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恋人編
11.大掃除
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冬期休暇に入って初めに大掃除を始めた。
響也と尊も手伝いに来てくれてる。掃除は情操教育に良いという家訓で育った俺としては大歓迎だ。
「それじゃあ俺は換気扇とキッチン周りをやるから尊と響也は窓を頼む」
「任せてくれ」
「任せて」
簡単にやり方を教えれば頭の良い2人は手際よくこなしていく。
それじゃ俺はこっちを片付けようかね。
掃除用に汚れても良い恰好で腕まくりをする。換気扇を外し、油汚れは浸け洗いしておく。その間に周りを片付けて、と。
自らの手で綺麗になっていくキッチンからは部屋の窓が良く見える。毎年独りでやっていた大掃除を大好きな人達と出来るってこんなに楽しいものだったんだ。
いつもより捗る大掃除はあっという間に終わりを告げた。
「いつもより早く終えたな」
「力になれたなら良かった」
綺麗になったリビング兼ダイニングのソファで一息吐いている俺と響也。尊は初めて俺の家に来て興奮しているのか、目を輝かせて窓から見える景色を堪能している。
ふっふっふ。何気に景色良かろう。一軒家には無い高さだからな。
「尊が戻って来てからは久し振りだったけれど、君の部屋は居心地が良い」
だらけるなんてことが無い響也だけど気は抜いてくれているんだろう。顔付きが穏やかだ。
何の変哲もない一般の成人男性の部屋だけど、堅苦しい環境で過ごして来た響也にはそれが良いらしい。
でもそれもいつまでこうしていられるのか。
「本当に良いのか?」
「勿論。君さえ良ければだけれど」
先日親に挨拶に行こうという話が出て、もし両親に受け入れられたならという条件で出た提案。
「俺は嬉しいさ。響也と長く共にありたいと思う位には好きなんだから」
「ありがとう。私も同じ気持ちだよ。私だけでなく、血も繋がらない尊にまで愛情を注いでくれる君だからこそ共にありたいと思っている」
同棲。することになるかもしれない。
ワクワクと期待に胸躍る展開。不安と希望がない交ぜにになって心を乱す。
ただ、そうなったら両親だけでなく会社にも伝える必要がある。何せ住所変更の手続きをしないといけないし。ただのルームシェアって話で終わらせる手も有るけど、俺は響也とのことを誤魔化したくなかった。
反発はあるだろう。それによって職を失う可能性だってある。
それでも俺は今まで会社で築いてきた人間関係を信じたい。良い職場だから大学卒業してから今までずっと今の職場で働けていたのだから。
友人の中にはブラック企業に当たって早々に職を変えた奴もいる。そう考えれば俺はとても幸せな環境にいるんだなと実感する。
ま、なるようになる。だ。
職を失うならいっそのこと響也と尊を攫ってカナダにでも引っ越そうか。半分本気で笑い交じりに考えたそれは、でも実現はしないだろう。
響也があの場所を大切にしているのを知ったから。
「私の両親へは冬期休暇のうちに行くとして、問題は君の家か」
「結構な豪雪地帯だからなぁ。行くなら落ち着いてからの方が良いと思う」
せめてスキー観光が盛んな場所なら真冬でも行きやすいのに。
なにより尊に雪遊びさせたい。
「て訳でうちは3月以降にするか降雪の具合を見ながら行くかだな」
「あまり降らない年もあるのだったか」
「そう。かと思えば記録的な大豪雪になったりな」
高床式な建て方なのに2階上まできたこともある。あの時は毎朝の雪掻きが大変だった。
「まあそれとなく話は通しておく。てか折角だから内堀を埋めに行く」
「内堀……」
変な日本語を使ったけど響也には伝わったようだ。
困った顔でクツクツと笑みを漏らしている。
「侑真は本当に頼もしいね」
「響也と肩を並べられる人でありたいからな」
ニッと歯を出して笑うと響也も微笑みを返してくれる。
そうして俺達の距離は縮まり、もう直ぐ唇が付きそうという所で視線を感じた。
ピタリと止めて視線の元にゆっくり振り向く。
「あ。気にせず続けて」
そこにはとても興味深々といった風の尊がカーテンに隠れ、顔だけだした状態でいた。
ヤバい。ヤバい。この先は尊の前じゃ刺激が強いよな。
俺はニッコリとした笑顔を尊に向けて、ゆっくりと響也から離れた。
「あー、なー、ああ、そうそう。良く年末のチケット取れたな」
尊のジト目から逃れようと言葉を探し、ふと思い浮かんだことを言う。
響也も表情をキリリとさせて「んん」と咳払いをしてその場の空気を誤魔化している。
「伝手があってね、空いているフライトを紹介して貰えたんだ」
どうしよう。尊の顔がチベットスナギツネになっていく。
「そうなんだ。良い知人だな。な、尊。向こうへ行ったら何がしたい?」
