121 / 130
第121話 目標達成。Re:Try――第五段階へ
しおりを挟む
2月に入った朝。
三橋が加入してから、もう二週間が経っていた。
……正直、あっという間だった。
三橋は驚くほど自然にチームへ溶け込み、
相川とも佐藤とも篠宮とも――まるで前から一緒にいたみたいに会話が弾んでいる。
広報担当としての仕事も早かった。
動画の企画は次々に出てくるし、SNSの投稿も“刺さる言葉”を的確に選んでくれる。
クラファンの支援者は確実に増え、目標達成まであとわずか。フォロワーも順調に伸びている。
数字の上がり方が、明らかに変わったのがわかる。
(……三橋が入ってくれて、本当に良かった)
そんな実感が、じわじわ胸の奥に広がっていた。
―
教室に入ると、三橋が机に突っ伏していた。
その背中が、かすかに上下している。
「……おい、大丈夫か? 熱でも出た?」
三橋はゆっくり顔を上げた。
目の下には、しっかりとクマ。
「いや、ちがう……寝不足だよ。
広報って、部活とは違う意味でめちゃくちゃ疲れるんだな」
「ははっ。フル回転してるもんな、お前」
三橋は額を押さえながらも、口の端を上げた。
「ああ。でも――
ぶっちゃけ、めちゃくちゃ楽しいんだよな」
一拍置いて、素直に続けた。
「ありがとな、佐久間。
お前らとやっていると……なんか、前に進んでる感じがする」
俺は笑顔で言う。
「こっちこそ、ありがとな。
それと、疲れてるとこ悪いけど……相川先輩からグループチャット来てたぞ。
『次のギアに入る準備をする。放課後集合』だってさ」
その瞬間、三橋は椅子にもたれ、天井を仰いだ。
「おいおい……。俺、まだ休みねえのかよ……」
溜め息はついているのに、どこか嬉しそうだった。
―
その日の夕方。
静かな部屋に漂うコーヒーの匂いと、キーボードを叩く音。
その中心に、俺たち五人――Re:Tryの全メンバーが揃っていた。
机の中央には、プリントアウトされた最新のクラファンデータが置かれている。
【支援者:287人】
【総額:1,948,000円】
【達成率:97%】
相川が数字を指しながら言う。
「……あと5万ちょいだな。
このペースなら――今日中に“突破”する可能性は高い」
佐藤が身を乗り出す。
「うおお……マジで来たな、ここまで!
やべぇ、手ぇ震えてきた!」
篠宮は淡々としつつも、目だけはわずかに熱を帯びていた。
「達成した瞬間から第五段階に移ろう。
資金の配分、外注先との再交渉、テスト版の調整……
準備はすでに整えてある」
「4月リリースも、十分現実だな」
そう言った瞬間――
スマホが“ピコン”と軽く震えた。
俺は画面を見て、思わず息を呑んだ。
【支援者:288人 → 289人 → 290人】
【総額:1,990,000円 → 2,020,000円】
……達成率が、ゆっくりと100%を超えていく。
「……来た」
三橋が呟く。
「突破したぞ……! 佐久間……!」
次の瞬間、佐藤が叫ぶ。
「うおおおおおおおおッ!! マジかよ!!
ついに……目標金額、達成だあああああ!!」
相川が小さく笑い、篠宮は静かにうなずいた。
「おめでとう。これで――第五段階、正式に突入だ」
―
【クエスト達成】
タイトル:資金を集めろ
内容:クラウドファンディングを成功させ、目標金額200万円を達成せよ。
報酬:SP+10/信頼度(佐藤 大輝)+2/信頼度(相川 蓮)+3/信頼度(篠宮 智也)+5/信頼度(三橋 隼人)+5/カリスマ性Lv1→Lv2
―
部屋の空気が、一気に熱を帯びた。
TRY-LOGは、ついに“社会に応援されたプロジェクト”になった。
俺はみんなの顔を見渡して言った。
「……一か月もしないうちに、ここまで来られるなんて思わなかった。
本当に……ありがとう」
佐藤が両手を上げる。
「うおぉぉぉ! やったぞぉ!!」
三橋が椅子に寄りかかりながら、静かに笑う。
「まだ実感ねぇな……でも、すげぇことになってるのはわかる」
篠宮は画面をスクロールしながら言った。
「支援者300人突破は、統計的に“プロジェクトの信頼性”を示す数値でもある。
……ここまで伸びると思っていなかった」
(……本当に、誰一人欠けてもここまで来られなかった)
だが――同時に、画面に突き刺さるようなコメントも混ざっていた。
『高校生がここまで金集めて大丈夫?』
『責任持てるの?』
『最初は盛り上がるけどすぐ飽きるでしょ』
『スポンサーだまされるなよ』
一瞬、心臓が冷たくなった。
相川が俺の視線に気づき、静かに言う。
「佐久間。
これが“注目される”ってことだ」
三橋も腕を組む。
「むしろ批判が出てきたってことは……ようやく“本物扱い”され始めたってことだろ」
篠宮もうなずく。
「肯定だけの世界は存在しない。前に進むほど、雑音も増える」
そして佐藤が――拳で自分の胸を軽く叩いた。
「でもよ、こんだけ応援してくれてる人がいるんだぜ?
