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本編
16歳-6
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俺は今、何故か自分の自室のベッドで正座になっている。
そしてその前には底冷えのする笑顔で見下ろすデイヴィッド。
俺が何したっていうんだ。良い事しかしてない気がする。
「モーリス男爵令嬢と二人きりで居たようだね」
うぐっ、やっぱり逐一報告してやがるし、王家の隠密機動隊。
俺とデイヴィッド、それに近しい人間には監視と護衛の為に王家秘蔵の隠密機動隊が付いてる。
勿論それには一応仮にも婚約者(仮)の俺の行動報告も含まれている訳で。
因みに普通は知らされない事実だが、俺のサーチは優秀過ぎて序盤から存在を知ってる。
「泣いてる女の子に手ぇ差し出さない野郎はち〇こ捥げてしまえばいいと割と本気で思ってる」
キリっと漢らしく言い放てば、デイヴィッドは顔に手を当てて深く息を吐き出す。
「ほっとけとか言う奴も見下げるからな」
ジト目で一歩も譲る気は無いと言外に伝える。
「女性は平気で嘘を付ける生き物だよ」
「俺が見抜けないとでも?」
「いや。でも万が一という事もあるからね」
「じゃー言い方変えるわ。あのモーリス男爵令嬢にそんな役者顔敗けの嘘が付けるとでも?」
信用の無さに若干イラっとするのを我慢して尚も言い募れば、今度こそデイヴィッドは沈黙した。
流石にこれに反論は出来ない様だな。言い方が酷かったが、事実だからどう仕様もない。
デイヴィッドはもう一度長く息を吐き出すと、腰を落として真面目な顔で俺の頬に触れた。
「判った。僕も回りくどい事はよそう。
どう仕様もなく嫉妬をしてしまうから僕以外と二人きりにはなって欲しくない」
何時になく真正面から真摯に言われ、俺の心臓がドキリと跳ねた。
仲良い奴の普段と違う姿って、こんなにドキドキするもんなんだな。
「余裕無い男は嫌われるぞー」
「アレク相手だと余裕なんて何時でも無いさ。
まだ、君の心を射止める事が出来ていないのだから」
鼓動の煩い心臓を宥めつつも茶化して言えば、切なそうに顔を歪めて言われた。
「ぬ、抜きっこしといて何言うんだっ」
何故か照れるというか、恥ずかしいというか。居たたまれなくて目が泳いでしまう。
耳まで熱くなるのを感じて、手を当てて冷やす。
髪が邪魔だから掻き上げながら耳を弄ってると、何故かデイヴィッドが息を飲んだ。
何だと思ってチラリと目を見れば、デイヴィッドは紅潮した顔を隠す様に逸らした。でも目を泳がせた後目だけで俺をチラッと見る。
何なんだいったい。
ジト目で問掛ける様に見つめれば、デイヴィッドは咳払いして真面目な顔に戻った。顔はまだちょっと赤いけどな。
「抜き合い位なら友人同士でもする人はいるからね」
「え!?そうなの!?」
衝撃の事実に俺は状況も顧みず素直に驚いた。
て事は、俺がカップルだと思ってたアイツ等やコイツ等やソイツ等がもしかしたら只の友人同士かもしれないって事か!
カルチャーショックに打ち震えてると、デイヴィッドが吹き出した。
「な、何だよ!世間知らずだって馬鹿にしてんのか!?」
ムッとして睨めば、何が面白いのか腹を抱えて笑いを抑えるデイヴィッドが涙目で謝って来た。
謝られても説得力皆無だっつーの。
「ゴメン、ゴメンね。そうじゃないんだ。ただちょっと嬉しかっただけなんだよ」
目尻に溜まる涙を拭いながら笑顔で言われても……良く判らん。
俺が不機嫌に首を傾げれば、両頬を包み込まれて触れるだけのキスをされた。
「僕との抜き合いを少なからずそういう意味でしてたんだと思うと、ね」
囁く様に言われたその言葉を理解する為に反芻する。
ええっと?つまり?俺は恋愛の意図を持って抜きっこをしてたと捉えられたと?
気付いた途端真っ赤に染まった顔から蒸気が吹き出した。
「な!?な!?違うぞ!?あああああれだ!セフレ的な!?」
「へえ?アレクは僕を性欲処理の道具と思ってたんだ?」
全身で否定を表せば、デイヴィッドが傷付いた顔で切なそうに囁いた。
それに俺は胸がズキリと痛んだ。
「ち、違う!と思う……」
「断言してはくれないんだね」
「う。いや、悪い。でも良く判らないんだよ」
しどろもどろに答えると、くすくす笑いながら俺の肩に顔を埋めて来た。
「なんだよ」
「ふふ。ごめん」
憮然とすればデイヴィッドは軽く謝罪してくる。いやだからその謝罪何よ。
「アレクが可愛すぎてつい。大丈夫『セフレ』が言葉の綾だと判っているよ」
なん……だと……。
てことはさっきの傷付いた顔は演技か!
「道具じゃないなら今日はアレクからしてくれるでしょう?」
無駄に焦らされた事に怒ろうとしたら、不穏な笑みを湛えたデイヴィッドに先を越された。
え?いやデイヴィッドが居る時点でスルんだとは思ってたけど、どういう事?
