せっかくだから男になって攻めてみたい

無月

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本編

12歳-2

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 俺達が通う学園は王族を除いて全寮制になっている。
 地方貴族なんかもいるから公正を規す為に敢えて全寮制にしてるらしい。
 とは言っても公務もあるし、何より流石に王族の為のセキュリティを維持するのは大変なので、王族は城通いとなってる。
 一応婚約者(仮)の俺も自宅通いとなってる。城での勉強もあるし、その中には公務も含まれるからだ。
 ていうか(仮)だしその辺曖昧でいーじゃーん。とか思うけど、有って困る知識も無いから甘んじて受けてる。
 
 「あー、寮生活も楽しそうだよなー」

 エヴァンとジェームスが寮内での話をしてるのを聞いて俺は呟いた。

 「おお、友人と遊べる貴重な場だな。
 問題もあるけどな」
 「エヴァンは学園でも遊んでいるでしょう。
 大体問題って何ですか」

 カラカラ笑うエヴァンにすかさず突っ込むジェームス。
 問題に心当たりが無いのかジェームスが首を傾げてる。

 「いや、大問題あるだろ。
 だって好きな時に抜けねえんだぜ?」

 ぶーーーーーーーー!!!!

 ジェームスが盛大にお茶を噴いた。

 「大丈夫か?」

 咽るジェームスにハンカチを渡そうと取り出す。
 それをデイヴィッドに制されて、代わりにデイヴィッドのハンカチを渡している。
 たかがハンカチで嫉妬すんなし。
 俺は掴まれた手をブンブン振って、胡乱な目でデイヴィッドを見た。
 良い笑顔を返された。何故に。

 「なんっ、エヴァっ、こんな、ところでっ」

 受け取ったハンカチで口を拭いつつ、エヴァンを睨むジェームス。
 ちな、今俺達がいるの学園内のカフェ。
 オープンテラスで軽食を食べつつ午後のひと時中。
 前の授業が剣技の実技で腹が減ったんだよ。
 勿論腹を空かしたのは俺達だけじゃない。
 つまり。マワリイッパイヒトイルヨー。
 急に始まった下ネタにソワソワしながら耳だけ傾ける思春期真っ只中の少年達。

 「別に良くね?ヤローしかいねーし」
 「そういう問題ではありません!
 殿下もご一緒しているのですよ!?」

 俺がサラッと零したら矛先が俺に向いたし。
 イライラにカルシウムって関係無かったんだっけ?
 俺はジェームスが食べてる白身魚のフライサンドをチラッと見ながら思った。

 「僕は構わないよ?(僕も早くアレクとしたいしね)」

 !?今背筋がゾワッてしたヨ!
 怖い副音声聞こえたヨ!目が攻め手の目だヨ!
 
 「そ、そーかーっ、俺まだだからワカンナイヨー!」

 俺は目を思いっきり逸らして誤魔化した。
 そう、俺まだ夢精来てないんだよ。そろそろ来ると思うんだけどなー。
 来たら先ずは右手とお友達になってみたい!

 「ふふ、大丈夫。来てなくても出来るから(ドライとかね)」

 おうっふ!鋭利な反撃のお言葉!
 だから目が怖くなってるからー!
 くぅっ、美味しく頂かれる前に美味しく頂いてみせるんだからね!ちっくしょー!

 「それよりっ!次の授業に行こうぜ!」
 
 これは逃げじゃない。戦略的撤退ってやつだ!
 断じてデイヴィッドの目が空恐ろしいんじゃないんだからねっ。 

 「おや、もうそんな時間ですか。
  時が経つのは早いものですね」

 俺が嫌な汗を掻きつつ立ち上がると、ジェームスが話に乗ってくれた。
 良い奴だよなー。ジェームス。
 俺が優しいジェームスにほっこりしてると、デイヴィッドが俺の腰に手を回して来た。

 「そうだな。(少し早いが可愛い姿を大多数に見られるのも嫌だし)行こうか」

 明らかに「そうだな」から「行こうか」までの間が長いよね!聞こえてんだよ副音声!

 「いちいち腰掴まんでもいいだろ!?」
 「ん?何か問題でも?」

 デイヴィッドの手を振り払おうとしたら笑ってない笑顔で言われた。
 しかも掴む手に力入れられた。

 「……無いヨ……」

 拒絶しきれなかった俺。多分間違ってない。
 これ拒絶してたら何か怖い事が起こってたと思う。

 この後何故かやたら上機嫌のデイヴィッドに、腰に手を回されたまま授業受けた。何故に。
 
 「なあ、デイヴよ。そろそろ放してくれても良いんじゃないかね」

 授業終わりにそう切り出したが、またしてもいい笑顔を返された。

 「うんそうだねぇ。ところで次の舞踏会の準備は出来てるかい?」

 同意されたと思ったのに手が離れない……だと?
 いやそれより舞踏会か。またそんな季節になったんだなー。

 「舞踏会ってことは、またドレス着んのか」

 エヴァンがニヤニヤしながら聞いて来た。

 「まあ、母様との約束だからな」

 そう、俺は何故か公式の場では女装して出席してる。
 女物が嫌いって訳じゃねーから良いんだけど……。そろそろ体格的にヤバくね?

 「ああ。アレのお陰で勘違いしている人がいるんですよね。
 殿下の婚約者が令嬢だと未だに勘違いしている人が」
 「最近艶かしさに磨きが掛かって来てるしね」
 「俺、以前学園の奴に紹介してくれって言われた時有るぜ。
 そん時ゃマジで噴いたわ」

 なん……だと……?
 今の俺の女装は傍から見たらさぞキモイんだろうなーって思ってたぞ。

 「……アレクは女装時の自身の姿を見たことは?」

 驚愕し慄いていたら、ジェームスに何とも言えない顔で聞かれた。

 「そーいや無いな。支度は全部メイドがやるし」

 顎に手を当てて考えてみるが、そういやちっこい頃に面白がって見た位か。最近はねーや。

 「今度はじっくりガッツリちゃんと見る事をお勧め致します」

 ジェームスに両肩に手を置かれて真面目な顔で言われた。
 エヴァンはニヤニヤ笑いながらウンウン頷いてる。
 チラリとデイヴィッドを見ると……。キラキラエフェクトを飛ばした良い笑顔を戴きました。

 マジか。
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