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第121話 目標達成。Re:Try――第五段階へ
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2月に入った朝。
三橋が加入してから、もう二週間が経っていた。
……正直、あっという間だった。
三橋は驚くほど自然にチームへ溶け込み、
相川とも佐藤とも篠宮とも――まるで前から一緒にいたみたいに会話が弾んでいる。
広報担当としての仕事も早かった。
動画の企画は次々に出てくるし、SNSの投稿も“刺さる言葉”を的確に選んでくれる。
クラファンの支援者は確実に増え、目標達成まであとわずか。フォロワーも順調に伸びている。
数字の上がり方が、明らかに変わったのがわかる。
(……三橋が入ってくれて、本当に良かった)
そんな実感が、じわじわ胸の奥に広がっていた。
―
教室に入ると、三橋が机に突っ伏していた。
その背中が、かすかに上下している。
「……おい、大丈夫か? 熱でも出た?」
三橋はゆっくり顔を上げた。
目の下には、しっかりとクマ。
「いや、ちがう……寝不足だよ。
広報って、部活とは違う意味でめちゃくちゃ疲れるんだな」
「ははっ。フル回転してるもんな、お前」
三橋は額を押さえながらも、口の端を上げた。
「ああ。でも――
ぶっちゃけ、めちゃくちゃ楽しいんだよな」
一拍置いて、素直に続けた。
「ありがとな、佐久間。
お前らとやっていると……なんか、前に進んでる感じがする」
俺は笑顔で言う。
「こっちこそ、ありがとな。
それと、疲れてるとこ悪いけど……相川先輩からグループチャット来てたぞ。
『次のギアに入る準備をする。放課後集合』だってさ」
その瞬間、三橋は椅子にもたれ、天井を仰いだ。
「おいおい……。俺、まだ休みねえのかよ……」
溜め息はついているのに、どこか嬉しそうだった。
―
その日の夕方。
静かな部屋に漂うコーヒーの匂いと、キーボードを叩く音。
その中心に、俺たち五人――Re:Tryの全メンバーが揃っていた。
机の中央には、プリントアウトされた最新のクラファンデータが置かれている。
【支援者:287人】
【総額:1,948,000円】
【達成率:97%】
相川が数字を指しながら言う。
「……あと5万ちょいだな。
このペースなら――今日中に“突破”する可能性は高い」
佐藤が身を乗り出す。
「うおお……マジで来たな、ここまで!
やべぇ、手ぇ震えてきた!」
篠宮は淡々としつつも、目だけはわずかに熱を帯びていた。
「達成した瞬間から第五段階に移ろう。
資金の配分、外注先との再交渉、テスト版の調整……
準備はすでに整えてある」
「4月リリースも、十分現実だな」
そう言った瞬間――
スマホが“ピコン”と軽く震えた。
俺は画面を見て、思わず息を呑んだ。
【支援者:288人 → 289人 → 290人】
【総額:1,990,000円 → 2,020,000円】
……達成率が、ゆっくりと100%を超えていく。
「……来た」
三橋が呟く。
「突破したぞ……! 佐久間……!」
次の瞬間、佐藤が叫ぶ。
「うおおおおおおおおッ!! マジかよ!!
