、金が入るってことは“責任”も生まれる。
契約書、報告書、納税――現実は、ここからだ」

俺はその言葉を聞きながら、机の上のTRY-LOGロゴを見つめた。
“努力を見える形に”。

今なら、その下にもう一行、こう書ける気がした。

“努力を、社会に繋ぐ”



帰り道。
駅までの道。
街灯が淡く光り、寒い空気が頬を刺した。
誰も喋らない。けれど、全員の心の中で同じ言葉が響いていた。

(これが、“現実”なんだな)

駅前のロータリーで、相川がスマホを見ながら言う。
「TRY-LOG、商工会の公式アカウントで紹介されてる。再生数、もう5000超えてる」

「マジっすか!」
佐藤が笑う。
「これもう、ローカルスターじゃん!」

篠宮が小さく頷く。
「……世間が見ている。なら、俺たちも“見られる努力”を続けなきゃな」

その瞬間ウインドウが淡く光る。



【クエスト達成】
タイトル:「スポンサー契約成立」
内容:社会との正式な協賛契約を結べ
報酬: SP+10/信頼度(佐藤大輝)+3/信頼度(相川蓮)+5/信頼度(篠宮智也)+5

【スキルLvアップ】
名称:共闘Lv2 → 共闘Lv3(営業/行動力リンク)
効果:佐久間・佐藤の行動指数(筋力)+10(常時)

【新スキル解放】
名称:共闘(開発/継続力リンク)
効果:佐久間・相川の継続性(耐久力)+3(常時)
説明:互いの信頼が動力となり、力が常に共鳴し合う。



冬の風が、駅の階段を抜けていく。
遠くの街灯が、少し滲んで見えた。

「……スポンサーはありがたい。が、まだまだ資金が足りない」
相川の声が静かに響く。

俺はうなずき、篠宮を見る。
「篠宮も仲間になったし、クラファンの話を詰めよう」

篠宮はメガネを直しながら言う。
「そうだな。資金がなければ、この先のステージにはいけない」

佐藤が肩をすくめる。
「もちろん大事な話だけどよ。もう大晦日だぜ?
うちの会社は正月休みもねぇのかよ」

その言葉に、全員が笑った。

俺は笑いながら答える。
「悪い悪い。話は年明けてからにしようか。
みんな、今年はありがとう。来年もよろしくな」

「おう!」
「了解」
「……よろしく」
それぞれの声が冬空に溶けていく。

TRY-LOGは、今――社会を、ほんの少しだけ動かしている。
世間はもう、すっかり年越しムードになっていた。



【Project Re:Try:“資金集め”/第四段階レポート】

※【 】内は今回上昇分
◆日時:12月27日
◆目標:300万円の資金調達
◆進行状況:Phase.04 進行中

◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。

◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
 行動指数(筋力):45.5 【+5】
 継続性(耐久力):39.0 【+3】
 構想力(知力) :43.2
 共感力(魅力) :49.2
 SP:29【+10】/スキル保持数:32

・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:91【+3】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:74【+5】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:60【+5】

◆資産状況
総資産:1,175,000円(+500,000円/協賛金)

◆進行状況
・三社協定締結 → 協賛金50万円獲得/設備協力1社
・資金計画の試算完了(目標金額:300万円)
・クラウドファンディング構想、検討段階

◆次段階予定(Phase.04:資金調達・組織拡張)
・TRY-LOGアプリ版制作準備
・資金調達(必要額: 約180万)

――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
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