“好き勝手言うやつ”より、“本気で支えてくれてるやつ”のほうが圧倒的に多いだろ」
……その通りだ。
俺は深く息を吸い、クラファンの画面を見つめ直した。
支援者の名前。
コメント。
応援のスタンプ。
【頑張ってください】
【応援してます】
【子どもと一緒に使いたいです】
【努力が可視化されるのは素晴らしい】
【未来を見せてください】
(……こんなに、俺たちを信じてくれる人がいるんだ)
心のざわつきは、ゆっくりと温かいものに変わった。
―
相川がノートPCの画面をこちらに向け、軽く指で示した。
「ここから――第五段階に移行する」
三橋が身を乗り出す。
「第五段階って、つまり“アプリ版をちゃんと形にする段階”ってことですよね?」
「ああ。今までは準備段階だったけど、ここからは“完成に向けて動き出す”ってところだ」
相川の画面には、手書きのスケジュール表を写した写真が映っていた。
黒いマーカーで、シンプルに三つだけ書かれている。
【2月:アプリの画面づくりを固める】
【3月:試しに動かして、バグ直し】
【4月:正式リリース】
「難しいことは全部俺がやるから安心しろ」
相川が笑う。
「ただ、みんなにも“やってほしいこと”が増える」
「……間に合うのか?」
佐藤が息をのむ。
相川は、ほんの少し誇らしげに言った。
「間に合わせるんだよ。俺たちで」
三橋が腕を組み、ふっと笑う。
「手伝うこと、山ほどありそうだな」
「お前には“広報”を中心に任せる」
相川が言うと、三橋は軽く顎を引いた。
「任された」
篠宮は資料を閉じて立ち上がった。
「僕は資金管理と、リリース後の運営プランを再計算する。
クラファンで200万以上集まって――
総資金が300万を超えた。
選べる手が、一気に増えた」
佐藤は拳を握りしめる。
「じゃあ俺は……営業とSNSと現場!
全部回す!!」
――そして全員の視線が、俺に向く。
相川が静かに言う。
「佐久間。
“代表”として、お前のやることはただ一つだ」
三橋も続ける。
「進む方向を、はっきり示してくれ」
篠宮が軽くうなずく。
「その言葉で、チームが動く」
佐藤が笑って肩を叩く。
「リーダーの号令、頼むぞ!」
俺は、一度だけゆっくり息を吸い――
みんなの目をまっすぐ見返した。
「……わかった。
ここからは、リリースまで全力で駆け抜ける。
TRY-LOGを、ちゃんと世界に届けよう」
言葉にした瞬間、部屋の空気が引き締まるのがわかった。
相川が微笑んだ。
「よし。第五段階――開始だ」
(ここから、ほんとうに。
TRY-LOGの物語が“現実”になる)
―
相川の家を出ると、夜風が頬を切った。
空には薄く雲がかかり、街灯の光が滲んでいる。
帰り道、三橋が突然言った。
「……なぁ佐久間」
「ん?」
「お前、2月ってさ。なんか、特別じゃね?」
「特別?」
「ほら……バレンタインとか」
不意打ちすぎて言葉に詰まった。
後ろから佐藤が駆け寄ってきて、肩をどつく。
「おいおい俺たち、アプリのリリース準備で忙しいんだぞ?
