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第110話 スポンサー契約成立。TRY-LOG、社会へログイン
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商工会のイベントが終わって、三日後。
TRY-LOGのデモブースが撤去されたあとも、
会場で体験した子どもや親たちの声は止まらなかった。
「うちの子、あれから毎日腕立て伏せしてるんです」
「会社の健康プログラムに入れたら楽しそうだね」
「高校生がこんなアプリ作るなんて、すごい」
そんな声がSNSや口コミで少しずつ広がっていった。
そして――その波は、想像以上に大きかった。
―
「……三件、ですか?」
スマホを握る手が震えた。
夕方の教室。放課後のざわめきが、いつもより遠くに感じる。
電話の向こうでは、商工会の黒田さんの声が弾んでいた。
『そうだ。スポンサーの打診が三件来てる。企業からだよ。
TRY-LOGを見て、ぜひ話がしたいって』
「三件も……?」
心臓の鼓動が一気に早くなる。
まるで、社会のほうから手を伸ばしてきたみたいに感じた。
―
翌日の朝。相川の家。
Re:Tryのメンバー全員が集まり、リビングのテーブルには資料とノートパソコンが並んでいた。
ストーブの音が、一定のリズムで鳴っている。
「……スポンサーって、つまり、金がもらえるってことか?」
佐藤が興奮気味に言った。
「いや、“もらう”じゃない。“信頼を預かる”だ」
篠宮が冷静に答える。
「支援の代わりに、企業のロゴを載せたり、イベントで紹介したり。Win-Winの関係だ。」
「すごいことだよ……TRY-LOGを“社会の人”が認めてくれたってことだからな」
俺は静かに言った。
“努力を社会に届ける”――あのとき掲げた言葉が、少しだけ現実に近づいた気がした。
相川が資料を開く。
「三社って、どこからだ?」
黒田さんのメールには、三つの企業名が記されていた。
―
• 未来総建株式会社【地域建設会社】
→「TRY-LOGの理念に共感。社員教育や健康イベントに活用したい」
→ 協賛金:30万円
• つばさケアグループ【調剤・介護事業】
→「地域高齢者の“歩数記録+服薬管理”連携に興味あり」
→ 協賛金:20万円+モニター協力
• Body Fit【スポーツジム】
→「TRY-LOGとの連動システム開発を検討。施設提供も可」
→ 技術協力型スポンサー(資金なし)
―
「……バラけてるな」
相川が唸る。
「建設、医療、フィットネス。方向は違うけど、どれも“継続”がテーマだな」
「面白いな」
篠宮がペンを走らせる。
「つまり、TRY-LOGが“努力を続ける仕組み”として見られてる。数字以上の価値を感じてるってことだ」
佐藤が目を丸くする。
「てかマジですげぇよ。高校生のアプリにスポンサーって。もう社会人じゃん」
「社会人ってほど甘くないさ」
俺は小さく笑った。
「でも――本当に、“社会”が動き始めた気がする。
このあと、商工会館で黒田さんと打ち合わせだ。
そして、三社の代表の方たちも、黒田さんの紹介で来てくれるらしい。
地元の若手プロジェクトとして、直接話を聞きたいって」
篠宮がノートにまとめながら言う。
「大事な商談だ。ミスは許されないな」
相川もうなずく。
「好意的だとは思うが、発言は慎重に。な、佐藤?」
佐藤が苦笑いする。
「なんで俺なんすか!」
「じゃ、役割。俺=全体説明、篠宮=条件と費用、相川先輩=技術デモ、佐藤=導入イメージと現場の声。――抜けはないな?」
俺は立ち上がり、みんなを見る。
「行こう。落ち着いて、やり切るぞ」
―
13時。商工会館の会議室。
ガラス越しに見える冬の空は、どこか透き通っていた。
黒田さんの前に、俺たちは並んで座る。
黒田さんが笑った。
「お前たち、モテモテだな。三社から同時に話がくるなんて、なかなかないぞ」
「……恋愛じゃなくてよかったです」
佐藤が冗談を言って、場が少し和む。
「未来総建の山田社長、イベントのとき見に来ててな」
黒田さんが続けた。
「“若い人がこんな発想を持ってるなら、日本の未来は明るい”って言ってたよ」
相川が真剣な目で言う。
「TRY-LOGは“努力を楽しむ仕組み”です。
会社でも、子どもでも、お年寄りでも――続けることを支えたい」
「いい言葉だな」
黒田さんが笑った。
「じゃあ今日は、三社の話をまとめよう。
協賛内容の確認と契約の流れを詰める。
まずはこのあと13時半に未来総建さんが来てくれる。しっかりな」
「はい!」
―
13時半。
未来総建の山田社長が入室してきた。
作業着の上から黒いジャケットを羽織り、手には分厚い資料ファイル。
挨拶もそこそこに、社長は俺たちの資料に目を通した。
「……なるほどな。
“努力を見える化する”か。社員教育にも通じる考え方だな」
