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落ちこぼれ魔術師エーフィーと心召すお星様 開幕
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悪とは、どのように生まれるのでしょう。
環境? 気質? それとも……神様が決めた運命?
表面に湧き出た膿の様に、下から下からひょっこり出てくるのかもしれません。
悪性とは、人の視点です。
人から生み出されたのなら、責任を持って受け入れてあげるべきなのです。
ですが、人というのはそれを拒みます。
勇者という存在生み出して。
正義と悪の戦いは、こうして何百年と繰り返される。
“これは、一人の少女が魔王を倒す物語である“
––––マーフィー! 援護魔法を頼む! 一発重いのをぶち込んでやれ!
魔王城、玉座。
そこは、伝統とも言える人類の決戦の場として長く受け継がれてきた場所。幾たびの血が流れ、屍の山を築き上げてきた戦士の墓場。
最強の称号を持ってしてでも、一刻も過ぎないうちに立つ事さえ叶わず土に還るのが普通だ。
だが、今回は特別であった。
誰一人欠ける事なく、誰一人傷を追う事もなく、城の主の元まで辿りついてしまったのだ。それは何故か。
「マーフィー!! 回復魔法を!」
攻撃から回復まで、何でもこなしてしまう魔法使いが居たからである。
魔法使いの治癒術で、全身に火傷を負った勇者の体がみるみる癒えていく。彼だけではない、武闘家も、弓使いも全員に治癒を掛けていた。
如何なる傷でも全快になるまで回復させる魔法。そもそも魔力量もとんでもなく、習得すら困難なこの魔法を幾度となく使い、尚且つ一斉に放つ事の出来る者など、彼女しかいない。
「さっすがマーフィー! 偉大なる魔法使い!」
「無駄口叩かない! 次が来るぞ!」
武闘家と弓使いが危機迫った表情で体勢を整えた。魔王の掌から、獄炎が濃縮された魔法が宿っている。圧倒的な火力でこちらを溶かす作戦らしい。
単純だ、対策なら考えてある。
「行きます! 皆さん、今がチャンスです! 絶大なる氷魔法を喰らうがいい!」
魔王が炎を放とうとした瞬間、玉座一体に氷の世界が開かれる。
そのあまりの冷気に、掌の炎はチリとかし、気が付けば腹部に大きな剣が刺さっていた。勇者の剣だ。
「ふぐぅぅぅぅ……な、な、我が……まさか」
新しい魔王として迎えられ約100年、今までどんな強者とも刃を交えてきた。
少し力を見せれば消し炭になり、剣を振るえば真っ二つ。誰も、自分に敵う者などいない。
今回も所詮はその程度、そうタカを括っていたのがツケになってしまった。予想を裏切る奴がいたのだ。魔法使いの、女。
「これで終わりですね、魔王」
まただ、また憎しみを向けられている。魔王というだけで。
“我が、まだ人間だった頃と同じだ“ こいつらは身勝手で、用が済んだら捨てるんだ。
許せない、許せない、許せない。
「誰にだって幸せになる権利はある。話し合いをする機会だってあるのだ。それなのに何故拒む!」
いきなり突拍子もない言葉を投げかけられ、戸惑いを見せる勇者達。
「我は、死ぬわけにはいかぬ。負ける訳にはいかぬのだ。今は退いてやろう、だが覚えているがいい。必ず復活し、其方らの首を飛ばす事を」
––––最後の手を使う羽目になるとは。
魔王の体が眩い光に包まれる。
勇者がもう一振り、剣でトドメを刺そうとしたが間に合わず、魔王は光の粒子となってその場から飛び去ろうとしていた。
「な!! 上空に逃げる気だ!! マーフィー! 追いかけてくれ!!」
「分かったわ!! 貴方たちも早く箒を取りに行って付いてきて!!」
飛翔魔法のおかげで自由自在に空が飛べるのだ。魔法の箒など使わなくても。
爆発魔法で、天井に穴の空いた魔王城から勢いよく飛び出す。まだ遠くまで行っていないからか、すぐに追いついた。
「逃しません! 包囲の魔法でじっとしていなさい!」