ついに……目標金額、達成だあああああ!!」
相川が小さく笑い、篠宮は静かにうなずいた。
「おめでとう。これで――第五段階、正式に突入だ」
―
【クエスト達成】
タイトル:資金を集めろ
内容:クラウドファンディングを成功させ、目標金額200万円を達成せよ。
報酬:SP+10/信頼度(佐藤 大輝)+2/信頼度(相川 蓮)+3/信頼度(篠宮 智也)+5/信頼度(三橋 隼人)+5/カリスマ性Lv1→Lv2
―
部屋の空気が、一気に熱を帯びた。
TRY-LOGは、ついに“社会に応援されたプロジェクト”になった。
俺はみんなの顔を見渡して言った。
「……一か月もしないうちに、ここまで来られるなんて思わなかった。
本当に……ありがとう」
佐藤が両手を上げる。
「うおぉぉぉ! やったぞぉ!!」
三橋が椅子に寄りかかりながら、静かに笑う。
「まだ実感ねぇな……でも、すげぇことになってるのはわかる」
篠宮は画面をスクロールしながら言った。
「支援者300人突破は、統計的に“プロジェクトの信頼性”を示す数値でもある。
……ここまで伸びると思っていなかった」
(……本当に、誰一人欠けてもここまで来られなかった)
だが――同時に、画面に突き刺さるようなコメントも混ざっていた。
『高校生がここまで金集めて大丈夫?』
『責任持てるの?』
『最初は盛り上がるけどすぐ飽きるでしょ』
『スポンサーだまされるなよ』
一瞬、心臓が冷たくなった。
相川が俺の視線に気づき、静かに言う。
「佐久間。
これが“注目される”ってことだ」
三橋も腕を組む。
「むしろ批判が出てきたってことは……ようやく“本物扱い”され始めたってことだろ」
篠宮もうなずく。
「肯定だけの世界は存在しない。前に進むほど、雑音も増える」
そして佐藤が――拳で自分の胸を軽く叩いた。
「でもよ、こんだけ応援してくれてる人がいるんだぜ?
“好き勝手言うやつ”より、“本気で支えてくれてるやつ”のほうが圧倒的に多いだろ」
……その通りだ。
俺は深く息を吸い、クラファンの画面を見つめ直した。
支援者の名前。
コメント。
応援のスタンプ。
【頑張ってください】
【応援してます】
【子どもと一緒に使いたいです】
【努力が可視化されるのは素晴らしい】
【未来を見せてください】
(……こんなに、俺たちを信じてくれる人がいるんだ)
心のざわつきは、ゆっくりと温かいものに変わった。
―
相川がノートPCの画面をこちらに向け、軽く指で示した。
「ここから――第五段階に移行する」
三橋が身を乗り出す。
「第五段階って、つまり“アプリ版をちゃんと形にする段階”ってことですよね?」
「ああ。今までは準備段階だったけど、ここからは“完成に向けて動き出す”ってところだ」
相川の画面には、手書きのスケジュール表を写した写真が映っていた。
黒いマーカーで、シンプルに三つだけ書かれている。
【2月:アプリの画面づくりを固める】
【3月:試しに動かして、バグ直し】
【4月:正式リリース】
「難しいことは全部俺がやるから安心しろ」
相川が笑う。
「ただ、みんなにも“やってほしいこと”が増える」
「……間に合うのか?」
佐藤が息をのむ。
相川は、ほんの少し誇らしげに言った。
「間に合わせるんだよ。俺たちで」
三橋が腕を組み、ふっと笑う。
「手伝うこと、山ほどありそうだな」
「お前には“広報”を中心に任せる」
相川が言うと、三橋は軽く顎を引いた。
「任された」
篠宮は資料を閉じて立ち上がった。
「僕は資金管理と、リリース後の運営プランを再計算する。
クラファンで200万以上集まって――
総資金が300万を超えた。
選べる手が、一気に増えた」
佐藤は拳を握りしめる。
「じゃあ俺は……営業とSNSと現場!
全部回す!!」
――そして全員の視線が、俺に向く。
相川が静かに言う。
「佐久間。
“代表”として、お前のやることはただ一つだ」
三橋も続ける。
「進む方向を、はっきり示してくれ」
篠宮が軽くうなずく。
「その言葉で、チームが動く」
佐藤が笑って肩を叩く。
「リーダーの号令、頼むぞ!」
俺は、一度だけゆっくり息を吸い――
みんなの目をまっすぐ見返した。
「……わかった。
ここからは、リリースまで全力で駆け抜ける。
TRY-LOGを、ちゃんと世界に届けよう」
言葉にした瞬間、部屋の空気が引き締まるのがわかった。
相川が微笑んだ。
「よし。第五段階――開始だ」
(ここから、ほんとうに。
TRY-LOGの物語が“現実”になる)
―
相川の家を出ると、夜風が頬を切った。
空には薄く雲がかかり、街灯の光が滲んでいる。
帰り道、三橋が突然言った。
「……なぁ佐久間」
「ん?」
「お前、2月ってさ。なんか、特別じゃね?」
「特別?」
「ほら……バレンタインとか」
不意打ちすぎて言葉に詰まった。
後ろから佐藤が駆け寄ってきて、肩をどつく。
「おいおい俺たち、アプリのリリース準備で忙しいんだぞ?
