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第109話 高校生スタートアップ、初陣
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商工会のイベント会場。
空気が冷たくて、吐く息が白い。
冬の太陽がゆっくり昇る中、俺たちは機材を運び込んでいた。
「おはよう、佐久間くん」
会場の入り口で声をかけてくれたのは、商工会の黒田さんだった。
今回のイベントも黒田さんが段取りしてくれた。――ほんとに頼りになる人だ。
「黒田さん、おはようございます! 今日もよろしくお願いします!」
「こちらこそ。高校生ブース、楽しみにしてるよ。
しっかり頑張ってくれ!」
黒田さんは笑いながら、足元の段ボールを指さした。
「人手がいるだろうと思って、うちの若手を何人かつけておいたよ」
「ありがとうございます!」
佐藤が満面の笑みで手を振る。
相川は早速、机の位置を確認し始めた。
――設営開始。
四人と商工会スタッフでテントを立て、ポスターを貼り、端末を並べる。
TRY-LOGのロゴが冬の光に反射して、キラリと光った。
―
設営が終わり、いよいよ開場時間が迫ってきた。
会場入口の看板には、こう書かれている。
【Re:Try株式会社】
“努力を、見えるカタチに。”
TRY-LOG無料体験ブース
ブースは四つに分かれている。
白い布の仕切りの向こうから、準備の音が響いてきた。
「よし、ブースチェックいくぞ」
俺が声を上げると、篠宮がタブレットを構える。
「動作確認、任せろ」
相川が腕を組んでモニターをのぞき込む。
「問題なし」
佐藤が拳を握って叫ぶ。
「さぁ! やってやろうぜ!」
―
【クエスト発生】
タイトル:「社会への挑戦。その第一歩」
内容:目標来場人数を達成し、イベントを成功させろ。
報酬:行動指数(筋力)+2/継続性(耐久力)+2/SP+5/信頼度(佐藤大輝)+3/信頼度(相川蓮)+3/信頼度(篠宮智也)+5
―
――筋力ブース
「はい次の方、どうぞー!」
佐藤が笑顔で呼び込む。
机の上には、カウント用のセンサー。
「腕立て10回で筋力ゲージが光るよ! トライがどんどんたくましくなるから!」
少年が挑戦し、端末の画面にトライの姿が映る。
初期状態では細身のキャラが――
腕立てのたびに、筋肉がついていく。
胸板、二の腕、腹筋。
最後に「ドンッ」とポーズを決めて、吹き出しが出た。
【筋力+0.2】
『ナイス!その調子!』
「すげー! ほんとに変わった!」
子どもの声に、周囲が笑いで包まれた。
篠宮が小声でつぶやく。
「腕立て10回で、たくましくなりすぎじゃないですか?」
相川も小声で返す。
「実際のアプリ版では調整する。今日はイベント仕様だ。すぐ目に見える方がウケる」
「なるほど」
篠宮がうなずき、再び来場者の列を見やった。
―
――耐久ブース
相川が担当しているのは、スクワットとバランスチャレンジ。
「30秒耐えたらレベルアップだ。……よし、がんばれ!」
トライのアバターが汗を流しながら耐えている。
画面上の背景には風の演出。最後には息を整えて笑った。
【耐久+0.2】
『地道な努力が、未来を変える!』
年配の来場者が感心したように頷く。
「これは健康づくりにも使えそうだねぇ」
「これって、アプリあるんですか?」
来場者が尋ねる。
「今は開発途中ですが、来年の4月にリリース予定です」
俺は笑顔で答え、QRコードを手渡した。
「ここから事前登録できます。登録した方には限定アバターを配布してます。ぜひダウンロードしてみてください」
「絶対します! うわー、楽しみだな!」
思わず、頬がゆるんだ。
―
――知力ブース
篠宮が管理しているのはクイズ端末。
小学生でも解ける問題から、大人向けの雑学まで幅広い。