目に見えない壁を四方八方に作り出し、光の粒子を閉じ込めた。
魔王のトドメは勇者の剣でないと刺すことは出来ない。その間に逃げられない様、全魔力を用いて必死に封じ込める。
「くうううううぅぅぅ!! 流石の抵抗力ね! でも魔力を吸い出されたらいくら貴方でもどうかしら? 覚悟しなさい!」
光の粒子は魔力の集合体。この壁の中ならいくらでも魔力抽出を発動出来るのだ。
「抽出魔法発動! 魔王の魔力なんて体に悪そうだけど、背に腹は変えられないのよ!」
闇の権化とも言える薄黒い魔力の波動が体の中に入り込む。
常人なら到底耐えるまでもいかずに絶命してしまう様な、絶望的な感情が体の中で暴れ回った。
瞬間、脳裏に映像が浮かんできた。
––––とても、いい気分になるものとは思えない。
見たくもない光景だ。
「……ああ、そういう事、そういう事なのね。……なんだ、結局一緒じゃないか」
魔王の討伐から月日は流れ、当時の戦士たちは英雄となった。
特に功績が大きい魔法使いは、街中に銅像が建てられ、人々から羨望の眼差しを向けられ、
––––偉大なる魔法使いとして、奉られる事となる。
とある星の、とある時代に、勇者と魔王がいる世界がありました。
未だ勇者は魔王を討ち滅ぼせず、逆に魔王も勇者を倒すことが出来ず、勢力図は五分五分といった所です。
勇者はいつか魔王を討たんと、力の増強の為、先祖代々から力の引き継ぎを行うことにしました。
一方、人々も黙って指を咥えてるつもりは無く、少しでも魔王の勢力を打ち返そう思案を重ねました。
その結果、勇者のいる国「エーレ」は戦力増強の為、子供の頃から魔法に触れさせようと、沢山の学校を設立しました。
––––いつか起きるであろう、大きな戦いに備える為に。
勇者と魔王の誕生から500年余りが過ぎた頃、一人の少女がこの世に生を受けました。
名前は、エーフィー・マグ。
彼女のマグ家は、毎度大層な魔法使いを輩出する優れた家系です。彼女の大叔母に当たるマーフィー・マグは、それはそれは偉大な魔法使いでした。何と当時の勇者と共に旅をし、魔王のお城までたどり着いた数少ない人物。
彼女の力も重なって、魔王を一歩手前まで追い詰める事に成功したのですが、ギリギリの所で逃げられてしまいます。
魔王を討伐することは出来ませんでしたが、その功績は大きく、当時エーレで一番大きな魔術学院「マギシューレン」に石造が彫られる程、国民から愛され、同じ魔法使いから尊敬される偉大な人物となりました。
当然、彼女と同じマグ家の血を受け継いでるエーフィー・マグも、偉大な魔法使いになる事を期待されていたのですが……。
残念な事に、彼女にはてんで魔法の才能が無く、努力して努力しても結果が得られない毎日を過ごす事になります。
当然、普通でしたら心が折れ、魔法使いになる事を諦めてしまう筈なのですが。
「私! 絶対に大叔母様を超える偉大な魔法使いになってみせる! なってみせるのだ!」
元来前向きな性格である彼女は、諦めると言う言葉を知らないみたいです。周りの大人達は諭す様に、傷つけない様に彼女を説得していたのですが、彼女は誰の言う事も耳に貸そうとしませんでした。
その前向きな性格と、夢に向かうひたむきな姿に心打たれたマーフィー・マグは、何とか彼女を学院に入れてあげたいと、幼い頃から英才教育を施します。
その中で、マーフィーはある事に気付いてしまったのです。とても重大で放っておく事の出来ない大きな問題。
しかし、それが公になってしまうと、エーフィーの身に危険が及んでしまいます。
愛する姪の為、彼女は決してその事を口外することはありませんでした。
公になってはいけないが、いつかは伝えなければいけない。
ある日の事、マーフィーの前にキラキラ煌めくお星様が降ってきました。どこかで見た事のある様な、感じた事のある様なお星様に親近感を覚えます。
「貴方はもしかして流れ星? お願い事を叶える為に来てくれたのかしら?」
