クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

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第119話 四人目は、“ただの仲間”じゃない。最強のCMOが加入した

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1月19日。放課後。
クラファンの管理ページを眺めながら、俺はスマホをポケットにしまった。
【支援者100人突破】――その通知は、ただの数字以上の意味を持っていた。

(……よし。順調だ)

帰り支度をしながら、俺は三橋の席へ向かう。
「なぁ三橋。今日の放課後、相川先輩の家、来れるか?」

三橋は一瞬まばたきをして、首をかしげた。
「俺も行っていいのか?」

「当たり前だろ。広報担当だし」

その言葉に、三橋はほんの少しだけ目を丸くする。
“担当”と言われたことを、まだ照れくさそうに噛みしめるみたいに。

そして、おなじみの笑み。
「……おう。行くわ」



夕方。相川の家。
ストーブの音と、パソコンのファンの小さな回転音。
冬の空気を切り取ったみたいな部屋の中に、Re:Tryのメンバーが揃っていた。

相川はノートPCの前でコードを確認し、
篠宮はタブレットとノートを広げて数字を詰めている。
佐藤はソファに背中を預けながら、SNSの反応をスクロールしていた。

「遅くなって悪い。……みんないるな」
俺は深呼吸してから部屋に入った。

「佐久間。そろそろ始めるか?」
佐藤が顔を上げる。

「……その前に、一人紹介したいやつがいる」
言ってから、ほんの少しだけ間を置く。
「入ってくれ」

その声に応じて、制服姿の三橋がドアのところで軽く会釈した。
いつもの余裕ある笑顔――だけど、よく見ると肩のあたりがほんの少しだけ固い。

「よろしくお願いします」

その一言は、少しだけ背伸びしたみたいな、初めて“チームの前に立つ”声だった。

三人の視線が、一斉にこちらへ向いた。

俺は前に一歩出て、ゆっくり言った。
「佐藤、相川先輩、篠宮。今日から――俺たちの“広報担当”になる人間を連れてきた」

その一言で、三人の表情がわずかに変わる。
緊張、期待、そしてほんの少しの驚き。
「紹介する。三橋隼人。同じクラスで、サッカー部の――」

「元エース、な」
三橋が軽く手を挙げ、笑って前に出る。
「白峰高校二年。サッカー部……“元”エースの三橋隼人っす」
その笑いは、過去を背負いながらも前へ進む人間の強さを含んでいた。
「今日から、Re:Tryの広報担当“見習い”として……
少しでも力になれたら嬉しいっす。よろしくお願いします」

深く頭を下げるその姿は、サッカー部で何百回も繰り返してきた礼そのまま。
だけど今日のそれは、
フィールドを変えて新しい戦いに入る、決意の礼になっていた。

一瞬の静寂。

最初に声を上げたのは、やっぱり佐藤だった。

「おおおおお!? 三橋!?」
勢いよく立ち上がり、目を見開く。
「いやでも……たしかに三橋はアリだわ!
見た目いいし、声も通るし、サッカー部で前に立って喋ってたし。
なにより――女子人気が強い!!」

最後の一言に、三橋が苦笑した。
「そこ強調すんなよ」

「いや、広報としてはめっちゃ大事だって」
佐藤は妙に真面目な顔で言う。
「“イケボ + イケメン + スポーツバックボーン”って、
それだけで信用度バフかかるからな。マジで」

「用語がうるさい」
相川が小さく笑いながら立ち上がる。

「相川蓮。Re:TryのCTO――開発担当だ」
落ち着いた声で続ける。
「TRY-LOGは、努力を“見える形”にして、社会につなげるアプリだ。
その“声”を広げる役……ぜひ頼みたい」

相川が手を差し出すと、
三橋も迷わずその手を取った。

「よろしくお願いします。
アプリとかビジネスとかは正直わかんねぇけど……」
ほんの少し照れた、でも芯のある声。
「“本気でやってるやつらの声”なら……ちゃんと伝えたいと思ってます」

相川はその言葉に、わずかに目を細める。
「……それで十分だ」
握手を返しながら言った。
「わからないことは全部こっちでフォローする。
お前は“届けること”だけに集中してくれ」

横で、篠宮がペンを置いた。

「篠宮智也。CFO――財務担当だ」
いつも通りの落ち着いた声で言う。
「合理的に評価すると、君の加入は“プラス”だ。
発信力、対人コミュニケーション、そして――
“努力の積み重ねを経験している”というバックグラウンド」