低く落ち着いた声。長年現場で鍛えたような手が、静かにテーブルを叩く。
「うちは人手が減って、若手のやる気が課題だ。
TRY-LOGを使えば、日報や安全確認の継続にも応用できそうだな」
相川が資料を指し示しながら答える。
「ありがとうございます。社内研修や健康イベントにも対応できます。
目標の達成率をグラフで見せる機能も試作中です」
山田社長が小さく頷いた。
「いいね。――まずは応援の気持ちだ。
TRY-LOGの理念が気に入った。協賛金は30万円。
会社のロゴをアプリ内に入れてくれれば、それでいい」
俺は慌てて立ち上がり、深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
一瞬、場が静まる。
心臓の鼓動が、耳の奥で鳴っていた。
黒田さんが微笑む。
「よかったな。これが“社会とつながる”ってやつだ」
その言葉が胸の奥に残った。
――本当に、現実が動き出したんだ。
―
続いて、つばさケアグループの松本部長。
「高齢者の服薬管理と歩数計をTRY-LOGに連携できないか。
もし技術的に実現できるなら、こちらからも協力金を出したい」
篠宮が即座に答える。
「現状、歩数と時間データを扱えます。
スマホや健康アプリとデータをつなぐ“API”を使えば、
服薬記録とも紐づけることが可能です」
「高校生でAPIとか言うんだねぇ……頼もしいな」
松本部長が感心して笑う。
佐藤が小声で俺に尋ねた。
「なぁ、“API”ってなんだ?」
「アプリとアプリをつなぐ線みたいなもん。
例えば“歩数アプリ”の数字をTRY-LOGに送れるようにする仕組みだ」
「へぇ……なんかすげぇな。電気の線みたいなもんか」
「まぁそんな感じ」
二人で小声で笑った。
―
最後に、Body Fitの藤木社長が口を開いた。
「TRY-LOGは最初、若者向けの遊びかと思ってた。けど――違ったな」
目の前の資料を軽く叩きながら続ける。
「うちの会員にも、“続けたいけど続かない”って人が山ほどいる。
このアプリは、それを“見える努力”に変える力がある。
試しに、うちのジムで実験的に導入してみよう。設備もスタッフも出す」
「え……本当ですか?」
思わず声が上ずる。
藤木社長は笑って言った。
「本気の努力には、本気で応えたいんだよ。君たちの挑戦、俺も一緒にやってみたい」
心臓の奥がじんわりと熱くなった。
TRY-LOGが“夢のアプリ”じゃなく、“現実のツール”になっていく瞬間だった。
―
交渉が終わる頃には、夕陽が窓の外を染めていた。
黒田さんが立ち上がり、静かに言った。
「――おめでとう。正式に、三社協賛が決まった」
その瞬間、言葉が出なかった。
TRY-LOGが、ついに“社会に認められた”――その実感が胸の奥を熱くした。
「……すげぇな」
佐藤が呟く。
篠宮は資料をまとめながら、小さく言った。
「これで資金合計は約50万。設備協力も一社。……十分だな」
相川が息を吐いて笑う。
「でも、金が入るってことは“責任”も生まれる。
契約書、報告書、納税――現実は、ここからだ」
俺はその言葉を聞きながら、机の上のTRY-LOGロゴを見つめた。
“努力を見える形に”。
今なら、その下にもう一行、こう書ける気がした。
“努力を、社会に繋ぐ”
―
帰り道。
駅までの道。
街灯が淡く光り、寒い空気が頬を刺した。
誰も喋らない。けれど、全員の心の中で同じ言葉が響いていた。
(これが、“現実”なんだな)
駅前のロータリーで、相川がスマホを見ながら言う。
「TRY-LOG、商工会の公式アカウントで紹介されてる。再生数、もう5000超えてる」
「マジっすか!」
佐藤が笑う。
「これもう、ローカルスターじゃん!」
篠宮が小さく頷く。
「……世間が見ている。なら、俺たちも“見られる努力”を続けなきゃな」
その瞬間ウインドウが淡く光る。
―
【クエスト達成】
タイトル:「スポンサー契約成立」
内容:社会との正式な協賛契約を結べ
報酬: SP+10/信頼度(佐藤大輝)+3/信頼度(相川蓮)+5/信頼度(篠宮智也)+5
【スキルLvアップ】
名称:共闘Lv2 → 共闘Lv3(営業/行動力リンク)
効果:佐久間・佐藤の行動指数(筋力)+10(常時)
【新スキル解放】
名称:共闘(開発/継続力リンク)
効果:佐久間・相川の継続性(耐久力)+3(常時)
説明:互いの信頼が動力となり、力が常に共鳴し合う。
―
冬の風が、駅の階段を抜けていく。
遠くの街灯が、少し滲んで見えた。
「……スポンサーはありがたい。が、まだまだ資金が足りない」
相川の声が静かに響く。
俺はうなずき、篠宮を見る。
「篠宮も仲間になったし、クラファンの話を詰めよう」
篠宮はメガネを直しながら言う。
「そうだな。資金がなければ、この先のステージにはいけない」
佐藤が肩をすくめる。
「もちろん大事な話だけどよ。もう大晦日だぜ?
