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後章
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「それじゃあ行ってきます」
「留守は頼むぞ」
一応秘島への行き方は公言を避けようという事で、世界樹の根がある部屋で数人だけに見送られている。
「あぁ~んっ、あたしも行きたかったわぁ」
「仕方ない。我等は世界樹の加護を持たぬ故、そこな精霊種の力でも行けぬ」
「せやなぁ、加護貰お思たら世界樹ん本体に行かなあかん言うし、やけ行けた言うても貰えるとは限らんしのう」
東西南の魔王は当然の顔して揃ってる。そして当然の様にガジュマが見えてる。
四大魔王全員がガジュマを認識したから、アクセルの臣下達も見えなくてもそこにいるのかと視線だけでキョロキョロ探してる。わかる。いるってわかってれば見えなくても探したくなるよな。
「留守中はお任せください。我等臣下一同最低限の業務だけ終わらせておきます」
「いや全部やっておけよ……。なあお前、ちょくちょく我に失礼でないか?」
「気の所為でございましょう。どうぞ、休みのない我々の分まで楽しんで来てください」
「当てつけか!休み位取ればよかろう、我は休むなとは言うておらんぞ」
「言っていなくとも実際に休める状況が無ければ休めません。結構な頻度で城を抜ける主がおりますと臣下は気が休まらぬのです」
「そっか……。ごめんなリュート、俺の我が儘でアクセル連れてく事になって……」
アクセルと竜種で秘書?なリュートが静かに言い争ってる。その内容に俺の方がしょんぼり肩を落とした。
「いいえ大丈夫でございますよ王妃陛下。貴方様のお陰でこれでも陛下は大分城に居てくれる様になりましたから。
それまではフラリといなくなることが多かったので」
「仕事は片付けているのだ、良いであろうが」
リュートがニッコリと慈愛に満ちた顔を俺に向けて恭しく礼を取ってくれる。アクセルにはすんとした無表情が多いから新鮮だ。
ほら、チラリとアクセルを一瞥する瞬間顔面表情筋が凍った。
「せめて一言声を掛けるか書置きをして行って欲しかったですね」
どこの子供だ。
疑わしい目でアクセルをじーっと見ると、アクセルは慌てた様子で俺に向き直った。
「今はきちんと言い置いて行っている」
「王妃陛下の教育の賜物ですね」
「お前は少し黙っておれ!」
「ねえ?アクセル」
「うん?何かなユタよ」
俺が名前を呼べばリュートに向けていた射貫く目を引っ込めて俺を熱く見つめて先を促してくれる。じゃあ、遠慮なく。
「あの人の名前、ちゃんとわかってる?」
俺がリュートを指して聞くと、アクセルは俺の目に静かな怒りを感じ取ったのかピシリと固まった。
こりゃ記憶してないな……、微かに揺れてる目が物語ってる。
「せめて近くにいる人の名前位は把握していようよ、リュートだよ。執事はセバスチャン。長い髪のメイドはゼミュラで短い髪のメイドはガーネットだ」
いつも俺のお世話をしてくれてる人の名前を上げればアクセルは神妙に頷いた。
「すまぬ。覚えた」
素直なアクセルが可愛くて、苦笑した俺はついほっぺにチューして……。しまった……東西南の魔王がいたんだった……。
してしまった後で我に返ってギギギっとお三方を見れば、ニヤリと意味深に笑われてた……。東の魔王だけは視線を逸らしてくれてたけど耳が赤いからばっちり見えていたようだ。俺のドチクショウ……。
因みに何でアクセルが側近の名前一つ知らないかっていうと、どうやらあれそれだけで誰が呼ばれているかわかっちゃう臣下の皆さんが、呼ばれた瞬間には目の前に現れてくれてたかららしい。有能過ぎるのも考え物なんだな。
「それじゃあリュート達のお休みは俺達が帰ったら順次取って貰うとして、今回は行ってくるね」
「「「いってらっしゃいませ」」」
俺が手を振ればアクセルの臣下一同深く頭を下げてお見送りしてくれた。
『挨拶はもーいぃのぉ?じゃー行くわよぉー♪』
準備が整ったと感じたガジュマ。自分が四大魔王と俺以外には見えないってわかってたから黙っててくれてたと気付く。
俺とアクセルが頷いて手を繋ぐ。俺は普通に繋ごうとしたけどアクセルに恋人繋ぎに直された。
それを確認したガジュマが頷き、
『そぉーれぇー♪』
隠されし秘島に行くには間の抜けた掛け声で、俺達は色は違うけど来た時と似た眩い光に包まれて目を瞑った。
