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恋人編
3.花火の光と
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祭りを堪能しつつ花火会場へ向かっている。
その途中で花火がもう間もなく始まるというアナウンスが流れた。
「こりゃ出遅れたか」
観覧場所が近付くなるにつれ人が増え、今は前にも中々進まない。
この人混みじゃ手を繋ぐのも難しいな。なら……。
「響也、こっち行こう。すみません!抜けます通してください!」
響也の手を引いて列から逆らい人混みの端を目指すけど、何せ2人の手を引いた状態じゃもみくちゃにされて中々に進まない。てか尊潰れてる!?
「尊いったん上げるぞ」
響也と繋いでいた手を一旦放して尊の脇に背中側から手を差し込む。
俺が何をするか気付いた響也が俺の前に立って少し空間に余裕を作ってくれた。その隙に一気に腕を上げてそのまま俺の頭上を過ぎて落とす。そう、肩車だ。
「侑真パパ!?」
流石に尊は恥ずかしいのか頭上でワタついてるのがわかる。
「すまん。人混みを抜けるまでの辛抱だ。響也行こう」
直ぐに響也の手を引いて人の波を掻き分けて何とか人混みから抜ける事に成功した。ていうか恥ずかしがる尊を見た人達が微笑ましく笑いながら道を開けてくれた。有難いことだ。
「どうするんだい?会場はあちらだろう」
響也が今まで向かっていた先を指して言うのに俺はニヤリと笑って返した。
「ここで問題です。花火打ち上げ場所は〇〇湖。ここはその一画にある神社です。そして他の場所はどうなっているでしょう?」
早く降ろしてと頭をぽくぽく叩く尊に寂しさを覚えつつも降ろしながら問う。
地に足を付けた尊は何かに気付いたのか「あ」と声を上げた。
「湖の周りに広がる森林だけど、一か所だけ高くなってる場所がある」
そう。木も草も生い茂っているからあまり人は寄り付かないけど、神社の人が通る程度の小道がある。そこには本堂とは別の祠がある。祠以外何もないから忘れがちだけど、花火を見るには十分だろう。
3人揃って頷いた俺達は、人の流れと逆向きに急いで向かった。
屋台が並ぶのは神社入り口から花火会場にかけてだ。本堂付近は屋台はなく、木々が花火を見るのに阻害している為閑散としている。その木々の間に申し訳程度の道を見つけて急いで上がれば祠にも既に先客がいた。
まあ、それでもあの人混みを行くより確実に良い席で見れる。
「地元の人だろうね」
冷静に分析するのは響也だ。
「だろうな。後は常連」
湖に近い場所はもう何組かが占領してる。祠付近で良さげな場所を探していれば切り株を見つけた。
湖からは少し離れるけど祠の周りは木があまり生えていないから良いだろう。それより歩き通しの響也が休める方が良いしな。
「祠から湖が一望出来る」
尊の言葉に池に目を向ければ、観覧場所に灯された明かりの反射で湖の水が煌めいているのが見えた。
「この祠の為に日当たりを確保しているのだろうな」
響也が祠に手を合わせてから切り株に座った。
俺と尊も習って手を合わせて座る。
「木を切るのはイメージと逆だけどなぁ」
むしろ大事にしてんじゃないのか?
腑に落ちなくて呻る俺の裾を、尊が引っ張った。
「ん?どうした?」
「多分この切り株は仕方なかったんだよ。だって所々に焦げた跡と引き裂かれた跡が残ってる。火事だと祠も無事じゃなさそうだし、落雷かも」
尊が撫でている場所は成程確かに黒くなっている。陽が沈んでいるからここまで近くで見ないと気付かないけど、尊は俺達より切り株に目線が近い。だから気付いたんだろうな。
「そっか。じゃあこれ以上痛い思いしない様に優しく座ってような」
「うん」
尊の頭を撫でれば殊勝な顔で頷き、そしてもう一度焦げ跡を撫でていた。
アナウンスが流れる。一発目が打ちあがるらしい。
俺達は尊を真ん中にして座って湖を見る。少しの間があって光の筋が空に向かってヒュルルと上がっていった。光が一瞬消えて……。
ドン!!
花火が夜空を彩るのと、音と、そして振動がほぼ同時に胸を打っていった。
続けて何発か上がり、そして一旦止まった。
次の花火の説明がアナウンスされ始めた事で間が出来た間に何か話そうかと響也を見る。意気揚々と声を掛けようとした俺はそのまま固まった。
何も言えずにいる間にアナウンスは終わったらしい。次の打ち上がる音が聞こえてきたが、それでも俺は動けずにいる。そのまま花火が開き……。
ズドン!!