すると、何とそのお星様は急に喋り出し、彼女に重大な事を告げます。その事実に動揺したマーフィーは、何とか対策を練らなければいけないと、そのお星様と議論を重ねる日々を過ごしました。
「分かった、もちろん協力するよ。でもその事を知ったままでいるのも危険だね。無知で純粋な気持ちで挑まないと失敗する。マーフィー、それなら私の記憶を消してくれないか? こう都合よく、さ。貴方なら出来るでしょ? でも、私の能力は消さないでおくれよ。それが無いとエーフィーの助けになれないしさ」
お星様の思わない提案に、マーフィーは少し躊躇いをしてしまう。でもそれしか方法はないのかもしれない。
自分の寿命も、持って後数ヶ月なのだ。
「大丈夫だよ、あの子を少し見たけど、問題なさそうだ。彼女ならきっと、色々な“感情”に触れても染まらない。溺れるかは分からないけどね」
「貴方は……いいのかしら?」
「私? 私はいいのさ。貴方のおかげで今も生きているんだ、それくらいの協力なんてことないのさ。さあ! そうとも決まれば早速お願いしようかな? 偉大なる魔法使い、マーフィー・マグ」
マーフィーは涙を堪え、お星様にある魔法を掛けた。
自分が何者であるか、人格はそのままに、けど“運命の日”まで決して思い出さない様に。その器が満たされるまで……。
「ぐすん、ありがとう、お星様。貴方の想い、きっとエーフィーなら解ってくれる筈。あの子には荷が重いでしょうけど、きっとやり遂げてくれるわ。私には分かる。そうでしょう? お星様」
返事が無い、ただの星形の金属になってしまった友人をそっと胸に抱え、自分の血脈にしか開く事が出来ない宝箱を生成し、1通の手紙と共にそっと封を締めるのであった。
その後、彼女は将来に関して胸が軽くなったのか、以前に比べよく笑う様になりました。
「大叔母様! どうしたの? 何か良い事でもあったのかしら? そんなニコニコしちゃってさ。あ! そういえばファイの魔法唱えられる様になったんだよ! まだFランクだけどさ、えへへ、大きな進歩だね!」
マーフィーは、えっへんと腰に手を添えるエーフィーの姿に愛おしさを感じながら、彼女の事を見守り続けるのでした。
最期の時まで。
変わらぬ笑顔のまま。
環境? 気質? それとも……神様が決めた運命?
表面に湧き出た膿の様に、下から下からひょっこり出てくるのかもしれません。
悪性とは、人の視点です。
人から生み出されたのなら、責任を持って受け入れてあげるべきなのです。
ですが、人というのはそれを拒みます。
勇者という存在生み出して。
正義と悪の戦いは、こうして何百年と繰り返される。
“これは、一人の少女が魔王を倒す物語である“
––––マーフィー! 援護魔法を頼む! 一発重いのをぶち込んでやれ!
魔王城、玉座。
そこは、伝統とも言える人類の決戦の場として長く受け継がれてきた場所。幾たびの血が流れ、屍の山を築き上げてきた戦士の墓場。
最強の称号を持ってしてでも、一刻も過ぎないうちに立つ事さえ叶わず土に還るのが普通だ。
だが、今回は特別であった。
誰一人欠ける事なく、誰一人傷を追う事もなく、城の主の元まで辿りついてしまったのだ。それは何故か。
「マーフィー!! 回復魔法を!」
攻撃から回復まで、何でもこなしてしまう魔法使いが居たからである。
魔法使いの治癒術で、全身に火傷を負った勇者の体がみるみる癒えていく。彼だけではない、武闘家も、弓使いも全員に治癒を掛けていた。
如何なる傷でも全快になるまで回復させる魔法。そもそも魔力量もとんでもなく、習得すら困難なこの魔法を幾度となく使い、尚且つ一斉に放つ事の出来る者など、彼女しかいない。
「さっすがマーフィー! 偉大なる魔法使い!」
「無駄口叩かない! 次が来るぞ!」
武闘家と弓使いが危機迫った表情で体勢を整えた。魔王の掌から、獄炎が濃縮された魔法が宿っている。圧倒的な火力でこちらを溶かす作戦らしい。
単純だ、対策なら考えてある。
「行きます! 皆さん、今がチャンスです! 絶大なる氷魔法を喰らうがいい!」
魔王が炎を放とうとした瞬間、玉座一体に氷の世界が開かれる。
