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淋しい婚姻の果てに

3 一人きりの夜 3

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「どう言うこと…?」

 手足がかじかんで冷たくなった所でまた夜中に妃シャイリーは目を覚ました。

(寒い…)

 寝る前は確かに暖炉の火は付いていたのではなかったか?暗い寝室の中でソロソロと身を起こしてシャイリーは部屋を見回した。顔を起こすだけでも冷気が寝具の中に入って来てブルブルと身を震わせてしまう。

 赤々と火が灯っていただろう暖炉の辺りには一筋の灯りらしきも、薪で燻っているであろう火種の色も伺うことはできないのだ。

「消えている…」

 火が……

(どうして?誰が?)

 寝る前にはローニーが確かに火を強めてくれていた。では、夜回りの者が消したのだろうか?まさか、ローニーではあるまい?ただの侍女がこんな分かりやすい嫌がらせまがいな事をするはずが無い。

 寒さに耐えながら、グルグルと要らぬ考えが頭をよぎる。

(駄目だわ…何か着る物を…)

 その晩からシャイリーは寝付く前に必ず衣類置き場からコートやショールを何枚か持って来るようにしたのだ。衣類置き場が寝室の続きでまだ良かった。勿論マリーンから渡されたアールスト国の侍女達が作ってくれた襟巻きもしっかりと首元に巻き付けて…

 翌日、侍女達は驚いたことだろう。シャイリーが寝具の中で雪だるまの様に衣類を着込んで寝ていたのを見たのだから。

「妃殿下…もしや、お寒かったのですか?」

「え…ぇ少しだけ、夜に目が覚めてしまったのものだから…ベッドから出たら寝付けなくなってしまって…」

 まさか、侍女達の不手際で暖炉が消えて寒かったとはシャイリーには言えない。彼女達はとても良くしてくれているのだから。寝不足で中々起きることができなかったシャイリーの為に日中でも横になる事を勧めてくれもしたし、午睡をしてしまうから夜眠れないのでは?と良く眠れる薬草茶を勧めてくれもした。彼女達は彼女達なりに主人に尽くそうとしてくれているのだから。

 しかし、数日経てばシャイリーと侍女達の適正な環境基準にどうしても大きな差がある事がよく分かって来た。侍女達はシャイリーの為に寝る前までは暖炉の火を強めてくれるのだ。その代わりローニー達侍女の顔は少し上気し何処となく暑そうで汗ばんでいる様でもあった。実のところシャイリーにとってはそれでもまだ肌寒く感じ、アールスト国から持って来ていたショールを手放す事が出来ないでいた。

 シャイリーが日中でも直ぐに寒さの為にベッドに潜り込む様になると、ローニー達侍女は良質な睡眠が取れていないことが問題なのではと医師に報告したのだ。その日の晩から睡眠を誘導する薬草茶が強い物に代わっていった。










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