[完結]凍死した花嫁と愛に乾く公主

小葉石

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淋しい婚姻の果てに

16 トライトスという夫 1

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 バルビス公妃シャイリーの夫トライトスは朝陽と共に起床して洗面と着替えを済ませ、食堂で朝食を摂った後は直ぐに執務室で仕事にかかる。バルビス公邸にいる時には大抵執務室での仕事となる。時折ふらっと執務室を出ては公邸左手にある騎士団に行き、年若い騎士達の指導なのか一心不乱に剣を振るっていたりする。そして執務室に戻り、深夜は霊廟へ。
 
 これがトライトスの1日の流れだ。時には騎士を連れ立ってバルビス公国のそこかしこを巡ることもあった。シャイリーは実はこんな時が好きだったりするのだ。トライトスの肩の上から周囲の景色を存分に堪能する事ができるから。白銀に染まる山や丘、時には川さえも氷の下をゆったりと流れていく。時には景色ばかりを見るのでは無く、賊を追い詰める緊迫感を味わう事もあったが…
 それでもこうして自分の見たかった物を目に出来る喜びはやはり大きかった。時折、雪を被り凍りついた茂みから真っ白な可愛らしいウサギが飛び出してくるのも目にする事ができた。そしてそのウサギは前を行く騎士に狩られ、騎士隊の昼食になっていたのだが……

(ウ、ウサギは食料でしたのね………)

 資源の極少ない土地ながらの習慣だろう。シャイリーはただ可愛いと愛でたかっただけなのだが、トライトス一行にとっては時に貴重な食料となるのだ。自分の食卓にウサギが出ていたのか分からないが、今は身体がない為に、ウサギであると説明された大切な食事を残さぬ事がなくてよかったなどと考えてしまう。

 天気の良い日には、風に舞う細やかな氷の粒がキラキラと、まるで細かい宝石を散らしているかの様に風自体が煌めいて見える。まるで夢のような光景だが、シャイリーに取っては一刻も耐えられそうもない極寒の地。

(不思議ですわね…ならなければ、決して見る事はできなかったでしょうから……)

 景色を見た感動と、どうしたら良いのか分からない不安と、どうすることもできない焦燥と…色んな感情がシャイリーの中では今日も渦巻いている…










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