正解するたびに、トライの頭の上に電球マークが灯り、メガネをかけた知的な姿に進化していく。
【知力+0.2】
『知ることが、挑戦の第一歩だ……』
「へぇ~、かわいい!」
「これ、子どもに勉強させるアプリとしても良くない?」
篠宮は淡々と答える。
「……その通りです。教育現場への導入も、今後の検討項目です」
思わずクスッと笑ってしまう。
(急に企業っぽいな、篠宮)
―
――魅力ブース
最後は俺の担当。
モニターの前に立つと、笑顔診断AIが起動する。
「笑顔スコアを測定して、トライの“魅力”をアップさせます!」
カメラが顔を認識し、モニターのトライが同じ表情を真似する。
子どもがニコッと笑うと、トライもニコッと笑った。
画面が花のように弾ける。
【魅力+0.2】
『笑うたび、君の魅力は進化する!』
周りから「かわいい!」「写真撮ろ!」と歓声が上がる。
気づけば、スマホを構える人の列ができていた。
―
最初はまばらだった来場者も、
口コミや地元新聞の記事効果で、どんどん増えていった。
「来場者、100人突破したぞ!」
佐藤が嬉しそうに叫ぶ。
相川が満足そうに頷いた。
「……いい波、きてるな」
篠宮が微笑む。
「焦らず、地道に。これが正しい成長曲線だ」
―
昼を過ぎたころ、声が聞こえた。
「陽斗くん!」
振り向くと、遥が家族を連れて来ていた。
白いコートの下からのぞく笑顔が、冬の光に映える。
後ろには、遥の両親と悠真の姿。
「お兄ちゃん、これやっていい!?」
悠真が筋力ブースに駆けていく。
トライが全力で腕立てをする姿に、笑い声が上がった。
遥の父が画面を見ながら感心したように言う。
「この前、家に来たときは普通の高校生かと思ってたけど……まさかこんなものを作るとはな。
TRY-LOG、面白い。子を持つ親としても、社員を持つ経営者としても惹かれるものがある。
“努力の見える化”、これは本質だよ」
その言葉に、胸の奥が温かくなった。
数字じゃない“評価”が、こんなに嬉しいなんて。
「おぉ、盛り上がってるじゃないか!」
黒田さんも覗きに来てくれた。
「はい。おかげさまで」
黒田さんは悠真の顔を見た瞬間、
その目がわずかに見開かれた。
……だが、すぐにいつもの柔らかい笑顔に戻る。
「子どもも楽しめるってのが一番だ! この調子で頑張ってくれ!」
そして遥の家族のほうを見て、明るい声で言った。
「弟さん、とても元気で可愛いですね。ぜひTRY-LOGを楽しんでいってください!」
遥はにこっと笑って会釈した。
悠真は得意げに胸を張り、遥の両親も穏やかに頷いていた。
(そうだ。子どもが努力を楽しめる――それが、一番大事だ)
―
午後には、一ノ瀬も来てくれた。
シンプルな黒のコート姿。
周囲の喧騒から少し離れた場所で、静かにブースを見つめている。
「……すごい、人多いね」
「新聞の効果かな。たくさん来てくれて嬉しいよ」
トライのアバターが、画面の中で柔らかく微笑んだ。
一ノ瀬も、ほんの少しだけ笑う。
「いいね。私も、自分のアバター作りたくなってきた」
「ははっ、一ノ瀬のアバターか。興味あるな」
その後も一ノ瀬はブースを見学して、事前登録のQRコードを手に帰っていった。
―
夕方、会場がさらに賑わい始めた。
帽子にマスク姿の女性が近づいてくる。
スタイルの良さですぐにわかった――瑠奈だ。
「先輩、やっほー」
「仕事は?」
「これからまた撮影。せっかくだから、合間に覗きに来た」
彼女はスマホを取り出して写真を撮る。
トライが笑顔を見せるブース。
子どもたちの列。
それらを撮って、さらっとストーリーを投稿した。
《#TRYLOG #努力が見える世界へ》
その後、魅力ブースで笑顔を見せて、その写真も投稿。
最後は「また連絡するね」と手を振り、足早に会場を後にした。
数分後、相川が驚いた声を上げる。
「おい、SNSでバズってるぞ!
