男に生まれたからには攻めていく!

無月

文字の大きさ
12 / 44
本編

7歳-7

しおりを挟む
 街の散策に出て、お土産も買えて。俺はホクホク顔で噴水広場の屋台でおやつを買っている。
 棒に刺さって食べ歩きがし易い様に工夫されてるそれは、前世のつくね串かアメリカンドックかを連想させる。焼き鳥とかアメリカンドックって、傍を通っただけで食べたくなる魔法が掛かってるんだよなー。似た魔法でお祭りのジャガバタもある。たこ焼きは銀〇こ派だったのは閑話休題。

 何はともあれ。人数分買って噴水の縁に腰掛けて、噴水広場に集まる領民を眺める。
 恋人同士でイチャコラする人、親子連れで駆け回る子供に振り回される親御さん。ご年配の方達の日向ぼっこに、ペットの散歩をする人。様々な人々で賑わっている。
 んむ。皆元気があって宜しい。
 地球と変わらないその風景に、郷愁の年がちょっぴり沸きつつ次期領主として嬉しくも思い、ウンウンと頷く顔が勝手に笑みを作る。

 「ウマー」
 「確かに。孤児院じゃ食べれなかったし、領主様に用意して頂く食事も栄養を考えられた物だからね」

 そのご飯、監修は俺だがな!
 でもたまにはジャンクフードも食べたくなる現代人な訳で。屋台飯が骨身に沁みますなー。
 俺とレクを挟む様に座るガイウス団長とマチルダも、美味しそうに頬張っている。その姿は客観的に見たらきっと……。

 「あら、家族四人で仲良しね」

 ハイ。俺の思いは通りすがりのおばちゃんが代弁してくれました。
 勿論気を張ってる筈のガイウス団長がその言葉を聞き逃す事も有る訳が無い。ニマりと人の悪い笑みを浮かべた俺は、ガイウス団長を仰ぎ見た。
 ガイウス団長は屋台串を口に含んだまま固まってた。ポーカーフェイスを保ってるつもりの様だが、長年の付き合いのある俺にはわかる。絶対喜んでる、照れてる、そしてマチルダの反応が気になってる。
 動けないガイウス団長に代わってマチルダを見上げると、どうやらおばちゃんの言葉は耳に入っていなかった様だ。食べ終わった屋台串と屋台を交互に見て、もう一本買おうか迷っていた。

 「ガイウス団長……。目標は手強そうです」
 「やかましわっ」

 恋愛のレの字も感じさせないマチルダに、ガイウス団長が哀れに思えた俺は、その二の腕を慰めを込めて叩いておいた。
 
 「レク!?」

 そんなこんなでマッタリ寛いでたら、見知らぬ女の子の声が驚いたようにレクの名を呼んだ。
 見た所同い年位の女の子だけど……、身なりからして孤児院の子では無いよな。孤児院の子なら俺が知らない訳もないし。

 「知り合いか?」
 
 可愛い子だな。誰だ彼女か違うなら紹介しやがれそうであっても二人揃った所を可愛がらせろ。という思いを込めてレクを見ると、レクは首を傾げてた。そして不躾に女の子を頭の天辺から爪先までじっくり見てる。

 「知らない。人違いにしては、何で君オレの名前知ってるのさ」
 「!本当に本物のレクなの!?」

 気色悪いのか、ドン引き半眼で女の子を睨むレク。気持ちはわかるが女の子には優しくしようぜ?
 本気のドン引きに引き攣る俺を他所に、女の子は眩しい笑顔で胸元で両手を握りしめて近寄って来た。

 「……記憶に無いだけで実は知り合いなんじゃない?」
 「オレ、小さい頃からの記憶あるけど、全然会った事無い。
 それより小さい頃だとしたら向こうだって覚えてない位小さい筈だけど?」

 成程。だとしたら考えられる事は一方的に知ってるって事だけど。有名人なら兎も角、孤立されてた孤児のレクを知る機会は限りなく少ない筈だ。狩りに出てた時位しか無い。
 そう思って聞いたら人目を避けてたし、魔法で視認し難くしてたからその筈は無いって返答された。
 ふーむ。レクの魔法を突破出来る程の魔術使いにも見えないし、能ある鷹……、なんて一番遠い存在っぽく感じる。

 「レクだ!本物のレク!あれ?でも全然ガリガリじゃない?それどころか血色凄く良い……。なんで?だって協会に虐待されてるんじゃなかったの?」
 
  情報が古い。

 「お嬢さんは協会が悪い事してたの知ってたのかい?」

 完全に警戒心を剥き出しにして俺の服の裾を掴むレクに代わって、俺が核心を探ろう。
 そう思って問いかけたら、今更俺に気付いたって顔で胡乱気に見られた。
 可愛い子の胡乱な顔もやっぱり可愛いから癒しだな。うむ、可愛いは正義。

 「アレクサンドラ侯爵令嬢?でも男の子よね」
 「誰と勘違いしてるのかは知らないけど、少なくともここゼルク王国の侯爵家ないしは公爵家にアレクサンドラって名前のご令嬢は居ないよ。庶子までは把握してないけど。
 因みに俺はアレクサンダー・オルティス。オルティス侯爵家の長男だよ」
 「!不用心に名乗るな!」

 女の子の様子を伺いつつ、あっさりと自己紹介をする俺に、ガイウス団長が怖い顔で俺の口を塞いで諫めてくる。女の子に聞こえない様に小声で凄まれた俺は、不敵に笑って返した。

 「俺達とあちらのお嬢さん以外に聞こえない様に魔術は施し済みだよ」

 内容が内容だけに一般市民に聞かせられるとは思えなかった俺は、レクにそういう魔術を仕掛けて貰っていた。俺はまだそういう細かい魔術使えないからな。
 女の子を見ると、どうやら俺が侯爵令息である事に驚きを隠せない様子だ。開いた口が塞がらないって顔してる。うむ。ポケッとした顔も実に可愛らしいな。子供はこうでないと。

 「それともあんなに小さい子供にも大人な警戒を示せと?」
 「そうだ。悪い人間ってのは小さい子をも傀儡にするものだ。
 それに子供だからこそ無邪気で、時に残酷なものだ。坊ちゃんの害悪にならないとは言い切れない」

 ウンウンと女の子の安全性を再確認した俺は、ジト目でガイウス団長に向き直る。
 ガイウス団長はどうしても納得出来ないのか、尚も言い募って来た。護衛としては間違っては無いけどさー。大人としては情けないんじゃないか?

 「だとしても、あの子は大丈夫。悪い魔力の波動は感じない。だよな?レク」
 「……だからと言って人が良いとは限らない……」

 おっと、まだ警戒モード中だったか。まるで野良猫だなー。可愛すぎか。
 仕方ない、権力発動しますか。

 「と、言う訳でお嬢さんの事は今から俺預かりにしまーす」
 「「はあ!?」」

 今日一の驚愕、頂きましたー。
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました

陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。 しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。 それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。 ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。 小説家になろうにも掲載中です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

処理中です...