そのあまりの冷気に、掌の炎はチリとかし、気が付けば腹部に大きな剣が刺さっていた。勇者の剣だ。
「ふぐぅぅぅぅ……な、な、我が……まさか」
新しい魔王として迎えられ約100年、今までどんな強者とも刃を交えてきた。
少し力を見せれば消し炭になり、剣を振るえば真っ二つ。誰も、自分に敵う者などいない。
今回も所詮はその程度、そうタカを括っていたのがツケになってしまった。予想を裏切る奴がいたのだ。魔法使いの、女。
「これで終わりですね、魔王」
まただ、また憎しみを向けられている。魔王というだけで。
“我が、まだ人間だった頃と同じだ“ こいつらは身勝手で、用が済んだら捨てるんだ。
許せない、許せない、許せない。
「誰にだって幸せになる権利はある。話し合いをする機会だってあるのだ。それなのに何故拒む!」
いきなり突拍子もない言葉を投げかけられ、戸惑いを見せる勇者達。
「我は、死ぬわけにはいかぬ。負ける訳にはいかぬのだ。今は退いてやろう、だが覚えているがいい。必ず復活し、其方らの首を飛ばす事を」
––––最後の手を使う羽目になるとは。
魔王の体が眩い光に包まれる。
勇者がもう一振り、剣でトドメを刺そうとしたが間に合わず、魔王は光の粒子となってその場から飛び去ろうとしていた。
「な!! 上空に逃げる気だ!! マーフィー! 追いかけてくれ!!」
「分かったわ!! 貴方たちも早く箒を取りに行って付いてきて!!」
飛翔魔法のおかげで自由自在に空が飛べるのだ。魔法の箒など使わなくても。
爆発魔法で、天井に穴の空いた魔王城から勢いよく飛び出す。まだ遠くまで行っていないからか、すぐに追いついた。
「逃しません! 包囲の魔法でじっとしていなさい!」
目に見えない壁を四方八方に作り出し、光の粒子を閉じ込めた。
魔王のトドメは勇者の剣でないと刺すことは出来ない。その間に逃げられない様、全魔力を用いて必死に封じ込める。
「くうううううぅぅぅ!! 流石の抵抗力ね! でも魔力を吸い出されたらいくら貴方でもどうかしら? 覚悟しなさい!」
光の粒子は魔力の集合体。この壁の中ならいくらでも魔力抽出を発動出来るのだ。
「抽出魔法発動! 魔王の魔力なんて体に悪そうだけど、背に腹は変えられないのよ!」
闇の権化とも言える薄黒い魔力の波動が体の中に入り込む。
常人なら到底耐えるまでもいかずに絶命してしまう様な、絶望的な感情が体の中で暴れ回った。
瞬間、脳裏に映像が浮かんできた。
––––とても、いい気分になるものとは思えない。
見たくもない光景だ。
「……ああ、そういう事、そういう事なのね。……なんだ、結局一緒じゃないか」
魔王の討伐から月日は流れ、当時の戦士たちは英雄となった。
特に功績が大きい魔法使いは、街中に銅像が建てられ、人々から羨望の眼差しを向けられ、
––––偉大なる魔法使いとして、奉られる事となる。
とある星の、とある時代に、勇者と魔王がいる世界がありました。
未だ勇者は魔王を討ち滅ぼせず、逆に魔王も勇者を倒すことが出来ず、勢力図は五分五分といった所です。
勇者はいつか魔王を討たんと、力の増強の為、先祖代々から力の引き継ぎを行うことにしました。
一方、人々も黙って指を咥えてるつもりは無く、少しでも魔王の勢力を打ち返そう思案を重ねました。
その結果、勇者のいる国「エーレ」は戦力増強の為、子供の頃から魔法に触れさせようと、沢山の学校を設立しました。
––––いつか起きるであろう、大きな戦いに備える為に。
勇者と魔王の誕生から500年余りが過ぎた頃、一人の少女がこの世に生を受けました。
名前は、エーフィー・マグ。
彼女のマグ家は、毎度大層な魔法使いを輩出する優れた家系です。彼女の大叔母に当たるマーフィー・マグは、それはそれは偉大な魔法使いでした。何と当時の勇者と共に旅をし、魔王のお城までたどり着いた数少ない人物。
彼女の力も重なって、魔王を一歩手前まで追い詰める事に成功したのですが、ギリギリの所で逃げられてしまいます。
