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バルビス公国への旅立ち
9 バルビスの公主 1
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馬車が登り切ったところは大きく開けた場所であって、中隊程の騎士達が整然と並び待ち構えていた。
「ま、ぁ!こんなに寒いのに、騎士様方はずっと外に!?」
馬車の中と言えども震えてきそうな寒さである。いつ来るかわからないシャイリー王女一行をいつからこうして待ち構えていたのかとマリーンは驚きの声をあげた。
「…大変な思いをさせてしまった様ですね…」
彼らは至って軽装に見える。通常の騎士服であろう群青色の隊服にマントを羽織り、手袋をはめ、襟巻きと思える毛皮が申し訳程度に首元についているだけの隊服だったからだ。
「寒くは…無い?…いえ、寒いでしょうね?」
馬車の中で2人で顔を見合わせて、どうにも首を傾げてしまった。騎士だからなのか、寒い地で育っているからなのかそれでもシャイリーには理解できない寒さだったからだ。
「義姉上もこんな気分だったのかしら…」
シャイリーは少しだけ、バルビス公国にからアールスト王国に嫁いできた大好きなルシュルー妃の心境を垣間見た気がして、本当の意味でルシュルーと近しい者になれた様に感じて嬉しい様な悲しい様な複雑な心境に陥る。
「殿下、到着致しました。」
馬車の外から護衛騎士の声がかかった。そっと黙ったままマリーンはシャイリーの手を握った。アールスト王国側の見送りはここまでである。この後更に上へと登って行く道程はここよりも更に雪深くもなる。雪山に慣れていない馬や御者では危険なのだ。
バルビス公国側からはシャイリー用にと公国の紋が入った豪奢な馬車が用意されている。その馬車の外には侍女であろう者が外で礼儀正しく待ち構えてさえいた。
ここからは両国間の面目を保つ為、マリーンとの別れを長々と惜しむことはできない。シャイリーはマリーンの手をしっかりと握り返し、騎士のエスコートを受けながら馬車から降りて行った。
「殿下…どうかどうか、お幸せに…」
馬車から出たシャイリーを見送りながらマリーンはその背に最後の言葉をかけて深く深く礼を取った。
「ま、ぁ!こんなに寒いのに、騎士様方はずっと外に!?」
馬車の中と言えども震えてきそうな寒さである。いつ来るかわからないシャイリー王女一行をいつからこうして待ち構えていたのかとマリーンは驚きの声をあげた。
「…大変な思いをさせてしまった様ですね…」
彼らは至って軽装に見える。通常の騎士服であろう群青色の隊服にマントを羽織り、手袋をはめ、襟巻きと思える毛皮が申し訳程度に首元についているだけの隊服だったからだ。
「寒くは…無い?…いえ、寒いでしょうね?」
馬車の中で2人で顔を見合わせて、どうにも首を傾げてしまった。騎士だからなのか、寒い地で育っているからなのかそれでもシャイリーには理解できない寒さだったからだ。
「義姉上もこんな気分だったのかしら…」
シャイリーは少しだけ、バルビス公国にからアールスト王国に嫁いできた大好きなルシュルー妃の心境を垣間見た気がして、本当の意味でルシュルーと近しい者になれた様に感じて嬉しい様な悲しい様な複雑な心境に陥る。
「殿下、到着致しました。」
馬車の外から護衛騎士の声がかかった。そっと黙ったままマリーンはシャイリーの手を握った。アールスト王国側の見送りはここまでである。この後更に上へと登って行く道程はここよりも更に雪深くもなる。雪山に慣れていない馬や御者では危険なのだ。
バルビス公国側からはシャイリー用にと公国の紋が入った豪奢な馬車が用意されている。その馬車の外には侍女であろう者が外で礼儀正しく待ち構えてさえいた。
ここからは両国間の面目を保つ為、マリーンとの別れを長々と惜しむことはできない。シャイリーはマリーンの手をしっかりと握り返し、騎士のエスコートを受けながら馬車から降りて行った。
「殿下…どうかどうか、お幸せに…」
馬車から出たシャイリーを見送りながらマリーンはその背に最後の言葉をかけて深く深く礼を取った。
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