“#TRYLOGチャレンジ”がトレンド入りだ!」
佐藤が笑ってガッツポーズを決めた。
「すげぇ! さすがはカリスマモデルだな!」
―
午後4時。
会場には人、人、人。
佐藤がコーチをしている地元の陸上クラブの教え子たちもやってきて、腕立て大会が始まった。
「コーチ、これ最高っす!」
「お前ら、フォーム崩れてんぞ! もっとまっすぐ!」
ブースは笑いと熱気でいっぱいになった。
相川の父も現れて、笑いながら言う。
「TRY-LOGか……蓮が小さい頃に、これがあったらよかったかもな」
さらに、そのあと相川の姉たちが登場。
三人そろって美人で、スタッフが一瞬静まり返る。
「蓮、頑張ってんじゃん!」「映える! 写真撮ろ!」
「やめろって……!」
そして、篠宮の母が会場の隅に立っていた。
優しく目を細めながら、息子の笑顔を見つめている。
その視線に気づいた篠宮は、少しだけ照れくさそうに視線をそらした。
――でも、ちゃんと笑っていた。
―
夜。
片付けを終えた会場。
ライトが一つ、また一つと消えていく。
黒田さんが俺たちに拍手を送った。
「いやー、本当にすごかった! 高校生のブースで、ここまで人が集まるとはな!」
俺は頭を下げる。
「……ありがとうございました」
篠宮が集計を終える。
「目標来場者数300人に対して、来場者数418人。
そのうち、事前登録のQRコードは350人に渡した」
相川が頷く。
「上出来だな」
佐藤が満足そうに笑う。
「いや、大成功だろ! めっちゃ盛り上がったな!」
―
【クエスト達成】
タイトル:「社会への挑戦。その第一歩」
内容:目標来場人数を達成し、イベントを成功させろ。
報酬:行動指数(筋力)+2/継続性(耐久力)+2/SP+5/信頼度(佐藤大輝)+3/信頼度(相川蓮)+3/信頼度(篠宮智也)+5
―
会場の外に出ると、夜空に雪が舞っていた。
四人並んで、息を吐く。
「……俺たち、なんか本当に“会社”っぽくなってきたな」
佐藤が笑う。
「確かに。高校生のくせに、名刺とか数字の話してるもんな」相川が肩をすくめる。
篠宮も笑った。
「でも、こうやって動いてるの、悪くない」
俺も頷く。
「だろ? まだ始まったばっかだけどな」
TRY-LOGのロゴが、街の明かりの中で光った。
――努力は、もう“見える”だけじゃない。
“届く”ようになったんだ。
雪が静かに降る。
Re:Tryの挑戦は、まだ始まったばかりだった。
―
【Project Re:Try:“資金集め”/第四段階レポート】
※【 】内は今回上昇分
◆日時:12月24日
◆目標:300万円の資金調達
◆進行状況:Phase.04 進行中
◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。
◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
行動指数(筋力):40.5 【+2】
継続性(耐久力):36.0 【+2】
構想力(知力) :43.2
共感力(魅力) :49.2
SP:19 【+5】/スキル保持数:32
・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:88 【+3】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:69 【+3】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:55 【+5】
◆資産状況
総資産:670,000円
◆進行状況
・商工会イベント当日 → 目標達成
・資金計画の試算完了(目標金額:300万円)
・クラウドファンディング構想、検討段階
◆次段階予定(Phase.04:資金調達・組織拡張)
