我は最凶の魔王にして腐男子なり!

無月

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腐男子魔王の陥落

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魔王城近辺は平和そのもので、あっという間に我が家へ着いた。
その間勇者の恋のお相手は聞けずにいた。

「良く来た勇者達よ」

エントランスに入るや振り返り勇者一行を出迎える我に、武闘家と魔導士と巫女がポカンと口を開けた。

「何言ってんだマー」
「そうですよ。それじゃあマー様がここの家の人みたいに聞こえちゃいますよ」

盛大に笑って我の背中をバンバン叩く武闘家と、苦笑を盛らす巫女。
魔導士はエントランスに飾ってあるキョーコ先生のサイン本を見て固まっている。ふふん♪良いだろう最高だろうやらんぞ我のお宝だからな。とか思ってたらゆっくり我を見てくる。

「マー君が、魔王?」
「うむ」
「は?」
「え?」

魔導士が呟くのに肯定を返せばハトが豆鉄砲食らった顔をする武闘家と巫女。

「そんなっ。ずっと僕達を騙して」
「うん?ああ、そういえば武闘家には魔王って名乗ったけど魔導士と巫女には武闘家が我を紹介しておったな」

愕然として青褪め震える魔導士にあっけらかんとして言ってやると、魔導士はギンと目を三角に怒らせて武闘家を見た。

「君の仕業か!」
「え!?俺!?だってマーはマオーって名乗ったんだぞ!」
「普通に魔王じゃないですか!」

やいのやいのしだした外野は無害そうなので放っておいて、我には使命があるのだ。

「勇者よ。約束の魔王城だ」
「わかっている」

エントランスの中央で、堂々たる佇まいの我とゆっくり近付く勇者。その手には剣が握られていない。
我から一歩離れた位置で止まった勇者。

「では聞こうか。貴様の恋のお相手はズバリ!?」

エントランスに響き渡る声で尋ねる。
すると勇者の後ろでやいのやいのしていた三人がピタリと止まって不思議な者を見る目で我を凝視してきたが、今の我には些末である。
それより勇者のお相手はだぁれだ♪
我の予想はねぇ。闇ギルドイケメンリストNo.3のジェイン君!正統派勇者の君に涼やかな顔立ちで冷たくターゲットを屠っていく必殺仕事人な彼は中々いいんじゃないかなぁ。
仕事ですり減り冷えて行く心。そこへ勇者の光が温かく包み闇から救い上げ共に闇ギルドを滅ぼさんと二人手に取りバラ色の人生を歩んでいくのだっ。

「その前に聞こう」
「えー?焦らすでないぞはよはよ」
「これからも常に俺と共にいる気はあるか」

うん?
それってこれからも間近で勇者のエチチ見てて良いってこと?
首を傾げた我だがそれなら我も確認せねばならない。

「オフ会と新刊発売日とサイン会とその他のBLウォッチングも一緒ってことか?」
「……そうだ」

何という事だろう!
勇者はBL対象ではなく腐男子になっていたのか!
我の影響力ってば恐ろしい……。
腐男子勇者かぁ。我としては腐男子には受けが合うんだよなぁ。勇者は受け志望なのかな?それとも攻め腐男子希望?

「言っておくが俺はびーえるに興味はない。マーといる事だけが目的だ」
「それって……」

真剣な勇者に我はゴクリと唾を飲みこむ。

「もー!勇者ってば寂しがり屋なんだから!良いよ☆長い我の魔王生勇者の人生分位は一緒に居てあげる♪」

我ってばいつの間にか保父さん属性身に着けてたんだね☆
いくら人類最強って言っても勇者だってまだまだ子供なんだなぁ。そうだよね、まだ二十代だもんね。考えたら保育園のお兄さんに恋しちゃうお年頃なんだね!
とか思ってたら何故か気温と気圧が一下がった!

「わかった。どうやら俺はまだまだの様だ。これからも一緒に居てくれるらしいからじっくりゆっくり落としていく事にする」

すわった目で我を見る勇者が手を伸ばして来た。
これはこれから宜しくの挨拶だね!我知ってる!
我もその手を握ろうと伸ばせば、勇者はその手首を掴むと我を引き寄せ耳元に口を寄せて来た。

「覚悟して置け」

不敵に呟いたその言葉は我の背筋にゾクリとした何かを這わせた。
何で我がそうなったかは分からぬが、

「うむ?良しなに頼むぞ」

兎にも角にも我はこれからも勇者一行の旅路について行くことになったのだった。



「ところで勇者の好きな相手って結局誰なのだ?」

この答えは未だに貰えていない。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

黒狐
2023.05.16 黒狐

はじめまして。
めっちゃ面白かったです!魔王好き。
良ければその後とかも書いてくれると嬉しいです。

2023.05.21 無月

感想ありがとうございます!
魔王だって腐男子になっても良いですよね♪
続きは頑張ります。

解除

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