「僕を抱けるか試してみると良いよ」
「!後悔するなよ」
飛んで火にいる夏の虫。
俺は教わったテクを実践で試すチャンスを得た事に、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。
「くすくす。アレクは(単純で)可愛いよね」
余裕ぶっこいていられんのも今の内だぜ。
俺はさっき迄の焦りや怒りを全て忘れて、目の前の獲物を舌なめずりして押し倒した。
そしてその前には底冷えのする笑顔で見下ろすデイヴィッド。
俺が何したっていうんだ。良い事しかしてない気がする。
「モーリス男爵令嬢と二人きりで居たようだね」
うぐっ、やっぱり逐一報告してやがるし、王家の隠密機動隊。
俺とデイヴィッド、それに近しい人間には監視と護衛の為に王家秘蔵の隠密機動隊が付いてる。
勿論それには一応仮にも婚約者(仮)の俺の行動報告も含まれている訳で。
因みに普通は知らされない事実だが、俺のサーチは優秀過ぎて序盤から存在を知ってる。
「泣いてる女の子に手ぇ差し出さない野郎はち〇こ捥げてしまえばいいと割と本気で思ってる」
キリっと漢らしく言い放てば、デイヴィッドは顔に手を当てて深く息を吐き出す。
「ほっとけとか言う奴も見下げるからな」
ジト目で一歩も譲る気は無いと言外に伝える。
「女性は平気で嘘を付ける生き物だよ」
「俺が見抜けないとでも?」
「いや。でも万が一という事もあるからね」
「じゃー言い方変えるわ。あのモーリス男爵令嬢にそんな役者顔敗けの嘘が付けるとでも?」
信用の無さに若干イラっとするのを我慢して尚も言い募れば、今度こそデイヴィッドは沈黙した。
流石にこれに反論は出来ない様だな。言い方が酷かったが、事実だからどう仕様もない。
デイヴィッドはもう一度長く息を吐き出すと、腰を落として真面目な顔で俺の頬に触れた。
「判った。僕も回りくどい事はよそう。
どう仕様もなく嫉妬をしてしまうから僕以外と二人きりにはなって欲しくない」
何時になく真正面から真摯に言われ、俺の心臓がドキリと跳ねた。
仲良い奴の普段と違う姿って、こんなにドキドキするもんなんだな。
「余裕無い男は嫌われるぞー」
「アレク相手だと余裕なんて何時でも無いさ。
まだ、君の心を射止める事が出来ていないのだから」
鼓動の煩い心臓を宥めつつも茶化して言えば、切なそうに顔を歪めて言われた。
「ぬ、抜きっこしといて何言うんだっ」
何故か照れるというか、恥ずかしいというか。居たたまれなくて目が泳いでしまう。
耳まで熱くなるのを感じて、手を当てて冷やす。
髪が邪魔だから掻き上げながら耳を弄ってると、何故かデイヴィッドが息を飲んだ。
何だと思ってチラリと目を見れば、デイヴィッドは紅潮した顔を隠す様に逸らした。でも目を泳がせた後目だけで俺をチラッと見る。
何なんだいったい。
ジト目で問掛ける様に見つめれば、デイヴィッドは咳払いして真面目な顔に戻った。顔はまだちょっと赤いけどな。
「抜き合い位なら友人同士でもする人はいるからね」
「え!?そうなの!?」
衝撃の事実に俺は状況も顧みず素直に驚いた。
て事は、俺がカップルだと思ってたアイツ等やコイツ等やソイツ等がもしかしたら只の友人同士かもしれないって事か!
カルチャーショックに打ち震えてると、デイヴィッドが吹き出した。
「な、何だよ!世間知らずだって馬鹿にしてんのか!?」
ムッとして睨めば、何が面白いのか腹を抱えて笑いを抑えるデイヴィッドが涙目で謝って来た。
謝られても説得力皆無だっつーの。
「ゴメン、ゴメンね。そうじゃないんだ。ただちょっと嬉しかっただけなんだよ」
目尻に溜まる涙を拭いながら笑顔で言われても……良く判らん。
俺が不機嫌に首を傾げれば、両頬を包み込まれて触れるだけのキスをされた。
「僕との抜き合いを少なからずそういう意味でしてたんだと思うと、ね」
囁く様に言われたその言葉を理解する為に反芻する。
ええっと?つまり?俺は恋愛の意図を持って抜きっこをしてたと捉えられたと?
気付いた途端真っ赤に染まった顔から蒸気が吹き出した。
「な!?な!?違うぞ!?あああああれだ!セフレ的な!?」
「へえ?アレクは僕を性欲処理の道具と思ってたんだ?」
全身で否定を表せば、デイヴィッドが傷付いた顔で切なそうに囁いた。
それに俺は胸がズキリと痛んだ。
「ち、違う!と思う……」
「断言してはくれないんだね」
「う。いや、悪い。でも良く判らないんだよ」
しどろもどろに答えると、くすくす笑いながら俺の肩に顔を埋めて来た。
「なんだよ」
「ふふ。ごめん」
憮然とすればデイヴィッドは軽く謝罪してくる。いやだからその謝罪何よ。
「アレクが可愛すぎてつい。大丈夫『セフレ』が言葉の綾だと判っているよ」
なん……だと……。
てことはさっきの傷付いた顔は演技か!
「道具じゃないなら今日はアレクからしてくれるでしょう?」
無駄に焦らされた事に怒ろうとしたら、不穏な笑みを湛えたデイヴィッドに先を越された。
え?いやデイヴィッドが居る時点でスルんだとは思ってたけど、どういう事?
「僕を抱けるか試してみると良いよ」
「!後悔するなよ」
飛んで火にいる夏の虫。
俺は教わったテクを実践で試すチャンスを得た事に、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。
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