うちの会社は正月休みもねぇのかよ」
その言葉に、全員が笑った。
俺は笑いながら答える。
「悪い悪い。話は年明けてからにしようか。
みんな、今年はありがとう。来年もよろしくな」
「おう!」
「了解」
「……よろしく」
それぞれの声が冬空に溶けていく。
TRY-LOGは、今――社会を、ほんの少しだけ動かしている。
世間はもう、すっかり年越しムードになっていた。
―
【Project Re:Try:“資金集め”/第四段階レポート】
※【 】内は今回上昇分
◆日時:12月27日
◆目標:300万円の資金調達
◆進行状況:Phase.04 進行中
◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。
◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
行動指数(筋力):45.5 【+5】
継続性(耐久力):39.0 【+3】
構想力(知力) :43.2
共感力(魅力) :49.2
SP:29【+10】/スキル保持数:32
・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:91【+3】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:74【+5】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:60【+5】
◆資産状況
総資産:1,175,000円(+500,000円/協賛金)
◆進行状況
・三社協定締結 → 協賛金50万円獲得/設備協力1社
・資金計画の試算完了(目標金額:300万円)
・クラウドファンディング構想、検討段階
◆次段階予定(Phase.04:資金調達・組織拡張)
・TRY-LOGアプリ版制作準備
・資金調達(必要額: 約180万)
――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
TRY-LOGのデモブースが撤去されたあとも、
会場で体験した子どもや親たちの声は止まらなかった。
「うちの子、あれから毎日腕立て伏せしてるんです」
「会社の健康プログラムに入れたら楽しそうだね」
「高校生がこんなアプリ作るなんて、すごい」
そんな声がSNSや口コミで少しずつ広がっていった。
そして――その波は、想像以上に大きかった。
―
「……三件、ですか?」
スマホを握る手が震えた。
夕方の教室。放課後のざわめきが、いつもより遠くに感じる。
電話の向こうでは、商工会の黒田さんの声が弾んでいた。
『そうだ。スポンサーの打診が三件来てる。企業からだよ。
TRY-LOGを見て、ぜひ話がしたいって』
「三件も……?」
心臓の鼓動が一気に早くなる。
まるで、社会のほうから手を伸ばしてきたみたいに感じた。
―
翌日の朝。相川の家。
Re:Tryのメンバー全員が集まり、リビングのテーブルには資料とノートパソコンが並んでいた。
ストーブの音が、一定のリズムで鳴っている。
「……スポンサーって、つまり、金がもらえるってことか?」
佐藤が興奮気味に言った。
「いや、“もらう”じゃない。“信頼を預かる”だ」
篠宮が冷静に答える。
「支援の代わりに、企業のロゴを載せたり、イベントで紹介したり。Win-Winの関係だ。」
「すごいことだよ……TRY-LOGを“社会の人”が認めてくれたってことだからな」
俺は静かに言った。
“努力を社会に届ける”――あのとき掲げた言葉が、少しだけ現実に近づいた気がした。
相川が資料を開く。
「三社って、どこからだ?」
黒田さんのメールには、三つの企業名が記されていた。
―
• 未来総建株式会社【地域建設会社】
→「TRY-LOGの理念に共感。社員教育や健康イベントに活用したい」
→ 協賛金:30万円
• つばさケアグループ【調剤・介護事業】
→「地域高齢者の“歩数記録+服薬管理”連携に興味あり」
→ 協賛金:20万円+モニター協力
• Body Fit【スポーツジム】
→「TRY-LOGとの連動システム開発を検討。施設提供も可」
→ 技術協力型スポンサー(資金なし)
―
「……バラけてるな」
相川が唸る。
「建設、医療、フィットネス。方向は違うけど、どれも“継続”がテーマだな」
「面白いな」
篠宮がペンを走らせる。
「つまり、TRY-LOGが“努力を続ける仕組み”として見られてる。数字以上の価値を感じてるってことだ」
佐藤が目を丸くする。
「てかマジですげぇよ。高校生のアプリにスポンサーって。もう社会人じゃん」
「社会人ってほど甘くないさ」
俺は小さく笑った。
「でも――本当に、“社会”が動き始めた気がする。
このあと、商工会館で黒田さんと打ち合わせだ。
そして、三社の代表の方たちも、黒田さんの紹介で来てくれるらしい。
地元の若手プロジェクトとして、直接話を聞きたいって」
篠宮がノートにまとめながら言う。
