クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎

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第118話 チーム完成。最後のピースは“エース”だった

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教室の騒がしさが、すっと薄れていく。
まるでこの空間に残っているのは――俺と三橋の二人だけ。

「……佐久間」
三橋は、普段の軽さとは違う声で続けた。
「……それ、本気で言ってんのか?」

俺はうなずき、三橋を真っ直ぐ見て言った。
「本気だよ。
誰でもいいわけじゃない。……お前だから言ってる」

言葉が迷わず出てくる。
「TRY-LOGって、“人と比べないで、自分を伸ばす”ためのアプリだろ。
体育祭のとき、お前言ってたよな。
『誰と比べるでもなく、自分を高めるために』
サッカーに戻るって」

三橋の目に、わずかに揺れが見える。

「その姿勢こそ、俺たちのRe:Tryなんだよ。
だから――その“声”を届けてほしい。
広報担当として、お前の言葉で」
俺はまっすぐ続けた。
「プログラムなんて書けなくていい。
作るのは相川先輩だし、数字は篠宮が全部握ってる。
佐藤は動き回るタイプだしな」

そこで一度息を吸い、俺は本音を口にした。
「広報ってさ、ただ喋るだけじゃない。
空気をつくって、場を明るくして、
“この人の言うことなら聞いてみようかな”って思わせる役だ」
そして、はっきりと。
「俺には、一人しか思い浮かばなかった」

三橋の目が、少しだけ見開かれる。

「お前は“サッカーをやってきた自分”を捨てないって言ったよな。
なら、その力……俺たちにも貸してほしい」

「“努力が見える世界”を、一緒に作ってくれないか」

しばらく、三橋は何も言わなかった。
教室の時間だけが、ゆっくり流れていく。

窓の外、冬の光が校庭の白線を淡く照らす。
教室では、誰かが笑い、誰かが居眠りしている。
その全部が遠くて――
目の前の三橋の呼吸だけがやけに近かった。

「……なぁ、佐久間」

三橋は、机の角を指で軽く叩きながら言った。
「俺が入って……逆に足引っ張らねえか?
アプリとかビジネスとか、正直チンプンカンプンだし。
“広報”って言われても……なんか、自分ごととして想像つかねえ。
俺じゃないほうが、いいんじゃないか?」

言葉は弱気じゃなく、正直な不安って感じだった。

俺は迷わず答えた。
「わからないなら、一緒に覚えればいい」

「俺だって最初は全部ゼロだった。
相川先輩は別として――篠宮も佐藤も、最初はみんな素人だ。
知識のあるなしじゃなくて、“向いてるかどうか”のほうが大事なんだよ」

ここまで言うと、三橋の眉がわずかに揺れた。
ほんの少しだけ、迷いがほぐれていく気配。

一拍置いて、言葉を選ぶ。

「それに――
俺は知ってるぞ。
サッカー部で前に立ってたお前も、
体育祭のリレーで『任せろ』って笑ったお前も」

三橋の喉が、小さく上下する。

「TRY-LOGには……“作った言葉”じゃなくて、
本気でぶつかった人間の声が必要なんだ。
挫折したことも、立ち直ろうとしてることも含めてさ」

言いながら、自分の胸にも響いていく。
「だから、“俺じゃないほうがいい”なんて言葉、
お前の口から出てほしくなかった」

少しだけ、笑って挑発気味に。
「なぁ、三橋。
お前、本気でそう思ってるのか?」

三橋の口元が、ようやくいつもの“勝負前の顔”になった。
「言い方ムカつくな、お前」

「そっちのほうが燃えるだろ?」

軽口を交わしたあと、短い沈黙が落ちる。
それから――三橋はゆっくり息を吐いた。

「……なぁ、佐久間」

「なんだ」

まっすぐ俺を見る視線。その奥に、さっきまで言わなかった“本音”があった。
「俺さ、本当は――
お前に何か頼まれたら、断らねぇつもりでいたんだよ」

続ける声は静かだけど、迷いがなかった。
「だけど……ほんとに俺が必要なのか、ちゃんと聞きたかった」

そして最後に、三橋らしい悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
「――そんなに俺がほしいわけ?」

