男に生まれたからには攻めていく!

無月

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本編

11歳

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 豪華絢爛。煌びやかなホールに、来年度新学園生になる貴族の子女が集まっている。
 今日は兼ねてより予定されていた社交界デビューの日だ。
 社交界は貴族の催しの為、レクはお家でお留守番中なのが寂しいが、ケイリーは男爵令嬢として参加してる。因みにドレスは俺監修、と言いたかったけどモーリス男爵がしっかり準備してたらしく出番は無かった。クスん。

 「結構同い年の子っているものですね」
 「王族と合わせる貴族が多いだけだ」
 
 名を読み上げられて中に入れば想像以上の人で溢れていた。
 貴族も上から下まで沢山いるけど、その殆どの貴族が揃ってるんじゃなかろうか。そう思って口にすれば父さんが半顔で答えた。
 卑しい考えが開け透けていて嫌なんだろう。でも策略とはいえ自分の子(俺)もその範疇に入っているし、何よりデイヴィッド殿下本人からご指名婚約入ったから人の事言えなくてホゾを噛んでるくさい。

 「ああ、だから御令嬢だけでなく子息の方々も可愛らしく着飾っているのですね」

 あわよくばお嫁さん候補に選ばれたいんだろう。俺と殿下はまだ婚約を結んだ訳じゃないし。だから殿下が俺を指名したのも知れ渡ってはいないんだろう。

 「分かりやすくて良いがな。
 我々はああいうあからさまな者達を避けて縁を結ぶ。
 良い縁は必ずアレックスの為になるから良く見て友情をを育むと良い」
 「はい。父上」

 社交界は序盤は貴族達の顔合わせから始まる。王族の入場は中盤以降だ。初めからいたら貴族同士の交流がソッチノケになりかねんしな。
 俺は父上に紹介されるままに社交の輪を広めていった。仲良くなりそうなのはその内数人程度と参加人数にしては少ないけど、まあ無理して友達作るもんでもないしな。
 大体の貴族と顔合わせが終わった頃、王族が来る前触れがあった。

 「うわぁ、親の必死な形相ヤバぁ」

 途端レッドカーペットを取り囲む様に、場所の取り合いが行われていく。
 必死に場所を取っても、それを上の爵位の者が圧力で奪って行く。取った場所に自分の子供を目立つ様に立たせてほくそ笑む親。

 「ああいうの、周りに見られてるって気付かないものなのか?」
 「王族に嫁げればそれで良いんだろう」

 モンスターなペアレンツにドン引きで呟けば、父さんも侮蔑の表情を隠しもしない。
 良識ある貴族はその輪には近寄らず、遠巻きに王族の訪れを待っている。
 場の騒がしさが薄れた頃合いを見計らって王族の名が読み上げられる。読み上げられると豪勢な両開きの扉が厳かに開き、威厳に満ちた国王陛下と王妃、そしてデイヴィッドが威風堂々と入場した。
 今回はデビューする子の為の社交界だから王太子殿下はお留守番らしい。

 「新しい門出を喜ばしく思う。
 君達はこれから多くを学び、多くを取捨選択して行く事だろう。
 しかしこれからはその行動の責任が自身に向く事になる。心して言動、行動に気を付けるように」

 簡単な挨拶を終わらせた陛下が、徐にある箇所を面白そうに目を細めて見たかと思えば、釘を刺すように強く話された。
 陛下の言葉にキョドる者、理解せず目立とうと躍起になる者様々いる。
 キョドれる者はまだ盛り返しが効くだろう。でもそうで無い者は貴族社会から消える事になると、父さんの顔を見て俺でも理解出来た。
 いや、本当。愉快そうな顔して殺りそうな空気垂れ流してんだもん。怖。