魔王を討伐することは出来ませんでしたが、その功績は大きく、当時エーレで一番大きな魔術学院「マギシューレン」に石造が彫られる程、国民から愛され、同じ魔法使いから尊敬される偉大な人物となりました。
当然、彼女と同じマグ家の血を受け継いでるエーフィー・マグも、偉大な魔法使いになる事を期待されていたのですが……。
残念な事に、彼女にはてんで魔法の才能が無く、努力して努力しても結果が得られない毎日を過ごす事になります。
当然、普通でしたら心が折れ、魔法使いになる事を諦めてしまう筈なのですが。
「私! 絶対に大叔母様を超える偉大な魔法使いになってみせる! なってみせるのだ!」
元来前向きな性格である彼女は、諦めると言う言葉を知らないみたいです。周りの大人達は諭す様に、傷つけない様に彼女を説得していたのですが、彼女は誰の言う事も耳に貸そうとしませんでした。
その前向きな性格と、夢に向かうひたむきな姿に心打たれたマーフィー・マグは、何とか彼女を学院に入れてあげたいと、幼い頃から英才教育を施します。
その中で、マーフィーはある事に気付いてしまったのです。とても重大で放っておく事の出来ない大きな問題。
しかし、それが公になってしまうと、エーフィーの身に危険が及んでしまいます。
愛する姪の為、彼女は決してその事を口外することはありませんでした。
公になってはいけないが、いつかは伝えなければいけない。
ある日の事、マーフィーの前にキラキラ煌めくお星様が降ってきました。どこかで見た事のある様な、感じた事のある様なお星様に親近感を覚えます。
「貴方はもしかして流れ星? お願い事を叶える為に来てくれたのかしら?」
すると、何とそのお星様は急に喋り出し、彼女に重大な事を告げます。その事実に動揺したマーフィーは、何とか対策を練らなければいけないと、そのお星様と議論を重ねる日々を過ごしました。
「分かった、もちろん協力するよ。でもその事を知ったままでいるのも危険だね。無知で純粋な気持ちで挑まないと失敗する。マーフィー、それなら私の記憶を消してくれないか? こう都合よく、さ。貴方なら出来るでしょ? でも、私の能力は消さないでおくれよ。それが無いとエーフィーの助けになれないしさ」
お星様の思わない提案に、マーフィーは少し躊躇いをしてしまう。でもそれしか方法はないのかもしれない。
自分の寿命も、持って後数ヶ月なのだ。
「大丈夫だよ、あの子を少し見たけど、問題なさそうだ。彼女ならきっと、色々な“感情”に触れても染まらない。溺れるかは分からないけどね」
「貴方は……いいのかしら?」
「私? 私はいいのさ。貴方のおかげで今も生きているんだ、それくらいの協力なんてことないのさ。さあ! そうとも決まれば早速お願いしようかな? 偉大なる魔法使い、マーフィー・マグ」
マーフィーは涙を堪え、お星様にある魔法を掛けた。
自分が何者であるか、人格はそのままに、けど“運命の日”まで決して思い出さない様に。その器が満たされるまで……。
「ぐすん、ありがとう、お星様。貴方の想い、きっとエーフィーなら解ってくれる筈。あの子には荷が重いでしょうけど、きっとやり遂げてくれるわ。私には分かる。そうでしょう? お星様」
返事が無い、ただの星形の金属になってしまった友人をそっと胸に抱え、自分の血脈にしか開く事が出来ない宝箱を生成し、1通の手紙と共にそっと封を締めるのであった。
その後、彼女は将来に関して胸が軽くなったのか、以前に比べよく笑う様になりました。
「大叔母様! どうしたの? 何か良い事でもあったのかしら? そんなニコニコしちゃってさ。あ! そういえばファイの魔法唱えられる様になったんだよ! まだFランクだけどさ、えへへ、大きな進歩だね!」
マーフィーは、えっへんと腰に手を添えるエーフィーの姿に愛おしさを感じながら、彼女の事を見守り続けるのでした。
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