・TRY-LOGアプリ版制作準備
・資金調達(必要額: 約230万)
――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
空気が冷たくて、吐く息が白い。
冬の太陽がゆっくり昇る中、俺たちは機材を運び込んでいた。
「おはよう、佐久間くん」
会場の入り口で声をかけてくれたのは、商工会の黒田さんだった。
今回のイベントも黒田さんが段取りしてくれた。――ほんとに頼りになる人だ。
「黒田さん、おはようございます! 今日もよろしくお願いします!」
「こちらこそ。高校生ブース、楽しみにしてるよ。
しっかり頑張ってくれ!」
黒田さんは笑いながら、足元の段ボールを指さした。
「人手がいるだろうと思って、うちの若手を何人かつけておいたよ」
「ありがとうございます!」
佐藤が満面の笑みで手を振る。
相川は早速、机の位置を確認し始めた。
――設営開始。
四人と商工会スタッフでテントを立て、ポスターを貼り、端末を並べる。
TRY-LOGのロゴが冬の光に反射して、キラリと光った。
―
設営が終わり、いよいよ開場時間が迫ってきた。
会場入口の看板には、こう書かれている。
【Re:Try株式会社】
“努力を、見えるカタチに。”
TRY-LOG無料体験ブース
ブースは四つに分かれている。
白い布の仕切りの向こうから、準備の音が響いてきた。
「よし、ブースチェックいくぞ」
俺が声を上げると、篠宮がタブレットを構える。
「動作確認、任せろ」
相川が腕を組んでモニターをのぞき込む。
「問題なし」
佐藤が拳を握って叫ぶ。
「さぁ! やってやろうぜ!」
―
【クエスト発生】
タイトル:「社会への挑戦。その第一歩」
内容:目標来場人数を達成し、イベントを成功させろ。
報酬:行動指数(筋力)+2/継続性(耐久力)+2/SP+5/信頼度(佐藤大輝)+3/信頼度(相川蓮)+3/信頼度(篠宮智也)+5
―
――筋力ブース
「はい次の方、どうぞー!」
佐藤が笑顔で呼び込む。
机の上には、カウント用のセンサー。
「腕立て10回で筋力ゲージが光るよ! トライがどんどんたくましくなるから!」
少年が挑戦し、端末の画面にトライの姿が映る。
初期状態では細身のキャラが――
腕立てのたびに、筋肉がついていく。
胸板、二の腕、腹筋。
最後に「ドンッ」とポーズを決めて、吹き出しが出た。
【筋力+0.2】
『ナイス!その調子!』
「すげー! ほんとに変わった!」
子どもの声に、周囲が笑いで包まれた。
篠宮が小声でつぶやく。
「腕立て10回で、たくましくなりすぎじゃないですか?」
相川も小声で返す。
「実際のアプリ版では調整する。今日はイベント仕様だ。すぐ目に見える方がウケる」
「なるほど」
篠宮がうなずき、再び来場者の列を見やった。
―
――耐久ブース
相川が担当しているのは、スクワットとバランスチャレンジ。
「30秒耐えたらレベルアップだ。……よし、がんばれ!」
トライのアバターが汗を流しながら耐えている。
画面上の背景には風の演出。最後には息を整えて笑った。
【耐久+0.2】
『地道な努力が、未来を変える!』
年配の来場者が感心したように頷く。
「これは健康づくりにも使えそうだねぇ」
「これって、アプリあるんですか?」
来場者が尋ねる。
「今は開発途中ですが、来年の4月にリリース予定です」
俺は笑顔で答え、QRコードを手渡した。
「ここから事前登録できます。登録した方には限定アバターを配布してます。ぜひダウンロードしてみてください」
「絶対します! うわー、楽しみだな!」
思わず、頬がゆるんだ。
―
――知力ブース
篠宮が管理しているのはクイズ端末。
小学生でも解ける問題から、大人向けの雑学まで幅広い。