チョコの心配してる暇あんのか?」
「いいじゃねえか。俺たち健全な高校生だろ?」
三橋が笑う。
その横で、篠宮が淡々と言う。
「……だが、2月は“節目”の月でもある。
人間関係も、挑戦も、動きやすい季節だ」
「お前は逆に固ぇよ!」
佐藤が突っ込み、四人の笑い声が夜道に溶けていく。
どこかで、未来が静かに高鳴った。
(よし。2月――全部を前に進める月にしよう)
TRY-LOGは“資金”という大きな壁を越えた。
次は――“リリース”という未来へ。
その先に、どんな景色があるのか。
まだ誰も知らない。
けれど胸の鼓動だけは、はっきりと言っていた。
――“クラス最底辺の俺が、ここまでこれた。
あとは、突き進むだけだ”。
風の匂いが、ほんの少し甘かった。
バレンタインが近い、冬の夜だった。
―
【Project Re:Try:“TRY-LOGリリース”/第五段階レポート】
※【 】内は今回上昇分
◆日時:2月2日
◆最終目標:TRY-LOGアプリ版、正式リリース
◆進行状況:Phase.05 開始
◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。
◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
行動指数(筋力):48.5
継続性(耐久力):42.0
構想力(知力) :43.2
共感力(魅力) :53.2
SP:51【+10】/スキル保持数:32
・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:93【+2】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:77【+3】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:65【+5】
・三橋 隼人(CMO/広報)/信頼度:65【+5】
◆資産状況
資金:735,000円
協賛金:500,000円
クラファン支援:2,020,000円
総資産:3,255,000円
(※開発・機材・広告の初期投資に充当予定)
◆進行状況
・クラウドファンディング目標金額 達成
・TRY-LOGアプリ版 制作中
◆次段階予定(Phase.05:正式リリースへ)
・TRY-LOGアプリ版 完成
・リリース告知動画制作
――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
三橋が加入してから、もう二週間が経っていた。
……正直、あっという間だった。
三橋は驚くほど自然にチームへ溶け込み、
相川とも佐藤とも篠宮とも――まるで前から一緒にいたみたいに会話が弾んでいる。
広報担当としての仕事も早かった。
動画の企画は次々に出てくるし、SNSの投稿も“刺さる言葉”を的確に選んでくれる。
クラファンの支援者は確実に増え、目標達成まであとわずか。フォロワーも順調に伸びている。
数字の上がり方が、明らかに変わったのがわかる。
(……三橋が入ってくれて、本当に良かった)
そんな実感が、じわじわ胸の奥に広がっていた。
―
教室に入ると、三橋が机に突っ伏していた。
その背中が、かすかに上下している。
「……おい、大丈夫か? 熱でも出た?」
三橋はゆっくり顔を上げた。
目の下には、しっかりとクマ。
「いや、ちがう……寝不足だよ。
広報って、部活とは違う意味でめちゃくちゃ疲れるんだな」
「ははっ。フル回転してるもんな、お前」
三橋は額を押さえながらも、口の端を上げた。
「ああ。でも――
ぶっちゃけ、めちゃくちゃ楽しいんだよな」
一拍置いて、素直に続けた。
「ありがとな、佐久間。
お前らとやっていると……なんか、前に進んでる感じがする」
俺は笑顔で言う。
「こっちこそ、ありがとな。
それと、疲れてるとこ悪いけど……相川先輩からグループチャット来てたぞ。
『次のギアに入る準備をする。放課後集合』だってさ」
その瞬間、三橋は椅子にもたれ、天井を仰いだ。
「おいおい……。俺、まだ休みねえのかよ……」
溜め息はついているのに、どこか嬉しそうだった。
―
その日の夕方。
静かな部屋に漂うコーヒーの匂いと、キーボードを叩く音。
その中心に、俺たち五人――Re:Tryの全メンバーが揃っていた。
机の中央には、プリントアウトされた最新のクラファンデータが置かれている。
【支援者:287人】
【総額:1,948,000円】
【達成率:97%】
相川が数字を指しながら言う。
「……あと5万ちょいだな。
このペースなら――今日中に“突破”する可能性は高い」
佐藤が身を乗り出す。
「うおお……マジで来たな、ここまで!
