負けヒロイン共、謎を追う

ほがらかまつぼ

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プロローグ「日常」

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──暑い。うるさい。腹が立つ。
ジリジリと肌を蝕む日差しと発情するセミの声を浴び、公園のフェンスに寄りかかること5分。
そろそろアイツが来るような気がしたから、汗拭きシートを取り出して、汗を拭った。
あまりにも日差しが目を焼いてくるものだから、瞼を閉じたところで、こちらに近づく足音が聞こえてきた。ドクンと心臓が大きく鳴る。

「なぁんだ。ネムりんだけかぁ」
「……こっちのセリフよ」

ふざけたあだ名で私を呼び、気の抜けた声で失礼な挨拶をかましてきたのは、もちろん待っていた人物なぞではない。
ライバルの、憎き女。調行《しらゆき》林檎《りんご》だった。

「何時から待ってたの~?」
「今来たところよ」
「うっそだぁ。背中汗染みてるじゃん」
「今拭いたんだからかいてるわけないでしょ!?どこ見てんのよ」
「あ、やっぱそうだったんだ。嘘嘘、汗なんてかいてないよ。ブラフブラフ」
「は!?騙したわけ⁉︎」
「制汗剤の匂いがしたから、そうなのかなーって思ってカマかけてみただけだよ」

コイツの弱点も探ってやろうと横目で睨みながら観察する。こんなに暑いのに、病的なまでの白い肌は汗ひとつ吹き出していない。長くて黒い髪の毛をまとめずに腰まで垂らしているというのになぜだか涼しげにすら見えるのが腹たつ。

「探偵部たるもの日々の観察は怠らないのだー」
「日常の必要ないところで、そういうことされるのが一番イラつく。だからアンタ友達いないのよ」
「別にいいし。おーくんがいれば……」

本当だったら一秒でも早くこの腹の立つ女を置いて学校に向かいたいものだ。しかし、残念ながら、待ち人は同じ。お互いこの場から離れられない。
林檎とくだらない口論に発展しそうになった時、何人分かの走る音が聞こえてきた。足音ですぐにわかる。

「遅いわよ!ノロマ!この私に遅刻させる気?」

口から出た言葉は、いつも通りだっただろうか。
ツンとした内容の割に、自分でもわかるぐらい浮かれた声が出ていたかもしれない。

「おーくん♡おはよ♡会いたかったよ~♡」

さっきまでの気だるげな喋り方をかなぐり捨てて糖度100パーセントの甘い声で林檎が、その男に駆け寄った。

「おはよう!ネム!林檎!暑い中ご苦労!」

彼こそが、私たちの待ち人。音木桜路《おとぎ おうじ》。
野暮ったい眼鏡に少し太めの男らしい眉毛。対して顔はやや童顔で幼さが残る。どこか頼りない私達探偵部の部長。多分林檎の恩人。そして私の幼馴染。

「ご苦労じゃない!まずは謝りなさいよバカ」
「遅くなってごめん!泡歌と一緒に先ほど道に迷っていたご婦人を助けていたんだ!」

相変わらずお人好しな男だ。学校に来るまでに人助けをしているなんて。らしいけども。

「おーい泡歌、お前も遅刻するぞ!」

そして桜路は笑いながら、振り返った。

「わ~~!待たせてごめんね!みんな~!」

数歩遅れて来た少女は、謎の天然転校生、泡歌《あわか》。

「暑い中、ありがとね?桜路くんと一緒にジュース奢るから許して~!」
「俺もか!?勝手に決めるなよ!」

ふわふわとテディベアのような髪をはためかせてあらわれた彼女は、いかにも無害な笑みを浮かべて、アホみたいにおどけるのだった。

ある日突然現れた彼女は瞬く間に桜路と仲良くなり、私たち4人を合わせて探偵部を作り上げた、このメンバーのムードメーカーみたいな存在の女だ。

「さっすがぁ、朝から探偵部の活動なんて精がでるね~♡さっすがぁ♡」
「ふんっ、人助けで自分が遅刻しそうになるなんて、探偵部っていうか、お人好し部ね、これじゃあ」
「いやぁ、耳が痛い!君たちまで走らせることになるとは」
「これはこれでなんか青春って感じでよくない?走ろ~!」

泡歌の呼びかけによって、クソ暑い中学校に向かって一斉に走り出す。

探偵部とは名ばかりの人助けばっかりしている変な部活だった。
常にドタバタして、平穏な日常なんかとほど遠い学校生活になってしまったけれど、泡歌の言う通り、これはこれで青春って感じがして、まぁ、それなりに楽しかった。

──半年後、泡歌によって私たちはバラバラになるわけだけど
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