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◇魔王サイド◇
折角ユタが我に気を許したというのに邪魔者が現れた。
転生勇者め。我をこのような秘島に封じ込めただけでなく、我とユタとの時間まで奪おうとするとは。矢張り万死を与えて然るべきか。
しかしユタと出会えたのもあ奴のお陰とも言える。何よりユタが嫌がる事をしたくは無いのだ。
だというのに当のユタ本人が我の心に揺さ振りを掛ける。
何故あ奴に笑みを向けるのだ!?我には初めは見せていなかったというのに!
我は転生勇者が憎くて堪らない。ユタが見ていない隙にでも魚の餌にしてやろうか。
いや。この狭い島では直ぐにバレるな。
「はい。今日は夏野菜カレーだよ」
転生勇者と睨み合っていればユタがテーブルに料理を並べていく。
初めに使っていた一人用のテーブルと違い、今のテーブルは四人は余裕で座れる大きさだ。
大木の年輪を感じさせる輪切りのテーブル。元はそこに椅子が向かい合って配置してあった。それを少しずらして三人目の椅子を用意してある。その位置に湯気の立つカレー皿が置かれていく。
「ふおおおおおおっ!家カレーだ!家カレーだ!」
殺。
転生勇者め。情緒の欠片もないのか。
折角のユタの手作りカレーを味わいもせずガツガツと胃に流し込む姿に腹が立つ。
「っふ、あははっ。そんなに喜ばれたら気持ち良いよね」
「ユタ!?」
くそっ、さっきまではあれほど転生勇者を恐れていたのに変わり身が早くないか?
ユタはユタで転生勇者如きに満更でもない笑顔を見せよってからに。
今まではユタの笑顔を見るだけで満足していたが、これは矢張り立場と言うものをわからせねばなるまい。今晩は久し振りにその身に快楽の味を刷り込んでくれよう。
くっくっく。多少とはいえ時を開けての快楽。今度こそユタは我が手に落ちる事間違いなしだ。
「は?何。魔王とユタって一緒に寝てんの?キモ」
殺。
転生勇者にそれぞれの寝床を説明したユタに対する暴言。許し難し。我と褥を共に出来るは至高の褒章足り得るというものよ。
いやしかし今のでこ奴は男は対象外だとわかったな。良かった。これでユタが盗られる心配はないというもの。
……。良かった?
我は何を考えておるのだ。ユタが盗られてなんだというのだ。転生勇者如きに遅れを取る我でもないしな。何なら慰み程度なら転生勇者を抱いて……。
無理だ。ユタ以外を抱くなど考えられん。
我はどうしたというのだ。
こんな事は初めてだ。
くっ。城にいた頃は向かって来る者共を我が手腕で快楽に堕としてやっていたというのに。
今はユタ以外に触れたくない。
「やっぱり変だよね。俺も一人で寝たいんだけどさ。魔王が離してくれないんだよ」
「うげぇ~。魔王って変態の上に粘着質かよ。やっぱ滅ぼした方が世の為じゃん」
「いや。それはやり過ぎ。魔王良い奴だよ。野菜ちゃん達のお世話も丁寧にしてくれるし」
ユタが我を褒め称えた。ユタが我を肯定する。
何と言う無上の幸福感であろうか。
我は転生勇者に対する怒りも忘れた。その視界には最早ユタしか入らぬ。
良く日に焼けたソバカスの散る明るい笑顔も、我が手によってサラサラと揺れる赤茶けた髪も、何より穏やかに煌めく空色の瞳も、全て我のものだ。
決して転生勇者などに、いや。他の誰であろうと渡してなるものか。
「ぶっは(笑)!魔王が!北の魔王が農作業!!」
殺。
腹を捩らせて笑いころける転生勇者には矢張り報復が必要な様だ。
「ねぇ?勇者君?何を笑っているのかな??野菜ちゃん達のお世話は笑う様な事かな?」
「イエトンデモゴザイマセン。ノウサギョウダイジデス。
だからカレーのお替りください!ママン!」
「誰がママだっ。あと此処にいる間は働かざる者食うべからず。勇者にも目いっぱい働いて貰うからな」
「うげ。俺、ニートした……イエヨロコンデハタラキマス」
初対面のその日に転生勇者を掌握するとは。流石我が見込んだ人間なだけはある。
放蕩息子の代表な表情をした転生勇者を、凍える笑みの一つで黙らせたユタに賞嘆する。
しかし仲良くなり過ぎでないか?
「あ。俺テン。宜しくな!」
お前の名前など興味無いわ。
「俺はユタだよ。宜しく」
ユタも先程まで恐怖していた相手に気安過ぎではないか??