「大事な商談だ。ミスは許されないな」
相川もうなずく。
「好意的だとは思うが、発言は慎重に。な、佐藤?」
佐藤が苦笑いする。
「なんで俺なんすか!」
「じゃ、役割。俺=全体説明、篠宮=条件と費用、相川先輩=技術デモ、佐藤=導入イメージと現場の声。――抜けはないな?」
俺は立ち上がり、みんなを見る。
「行こう。落ち着いて、やり切るぞ」
―
13時。商工会館の会議室。
ガラス越しに見える冬の空は、どこか透き通っていた。
黒田さんの前に、俺たちは並んで座る。
黒田さんが笑った。
「お前たち、モテモテだな。三社から同時に話がくるなんて、なかなかないぞ」
「……恋愛じゃなくてよかったです」
佐藤が冗談を言って、場が少し和む。
「未来総建の山田社長、イベントのとき見に来ててな」
黒田さんが続けた。
「“若い人がこんな発想を持ってるなら、日本の未来は明るい”って言ってたよ」
相川が真剣な目で言う。
「TRY-LOGは“努力を楽しむ仕組み”です。
会社でも、子どもでも、お年寄りでも――続けることを支えたい」
「いい言葉だな」
黒田さんが笑った。
「じゃあ今日は、三社の話をまとめよう。
協賛内容の確認と契約の流れを詰める。
まずはこのあと13時半に未来総建さんが来てくれる。しっかりな」
「はい!」
―
13時半。
未来総建の山田社長が入室してきた。
作業着の上から黒いジャケットを羽織り、手には分厚い資料ファイル。
挨拶もそこそこに、社長は俺たちの資料に目を通した。
「……なるほどな。
“努力を見える化する”か。社員教育にも通じる考え方だな」
低く落ち着いた声。長年現場で鍛えたような手が、静かにテーブルを叩く。
「うちは人手が減って、若手のやる気が課題だ。
TRY-LOGを使えば、日報や安全確認の継続にも応用できそうだな」
相川が資料を指し示しながら答える。
「ありがとうございます。社内研修や健康イベントにも対応できます。
目標の達成率をグラフで見せる機能も試作中です」
山田社長が小さく頷いた。
「いいね。――まずは応援の気持ちだ。
TRY-LOGの理念が気に入った。協賛金は30万円。
会社のロゴをアプリ内に入れてくれれば、それでいい」
俺は慌てて立ち上がり、深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
一瞬、場が静まる。
心臓の鼓動が、耳の奥で鳴っていた。
黒田さんが微笑む。
「よかったな。これが“社会とつながる”ってやつだ」
その言葉が胸の奥に残った。
――本当に、現実が動き出したんだ。
―
続いて、つばさケアグループの松本部長。
「高齢者の服薬管理と歩数計をTRY-LOGに連携できないか。
もし技術的に実現できるなら、こちらからも協力金を出したい」
篠宮が即座に答える。
「現状、歩数と時間データを扱えます。
スマホや健康アプリとデータをつなぐ“API”を使えば、
服薬記録とも紐づけることが可能です」
「高校生でAPIとか言うんだねぇ……頼もしいな」
松本部長が感心して笑う。
佐藤が小声で俺に尋ねた。
「なぁ、“API”ってなんだ?」
「アプリとアプリをつなぐ線みたいなもん。
例えば“歩数アプリ”の数字をTRY-LOGに送れるようにする仕組みだ」
「へぇ……なんかすげぇな。電気の線みたいなもんか」
「まぁそんな感じ」
二人で小声で笑った。
―
最後に、Body Fitの藤木社長が口を開いた。
「TRY-LOGは最初、若者向けの遊びかと思ってた。けど――違ったな」
目の前の資料を軽く叩きながら続ける。
「うちの会員にも、“続けたいけど続かない”って人が山ほどいる。
このアプリは、それを“見える努力”に変える力がある。
試しに、うちのジムで実験的に導入してみよう。設備もスタッフも出す」
「え……本当ですか?」
思わず声が上ずる。
藤木社長は笑って言った。
「本気の努力には、本気で応えたいんだよ。君たちの挑戦、俺も一緒にやってみたい」
心臓の奥がじんわりと熱くなった。
TRY-LOGが“夢のアプリ”じゃなく、“現実のツール”になっていく瞬間だった。
―
交渉が終わる頃には、夕陽が窓の外を染めていた。
黒田さんが立ち上がり、静かに言った。
「――おめでとう。正式に、三社協賛が決まった」
その瞬間、言葉が出なかった。
TRY-LOGが、ついに“社会に認められた”――その実感が胸の奥を熱くした。
「……すげぇな」
佐藤が呟く。
篠宮は資料をまとめながら、小さく言った。
「これで資金合計は約50万。設備協力も一社。……十分だな」
相川が息を吐いて笑う。
「でも、金が入るってことは“責任”も生まれる。
契約書、報告書、納税――現実は、ここからだ」
俺はその言葉を聞きながら、机の上のTRY-LOGロゴを見つめた。
“努力を見える形に”。
今なら、その下にもう一行、こう書ける気がした。
“努力を、社会に繋ぐ”
―
帰り道。
駅までの道。
街灯が淡く光り、寒い空気が頬を刺した。