思わず吹き出す。
「勝手に言ってろ」

三橋は、ほんの一瞬だけ息を整えた。
「……よし」

短く、だけど迷いのない声。
「俺でよかったら――やらせてくれ」

その言葉と同時に、右手がまっすぐ差し出される。
「“努力を、社会が支える世界”ってやつ。
広報として、全力で広げてやるよ」

その手には、ちゃんと“戦う覚悟”の力がこもっていた。

俺も同じ力で握り返す。
「……よろしく頼む、三橋」

指先が触れた瞬間――
視界の端で、淡い光がふっと灯った。



【特別イベント達成】
タイトル:「“フィールド変更”のエース、三橋隼人」
内容:三橋を“広報担当(CMO)”として仲間に誘え
報酬:共感力(魅力)+2/SP+2



(これでようやく――Re:Tryに必要な“ピース”が全部揃った)

嫉妬と悔しさでぶつかってきた拳。
『比べるなら相手は自分自身だ』と言ったあの日。
体育祭で一緒に駆けた背中。
そして、膝を壊しても前を向こうとする表情。

全部が、TRY-LOGという一点に収束していく。
それがはっきりわかった。

三橋が、手を離す直前に口を開いた。
「……でも、一個だけ条件出していいか?」

「条件?」

「広報ってことは、人前で喋るんだろ?」
ニヤッと笑う。
「トークも配信も動画も。
どうせなら――カッコよく映してくれよな、カメラマンさん?」

「欲張りだな、お前は」

「当たり前だろ。
広報がダサかったら、誰もついてこねぇって」

その言葉に、なぜかふっと肩の力が抜けた。

(……そうだ。こいつは、やっぱり“前線に立つやつ”だ)

サッカーというフィールドを離れても、
声で、空気で、笑顔で――人を引っ張る役割は変わらない。

チャイムが鳴り、昼休みのざわめきが一気に戻ってくる。
誰かが「次数学だっけ?」と叫び、別の誰かが「ノート写させて!」と追いかけ回している。

その喧騒の真ん中で――
俺と三橋は、小さく拳を合わせた。

「じゃあ、改めて」
三橋が言う。

「サッカー部エース、改め――
TRY-LOG広報担当見習い、三橋隼人です。よろしくお願いしまーす」

「ああ。よろしく頼む。
……でも“見習い”って動画では言うなよ」

「わかってるって」

その言葉に、自然と笑みがこぼれた。

(これで――本当に、“チーム”になった)

昼休みの雑音が、やけに遠く感じる。

TRY-LOGのチーム構成が、頭の中で静かに書き換わっていく。

CEO、COO、CTO、CFO――
そして、新たなCMO。

(ここからだ。
俺たちの挑戦は、ここから一段階“加速”する)

――そして、次の授業のチャイムが鳴る頃。
俺のスマホが震えた。

【支援者100人突破】

画面の数字が、確かに未来へと転がり出していた。
――このチームなら、きっと行ける。



【Project Re:Try:“資金集め”/第四段階レポート】

※【 】内は今回上昇分
◆日時:1月19日
◆最終目標:300万円の調達
(※うち200万円をクラウドファンディングで集める計画)
◆進行状況:Phase.04 進行中

◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。

◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
 行動指数(筋力):48.5
 継続性(耐久力):42.0
 構想力(知力) :43.2
 共感力(魅力) :53.2【+2】
 SP:41【+2】/スキル保持数:32

・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:91
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:74
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:60
・三橋 隼人(CMO/広報)/信頼度:60

◆資産状況
資金:715,000円
協賛金:500,000円
クラファン支援:690,000円

総資産:1,905,000円
(※開発・機材・広告の初期投資に充当予定)

◆進行状況
・三社協定を締結 → 協賛金50万円獲得/設備協力1社
・資金計画の試算完了(必要金額:300万円)
・クラウドファンディング進行中(目標金額:200万円)
・CMO/広報担当:三橋隼人 加入

◆次段階予定(Phase.04:資金調達・組織拡張)
・TRY-LOGアプリ版制作準備
・クラウドファンディング目標金額の達成

――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
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