 「さて、私的な事では有るが、デイヴィッドより皆に宣言が有る。
 大切な社交界デビューの時ではあるが、これからの君達の行末にも関わりがある故聞いてやって欲しい」

 ん?何だ?そんな催し有るなんて聞いてねーぞ?
 予定外の進行に虚を突かれたが、まあ、そういうアドリブもある方が盛り上がるよな。っと前世の憧れのコメディアンを思い出して思った。
 デイヴィッドは陛下に促され、涼やかに微笑み前に進み出た。
 一段高い王族用のスペースに、椅子が大小三つ並べられていて、その内の一番大きい真ん中の椅子に陛下が座られる。椅子が三つしかないのは、第二王子の社交界デビューだから。王太子である第一王子は参加されず、城で政務を行っているらしい。
 陛下が一番大きい椅子に座ると同時に、デイヴィッドはレッドカーペットをゆっくりと優雅な足取りで歩きだした。
 段を降りたと思えば、デイヴィッドは何の迷いもなく俺のいる方へ目を向けた。そして体ごと向き直ると、深く笑みを浮べ、真っ直ぐ歩を進めた。そうなればその進路上にいるご令嬢やご子息達、ひいてはその親貴族達が黄色くさわめき立つ。誰も彼もが自分こそが目的だろうと浮足立っていた。
 でも、デイヴィッドの目はそれらを素通りし、真っ直ぐ俺だけを見つめていた。
 冒険者として鍛え上げた俺が、今更視線の向きを間違えたりはしない。ってか未だにそんなだったら父さんも冒険者をやめさせていただろうし、ガイウス団長に至っては……。うん。怖いからそれ以上は考えないようにしよう。もう二度とオルティス領内を岩石背負って兎跳びで一周したくはない。
 っと、ちょっと昔を懐かしんで死んだ魚の目をしてしまった。
 俺が意識を手放していた間もデイヴィッドは歩を進めていた。
 気付いたら俺とデイヴィッドの間には誰もいなくなっていた。左右に悔しそうに、恥ずかしそうに、恨めしそうに、様々な顔で事の成り行きを見守っている。
 俺は何でもない様な顔でデイヴィッドの出方を待った。

 「アレクサンダー・オルティス殿」

 俺の前まで来て止まったデイヴィッドは、俺と目を合わせ、俺の名を呼ぶ。
 俺がそれに返答をしようとした矢先に、デイヴィッドは片膝をついた。

 「デ」
 「どうか私の婚約者になって頂けませんか」

 デイヴィッドの名前を「デ」しか言わせて貰えんかった。
 いやそれよりその話は初見時に聞いた。
 じゃなくて男に片膝付きってシュールだね。
 でもなくて真っ直ぐ見上げてくるゴールドアイが綺麗だね。は、もっと違う。いや違わないけど今はそういう場面じゃない。
 っていうかどういう場面だ?
 この時。俺は混乱を極めていた。何せ公衆の面前で、注目されてる中で、既にそれは互いに話がついてる問題を蒸し返された。やっぱ今直ぐ返事しないとダメなのか。っていうかこの状況で断っても良いのか。考えは空回りをする。

 「返事は今直ぐで無くても構いません。学園在学中に私を知って頂き、卒業迄にお答えをください。
 それまで私の想いは褪せる事は無いと、ゼルクの名の元にここに宣言を致します」

 !!
 それが目的か!
 デイヴィッドの口上を聞いて、俺もその目的を悟った。
 お互いの虫除け。及び周囲の認知。そして協力だろう。虫除けの意味が一番デカそうだけど。
 乙女に恋愛劇が好きな者は多い。全てでもなくてもその大半が盛大な告白劇。更には王族、それも王子から侯爵家嫡男への告白。元々同性婚が推奨されているとはいえ、多くは無い禁断性。
 事実、興味深々な黄色い期待の目が、周囲に沸き起こった。
 元々その約束があった故に否の答えは俺にはない。

 「はい。ありがとうございます」

 俺も受け入れるように深く柔らかく笑む。そしていい加減立ち上がって欲しくて手を差し出した。
 支えるために掌を上に向けたその手に、デイヴィッドも手を重ねた。そのまま立ち上がるのか、と思ったら何故か俺の手は引っ繰り返された。

 「え?ちょ、デイヴ……」

 小声で何するのか聞こうとするより、デイヴィッドの行動のが早かった。

 「貴方だけに愛を捧げます」

 言うなり俺の手の甲に、デイヴィッドは「チュッ」とキスをした。

 その直後に起こった黄色い小さな悲鳴達。それを俺は意識を半ば手放した状態で聞いた。



 でもな。ケイリー。長い付き合いのお前の悲鳴だけは聞き取れたからな。「っしゃー!」ってドレス姿でいう言葉じゃないからな?
 覚えてろよコンチクショウ!
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