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本編

エピローグ<結婚>

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 「やっとか」

 俺の一世一代の大告白から約2年が経過した。
 学園も今年に無事卒業し、今日この日に目出度く結婚式を挙げる。降嫁とはいえ王族との結婚式だから割と面倒臭く、長たらしいものになるが、それを終えればやっと、やっっっっっと、念願の初夜を迎える事が出来る。
 長かった。本っっっっっ当に長かった。
 折角恋人が出来たというのに、王侯貴族の仕来りだかマナーだかの所為で俺は未だに童貞のままだった。くそぉうっ。
 何が結婚前に体を繋げるのははしたないだっ。今時はやんないっつの!好きな奴目の前にして、何で第三者にお預け喰らわなきゃならないんだっ!
 デイヴ大切にしたいから我慢したけどっ。

 「ああ、早く初夜にならないかな」

 何せ約2年も我慢したんだ。今日は遠慮はいるまい。
 この日の為に日々、デイヴの体は慣らしてきた。へんっ、本番しなきゃ良いんだろっという開き直りでもあるが。実際、女体と違って自ら濡れてくれる孔は無いからな。初夜ではなるべく痛い思いをして欲しく無いという思いが大半だ。

 「兄様」

 全ての準備が済んで待っていると、この2年で急成長を遂げたフレディが呼びに来た。大きくなっても我が弟は相変わらずの天使である。

 「ああ、行こう」

 会場まではフレディに連れ添われて行く。
 入場口でデイヴと待ち合わせ、そこからは二人で進む手筈になっている。
 因みにデイヴは義兄さん(王太子殿下にそう呼ぶよう言われた)に連れ添われて来る。
 広い廊下を歩いて行くと、ホールに出る。デイヴはまだ到着していないから先に扉の前で待つ。
 フレディは扉の横で待機し、俺達が中に入り次第席に着く事になっている。
 少し待つかと思ったが、俺が着いて直ぐにデイヴも反対の廊下からやって来た。

 「綺麗だ」

 結婚式様に着飾ったデイヴに、俺は見惚れて思わず呟いていた。
 俺とはお揃いの白いタキシード。そこに互いの色をあしらった装飾を付けている以外、俺と同じ格好の筈なのに、どこか違って見えた。

 「有難う。アレクも、とても惚れ惚れするよ」

 ニコリと微笑まれれば、自然と俺の背筋が引き締まった。
 今、これから、ここから、俺とデイヴの新しい生活がスタートする。
 そう思うと俺の胸はいっぱいになった。
 俺は手の平を上に向ける。その上に隣に立つデイヴの手が重なり、俺とデイヴの肩が密着しそうな程近くなる。
 目の前の扉が厳かに開き、中の様子を一望させた。
 会場は扇型に広く、どの席でも舞台が見える様に、奥に向かって低くなっている。天井は無く、青空の広がる中、国中の貴族、それに交流のある諸外国の要人が俺達を待っていた。
 全ての目が俺とデイヴに注目している。
 奥では今回の式を執り行う司祭と、左右に両者の両親が俺達の到着を待っていた。
 白い空間にひかれた真っ赤な長い絨毯の上を、ゆっくり、ゆっくりと一歩一歩を踏み締めて歩いて行く。
 シンと静まり返る中、俺とデイヴが司祭の前に到着する。
 そして司祭による挙式が粛々と執り行われていく。長い口上を経て、一番大事な場面に入る。

 「汝、デイヴィッド・ゼルクはアレクサンダー・オルティスの伴侶として、これより先、病める時も、健やかなる時も、互いに助け合い、支え合い、死が二人を別つまで生涯を共にする事を誓いますか?」
 「死が私達を引き裂こうとも、永劫に愛すると誓います」

 デイヴがアレンジ加えて来た。
 本来ここは「誓います」の一言で済む。
 それをデイヴはっ。こんなん言われたら俺だって止めらんなくなるっつーの。

 「汝、アレクサンダー・オルティスは、デイヴィッド・ゼルクの伴侶として、これより先、病める時も、健やかなる時も、互いに助け合い、支え合い、死が二人を別つまで生涯を共にする事を誓いますか?」
 「共に生き、共に老い、最後のその時まで愛し護り続けると誓います」

 俺の返しに掌の熱が増した。
 少し低い位置にあるデイヴの目をチラリと視線だけで見れば、熱に潤んだ瞳が睫毛越しに見えた。口元は緩く弧を描き、「君という人は」と俺同様に感動してくれた事がわかる。
 司祭はそんな二人のアドリブにも柔軟に対応してくれた。寧ろ微笑ましく見守ってくれている。とっても良い人だ。

 「では色の交換を」

 司祭の合図に俺は右手に嵌めてある俺色の指輪を取る。そしてデイヴの左手を取り、その薬指に指輪を嵌めた。
 デイヴも同じくデイヴ色の指輪を俺の左薬指に嵌めてくれる。
 この国の結婚式は互いの色を交換する事で成立する。それは何処の何を何処に交換しても良い。
 だから俺は前世の指輪交換を準える事にした。指輪なら肌身離さず持てるし。守護のアミュレットを使ってるから魔道具としても役に立つ。

 「ここに新たな家族の誕生を祝福します」

 司祭の宣言の元、俺達は沢山の人達に祝福されて、家族となった。
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