この時、我はもやぁっとした気持ちと、テンに対する苛立ちと、我よりテンに近い場所に座っている気がしてならないユタを我の膝上に座らせテンを鼻で笑ってやりたい衝動で、史上最悪の気分の悪さを覚えたのだ。
折角ユタが我に気を許したというのに邪魔者が現れた。
転生勇者め。我をこのような秘島に封じ込めただけでなく、我とユタとの時間まで奪おうとするとは。矢張り万死を与えて然るべきか。
しかしユタと出会えたのもあ奴のお陰とも言える。何よりユタが嫌がる事をしたくは無いのだ。
だというのに当のユタ本人が我の心に揺さ振りを掛ける。
何故あ奴に笑みを向けるのだ!?我には初めは見せていなかったというのに!
我は転生勇者が憎くて堪らない。ユタが見ていない隙にでも魚の餌にしてやろうか。
いや。この狭い島では直ぐにバレるな。
「はい。今日は夏野菜カレーだよ」
転生勇者と睨み合っていればユタがテーブルに料理を並べていく。
初めに使っていた一人用のテーブルと違い、今のテーブルは四人は余裕で座れる大きさだ。
大木の年輪を感じさせる輪切りのテーブル。元はそこに椅子が向かい合って配置してあった。それを少しずらして三人目の椅子を用意してある。その位置に湯気の立つカレー皿が置かれていく。
「ふおおおおおおっ!家カレーだ!家カレーだ!」
殺。
転生勇者め。情緒の欠片もないのか。
折角のユタの手作りカレーを味わいもせずガツガツと胃に流し込む姿に腹が立つ。
「っふ、あははっ。そんなに喜ばれたら気持ち良いよね」
「ユタ!?」
くそっ、さっきまではあれほど転生勇者を恐れていたのに変わり身が早くないか?
ユタはユタで転生勇者如きに満更でもない笑顔を見せよってからに。
今まではユタの笑顔を見るだけで満足していたが、これは矢張り立場と言うものをわからせねばなるまい。今晩は久し振りにその身に快楽の味を刷り込んでくれよう。
くっくっく。多少とはいえ時を開けての快楽。今度こそユタは我が手に落ちる事間違いなしだ。
「は?何。魔王とユタって一緒に寝てんの?キモ」
殺。
転生勇者にそれぞれの寝床を説明したユタに対する暴言。許し難し。我と褥を共に出来るは至高の褒章足り得るというものよ。
いやしかし今のでこ奴は男は対象外だとわかったな。良かった。これでユタが盗られる心配はないというもの。
……。良かった?
我は何を考えておるのだ。ユタが盗られてなんだというのだ。転生勇者如きに遅れを取る我でもないしな。何なら慰み程度なら転生勇者を抱いて……。
無理だ。ユタ以外を抱くなど考えられん。
我はどうしたというのだ。
こんな事は初めてだ。
くっ。城にいた頃は向かって来る者共を我が手腕で快楽に堕としてやっていたというのに。
今はユタ以外に触れたくない。
「やっぱり変だよね。俺も一人で寝たいんだけどさ。魔王が離してくれないんだよ」
「うげぇ~。魔王って変態の上に粘着質かよ。やっぱ滅ぼした方が世の為じゃん」
「いや。それはやり過ぎ。魔王良い奴だよ。野菜ちゃん達のお世話も丁寧にしてくれるし」
ユタが我を褒め称えた。ユタが我を肯定する。
何と言う無上の幸福感であろうか。
我は転生勇者に対する怒りも忘れた。その視界には最早ユタしか入らぬ。
良く日に焼けたソバカスの散る明るい笑顔も、我が手によってサラサラと揺れる赤茶けた髪も、何より穏やかに煌めく空色の瞳も、全て我のものだ。
決して転生勇者などに、いや。他の誰であろうと渡してなるものか。
「ぶっは(笑)!魔王が!北の魔王が農作業!!」
殺。
腹を捩らせて笑いころける転生勇者には矢張り報復が必要な様だ。
「ねぇ?勇者君?何を笑っているのかな??野菜ちゃん達のお世話は笑う様な事かな?」
「イエトンデモゴザイマセン。ノウサギョウダイジデス。
だからカレーのお替りください!ママン!」
「誰がママだっ。あと此処にいる間は働かざる者食うべからず。勇者にも目いっぱい働いて貰うからな」
「うげ。俺、ニートした……イエヨロコンデハタラキマス」
初対面のその日に転生勇者を掌握するとは。流石我が見込んだ人間なだけはある。
放蕩息子の代表な表情をした転生勇者を、凍える笑みの一つで黙らせたユタに賞嘆する。
しかし仲良くなり過ぎでないか?
「あ。俺テン。宜しくな!」
お前の名前など興味無いわ。
「俺はユタだよ。宜しく」
ユタも先程まで恐怖していた相手に気安過ぎではないか??
この時、我はもやぁっとした気持ちと、テンに対する苛立ちと、我よりテンに近い場所に座っている気がしてならないユタを我の膝上に座らせテンを鼻で笑ってやりたい衝動で、史上最悪の気分の悪さを覚えたのだ。
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