男に生まれたからには攻めていく!

無月

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本編

10歳-8

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 「……成る程。視察のついでに不穏分子の洗い出しですか」

 殿下の無事も確認した俺達は、一先ずオルティス邸に帰って来てる。
 一等上等な応接間に殿下一行を案内して、事のあらましを伺った所だ。
 応接間には三人用のソファーの真ん中に一人で座る殿下。その背後に並んでヴァンとインテリ美少年が立ってる。入口左右に殿下付きの大人の正騎士二人が立ち、他の騎士はウチの騎士と襲撃者の所に行ってる。
 その反対側のソファーに父さんと俺が並んで座ってる。背後にはガイウス団長とマチルダが立ってる。レクとケイリーはお外で待機。

 「しかし無茶をなさいますね」
 「合理的と言って貰いたいね」

 苦言を呈す父さんに、しれっと悪びれる様子も無く言う殿下。
 ただの我儘坊ちゃんか、現状を理解出来ない餓鬼か、其れ等を上手く対処出来る能力が本当に有るのか。
 測りかねてヴァンを見やる。
 ヴァンは何の問題も無いと言わんばかりのスンとした顔で聞き役に徹していた。
 あのヴァンが認めているという事か。って事はこの王子かなりやり手って事だな。

 「そう仰るのでしたら何処の手の者かお判りになったのですね」

 父さんも城勤してるからか、殿下の態度に片眉上げるだけで諦めを付けた様だ。
 殿下もニッコリ満足そうに微笑んで返すと、「勿論だとも」と肯定した。

 「魔術は能力が有り、且つ知識がある者でないと使えない。
 逆に言えばそれだけ魔術士の数は少なく、その構築を見極めればどの魔術士か判別出来るというものだ」

 はい?簡単に言ってるけど。魔術は魔術だし。構築見極めるって何。
 殿下の非常識な発言に思いっきりツッコミの叫びを上げたい。いや。レクも見極めてるけども!因みに俺はまだ出来ないけども!
 同じ魔術でも、師事した相手によって若干構築方法が違うらしい。一子相伝みたいにツリー状に様々な構築方法があって、一つの魔術が出来上がる。
 そして魔術は基本王侯貴族の専売特許。レクの様な例は少なく、発見され次第国に保護される事になってる。つまり、魔術を使った襲撃者は何処かの貴族である可能性が極めて高い。

 「構築式はカマドゥラ子爵家ないしその親貴族のカーメムー侯爵家のもの。
 カーメムーは僻地の領主で時世に疎い。それを良い事に良い様に転がしてるのがカマドゥラ。あの者は自分の娘を私の婚約者にしたがってたが」
 「何度も断られて反意を覚えたか」
 「それはこれからわかるだろう」

 一通りの情報交換を行った殿下と父さん。
 話は終わりと仕事に戻った父さんを見送った俺は、改めて殿下と対峙する。数日間ウチに泊まる事になった殿下一行の御相手を任されたのだ。

 「改めて。君がオルティス侯爵の子息、アレクサンダー殿だね」
 「はい。お初にお目もじ仕ります」
 「ああ。敬語はいらない。この者達も普段はタメ口なんだ」

 父さんがいなくなった途端に殿下の雰囲気が崩れた。
 さっき迄は大人顔負けの権威ある雰囲気だったのに、今はそれは何処か霧散して同年代を感じさせるものになってる。
 いやまあ、それでも10歳にしては大人っぽいけどな。

 「いやいや。ジムは常に敬語だろ」
 「私のは癖です」

 俺がさてどうするかと思案してたら、ヴァンがインテリ美少年を指差し否定の言葉を発した。
 それをジムと呼ばれたインテリ美少年が憮然と言い返した。
 って事はこのインテリ美少年が俺に会わせたかった人か~。お互いの都合が中々合わなくて会えず仕舞いだったからな~。俺が避けていた事もあるけど。
 にしても殿下に会う為の審判的な話だったのに、結局同時に出会うとか。ウケるわ~。いやウケね~けど。
 ま、会っちゃったモンは仕方ね~か。

 「初めまして、私はハワード家のジェームスです」

 覚悟を決めて心中で嘆息してると、ジッと見てたのに気付いたインテリ美少年がハニカミ笑顔を浮かべてくれた。そんで優雅に自己紹介をしてくれる。可愛いな、おい。
 ジムは愛称か。そんでハワードって事は宰相の子息っぽいよな。って事は許可無きゃ愛称は呼べないよな。

 「初めましてジェームス殿。俺はアレクサンダーだ」

 今更だけど自己紹介時の通過儀礼だ。改めて名乗る。
 殿下に敬語を使わないならその臣下にはもっと使えない。ジェームスはいきなりタメ口で話す俺に嫌な顔せずに「宜しく」と言ってくれた。
 うむ!やっぱインテリ美少年のハニカミ。良いな!ウチの子にしたいね!

 「おっと。コイツには手出しすんなよ?」

 和んだ俺が口をニヤけさせたら、ヴァンに牽制された。
 え?もしかして嫉妬?君ってばジェームスにホの字なの?
 友人の恋の花にドキドキが隠せない。良いよね。若い恋の芽って。俺も恋人欲しいけど、流石に精神年齢的に10歳前後の子って恋愛対象にならなくてな~。

 「こう見えて強えからな。下手に手ぇ出したら尻穴に弓矢が刺さるぜ」

 違った。恋愛関係なかった。
 ニヤニヤ楽しそうに揶揄うヴァンに、ジェームスが笑顔を向けた。でもその笑顔はとても怖かった。
 だってバックにゴゴゴゴって黒いモヤが吹き出てんだもんよ。

 「エヴァ?刺して、欲しいのですか?」
 「ゴメンなさい」

 ジェームスの迫力に押されてか、ヴァンは両手を挙げて降参のポーズを取った。
 うん。ジェームスは怒らせない様にしよう。

 「さて、これで次代組が揃ったね」
 「次代組?」

 場が和んだ(?)所で殿下が両手を叩いて言った。
 でもその内容の意味がわからず首を傾げる。

 「父上の画策で友人達の子供を同級生で揃えられたんだ。
 オルティス卿は最後まで抵抗していた様だけど、母上とアレクサンダー殿の母君がツーカーでね」
 「へえ?次代まで見据えるなんて凄い方なんだな」
 「いや。ただの愉快犯だよ」
 「……まんまと策にハマって出来たのか……」

 立派な国王像が脆くも崩れさった俺は、この国の明日を憂いて遠い目になった。

 ……本当に貴族位継がないで冒険者として他国を漫遊しようかな……。
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