誰も喋らない。けれど、全員の心の中で同じ言葉が響いていた。
(これが、“現実”なんだな)
駅前のロータリーで、相川がスマホを見ながら言う。
「TRY-LOG、商工会の公式アカウントで紹介されてる。再生数、もう5000超えてる」
「マジっすか!」
佐藤が笑う。
「これもう、ローカルスターじゃん!」
篠宮が小さく頷く。
「……世間が見ている。なら、俺たちも“見られる努力”を続けなきゃな」
その瞬間ウインドウが淡く光る。
―
【クエスト達成】
タイトル:「スポンサー契約成立」
内容:社会との正式な協賛契約を結べ
報酬: SP+10/信頼度(佐藤大輝)+3/信頼度(相川蓮)+5/信頼度(篠宮智也)+5
【スキルLvアップ】
名称:共闘Lv2 → 共闘Lv3(営業/行動力リンク)
効果:佐久間・佐藤の行動指数(筋力)+10(常時)
【新スキル解放】
名称:共闘(開発/継続力リンク)
効果:佐久間・相川の継続性(耐久力)+3(常時)
説明:互いの信頼が動力となり、力が常に共鳴し合う。
―
冬の風が、駅の階段を抜けていく。
遠くの街灯が、少し滲んで見えた。
「……スポンサーはありがたい。が、まだまだ資金が足りない」
相川の声が静かに響く。
俺はうなずき、篠宮を見る。
「篠宮も仲間になったし、クラファンの話を詰めよう」
篠宮はメガネを直しながら言う。
「そうだな。資金がなければ、この先のステージにはいけない」
佐藤が肩をすくめる。
「もちろん大事な話だけどよ。もう大晦日だぜ?
うちの会社は正月休みもねぇのかよ」
その言葉に、全員が笑った。
俺は笑いながら答える。
「悪い悪い。話は年明けてからにしようか。
みんな、今年はありがとう。来年もよろしくな」
「おう!」
「了解」
「……よろしく」
それぞれの声が冬空に溶けていく。
TRY-LOGは、今――社会を、ほんの少しだけ動かしている。
世間はもう、すっかり年越しムードになっていた。
―
【Project Re:Try:“資金集め”/第四段階レポート】
※【 】内は今回上昇分
◆日時:12月27日
◆目標:300万円の資金調達
◆進行状況:Phase.04 進行中
◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。
◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
行動指数(筋力):45.5 【+5】
継続性(耐久力):39.0 【+3】
構想力(知力) :43.2
共感力(魅力) :49.2
SP:29【+10】/スキル保持数:32
・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:91【+3】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:74【+5】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:60【+5】
◆資産状況
総資産:1,175,000円(+500,000円/協賛金)
◆進行状況
・三社協定締結 → 協賛金50万円獲得/設備協力1社
・資金計画の試算完了(目標金額:300万円)
・クラウドファンディング構想、検討段階
◆次段階予定(Phase.04:資金調達・組織拡張)
・TRY-LOGアプリ版制作準備
・資金調達(必要額: 約180万)
――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
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そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
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スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
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幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
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沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
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しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
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