三橋が苦笑する。
「……面接みたいだな、それ」

「事実の確認だよ」
篠宮は淡々と返す。だが、その目はどこか柔らかかった。
「ただし、最後に決めるのは数字じゃない。
僕たちと、そして君自身の意思だ」

佐藤が勢いよく割って入る。
「ってわけで!
営業兼COO、佐藤大輝です!
とにかく動き回るのが仕事!
クラファンもSNSも、ぜんぶ一緒にぶち上げようぜ!」

勢いそのままに手を差し出され、三橋も思わず笑った。
「……いいな。活気あるチームじゃん」

三人の輪に三橋が自然に入り込み、部屋の空気が一段軽くなる。

(――間違いなく、“ここ”にハマった)



「じゃあ、一回整理しようか」

相川がホワイトボード代わりのスケッチブックを開き、さらさらとペンを走らせる。

【Re:Try メンバー構成】

・佐久間陽斗:CEO/代表・企画・前に立つ役
・佐藤大輝 :COO/営業統括・SNS・現場動き
・相川蓮  :CTO/開発・解析
・篠宮智也 :CFO/財務・スケジュール管理
・三橋隼人 :CMO/広報・発信

「こんな感じだな」

相川がページをこちらへ向けると、三橋が眉を上げる。

「CMOってのは……?」

「Chief Marketing Officer」
篠宮がタブレットを閉じながら答える。
「広報と発信の責任者。
学校で言えば……まあ“応援団長”に一番近いかもな」

「おお、そっちのほうがイメージ湧くわ」
三橋が素直に笑う。
「じゃ、俺は“TRY-LOG応援団長”ってことか」

「語感はちょっとダサいけど、役割は合ってる」
佐藤が即ツッコむ。
「でもマジで重要だぞ。広報って、“伝える専門職”だからな」

俺もうなずく。
「これまでは、俺のなんちゃってスピーチでどうにかしてたけどさ……
これからは、“もっと広いところ”に届けたいんだ」

篠宮が、クラファンの管理画面をタブレットに映す。

【目標金額:2,000,000円】
【達成率:40%】
【支援者:106人】
【集まった金額:810,000円】

「現時点でここまで」
篠宮が冷静に言いながら数字を指す。
「スタートダッシュとしては十分。けど……ここからが“勝負所”だ」

三橋がタブレットを覗き込み、わずかに目を見開く。
「……100人超えてんのか。
……ほんとに、すげぇな」

「すごいよ。でも……まだ“足りない”」
俺は画面を見つめたまま言う。

「ここから“もう一段ギアを上げる”には、
待ってても自然には伸びない。
こっちから動かないと、届かない。」

三橋の顔が、ゆっくりと真剣になる。
「……広報の出番ってやつか」

その言葉に、相川がペンをトントンと叩く。
「だからこそ――三橋。お前のアイデアがほしい」

「……俺の?」

「ああ」
相川は視線だけ向ける。
「今、TRY-LOGに足りないのは“伝え方”だ。
中身はあるのに、“どう物語として届くか”の見取り図がまだない」

篠宮も静かに続けた。
「機能でも数字でもなく、“挑戦している人間”をどう見せるか。
それを決めるのは、開発している俺たちだけじゃ無理だ」

三橋はしばらく黙って、ゆっくりと天井を見る。

ストーブの音が小さく響く中、
その沈黙が、なぜか妙に“期待の間”になっていた。

数秒後――三橋は、口元をわずかにゆるめた。

「……じゃあ、一つ提案していいか?」

その声が落ちた瞬間、
部屋の空気が、ほんの少しだけ熱を帯びた。

三橋隼人・CMO。
その最初の“一手”が、今、動き出そうとしていた。



【Project Re:Try:“資金集め”/第四段階レポート】

※【 】内は今回上昇分
◆日時:1月19日
◆最終目標:300万円の調達
(※うち200万円をクラウドファンディングで集める計画)
◆進行状況:Phase.04 進行中

◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。

◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
 行動指数(筋力):48.5
 継続性(耐久力):42.0
 構想力(知力) :43.2
 共感力(魅力) :53.2
 SP:41/スキル保持数:32

・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:91
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:74
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:60
・三橋 隼人(CMO/広報)/信頼度:60

◆資産状況
資金:715,000円
協賛金:500,000円
クラファン支援:810,000円

総資産:2,025,000円
(※開発・機材・広告の初期投資に充当予定)

◆進行状況
・三社協定を締結 → 協賛金50万円獲得/設備協力1社
・資金計画の試算完了(必要金額:300万円)
・クラウドファンディング進行中(目標金額:200万円)

◆次段階予定(Phase.04:資金調達・組織拡張)
・TRY-LOGアプリ版制作準備
・クラウドファンディング目標金額の達成

――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
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