やべぇ、手ぇ震えてきた!」
篠宮は淡々としつつも、目だけはわずかに熱を帯びていた。
「達成した瞬間から第五段階に移ろう。
資金の配分、外注先との再交渉、テスト版の調整……
準備はすでに整えてある」
「4月リリースも、十分現実だな」
そう言った瞬間――
スマホが“ピコン”と軽く震えた。
俺は画面を見て、思わず息を呑んだ。
【支援者:288人 → 289人 → 290人】
【総額:1,990,000円 → 2,020,000円】
……達成率が、ゆっくりと100%を超えていく。
「……来た」
三橋が呟く。
「突破したぞ……! 佐久間……!」
次の瞬間、佐藤が叫ぶ。
「うおおおおおおおおッ!! マジかよ!!
ついに……目標金額、達成だあああああ!!」
相川が小さく笑い、篠宮は静かにうなずいた。
「おめでとう。これで――第五段階、正式に突入だ」
―
【クエスト達成】
タイトル:資金を集めろ
内容:クラウドファンディングを成功させ、目標金額200万円を達成せよ。
報酬:SP+10/信頼度(佐藤 大輝)+2/信頼度(相川 蓮)+3/信頼度(篠宮 智也)+5/信頼度(三橋 隼人)+5/カリスマ性Lv1→Lv2
―
部屋の空気が、一気に熱を帯びた。
TRY-LOGは、ついに“社会に応援されたプロジェクト”になった。
俺はみんなの顔を見渡して言った。
「……一か月もしないうちに、ここまで来られるなんて思わなかった。
本当に……ありがとう」
佐藤が両手を上げる。
「うおぉぉぉ! やったぞぉ!!」
三橋が椅子に寄りかかりながら、静かに笑う。
「まだ実感ねぇな……でも、すげぇことになってるのはわかる」
篠宮は画面をスクロールしながら言った。
「支援者300人突破は、統計的に“プロジェクトの信頼性”を示す数値でもある。
……ここまで伸びると思っていなかった」
(……本当に、誰一人欠けてもここまで来られなかった)
だが――同時に、画面に突き刺さるようなコメントも混ざっていた。
『高校生がここまで金集めて大丈夫?』
『責任持てるの?』
『最初は盛り上がるけどすぐ飽きるでしょ』
『スポンサーだまされるなよ』
一瞬、心臓が冷たくなった。
相川が俺の視線に気づき、静かに言う。
「佐久間。
これが“注目される”ってことだ」
三橋も腕を組む。
「むしろ批判が出てきたってことは……ようやく“本物扱い”され始めたってことだろ」
篠宮もうなずく。
「肯定だけの世界は存在しない。前に進むほど、雑音も増える」
そして佐藤が――拳で自分の胸を軽く叩いた。
「でもよ、こんだけ応援してくれてる人がいるんだぜ?
“好き勝手言うやつ”より、“本気で支えてくれてるやつ”のほうが圧倒的に多いだろ」
……その通りだ。
俺は深く息を吸い、クラファンの画面を見つめ直した。
支援者の名前。
コメント。
応援のスタンプ。
【頑張ってください】
【応援してます】
【子どもと一緒に使いたいです】
【努力が可視化されるのは素晴らしい】
【未来を見せてください】
(……こんなに、俺たちを信じてくれる人がいるんだ)
心のざわつきは、ゆっくりと温かいものに変わった。
―
相川がノートPCの画面をこちらに向け、軽く指で示した。
「ここから――第五段階に移行する」
三橋が身を乗り出す。
「第五段階って、つまり“アプリ版をちゃんと形にする段階”ってことですよね?」
「ああ。今までは準備段階だったけど、ここからは“完成に向けて動き出す”ってところだ」
相川の画面には、手書きのスケジュール表を写した写真が映っていた。
黒いマーカーで、シンプルに三つだけ書かれている。
【2月:アプリの画面づくりを固める】
【3月:試しに動かして、バグ直し】
【4月:正式リリース】
「難しいことは全部俺がやるから安心しろ」
相川が笑う。
「ただ、みんなにも“やってほしいこと”が増える」
「……間に合うのか?」
佐藤が息をのむ。
相川は、ほんの少し誇らしげに言った。
「間に合わせるんだよ。俺たちで」
三橋が腕を組み、ふっと笑う。
「手伝うこと、山ほどありそうだな」
「お前には“広報”を中心に任せる」
相川が言うと、三橋は軽く顎を引いた。
「任された」
篠宮は資料を閉じて立ち上がった。
「僕は資金管理と、リリース後の運営プランを再計算する。
クラファンで200万以上集まって――
総資金が300万を超えた。
選べる手が、一気に増えた」
佐藤は拳を握りしめる。
「じゃあ俺は……営業とSNSと現場!