チョコの心配してる暇あんのか?」
「いいじゃねえか。俺たち健全な高校生だろ?」
三橋が笑う。
その横で、篠宮が淡々と言う。
「……だが、2月は“節目”の月でもある。
人間関係も、挑戦も、動きやすい季節だ」
「お前は逆に固ぇよ!」
佐藤が突っ込み、四人の笑い声が夜道に溶けていく。
どこかで、未来が静かに高鳴った。
(よし。2月――全部を前に進める月にしよう)
TRY-LOGは“資金”という大きな壁を越えた。
次は――“リリース”という未来へ。
その先に、どんな景色があるのか。
まだ誰も知らない。
けれど胸の鼓動だけは、はっきりと言っていた。
――“クラス最底辺の俺が、ここまでこれた。
あとは、突き進むだけだ”。
風の匂いが、ほんの少し甘かった。
バレンタインが近い、冬の夜だった。
―
【Project Re:Try:“TRY-LOGリリース”/第五段階レポート】
※【 】内は今回上昇分
◆日時:2月2日
◆最終目標:TRY-LOGアプリ版、正式リリース
◆進行状況:Phase.05 開始
◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。
◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
行動指数(筋力):48.5
継続性(耐久力):42.0
構想力(知力) :43.2
共感力(魅力) :53.2
SP:51【+10】/スキル保持数:32
・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:93【+2】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:77【+3】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:65【+5】
・三橋 隼人(CMO/広報)/信頼度:65【+5】
◆資産状況
資金:735,000円
協賛金:500,000円
クラファン支援:2,020,000円
総資産:3,255,000円
(※開発・機材・広告の初期投資に充当予定)
◆進行状況
・クラウドファンディング目標金額 達成
・TRY-LOGアプリ版 制作中
◆次段階予定(Phase.05:正式リリースへ)
・TRY-LOGアプリ版 完成
・リリース告知動画制作
――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
三橋が加入してから、もう二週間が経っていた。
……正直、あっという間だった。
三橋は驚くほど自然にチームへ溶け込み、
相川とも佐藤とも篠宮とも――まるで前から一緒にいたみたいに会話が弾んでいる。
広報担当としての仕事も早かった。
動画の企画は次々に出てくるし、SNSの投稿も“刺さる言葉”を的確に選んでくれる。
クラファンの支援者は確実に増え、目標達成まであとわずか。フォロワーも順調に伸びている。
数字の上がり方が、明らかに変わったのがわかる。
(……三橋が入ってくれて、本当に良かった)
そんな実感が、じわじわ胸の奥に広がっていた。
―
教室に入ると、三橋が机に突っ伏していた。
その背中が、かすかに上下している。
「……おい、大丈夫か? 熱でも出た?」
三橋はゆっくり顔を上げた。
目の下には、しっかりとクマ。
「いや、ちがう……寝不足だよ。
広報って、部活とは違う意味でめちゃくちゃ疲れるんだな」
「ははっ。フル回転してるもんな、お前」
三橋は額を押さえながらも、口の端を上げた。
「ああ。でも――
ぶっちゃけ、めちゃくちゃ楽しいんだよな」
一拍置いて、素直に続けた。
「ありがとな、佐久間。
お前らとやっていると……なんか、前に進んでる感じがする」
俺は笑顔で言う。
「こっちこそ、ありがとな。
それと、疲れてるとこ悪いけど……相川先輩からグループチャット来てたぞ。
『次のギアに入る準備をする。放課後集合』だってさ」
その瞬間、三橋は椅子にもたれ、天井を仰いだ。
「おいおい……。俺、まだ休みねえのかよ……」
溜め息はついているのに、どこか嬉しそうだった。
―
その日の夕方。
静かな部屋に漂うコーヒーの匂いと、キーボードを叩く音。
その中心に、俺たち五人――Re:Tryの全メンバーが揃っていた。
机の中央には、プリントアウトされた最新のクラファンデータが置かれている。
【支援者:287人】
【総額:1,948,000円】
【達成率:97%】
相川が数字を指しながら言う。
「……あと5万ちょいだな。
このペースなら――今日中に“突破”する可能性は高い」
佐藤が身を乗り出す。
「うおお……マジで来たな、ここまで!