さっきよりも大きな花火の光が、響也の惚けている顔を明るく照らした。
その途中で花火がもう間もなく始まるというアナウンスが流れた。
「こりゃ出遅れたか」
観覧場所が近付くなるにつれ人が増え、今は前にも中々進まない。
この人混みじゃ手を繋ぐのも難しいな。なら……。
「響也、こっち行こう。すみません!抜けます通してください!」
響也の手を引いて列から逆らい人混みの端を目指すけど、何せ2人の手を引いた状態じゃもみくちゃにされて中々に進まない。てか尊潰れてる!?
「尊いったん上げるぞ」
響也と繋いでいた手を一旦放して尊の脇に背中側から手を差し込む。
俺が何をするか気付いた響也が俺の前に立って少し空間に余裕を作ってくれた。その隙に一気に腕を上げてそのまま俺の頭上を過ぎて落とす。そう、肩車だ。
「侑真パパ!?」
流石に尊は恥ずかしいのか頭上でワタついてるのがわかる。
「すまん。人混みを抜けるまでの辛抱だ。響也行こう」
直ぐに響也の手を引いて人の波を掻き分けて何とか人混みから抜ける事に成功した。ていうか恥ずかしがる尊を見た人達が微笑ましく笑いながら道を開けてくれた。有難いことだ。
「どうするんだい?会場はあちらだろう」
響也が今まで向かっていた先を指して言うのに俺はニヤリと笑って返した。
「ここで問題です。花火打ち上げ場所は〇〇湖。ここはその一画にある神社です。そして他の場所はどうなっているでしょう?」
早く降ろしてと頭をぽくぽく叩く尊に寂しさを覚えつつも降ろしながら問う。
地に足を付けた尊は何かに気付いたのか「あ」と声を上げた。
「湖の周りに広がる森林だけど、一か所だけ高くなってる場所がある」
そう。木も草も生い茂っているからあまり人は寄り付かないけど、神社の人が通る程度の小道がある。そこには本堂とは別の祠がある。祠以外何もないから忘れがちだけど、花火を見るには十分だろう。
3人揃って頷いた俺達は、人の流れと逆向きに急いで向かった。
屋台が並ぶのは神社入り口から花火会場にかけてだ。本堂付近は屋台はなく、木々が花火を見るのに阻害している為閑散としている。その木々の間に申し訳程度の道を見つけて急いで上がれば祠にも既に先客がいた。
まあ、それでもあの人混みを行くより確実に良い席で見れる。
「地元の人だろうね」
冷静に分析するのは響也だ。
「だろうな。後は常連」
湖に近い場所はもう何組かが占領してる。祠付近で良さげな場所を探していれば切り株を見つけた。
湖からは少し離れるけど祠の周りは木があまり生えていないから良いだろう。それより歩き通しの響也が休める方が良いしな。
「祠から湖が一望出来る」
尊の言葉に池に目を向ければ、観覧場所に灯された明かりの反射で湖の水が煌めいているのが見えた。
「この祠の為に日当たりを確保しているのだろうな」
響也が祠に手を合わせてから切り株に座った。
俺と尊も習って手を合わせて座る。
「木を切るのはイメージと逆だけどなぁ」
むしろ大事にしてんじゃないのか?
腑に落ちなくて呻る俺の裾を、尊が引っ張った。
「ん?どうした?」
「多分この切り株は仕方なかったんだよ。だって所々に焦げた跡と引き裂かれた跡が残ってる。火事だと祠も無事じゃなさそうだし、落雷かも」
尊が撫でている場所は成程確かに黒くなっている。陽が沈んでいるからここまで近くで見ないと気付かないけど、尊は俺達より切り株に目線が近い。だから気付いたんだろうな。
「そっか。じゃあこれ以上痛い思いしない様に優しく座ってような」
「うん」
尊の頭を撫でれば殊勝な顔で頷き、そしてもう一度焦げ跡を撫でていた。
アナウンスが流れる。一発目が打ちあがるらしい。
俺達は尊を真ん中にして座って湖を見る。少しの間があって光の筋が空に向かってヒュルルと上がっていった。光が一瞬消えて……。
ドン!!
花火が夜空を彩るのと、音と、そして振動がほぼ同時に胸を打っていった。
続けて何発か上がり、そして一旦止まった。
次の花火の説明がアナウンスされ始めた事で間が出来た間に何か話そうかと響也を見る。意気揚々と声を掛けようとした俺はそのまま固まった。
何も言えずにいる間にアナウンスは終わったらしい。次の打ち上がる音が聞こえてきたが、それでも俺は動けずにいる。そのまま花火が開き……。
ズドン!!
さっきよりも大きな花火の光が、響也の惚けている顔を明るく照らした。
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