全部回す!!」
――そして全員の視線が、俺に向く。
相川が静かに言う。
「佐久間。
“代表”として、お前のやることはただ一つだ」
三橋も続ける。
「進む方向を、はっきり示してくれ」
篠宮が軽くうなずく。
「その言葉で、チームが動く」
佐藤が笑って肩を叩く。
「リーダーの号令、頼むぞ!」
俺は、一度だけゆっくり息を吸い――
みんなの目をまっすぐ見返した。
「……わかった。
ここからは、リリースまで全力で駆け抜ける。
TRY-LOGを、ちゃんと世界に届けよう」
言葉にした瞬間、部屋の空気が引き締まるのがわかった。
相川が微笑んだ。
「よし。第五段階――開始だ」
(ここから、ほんとうに。
TRY-LOGの物語が“現実”になる)
―
相川の家を出ると、夜風が頬を切った。
空には薄く雲がかかり、街灯の光が滲んでいる。
帰り道、三橋が突然言った。
「……なぁ佐久間」
「ん?」
「お前、2月ってさ。なんか、特別じゃね?」
「特別?」
「ほら……バレンタインとか」
不意打ちすぎて言葉に詰まった。
後ろから佐藤が駆け寄ってきて、肩をどつく。
「おいおい俺たち、アプリのリリース準備で忙しいんだぞ?
チョコの心配してる暇あんのか?」
「いいじゃねえか。俺たち健全な高校生だろ?」
三橋が笑う。
その横で、篠宮が淡々と言う。
「……だが、2月は“節目”の月でもある。
人間関係も、挑戦も、動きやすい季節だ」
「お前は逆に固ぇよ!」
佐藤が突っ込み、四人の笑い声が夜道に溶けていく。
どこかで、未来が静かに高鳴った。
(よし。2月――全部を前に進める月にしよう)
TRY-LOGは“資金”という大きな壁を越えた。
次は――“リリース”という未来へ。
その先に、どんな景色があるのか。
まだ誰も知らない。
けれど胸の鼓動だけは、はっきりと言っていた。
――“クラス最底辺の俺が、ここまでこれた。
あとは、突き進むだけだ”。
風の匂いが、ほんの少し甘かった。
バレンタインが近い、冬の夜だった。
―
【Project Re:Try:“TRY-LOGリリース”/第五段階レポート】
※【 】内は今回上昇分
◆日時:2月2日
◆最終目標:TRY-LOGアプリ版、正式リリース
◆進行状況:Phase.05 開始
◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。
◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
行動指数(筋力):48.5
継続性(耐久力):42.0
構想力(知力) :43.2
共感力(魅力) :53.2
SP:51【+10】/スキル保持数:32
・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:93【+2】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:77【+3】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:65【+5】
・三橋 隼人(CMO/広報)/信頼度:65【+5】
◆資産状況
資金:735,000円
協賛金:500,000円
クラファン支援:2,020,000円
総資産:3,255,000円
(※開発・機材・広告の初期投資に充当予定)
◆進行状況
・クラウドファンディング目標金額 達成
・TRY-LOGアプリ版 制作中
◆次段階予定(Phase.05:正式リリースへ)
・TRY-LOGアプリ版 完成
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(記録者:佐久間 陽斗)
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スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
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