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北の魔王に名前は無い。だから俺は魔王を魔王と呼んでいる。
そこに不便は無かったし、魔王にも不満は無い様子だった。あまりにも当たり前の事過ぎて。
「だって恋人なら自分だけの特別な愛称で呼ばれたいって思うだろ。魔王なんて掃いて捨てる程いるんだし、余計に」
「僕もテンを特別な名で呼びたいけど、君の名は短過ぎだよ」
“テン”だもんな。俺の“ユタ”もだけど、愛称にした方が長くなるって言う。いっそ前世の名で呼ぼうかとか言ってるヴェイズは置いといて。
「愛称……」
俺だけの呼称。
どうしよう。ちょっと、惹かれる。でも、魔王は呼ばせてくれるだろうか。今は好きだと言ってくれるけど、魔王にとっては瞬き程の時間しかいない俺に、その喜びをくれるのだろうか。
チラリと見た魔王の顔は……喜色に満ちていた。
「成程。ユタにだけ許す名か。良い、とても良いではないか」
同じ想いを抱いてくれた事に胸が熱くなった。
俺は、魔王にこんなにも大事に想って貰えている。それだけで幸せだ。
「よし、我は名などわからぬからな。ユタよ、我に名を与えてくれ。ユタだけの名を」
熱く手を握ってくる魔王。その目はキラキラと輝いている。
名。名前……っていきなり言われても、そう簡単に思い付かないよ。
たじろぐ俺に、興味津々で聞き耳を立てるテン。それの目を塞ぎ抱き寄せるヴェイズ。腕に囲んで耳まで塞いでいる。グッジョブと言いたい。
なんか、ただの鍋パの筈なのに何で俺は今こんなにも追い詰められてる気分なんだろう。
俺だけの名前は俺だって欲しい。けど、そんな簡単に思い付くようなどうでも良さそうな名にはしたくない。それに今そんな感動的な場面を作れる状況と違う。
結果的に俺は、
「吟味させて欲しい」
この場を濁す事を選んだ。
「くふふふ。北の魔王が自分で付けるって選択肢も有ると思うけどねぇ」
おお。それはナイスアイディア!その案を採用
「我はユタに付けて欲しいのだ」
させてはくれませんか。そうですか。
まあ、俺としてもそこまで言われて吝かではありませんがね。そうまで言われちゃ余計に大切に決めていきたい。
この時から俺は魔王の名前に大いに悩む事になった。
何故なら俺に名付けのセンスが無かったからだ。
「ナスビちゃん。コーンちゃん。玉ちゃん」
「……流石に、それは」
ついうっかり野菜ちゃん達の名前になってしまう俺に、まさかのテンに真面目な顔で駄目出しされて凹んだ。
次の日から農作業に復帰したテンとその横に張り付いてテンの手伝いをするヴェイズ。別の場所での作業だった筈なのにいつの間にか背後にいて駄目出ししていく。キューちゃんやキャロちゃんもそうやって駄目出しされた。
わかってる。わかってるから一々駄目出ししていかないでくれ。凹むから。
「君は、大切な農作物に名を付ける時、何を思って付けている?」
おお、まさかのヴェイズからの助言だ。この人もテンさえ絡まなきゃ普通の人っぽいんだな。
「その子のイメージかな」
「なら、君にとっての魔王はどういうイメージかな?それを心で感じてごらんよ」
ふわりと笑みを浮かべてくれる様は成程、神様っぽい。全力でテンを囲って俺の視界から遠避けてなければ。
でも、そうか。俺にとっての魔王の、イメージ。それは……。
そこに不便は無かったし、魔王にも不満は無い様子だった。あまりにも当たり前の事過ぎて。
「だって恋人なら自分だけの特別な愛称で呼ばれたいって思うだろ。魔王なんて掃いて捨てる程いるんだし、余計に」
「僕もテンを特別な名で呼びたいけど、君の名は短過ぎだよ」
“テン”だもんな。俺の“ユタ”もだけど、愛称にした方が長くなるって言う。いっそ前世の名で呼ぼうかとか言ってるヴェイズは置いといて。
「愛称……」
俺だけの呼称。
どうしよう。ちょっと、惹かれる。でも、魔王は呼ばせてくれるだろうか。今は好きだと言ってくれるけど、魔王にとっては瞬き程の時間しかいない俺に、その喜びをくれるのだろうか。
チラリと見た魔王の顔は……喜色に満ちていた。
「成程。ユタにだけ許す名か。良い、とても良いではないか」
同じ想いを抱いてくれた事に胸が熱くなった。
俺は、魔王にこんなにも大事に想って貰えている。それだけで幸せだ。
「よし、我は名などわからぬからな。ユタよ、我に名を与えてくれ。ユタだけの名を」
熱く手を握ってくる魔王。その目はキラキラと輝いている。
名。名前……っていきなり言われても、そう簡単に思い付かないよ。
たじろぐ俺に、興味津々で聞き耳を立てるテン。それの目を塞ぎ抱き寄せるヴェイズ。腕に囲んで耳まで塞いでいる。グッジョブと言いたい。
なんか、ただの鍋パの筈なのに何で俺は今こんなにも追い詰められてる気分なんだろう。
俺だけの名前は俺だって欲しい。けど、そんな簡単に思い付くようなどうでも良さそうな名にはしたくない。それに今そんな感動的な場面を作れる状況と違う。
結果的に俺は、
「吟味させて欲しい」
この場を濁す事を選んだ。
「くふふふ。北の魔王が自分で付けるって選択肢も有ると思うけどねぇ」
おお。それはナイスアイディア!その案を採用
「我はユタに付けて欲しいのだ」
させてはくれませんか。そうですか。
まあ、俺としてもそこまで言われて吝かではありませんがね。そうまで言われちゃ余計に大切に決めていきたい。
この時から俺は魔王の名前に大いに悩む事になった。
何故なら俺に名付けのセンスが無かったからだ。
「ナスビちゃん。コーンちゃん。玉ちゃん」
「……流石に、それは」
ついうっかり野菜ちゃん達の名前になってしまう俺に、まさかのテンに真面目な顔で駄目出しされて凹んだ。
次の日から農作業に復帰したテンとその横に張り付いてテンの手伝いをするヴェイズ。別の場所での作業だった筈なのにいつの間にか背後にいて駄目出ししていく。キューちゃんやキャロちゃんもそうやって駄目出しされた。
わかってる。わかってるから一々駄目出ししていかないでくれ。凹むから。
「君は、大切な農作物に名を付ける時、何を思って付けている?」
おお、まさかのヴェイズからの助言だ。この人もテンさえ絡まなきゃ普通の人っぽいんだな。
「その子のイメージかな」
「なら、君にとっての魔王はどういうイメージかな?それを心で感じてごらんよ」
ふわりと笑みを浮かべてくれる様は成程、神様っぽい。全力でテンを囲って俺の視界から遠避けてなければ。
でも、そうか。俺にとっての魔王の、イメージ。それは……。
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