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この島には俺のお気に入りの場所がいくつも有る。
「魔王。今日さ、この後デートしよ」
秋の収穫もひと段落し、農具を片付けながら魔王を仰ぎ見て言った。冬が来れば多少なりとも雪が積もるから痛まない様に小屋に仕舞うのだ。
「喜んで行こう。
っふ、ユタからの誘いは何時でも嬉しいものだな」
うぐぅ。そのイケメンの笑みを仕舞って欲しい。俺は普通の村人なんだ。好きが爆発して死んでしまう。
魔王は俺からの誘いを断る事が無い。そしてその都度好きを前面に押し出した笑みをくれる。大分慣れたとはいえ、俺だけに向けられる特別な笑みは心臓にダイレクトに来るものだ。
いかん。今日はこれから大事な話をするんだ。
高鳴る鼓動を呼吸を整える事でなんとか抑えた。そしてニッコリと笑みを返す。俺が笑うと魔王は嬉しそうに目元を緩めた。
仕事で掻いた汗を流して着替えた俺達は、早速山に入って行った。
慣れた山道。俺達がいる住処の辺りは四季はあれど冬は短い。季節的には常春に近いかもしれない。それを数ある山のなかでも一番高い山を目指して登って行く。一番高いのに雪で白くなった事がないその山は、不思議と頂上に向かうにつれて植生が増えていく。初めてこの島に来た時に住処として検討した場所だ。
「この山は初めて登るな」
「うん。ここはちょっと神聖な感じがして、浮ついた気持ちでは入り辛いんだよね」
それがここを住処にしなかった一番の理由。住むには敷居が高過ぎた。
「ほう?」
魔王は興味を持って山の頂上を見上げた。でもこの山の上は年中雲に覆われていてここからじゃ様子を伺えない。
魔王も興味深く見てはいたけど詮索はしてこなかった。
道すがら久し振りに見る植物はやっぱり目移りする。恐れ多くて採取出来ないのが残念だ。
「珍しい。ユタが見るだけで満足するとは思えんのだが」
我慢してたら指摘されて、俺は「うぐぅ」と呻き声を上げて目をキュッと瞑った。
流石、俺を良くわかってる。
「言ったろ、神聖な感じするって。傷付けるなんて罰当たりじゃん」
そう。差し詰めこの山は野菜ちゃん達のユートピアなのだ。ここは愛でる為に存在するのだ。たわわに実る果実もうっとりした目で見ちゃうよな。うむ、良い色だ。
「成程?まあユタが良いなら我に否やは無いが」
片眉を上げて言う魔王。「神聖……ねぇ」とか呟いてるけど、そういえば魔王は魔王だった。神の対局の存在だった。
あれ?じゃあこの先ってもしかして連れて行かない方が良かった!?
途端に不安になる。
「そんな顔をするな。神と名が付くからと言って敵対している訳ではない。現にヴェイズとは既知であったであろう」
アワアワしだした俺の頭に、魔王がポンと手を乗せて撫でてくれる。
そうだよな。鍋パする位にはいがみ合ってる訳じゃないもんな。安心して笑顔で先を進めそうで良かった。
……。いや、待てよ?敵対してる訳じゃないとはいえ、俺が考えた事って……大丈夫かな?でもなぁ、俺にとってはもうそれしか考えられないしな。
……。良し!駄目出しされたらまた考え直そう!
「よーし!サクサク進もう!」
「魔王。今日さ、この後デートしよ」
秋の収穫もひと段落し、農具を片付けながら魔王を仰ぎ見て言った。冬が来れば多少なりとも雪が積もるから痛まない様に小屋に仕舞うのだ。
「喜んで行こう。
っふ、ユタからの誘いは何時でも嬉しいものだな」
うぐぅ。そのイケメンの笑みを仕舞って欲しい。俺は普通の村人なんだ。好きが爆発して死んでしまう。
魔王は俺からの誘いを断る事が無い。そしてその都度好きを前面に押し出した笑みをくれる。大分慣れたとはいえ、俺だけに向けられる特別な笑みは心臓にダイレクトに来るものだ。
いかん。今日はこれから大事な話をするんだ。
高鳴る鼓動を呼吸を整える事でなんとか抑えた。そしてニッコリと笑みを返す。俺が笑うと魔王は嬉しそうに目元を緩めた。
仕事で掻いた汗を流して着替えた俺達は、早速山に入って行った。
慣れた山道。俺達がいる住処の辺りは四季はあれど冬は短い。季節的には常春に近いかもしれない。それを数ある山のなかでも一番高い山を目指して登って行く。一番高いのに雪で白くなった事がないその山は、不思議と頂上に向かうにつれて植生が増えていく。初めてこの島に来た時に住処として検討した場所だ。
「この山は初めて登るな」
「うん。ここはちょっと神聖な感じがして、浮ついた気持ちでは入り辛いんだよね」
それがここを住処にしなかった一番の理由。住むには敷居が高過ぎた。
「ほう?」
魔王は興味を持って山の頂上を見上げた。でもこの山の上は年中雲に覆われていてここからじゃ様子を伺えない。
魔王も興味深く見てはいたけど詮索はしてこなかった。
道すがら久し振りに見る植物はやっぱり目移りする。恐れ多くて採取出来ないのが残念だ。
「珍しい。ユタが見るだけで満足するとは思えんのだが」
我慢してたら指摘されて、俺は「うぐぅ」と呻き声を上げて目をキュッと瞑った。
流石、俺を良くわかってる。
「言ったろ、神聖な感じするって。傷付けるなんて罰当たりじゃん」
そう。差し詰めこの山は野菜ちゃん達のユートピアなのだ。ここは愛でる為に存在するのだ。たわわに実る果実もうっとりした目で見ちゃうよな。うむ、良い色だ。
「成程?まあユタが良いなら我に否やは無いが」
片眉を上げて言う魔王。「神聖……ねぇ」とか呟いてるけど、そういえば魔王は魔王だった。神の対局の存在だった。
あれ?じゃあこの先ってもしかして連れて行かない方が良かった!?
途端に不安になる。
「そんな顔をするな。神と名が付くからと言って敵対している訳ではない。現にヴェイズとは既知であったであろう」
アワアワしだした俺の頭に、魔王がポンと手を乗せて撫でてくれる。
そうだよな。鍋パする位にはいがみ合ってる訳じゃないもんな。安心して笑顔で先を進めそうで良かった。
……。いや、待てよ?敵対してる訳じゃないとはいえ、俺が考えた事って……大丈夫かな?でもなぁ、俺にとってはもうそれしか考えられないしな。
……。良し!駄目出しされたらまた考え直そう!
「よーし!サクサク進もう!」
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