正解するたびに、トライの頭の上に電球マークが灯り、メガネをかけた知的な姿に進化していく。
【知力+0.2】
『知ることが、挑戦の第一歩だ……』
「へぇ~、かわいい!」
「これ、子どもに勉強させるアプリとしても良くない?」
篠宮は淡々と答える。
「……その通りです。教育現場への導入も、今後の検討項目です」
思わずクスッと笑ってしまう。
(急に企業っぽいな、篠宮)
―
――魅力ブース
最後は俺の担当。
モニターの前に立つと、笑顔診断AIが起動する。
「笑顔スコアを測定して、トライの“魅力”をアップさせます!」
カメラが顔を認識し、モニターのトライが同じ表情を真似する。
子どもがニコッと笑うと、トライもニコッと笑った。
画面が花のように弾ける。
【魅力+0.2】
『笑うたび、君の魅力は進化する!』
周りから「かわいい!」「写真撮ろ!」と歓声が上がる。
気づけば、スマホを構える人の列ができていた。
―
最初はまばらだった来場者も、
口コミや地元新聞の記事効果で、どんどん増えていった。
「来場者、100人突破したぞ!」
佐藤が嬉しそうに叫ぶ。
相川が満足そうに頷いた。
「……いい波、きてるな」
篠宮が微笑む。
「焦らず、地道に。これが正しい成長曲線だ」
―
昼を過ぎたころ、声が聞こえた。
「陽斗くん!」
振り向くと、遥が家族を連れて来ていた。
白いコートの下からのぞく笑顔が、冬の光に映える。
後ろには、遥の両親と悠真の姿。
「お兄ちゃん、これやっていい!?」
悠真が筋力ブースに駆けていく。
トライが全力で腕立てをする姿に、笑い声が上がった。
遥の父が画面を見ながら感心したように言う。
「この前、家に来たときは普通の高校生かと思ってたけど……まさかこんなものを作るとはな。
TRY-LOG、面白い。子を持つ親としても、社員を持つ経営者としても惹かれるものがある。
“努力の見える化”、これは本質だよ」
その言葉に、胸の奥が温かくなった。
数字じゃない“評価”が、こんなに嬉しいなんて。
「おぉ、盛り上がってるじゃないか!」
黒田さんも覗きに来てくれた。
「はい。おかげさまで」
黒田さんは悠真の顔を見た瞬間、
その目がわずかに見開かれた。
……だが、すぐにいつもの柔らかい笑顔に戻る。
「子どもも楽しめるってのが一番だ! この調子で頑張ってくれ!」
そして遥の家族のほうを見て、明るい声で言った。
「弟さん、とても元気で可愛いですね。ぜひTRY-LOGを楽しんでいってください!」
遥はにこっと笑って会釈した。
悠真は得意げに胸を張り、遥の両親も穏やかに頷いていた。
(そうだ。子どもが努力を楽しめる――それが、一番大事だ)
―
午後には、一ノ瀬も来てくれた。
シンプルな黒のコート姿。
周囲の喧騒から少し離れた場所で、静かにブースを見つめている。
「……すごい、人多いね」
「新聞の効果かな。たくさん来てくれて嬉しいよ」
トライのアバターが、画面の中で柔らかく微笑んだ。
一ノ瀬も、ほんの少しだけ笑う。
「いいね。私も、自分のアバター作りたくなってきた」
「ははっ、一ノ瀬のアバターか。興味あるな」
その後も一ノ瀬はブースを見学して、事前登録のQRコードを手に帰っていった。
―
夕方、会場がさらに賑わい始めた。
帽子にマスク姿の女性が近づいてくる。
スタイルの良さですぐにわかった――瑠奈だ。
「先輩、やっほー」
「仕事は?」
「これからまた撮影。せっかくだから、合間に覗きに来た」
彼女はスマホを取り出して写真を撮る。
トライが笑顔を見せるブース。
子どもたちの列。
それらを撮って、さらっとストーリーを投稿した。
《#TRYLOG #努力が見える世界へ》
その後、魅力ブースで笑顔を見せて、その写真も投稿。
最後は「また連絡するね」と手を振り、足早に会場を後にした。
数分後、相川が驚いた声を上げる。
「おい、SNSでバズってるぞ!