無理矢理会話の主導権を尊に持っていけば、尊も仕方ないなという顔をアリアリと見せて話に乗ってくれたのだった。
響也と尊も手伝いに来てくれてる。掃除は情操教育に良いという家訓で育った俺としては大歓迎だ。
「それじゃあ俺は換気扇とキッチン周りをやるから尊と響也は窓を頼む」
「任せてくれ」
「任せて」
簡単にやり方を教えれば頭の良い2人は手際よくこなしていく。
それじゃ俺はこっちを片付けようかね。
掃除用に汚れても良い恰好で腕まくりをする。換気扇を外し、油汚れは浸け洗いしておく。その間に周りを片付けて、と。
自らの手で綺麗になっていくキッチンからは部屋の窓が良く見える。毎年独りでやっていた大掃除を大好きな人達と出来るってこんなに楽しいものだったんだ。
いつもより捗る大掃除はあっという間に終わりを告げた。
「いつもより早く終えたな」
「力になれたなら良かった」
綺麗になったリビング兼ダイニングのソファで一息吐いている俺と響也。尊は初めて俺の家に来て興奮しているのか、目を輝かせて窓から見える景色を堪能している。
ふっふっふ。何気に景色良かろう。一軒家には無い高さだからな。
「尊が戻って来てからは久し振りだったけれど、君の部屋は居心地が良い」
だらけるなんてことが無い響也だけど気は抜いてくれているんだろう。顔付きが穏やかだ。
何の変哲もない一般の成人男性の部屋だけど、堅苦しい環境で過ごして来た響也にはそれが良いらしい。
でもそれもいつまでこうしていられるのか。
「本当に良いのか?」
「勿論。君さえ良ければだけれど」
先日親に挨拶に行こうという話が出て、もし両親に受け入れられたならという条件で出た提案。
「俺は嬉しいさ。響也と長く共にありたいと思う位には好きなんだから」
「ありがとう。私も同じ気持ちだよ。私だけでなく、血も繋がらない尊にまで愛情を注いでくれる君だからこそ共にありたいと思っている」
同棲。することになるかもしれない。
ワクワクと期待に胸躍る展開。不安と希望がない交ぜにになって心を乱す。
ただ、そうなったら両親だけでなく会社にも伝える必要がある。何せ住所変更の手続きをしないといけないし。ただのルームシェアって話で終わらせる手も有るけど、俺は響也とのことを誤魔化したくなかった。
反発はあるだろう。それによって職を失う可能性だってある。
それでも俺は今まで会社で築いてきた人間関係を信じたい。良い職場だから大学卒業してから今までずっと今の職場で働けていたのだから。
友人の中にはブラック企業に当たって早々に職を変えた奴もいる。そう考えれば俺はとても幸せな環境にいるんだなと実感する。
ま、なるようになる。だ。
職を失うならいっそのこと響也と尊を攫ってカナダにでも引っ越そうか。半分本気で笑い交じりに考えたそれは、でも実現はしないだろう。
響也があの場所を大切にしているのを知ったから。
「私の両親へは冬期休暇のうちに行くとして、問題は君の家か」
「結構な豪雪地帯だからなぁ。行くなら落ち着いてからの方が良いと思う」
せめてスキー観光が盛んな場所なら真冬でも行きやすいのに。
なにより尊に雪遊びさせたい。
「て訳でうちは3月以降にするか降雪の具合を見ながら行くかだな」
「あまり降らない年もあるのだったか」
「そう。かと思えば記録的な大豪雪になったりな」
高床式な建て方なのに2階上まできたこともある。あの時は毎朝の雪掻きが大変だった。
「まあそれとなく話は通しておく。てか折角だから内堀を埋めに行く」
「内堀……」
変な日本語を使ったけど響也には伝わったようだ。
困った顔でクツクツと笑みを漏らしている。
「侑真は本当に頼もしいね」
「響也と肩を並べられる人でありたいからな」
ニッと歯を出して笑うと響也も微笑みを返してくれる。
そうして俺達の距離は縮まり、もう直ぐ唇が付きそうという所で視線を感じた。
ピタリと止めて視線の元にゆっくり振り向く。
「あ。気にせず続けて」
そこにはとても興味深々といった風の尊がカーテンに隠れ、顔だけだした状態でいた。
ヤバい。ヤバい。この先は尊の前じゃ刺激が強いよな。
俺はニッコリとした笑顔を尊に向けて、ゆっくりと響也から離れた。
「あー、なー、ああ、そうそう。良く年末のチケット取れたな」
尊のジト目から逃れようと言葉を探し、ふと思い浮かんだことを言う。
響也も表情をキリリとさせて「んん」と咳払いをしてその場の空気を誤魔化している。
「伝手があってね、空いているフライトを紹介して貰えたんだ」
どうしよう。尊の顔がチベットスナギツネになっていく。
「そうなんだ。良い知人だな。な、尊。向こうへ行ったら何がしたい?」
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