やべぇ、手ぇ震えてきた!」
篠宮は淡々としつつも、目だけはわずかに熱を帯びていた。
「達成した瞬間から第五段階に移ろう。
資金の配分、外注先との再交渉、テスト版の調整……
準備はすでに整えてある」
「4月リリースも、十分現実だな」
そう言った瞬間――
スマホが“ピコン”と軽く震えた。
俺は画面を見て、思わず息を呑んだ。
【支援者:288人 → 289人 → 290人】
【総額:1,990,000円 → 2,020,000円】
……達成率が、ゆっくりと100%を超えていく。
「……来た」
三橋が呟く。
「突破したぞ……! 佐久間……!」
次の瞬間、佐藤が叫ぶ。
「うおおおおおおおおッ!! マジかよ!!
ついに……目標金額、達成だあああああ!!」
相川が小さく笑い、篠宮は静かにうなずいた。
「おめでとう。これで――第五段階、正式に突入だ」
―
【クエスト達成】
タイトル:資金を集めろ
内容:クラウドファンディングを成功させ、目標金額200万円を達成せよ。
報酬:SP+10/信頼度(佐藤 大輝)+2/信頼度(相川 蓮)+3/信頼度(篠宮 智也)+5/信頼度(三橋 隼人)+5/カリスマ性Lv1→Lv2
―
部屋の空気が、一気に熱を帯びた。
TRY-LOGは、ついに“社会に応援されたプロジェクト”になった。
俺はみんなの顔を見渡して言った。
「……一か月もしないうちに、ここまで来られるなんて思わなかった。
本当に……ありがとう」
佐藤が両手を上げる。
「うおぉぉぉ! やったぞぉ!!」
三橋が椅子に寄りかかりながら、静かに笑う。
「まだ実感ねぇな……でも、すげぇことになってるのはわかる」
篠宮は画面をスクロールしながら言った。
「支援者300人突破は、統計的に“プロジェクトの信頼性”を示す数値でもある。
……ここまで伸びると思っていなかった」
(……本当に、誰一人欠けてもここまで来られなかった)
だが――同時に、画面に突き刺さるようなコメントも混ざっていた。
『高校生がここまで金集めて大丈夫?』
『責任持てるの?』
『最初は盛り上がるけどすぐ飽きるでしょ』
『スポンサーだまされるなよ』
一瞬、心臓が冷たくなった。
相川が俺の視線に気づき、静かに言う。
「佐久間。
これが“注目される”ってことだ」
三橋も腕を組む。
「むしろ批判が出てきたってことは……ようやく“本物扱い”され始めたってことだろ」
篠宮もうなずく。
「肯定だけの世界は存在しない。前に進むほど、雑音も増える」
そして佐藤が――拳で自分の胸を軽く叩いた。
「でもよ、こんだけ応援してくれてる人がいるんだぜ?
“好き勝手言うやつ”より、“本気で支えてくれてるやつ”のほうが圧倒的に多いだろ」
……その通りだ。
俺は深く息を吸い、クラファンの画面を見つめ直した。
支援者の名前。
コメント。
応援のスタンプ。
【頑張ってください】
【応援してます】
【子どもと一緒に使いたいです】
【努力が可視化されるのは素晴らしい】
【未来を見せてください】
(……こんなに、俺たちを信じてくれる人がいるんだ)
心のざわつきは、ゆっくりと温かいものに変わった。
―
相川がノートPCの画面をこちらに向け、軽く指で示した。
「ここから――第五段階に移行する」
三橋が身を乗り出す。
「第五段階って、つまり“アプリ版をちゃんと形にする段階”ってことですよね?」
「ああ。今までは準備段階だったけど、ここからは“完成に向けて動き出す”ってところだ」
相川の画面には、手書きのスケジュール表を写した写真が映っていた。
黒いマーカーで、シンプルに三つだけ書かれている。
【2月:アプリの画面づくりを固める】
【3月:試しに動かして、バグ直し】
【4月:正式リリース】
「難しいことは全部俺がやるから安心しろ」
相川が笑う。
「ただ、みんなにも“やってほしいこと”が増える」
「……間に合うのか?」
佐藤が息をのむ。
相川は、ほんの少し誇らしげに言った。
「間に合わせるんだよ。俺たちで」
三橋が腕を組み、ふっと笑う。
「手伝うこと、山ほどありそうだな」
「お前には“広報”を中心に任せる」
相川が言うと、三橋は軽く顎を引いた。
「任された」
篠宮は資料を閉じて立ち上がった。
「僕は資金管理と、リリース後の運営プランを再計算する。
クラファンで200万以上集まって――
総資金が300万を超えた。
選べる手が、一気に増えた」
佐藤は拳を握りしめる。
「じゃあ俺は……営業とSNSと現場!
