クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

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第109話 高校生スタートアップ、初陣

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商工会のイベント会場。
空気が冷たくて、吐く息が白い。
冬の太陽がゆっくり昇る中、俺たちは機材を運び込んでいた。

「おはよう、佐久間くん」
会場の入り口で声をかけてくれたのは、商工会の黒田さんだった。
今回のイベントも黒田さんが段取りしてくれた。――ほんとに頼りになる人だ。

「黒田さん、おはようございます! 今日もよろしくお願いします!」
「こちらこそ。高校生ブース、楽しみにしてるよ。
しっかり頑張ってくれ!」
黒田さんは笑いながら、足元の段ボールを指さした。
「人手がいるだろうと思って、うちの若手を何人かつけておいたよ」

「ありがとうございます!」
佐藤が満面の笑みで手を振る。
相川は早速、机の位置を確認し始めた。

――設営開始。

四人と商工会スタッフでテントを立て、ポスターを貼り、端末を並べる。
TRY-LOGのロゴが冬の光に反射して、キラリと光った。



設営が終わり、いよいよ開場時間が迫ってきた。
会場入口の看板には、こう書かれている。

【Re:Try株式会社】
“努力を、見えるカタチに。”
TRY-LOG無料体験ブース

ブースは四つに分かれている。
白い布の仕切りの向こうから、準備の音が響いてきた。

「よし、ブースチェックいくぞ」
俺が声を上げると、篠宮がタブレットを構える。
「動作確認、任せろ」
相川が腕を組んでモニターをのぞき込む。
「問題なし」
佐藤が拳を握って叫ぶ。
「さぁ! やってやろうぜ!」



【クエスト発生】
タイトル:「社会への挑戦。その第一歩」
内容:目標来場人数を達成し、イベントを成功させろ。
報酬:行動指数(筋力)+2/継続性(耐久力)+2/SP+5/信頼度(佐藤大輝)+3/信頼度(相川蓮)+3/信頼度(篠宮智也)+5



――筋力ブース

「はい次の方、どうぞー!」
佐藤が笑顔で呼び込む。
机の上には、カウント用のセンサー。

「腕立て10回で筋力ゲージが光るよ! トライがどんどんたくましくなるから!」
少年が挑戦し、端末の画面にトライの姿が映る。
初期状態では細身のキャラが――
腕立てのたびに、筋肉がついていく。
胸板、二の腕、腹筋。
最後に「ドンッ」とポーズを決めて、吹き出しが出た。

【筋力+0.2】
『ナイス!その調子!』

「すげー! ほんとに変わった!」
子どもの声に、周囲が笑いで包まれた。

篠宮が小声でつぶやく。
「腕立て10回で、たくましくなりすぎじゃないですか?」

相川も小声で返す。
「実際のアプリ版では調整する。今日はイベント仕様だ。すぐ目に見える方がウケる」

「なるほど」
篠宮がうなずき、再び来場者の列を見やった。



――耐久ブース

相川が担当しているのは、スクワットとバランスチャレンジ。
「30秒耐えたらレベルアップだ。……よし、がんばれ!」
トライのアバターが汗を流しながら耐えている。
画面上の背景には風の演出。最後には息を整えて笑った。

【耐久+0.2】
『地道な努力が、未来を変える!』

年配の来場者が感心したように頷く。
「これは健康づくりにも使えそうだねぇ」

「これって、アプリあるんですか?」
来場者が尋ねる。

「今は開発途中ですが、来年の4月にリリース予定です」
俺は笑顔で答え、QRコードを手渡した。
「ここから事前登録できます。登録した方には限定アバターを配布してます。ぜひダウンロードしてみてください」

「絶対します! うわー、楽しみだな!」

思わず、頬がゆるんだ。



――知力ブース

篠宮が管理しているのはクイズ端末。
小学生でも解ける問題から、大人向けの雑学まで幅広い。
正解するたびに、トライの頭の上に電球マークが灯り、メガネをかけた知的な姿に進化していく。

【知力+0.2】
『知ることが、挑戦の第一歩だ……』

「へぇ~、かわいい!」
「これ、子どもに勉強させるアプリとしても良くない?」

篠宮は淡々と答える。
「……その通りです。教育現場への導入も、今後の検討項目です」

思わずクスッと笑ってしまう。
(急に企業っぽいな、篠宮)



――魅力ブース

最後は俺の担当。
モニターの前に立つと、笑顔診断AIが起動する。

「笑顔スコアを測定して、トライの“魅力”をアップさせます!」
カメラが顔を認識し、モニターのトライが同じ表情を真似する。
子どもがニコッと笑うと、トライもニコッと笑った。
画面が花のように弾ける。

【魅力+0.2】
『笑うたび、君の魅力は進化する!』

周りから「かわいい!」「写真撮ろ!」と歓声が上がる。
気づけば、スマホを構える人の列ができていた。



最初はまばらだった来場者も、
口コミや地元新聞の記事効果で、どんどん増えていった。

「来場者、100人突破したぞ!」
佐藤が嬉しそうに叫ぶ。

相川が満足そうに頷いた。
「……いい波、きてるな」

篠宮が微笑む。
「焦らず、地道に。これが正しい成長曲線だ」



昼を過ぎたころ、声が聞こえた。

「陽斗くん!」

振り向くと、遥が家族を連れて来ていた。
白いコートの下からのぞく笑顔が、冬の光に映える。
後ろには、遥の両親と悠真の姿。

「お兄ちゃん、これやっていい!?」
悠真が筋力ブースに駆けていく。
トライが全力で腕立てをする姿に、笑い声が上がった。

遥の父が画面を見ながら感心したように言う。
「この前、家に来たときは普通の高校生かと思ってたけど……まさかこんなものを作るとはな。
TRY-LOG、面白い。子を持つ親としても、社員を持つ経営者としても惹かれるものがある。
“努力の見える化”、これは本質だよ」