そして目を開けた時には世界樹がその大きな幹を前面に迎えてくれていたのだった。
なんてあっけない……。
「留守は頼むぞ」
一応秘島への行き方は公言を避けようという事で、世界樹の根がある部屋で数人だけに見送られている。
「あぁ~んっ、あたしも行きたかったわぁ」
「仕方ない。我等は世界樹の加護を持たぬ故、そこな精霊種の力でも行けぬ」
「せやなぁ、加護貰お思たら世界樹ん本体に行かなあかん言うし、やけ行けた言うても貰えるとは限らんしのう」
東西南の魔王は当然の顔して揃ってる。そして当然の様にガジュマが見えてる。
四大魔王全員がガジュマを認識したから、アクセルの臣下達も見えなくてもそこにいるのかと視線だけでキョロキョロ探してる。わかる。いるってわかってれば見えなくても探したくなるよな。
「留守中はお任せください。我等臣下一同最低限の業務だけ終わらせておきます」
「いや全部やっておけよ……。なあお前、ちょくちょく我に失礼でないか?」
「気の所為でございましょう。どうぞ、休みのない我々の分まで楽しんで来てください」
「当てつけか!休み位取ればよかろう、我は休むなとは言うておらんぞ」
「言っていなくとも実際に休める状況が無ければ休めません。結構な頻度で城を抜ける主がおりますと臣下は気が休まらぬのです」
「そっか……。ごめんなリュート、俺の我が儘でアクセル連れてく事になって……」
アクセルと竜種で秘書?なリュートが静かに言い争ってる。その内容に俺の方がしょんぼり肩を落とした。
「いいえ大丈夫でございますよ王妃陛下。貴方様のお陰でこれでも陛下は大分城に居てくれる様になりましたから。
それまではフラリといなくなることが多かったので」
「仕事は片付けているのだ、良いであろうが」
リュートがニッコリと慈愛に満ちた顔を俺に向けて恭しく礼を取ってくれる。アクセルにはすんとした無表情が多いから新鮮だ。
ほら、チラリとアクセルを一瞥する瞬間顔面表情筋が凍った。
「せめて一言声を掛けるか書置きをして行って欲しかったですね」
どこの子供だ。
疑わしい目でアクセルをじーっと見ると、アクセルは慌てた様子で俺に向き直った。
「今はきちんと言い置いて行っている」
「王妃陛下の教育の賜物ですね」
「お前は少し黙っておれ!」
「ねえ?アクセル」
「うん?何かなユタよ」
俺が名前を呼べばリュートに向けていた射貫く目を引っ込めて俺を熱く見つめて先を促してくれる。じゃあ、遠慮なく。
「あの人の名前、ちゃんとわかってる?」
俺がリュートを指して聞くと、アクセルは俺の目に静かな怒りを感じ取ったのかピシリと固まった。
こりゃ記憶してないな……、微かに揺れてる目が物語ってる。
「せめて近くにいる人の名前位は把握していようよ、リュートだよ。執事はセバスチャン。長い髪のメイドはゼミュラで短い髪のメイドはガーネットだ」
いつも俺のお世話をしてくれてる人の名前を上げればアクセルは神妙に頷いた。
「すまぬ。覚えた」
素直なアクセルが可愛くて、苦笑した俺はついほっぺにチューして……。しまった……東西南の魔王がいたんだった……。
してしまった後で我に返ってギギギっとお三方を見れば、ニヤリと意味深に笑われてた……。東の魔王だけは視線を逸らしてくれてたけど耳が赤いからばっちり見えていたようだ。俺のドチクショウ……。
因みに何でアクセルが側近の名前一つ知らないかっていうと、どうやらあれそれだけで誰が呼ばれているかわかっちゃう臣下の皆さんが、呼ばれた瞬間には目の前に現れてくれてたかららしい。有能過ぎるのも考え物なんだな。
「それじゃあリュート達のお休みは俺達が帰ったら順次取って貰うとして、今回は行ってくるね」
「「「いってらっしゃいませ」」」
俺が手を振ればアクセルの臣下一同深く頭を下げてお見送りしてくれた。
『挨拶はもーいぃのぉ?じゃー行くわよぉー♪』
準備が整ったと感じたガジュマ。自分が四大魔王と俺以外には見えないってわかってたから黙っててくれてたと気付く。
俺とアクセルが頷いて手を繋ぐ。俺は普通に繋ごうとしたけどアクセルに恋人繋ぎに直された。
それを確認したガジュマが頷き、
『そぉーれぇー♪』
隠されし秘島に行くには間の抜けた掛け声で、俺達は色は違うけど来た時と似た眩い光に包まれて目を瞑った。
そして目を開けた時には世界樹がその大きな幹を前面に迎えてくれていたのだった。
なんてあっけない……。
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