全部回す!!」
――そして全員の視線が、俺に向く。
相川が静かに言う。
「佐久間。
“代表”として、お前のやることはただ一つだ」
三橋も続ける。
「進む方向を、はっきり示してくれ」
篠宮が軽くうなずく。
「その言葉で、チームが動く」
佐藤が笑って肩を叩く。
「リーダーの号令、頼むぞ!」
俺は、一度だけゆっくり息を吸い――
みんなの目をまっすぐ見返した。
「……わかった。
ここからは、リリースまで全力で駆け抜ける。
TRY-LOGを、ちゃんと世界に届けよう」
言葉にした瞬間、部屋の空気が引き締まるのがわかった。
相川が微笑んだ。
「よし。第五段階――開始だ」
(ここから、ほんとうに。
TRY-LOGの物語が“現実”になる)
―
相川の家を出ると、夜風が頬を切った。
空には薄く雲がかかり、街灯の光が滲んでいる。
帰り道、三橋が突然言った。
「……なぁ佐久間」
「ん?」
「お前、2月ってさ。なんか、特別じゃね?」
「特別?」
「ほら……バレンタインとか」
不意打ちすぎて言葉に詰まった。
後ろから佐藤が駆け寄ってきて、肩をどつく。
「おいおい俺たち、アプリのリリース準備で忙しいんだぞ?
チョコの心配してる暇あんのか?」
「いいじゃねえか。俺たち健全な高校生だろ?」
三橋が笑う。
その横で、篠宮が淡々と言う。
「……だが、2月は“節目”の月でもある。
人間関係も、挑戦も、動きやすい季節だ」
「お前は逆に固ぇよ!」
佐藤が突っ込み、四人の笑い声が夜道に溶けていく。
どこかで、未来が静かに高鳴った。
(よし。2月――全部を前に進める月にしよう)
TRY-LOGは“資金”という大きな壁を越えた。
次は――“リリース”という未来へ。
その先に、どんな景色があるのか。
まだ誰も知らない。
けれど胸の鼓動だけは、はっきりと言っていた。
――“クラス最底辺の俺が、ここまでこれた。
あとは、突き進むだけだ”。
風の匂いが、ほんの少し甘かった。
バレンタインが近い、冬の夜だった。
―
【Project Re:Try:“TRY-LOGリリース”/第五段階レポート】
※【 】内は今回上昇分
◆日時:2月2日
◆最終目標:TRY-LOGアプリ版、正式リリース
◆進行状況:Phase.05 開始
◆目的
「“努力の記録”を、“社会に届く形”へ昇華させる」
――“伝わる努力”から、“広がる努力”へ。
◆メンバー構成
・佐久間 陽斗(CEO/代表・企画)
行動指数(筋力):48.5
継続性(耐久力):42.0
構想力(知力) :43.2
共感力(魅力) :53.2
SP:51【+10】/スキル保持数:32
・佐藤 大輝(COO/営業統括)/信頼度:93【+2】
・相川 蓮(CTO/開発・解析)/信頼度:77【+3】
・篠宮 智也(CFO/財務)/信頼度:65【+5】
・三橋 隼人(CMO/広報)/信頼度:65【+5】
◆資産状況
資金:735,000円
協賛金:500,000円
クラファン支援:2,020,000円
総資産:3,255,000円
(※開発・機材・広告の初期投資に充当予定)
◆進行状況
・クラウドファンディング目標金額 達成
・TRY-LOGアプリ版 制作中
◆次段階予定(Phase.05:正式リリースへ)
・TRY-LOGアプリ版 完成
・リリース告知動画制作
――これは報告書でもあり、“未来へ進むためのログ”でもある。
(記録者:佐久間 陽斗)
21
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。
しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。
やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。
一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。
これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~
夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。
「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。
だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに!
サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!
職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります
チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます!
ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。
この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。
戦闘力ゼロ。
「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」
親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。
「感謝するぜ、囮として」
嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。
そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。
「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」
情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。
かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。
見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる