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本編
10歳-4
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城下町は下町と言っても綺麗に整っている。
東京の皇居周辺と他の県庁所在地の違い位、オルティス領の下町との違いがある。
その城下町の居酒屋の片隅で俺とヴァンとビンズさんが卓を囲ってる。
と言っても酒を嗜むのはビンズさんだけで、俺とヴァンはノンアルコール。後は飯。
「そんじゃ新しい出会いに乾パーイ!」
ノリが飲み会。
ビンズさんが俺とヴァンのグラスにカーンっと当ててグビッと半分飲み干す。
俺は前世で経験あるしこのノリも懐かしいけど、ヴァンは大丈夫か?
チラリと伺えば平然とライム水を飲んでる。聞けば騎士達の付き合いで良く飲み会が開かれるらしい。
「ビンズさんって下町出身?」
貴族っぽさはカケラも無いよな。
「いんや。スラム出身っすよ」
言いにくい事をサラリと。スラムってこんな軽いノリの場所だっけ?
「ずっと餓鬼ん頃っすけど、イキってた俺をダンチョーがコテンパンにノシてくれたんす。
んで牢にぶち込まれるか、孤児院にでもいれられるって思ってたんすけどね。何か「動きが面白い」とか言って気に入られて騎士団に連れられたんすよ」
酒をグビグビ飲みながら軽く話すけど、多分スラム時代は大変だったんだろうな。オーウェン団長の話をする時の目が敬愛に満ちている。
「そういうアー坊も下町に馴染んでるっすよ」
「んー?流石に城下町は大人としか来た事ないですよ」
ビンズさんの距離感が滅茶苦茶近い。でもなんでだろ、コッチから近寄るのは警戒されそう。
相手は大人でもあるし、俺は敬語で距離感を保ちつつ話す。
「の、割には堂に行ってる。
居酒屋なんて貴族は馴染みが無いものだけどな」
「それ、ブーメランってわかって言ってるか?」
ヴァンも貴族だろ。
ジト目で返せば口端を上げてニヤリと笑われる。
「ま、坊達はどっちも規格外って事っすね」
「その規格外のお守りを任されるビンズさんも規格外って事ですね」
新しいジョッキを空けながら、然も自分は常識人みたいな振りをするビンズさん。
でも俺に返されて、瞬間空気が張り詰めた。ホンの一瞬だったけど。
「気付いてたんすねぇ」
さっき迄の軽い笑みじゃない。獲物を前にした肉食獣の重い笑みで低く言われ、俺は敢えて軽くニヤリ笑いで返す。
それにハッとしたビンズさんは逡巡を見せた後、顔を覆って仰いだ。
「ブラフっすかー」
子供に良い様にあしらわれたビンズさんが自己嫌悪に嘆く。
俺はそれにキシシっと悪戯に成功した悪餓鬼の顔で笑ってやる。貴族の子を二人も、それも片方は初めて騎士の訓練に混ざった見習い以下のボンボン(自笑)。流石に大の大人がほっとかせる訳ねーよ。
「やっぱ思った通り。良い性格してるぜ」
ヴァンに拳を出されたから笑顔で合わせる。
「これならジムに合わせても大丈夫そうだな」
「っすね。んでジー坊に認められたら第二王子殿下と御目通りっすよ」
ヴァンとビンズが良かったねと言う雰囲気で交わす。
って話見えないんすけど。
「俺、第二王子。って言うか王族にはあんま関わりたくねーんだけど。面倒いし」
可愛子ちゃん達とキャッキャウフフしたい俺としては、お堅い王族に組みされて自由が効かなくなるとか。無いわー。
でもヴァンとビンズさんにとっては有り得ない反応だったみたいで。マジで!?本気で言ってるの!?この子!みたいな驚愕に満ちた顔された。解せぬ。
「ちょっ、待つっすよ!?貴族って言ったら王族に支えてるっすよね!?その王族に顔を覚えられるのは一種のステータスっすよ!?」
「寧ろ王族に興味無いとか、他で言うなよ?
背信を疑われるぞ」
「えー?だって上に行けば行く程自由無さそうじゃーん。
俺は自領が平和ならそれで良いよ」
自由恋愛万歳。
不自由政略御免被る。
至極真っ当な理由なのに、ヴァンとビンズさんに頭抱えられた。だから解せぬのよ。
「まあ。二心が無いなら、為人だけで相対せそうだし。良い。のかもしれないな」
「っすね」
如何やら俺が第二王子とお知り合いになるのは避けられない様である。
「言っとくが。本当ならもっと早く殿下の友人として王城に招く予定だったんだぞ。
それがオルティス卿が断固固辞して見送られ続けただけだ」
「あのお人の家族愛っぷりは有名っすけど。
陛下相手に強気でいられるのも、本人同士が親友で、且つ名を馳せた英雄の一人でもあるからっすよ」
なんと。パパンてば王様とマブらしい。
だから自領で仕事するより王城につめる事のが多いのか。
「まあ陛下をやり込められるのはオルティス卿位だからな」
!?ウチのパパン何者なの!?
「ダンチョーや宰ショーさんは仕方ないっすよ。
そういう役職っすし。ある程度は飲み込まざるを得ないっす」
……うん。頭がオーバーヒートしそうだから、父さん達の事をちゃんと聞いてみた。
要約すると。
陛下と父さんとオーウェン団長とハワード宰相は同級生の悪友。
陛下が悪知恵を働かし、父さんとオーウェン団長が暴れ、ハワード宰相は手を貸しつつも宥める良心にして苦労性。でもここぞという時の一言はハワード宰相が一番強いらしい。
父さんは学園入る前から冒険者していて、在学中も度々陛下達を連れて冒険していた。いや、何やってんのパパン。相手陛下。当時は王太子だけど陛下ですから。
学園卒業後も冒険者として活躍し、王国の危機を手を取り合って解決した事もある。
そっかー。俺ってば凄い人の血を継いでたんだー。
前世に帰って良いですかね。
重いわー。侯爵家ってだけでも重いのに、更に陛下と親しい筆頭侯爵で、国を救った英雄の息子とか。重いわー。
「あ、でも父さんが冒険者やってられたなら、俺もなれるって事か!」
実は憧れてたけど諦めていました。
だって跡取り(予定)だから!
東京の皇居周辺と他の県庁所在地の違い位、オルティス領の下町との違いがある。
その城下町の居酒屋の片隅で俺とヴァンとビンズさんが卓を囲ってる。
と言っても酒を嗜むのはビンズさんだけで、俺とヴァンはノンアルコール。後は飯。
「そんじゃ新しい出会いに乾パーイ!」
ノリが飲み会。
ビンズさんが俺とヴァンのグラスにカーンっと当ててグビッと半分飲み干す。
俺は前世で経験あるしこのノリも懐かしいけど、ヴァンは大丈夫か?
チラリと伺えば平然とライム水を飲んでる。聞けば騎士達の付き合いで良く飲み会が開かれるらしい。
「ビンズさんって下町出身?」
貴族っぽさはカケラも無いよな。
「いんや。スラム出身っすよ」
言いにくい事をサラリと。スラムってこんな軽いノリの場所だっけ?
「ずっと餓鬼ん頃っすけど、イキってた俺をダンチョーがコテンパンにノシてくれたんす。
んで牢にぶち込まれるか、孤児院にでもいれられるって思ってたんすけどね。何か「動きが面白い」とか言って気に入られて騎士団に連れられたんすよ」
酒をグビグビ飲みながら軽く話すけど、多分スラム時代は大変だったんだろうな。オーウェン団長の話をする時の目が敬愛に満ちている。
「そういうアー坊も下町に馴染んでるっすよ」
「んー?流石に城下町は大人としか来た事ないですよ」
ビンズさんの距離感が滅茶苦茶近い。でもなんでだろ、コッチから近寄るのは警戒されそう。
相手は大人でもあるし、俺は敬語で距離感を保ちつつ話す。
「の、割には堂に行ってる。
居酒屋なんて貴族は馴染みが無いものだけどな」
「それ、ブーメランってわかって言ってるか?」
ヴァンも貴族だろ。
ジト目で返せば口端を上げてニヤリと笑われる。
「ま、坊達はどっちも規格外って事っすね」
「その規格外のお守りを任されるビンズさんも規格外って事ですね」
新しいジョッキを空けながら、然も自分は常識人みたいな振りをするビンズさん。
でも俺に返されて、瞬間空気が張り詰めた。ホンの一瞬だったけど。
「気付いてたんすねぇ」
さっき迄の軽い笑みじゃない。獲物を前にした肉食獣の重い笑みで低く言われ、俺は敢えて軽くニヤリ笑いで返す。
それにハッとしたビンズさんは逡巡を見せた後、顔を覆って仰いだ。
「ブラフっすかー」
子供に良い様にあしらわれたビンズさんが自己嫌悪に嘆く。
俺はそれにキシシっと悪戯に成功した悪餓鬼の顔で笑ってやる。貴族の子を二人も、それも片方は初めて騎士の訓練に混ざった見習い以下のボンボン(自笑)。流石に大の大人がほっとかせる訳ねーよ。
「やっぱ思った通り。良い性格してるぜ」
ヴァンに拳を出されたから笑顔で合わせる。
「これならジムに合わせても大丈夫そうだな」
「っすね。んでジー坊に認められたら第二王子殿下と御目通りっすよ」
ヴァンとビンズが良かったねと言う雰囲気で交わす。
って話見えないんすけど。
「俺、第二王子。って言うか王族にはあんま関わりたくねーんだけど。面倒いし」
可愛子ちゃん達とキャッキャウフフしたい俺としては、お堅い王族に組みされて自由が効かなくなるとか。無いわー。
でもヴァンとビンズさんにとっては有り得ない反応だったみたいで。マジで!?本気で言ってるの!?この子!みたいな驚愕に満ちた顔された。解せぬ。
「ちょっ、待つっすよ!?貴族って言ったら王族に支えてるっすよね!?その王族に顔を覚えられるのは一種のステータスっすよ!?」
「寧ろ王族に興味無いとか、他で言うなよ?
背信を疑われるぞ」
「えー?だって上に行けば行く程自由無さそうじゃーん。
俺は自領が平和ならそれで良いよ」
自由恋愛万歳。
不自由政略御免被る。
至極真っ当な理由なのに、ヴァンとビンズさんに頭抱えられた。だから解せぬのよ。
「まあ。二心が無いなら、為人だけで相対せそうだし。良い。のかもしれないな」
「っすね」
如何やら俺が第二王子とお知り合いになるのは避けられない様である。
「言っとくが。本当ならもっと早く殿下の友人として王城に招く予定だったんだぞ。
それがオルティス卿が断固固辞して見送られ続けただけだ」
「あのお人の家族愛っぷりは有名っすけど。
陛下相手に強気でいられるのも、本人同士が親友で、且つ名を馳せた英雄の一人でもあるからっすよ」
なんと。パパンてば王様とマブらしい。
だから自領で仕事するより王城につめる事のが多いのか。
「まあ陛下をやり込められるのはオルティス卿位だからな」
!?ウチのパパン何者なの!?
「ダンチョーや宰ショーさんは仕方ないっすよ。
そういう役職っすし。ある程度は飲み込まざるを得ないっす」
……うん。頭がオーバーヒートしそうだから、父さん達の事をちゃんと聞いてみた。
要約すると。
陛下と父さんとオーウェン団長とハワード宰相は同級生の悪友。
陛下が悪知恵を働かし、父さんとオーウェン団長が暴れ、ハワード宰相は手を貸しつつも宥める良心にして苦労性。でもここぞという時の一言はハワード宰相が一番強いらしい。
父さんは学園入る前から冒険者していて、在学中も度々陛下達を連れて冒険していた。いや、何やってんのパパン。相手陛下。当時は王太子だけど陛下ですから。
学園卒業後も冒険者として活躍し、王国の危機を手を取り合って解決した事もある。
そっかー。俺ってば凄い人の血を継いでたんだー。
前世に帰って良いですかね。
重いわー。侯爵家ってだけでも重いのに、更に陛下と親しい筆頭侯爵で、国を救った英雄の息子とか。重いわー。
「あ、でも父さんが冒険者やってられたなら、俺もなれるって事か!」
実は憧れてたけど諦めていました。
だって跡取り(予定)だから!
応援ありがとうございます!
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