“#TRYLOGチャレンジ”がトレンド入りだ!」
佐藤が笑ってガッツポーズを決めた。
「すげぇ! さすがはカリスマモデルだな!」
―
午後4時。
会場には人、人、人。
佐藤がコーチをしている地元の陸上クラブの教え子たちもやってきて、腕立て大会が始まった。
「コーチ、これ最高っす!」
「お前ら、フォーム崩れてんぞ! もっとまっすぐ!」
ブースは笑いと熱気でいっぱいになった。
相川の父も現れて、笑いながら言う。
「TRY-LOGか……蓮が小さい頃に、これがあったらよかったかもな」
さらに、そのあと相川の姉たちが登場。
三人そろって美人で、スタッフが一瞬静まり返る。
「蓮、頑張ってんじゃん!」「映える! 写真撮ろ!」
「やめろって……!」
そして、篠宮の母が会場の隅に立っていた。
優しく目を細めながら、息子の笑顔を見つめている。
その視線に気づいた篠宮は、少しだけ照れくさそうに視線をそらした。
――でも、ちゃんと笑っていた。
―
夜。
片付けを終えた会場。
ライトが一つ、また一つと消えていく。
黒田さんが俺たちに拍手を送った。
「いやー、本当にすごかった! 高校生のブースで、ここまで人が集まるとはな!」
俺は頭を下げる。
「……ありがとうございました」
篠宮が集計を終える。
「目標来場者数300人に対して、来場者数418人。
そのうち、事前登録のQRコードは350人に渡した」
相川が頷く。
「上出来だな」
佐藤が満足そうに笑う。
「いや、大成功だろ! めっちゃ盛り上がったな!」
―
【クエスト達成】
タイトル:「社会への挑戦。その第一歩」
内容:目標来場人数を達成し、イベントを成功させろ。
報酬:行動指数(筋力)+2/継続性(耐久力)+2/SP+5/信頼度(佐藤大輝)+3/信頼度(相川蓮)+3/信頼度(篠宮智也)+5
―
会場の外に出ると、夜空に雪が舞っていた。
四人並んで、息を吐く。
「……俺たち、なんか本当に“会社”っぽくなってきたな」
佐藤が笑う。
「確かに。高校生のくせに、名刺とか数字の話してるもんな」相川が肩をすくめる。
篠宮も笑った。
「でも、こうやって動いてるの、悪くない」
俺も頷く。
「だろ? まだ始まったばっかだけどな」
TRY-LOGのロゴが、街の明かりの中で光った。
――努力は、もう“見える”だけじゃない。
“届く”ようになったんだ。
雪が静かに降る。
Re:Tryの挑戦は、まだ始まったばかりだった。
―
【Project Re:Try:“資金集め”/第四段階レポート】
※【 】内は今回上昇分
◆日時:12月24日
◆目標:300万円の資金調達
◆進行状況:Phase.04 進行中
◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。
◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
行動指数(筋力):40.5 【+2】
継続性(耐久力):36.0 【+2】
構想力(知力) :43.2
共感力(魅力) :49.2
SP:19 【+5】/スキル保持数:32
・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:88 【+3】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:69 【+3】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:55 【+5】
◆資産状況
総資産:670,000円
◆進行状況
・商工会イベント当日 → 目標達成
・資金計画の試算完了(目標金額:300万円)
・クラウドファンディング構想、検討段階
◆次段階予定(Phase.04:資金調達・組織拡張)
・TRY-LOGアプリ版制作準備
・資金調達(必要額: 約230万)
――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
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そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
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スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
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幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
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沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
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しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
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