その言葉に、胸の奥が温かくなった。
数字じゃない“評価”が、こんなに嬉しいなんて。

「おぉ、盛り上がってるじゃないか!」
黒田さんも覗きに来てくれた。
「はい。おかげさまで」

黒田さんは悠真の顔を見た瞬間、
その目がわずかに見開かれた。
……だが、すぐにいつもの柔らかい笑顔に戻る。
「子どもも楽しめるってのが一番だ! この調子で頑張ってくれ!」

そして遥の家族のほうを見て、明るい声で言った。

「弟さん、とても元気で可愛いですね。ぜひTRY-LOGを楽しんでいってください!」

遥はにこっと笑って会釈した。
悠真は得意げに胸を張り、遥の両親も穏やかに頷いていた。

(そうだ。子どもが努力を楽しめる――それが、一番大事だ)



午後には、一ノ瀬も来てくれた。
シンプルな黒のコート姿。
周囲の喧騒から少し離れた場所で、静かにブースを見つめている。

「……すごい、人多いね」
「新聞の効果かな。たくさん来てくれて嬉しいよ」

トライのアバターが、画面の中で柔らかく微笑んだ。
一ノ瀬も、ほんの少しだけ笑う。

「いいね。私も、自分のアバター作りたくなってきた」
「ははっ、一ノ瀬のアバターか。興味あるな」

その後も一ノ瀬はブースを見学して、事前登録のQRコードを手に帰っていった。



夕方、会場がさらに賑わい始めた。
帽子にマスク姿の女性が近づいてくる。
スタイルの良さですぐにわかった――瑠奈だ。

「先輩、やっほー」
「仕事は?」
「これからまた撮影。せっかくだから、合間に覗きに来た」

彼女はスマホを取り出して写真を撮る。
トライが笑顔を見せるブース。
子どもたちの列。
それらを撮って、さらっとストーリーを投稿した。

《#TRYLOG #努力が見える世界へ》

その後、魅力ブースで笑顔を見せて、その写真も投稿。
最後は「また連絡するね」と手を振り、足早に会場を後にした。

数分後、相川が驚いた声を上げる。
「おい、SNSでバズってるぞ!
“#TRYLOGチャレンジ”がトレンド入りだ!」

佐藤が笑ってガッツポーズを決めた。
「すげぇ! さすがはカリスマモデルだな!」



午後4時。
会場には人、人、人。

佐藤がコーチをしている地元の陸上クラブの教え子たちもやってきて、腕立て大会が始まった。
「コーチ、これ最高っす!」
「お前ら、フォーム崩れてんぞ! もっとまっすぐ!」
ブースは笑いと熱気でいっぱいになった。

相川の父も現れて、笑いながら言う。
「TRY-LOGか……蓮が小さい頃に、これがあったらよかったかもな」
さらに、そのあと相川の姉たちが登場。
三人そろって美人で、スタッフが一瞬静まり返る。
「蓮、頑張ってんじゃん!」「映える! 写真撮ろ!」
「やめろって……!」

そして、篠宮の母が会場の隅に立っていた。
優しく目を細めながら、息子の笑顔を見つめている。
その視線に気づいた篠宮は、少しだけ照れくさそうに視線をそらした。
――でも、ちゃんと笑っていた。



夜。
片付けを終えた会場。
ライトが一つ、また一つと消えていく。

黒田さんが俺たちに拍手を送った。
「いやー、本当にすごかった! 高校生のブースで、ここまで人が集まるとはな!」

俺は頭を下げる。
「……ありがとうございました」

篠宮が集計を終える。
「目標来場者数300人に対して、来場者数418人。
そのうち、事前登録のQRコードは350人に渡した」

相川が頷く。
「上出来だな」

佐藤が満足そうに笑う。
「いや、大成功だろ! めっちゃ盛り上がったな!」



【クエスト達成】
タイトル:「社会への挑戦。その第一歩」
内容:目標来場人数を達成し、イベントを成功させろ。
報酬:行動指数(筋力)+2/継続性(耐久力)+2/SP+5/信頼度(佐藤大輝)+3/信頼度(相川蓮)+3/信頼度(篠宮智也)+5



会場の外に出ると、夜空に雪が舞っていた。
四人並んで、息を吐く。

「……俺たち、なんか本当に“会社”っぽくなってきたな」
佐藤が笑う。
「確かに。高校生のくせに、名刺とか数字の話してるもんな」相川が肩をすくめる。
篠宮も笑った。
「でも、こうやって動いてるの、悪くない」
俺も頷く。
「だろ? まだ始まったばっかだけどな」

TRY-LOGのロゴが、街の明かりの中で光った。
――努力は、もう“見える”だけじゃない。
“届く”ようになったんだ。

雪が静かに降る。
Re:Tryの挑戦は、まだ始まったばかりだった。



【Project Re:Try:“資金集め”/第四段階レポート】

※【 】内は今回上昇分
◆日時:12月24日
◆目標:300万円の資金調達
◆進行状況:Phase.04 進行中

◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。

◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
 行動指数(筋力):40.5 【+2】
 継続性(耐久力):36.0 【+2】
 構想力(知力) :43.2
 共感力(魅力) :49.2
 SP:19 【+5】/スキル保持数:32

・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:88 【+3】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:69 【+3】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:55 【+5】

◆資産状況
総資産:670,000円

◆進行状況
・商工会イベント当日 → 目標達成
・資金計画の試算完了(目標金額:300万円)
・クラウドファンディング構想、検討段階

◆次段階予定(Phase.04:資金調達・組織拡張)
・TRY-LOGアプリ版制作準備
・資金調達(必要額: 約230万)

――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
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