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56、王への挨拶 1
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気が進まないと言いながらもヒュンダルンは自分達の体裁をこれでもかと言うほどに整えた。ウリートの体調も考慮して定期的に王城からやってくるショーン・ロレール医官に念入りに診察もさせたのだ。
「うん。いいね。目眩やふらつきは無いだろう?」
「はい。よく見てくださってますので。」
ここはウリートが与えられている部屋で、ロレール医官の診察はいつもここで行われる。
「ふふ。アクロース侯爵子息様が文句も言わずに良く食べるようになったからですよ。」
「いえ、先生のお見立てが良かったと我が家の者が言っておりました。先生ではなければ、僕は……」
「アクロース侯爵子息様、ん~長いですね?どうでしょう?お名前でお呼びしても?」
「え?」
いきなりの親近感にウリートはやや戸惑う。けれどもロレール医官は悪戯っ子みたいにただ楽しそうに笑って言うのだ。
「ふふ。騎士団にはね。お兄様と弟君がおられるでしょう?私の仕事柄彼らも見なければならなくて、家名だと混乱するんですよ?如何です?」
「あ、そうですね?では、ぜひ。」
兄上も、セージュもアクロース侯爵子息ですもんね……
「ではウリート様、これで私と貴方様は友人という事になりましょう?」
「あ、はい。」
面と向かって友人になったと言われる方はいつもなんだか、こそばゆい…
「お元気になられて、本当に良かったと思っているんですよ。ですから、諦めなかった、努力されたウリート様の快癒を心からお祝いしたいのです。」
「はい。ありがとうございました。」
打算も何もなく、心から友人を思う気持ちで話してくれるロレール医官は本当に優しい人だ…。
「ゴーリッシュ騎士団長!そこに居られますね?」
ロレール医官は少し声を張り上げて部屋の外に向かって呼びかけた。
「ああ。」
ドアの外からはヒュンダルンの低い声。いつ聞いても、低く、格好良く、落ち着く良い声だ。
ヒュンダルン様、診察の結果なんて後で聞く事もできるだろうに…
診察が余程心配だったのか、はたまたロレール医官かウリートに用事があって待っててくれたのかもしれない。
「お入りください。ゴーリッシュ騎士団長。ウリート様が城へ上がる事は問題ありませんよ。けれどまだ、激しい運動とかは避けてくださいね?」
「はい。城へ行っても僕はお茶会くらいにしか出席しませんので…」
「おやそうなのですか?勿体ない…いきなりは無理でしょうけど、少しずつなら、どうかな…騎士と同じくは無理でしょうけれど…」
むむむ…と考え込んでいるロレール医官はなんだか少し幼く見えて可愛く感じる。
「ふふ。無理しない様にします。」
「終わったか?」
「終わったも何も、ずっと部屋の外にいたのでしょうが…では代わりましょう。」
しょうのない人ですねと、ロレール医官は苦笑と共に退室して行った。
「お待たせしましたか?」
「嫌、ちっとも。それより大丈夫そうだな?ウリート…」
ホッとした様なヒュンダルンの表情で心から心配してもらっている事が良くわかる。
「はい。少しなら動いてもいいんですって!僕、何しようかなぁ…?」
小さい頃から何もできなかったと言っても過言ではないウリートだ。何かを思い描いてワクワクしているウリートを見て、ヒュンダルンはなんとも言えない微笑みで見つめている。
「あ!団長!ショーンが廊下で迷ってたので連れて参りましたよ?診察でしょう?」
エーベ公爵家の侍女に案内でもされたのか、公爵邸に訪問中であったリード・サラント副騎士団長が、嫌がるロレール医官をやや無理矢理に引きずってまたウリートの部屋へと戻って来た様だ。
「サラント副騎士団長様、お久しぶりです。」
「これはこれは!アクロース侯爵子息様。うむ。流石はショーンですね?お顔の色艶が以前と違います。少し肉付きも良くなっておられる様で。見違える様にお元気そうに見えますよ!」
「ありがとうございます。」
「サラント副騎士団長!もうウリート様の診察は終わったのですよ!いい加減手を離してください!私はまだ騎士団に帰らなくては…」
「おや?そんなに急がなくても、今日はどの隊も怪我人が出る様な訓練はなかったはずです。なんて言ったって武器庫の点検日ですからね?」
「ですが、私にも仕事が!」
「あぁ、だから王城に戻るのでしょう?私もです。団長に急ぎの案件と書類を渡してからまた蜻蛉返りなんで、王城までご一緒しましょう?ね?」
なんだろうか?ロレール医官はとても急いで?いや、焦っている?様に見受けられる。そんなロレール医官に対して、サラント副騎士団長様はなぜこんなにも強引なのだろう?
戸惑いながら、ヒュンダルンを見れば、やれやれと言いたげな冷めた目線を2人に送っている。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか?ショーン?2人で馬車に乗るなどいつもの事でしょう?あ、ちゃんと話しておかないといけませんでしたか?」
「サラント副騎士団長!」
ここにいる誰よりも年配で一番大人であろうロレール医官がワタワタと焦りだす。もしや、ロレール医官はサラント副騎士団長の事が物凄く苦手なのかもしれない。
先日のアランドとセージュの時にもガッチリと押さえ込まれていたセージュのためにウリートはなにもできなかった。今回は弟ではないのだがお世話になって来た医官だ。恩もあるし、助け出してあげた方が良いのだろうか?
「うん。いいね。目眩やふらつきは無いだろう?」
「はい。よく見てくださってますので。」
ここはウリートが与えられている部屋で、ロレール医官の診察はいつもここで行われる。
「ふふ。アクロース侯爵子息様が文句も言わずに良く食べるようになったからですよ。」
「いえ、先生のお見立てが良かったと我が家の者が言っておりました。先生ではなければ、僕は……」
「アクロース侯爵子息様、ん~長いですね?どうでしょう?お名前でお呼びしても?」
「え?」
いきなりの親近感にウリートはやや戸惑う。けれどもロレール医官は悪戯っ子みたいにただ楽しそうに笑って言うのだ。
「ふふ。騎士団にはね。お兄様と弟君がおられるでしょう?私の仕事柄彼らも見なければならなくて、家名だと混乱するんですよ?如何です?」
「あ、そうですね?では、ぜひ。」
兄上も、セージュもアクロース侯爵子息ですもんね……
「ではウリート様、これで私と貴方様は友人という事になりましょう?」
「あ、はい。」
面と向かって友人になったと言われる方はいつもなんだか、こそばゆい…
「お元気になられて、本当に良かったと思っているんですよ。ですから、諦めなかった、努力されたウリート様の快癒を心からお祝いしたいのです。」
「はい。ありがとうございました。」
打算も何もなく、心から友人を思う気持ちで話してくれるロレール医官は本当に優しい人だ…。
「ゴーリッシュ騎士団長!そこに居られますね?」
ロレール医官は少し声を張り上げて部屋の外に向かって呼びかけた。
「ああ。」
ドアの外からはヒュンダルンの低い声。いつ聞いても、低く、格好良く、落ち着く良い声だ。
ヒュンダルン様、診察の結果なんて後で聞く事もできるだろうに…
診察が余程心配だったのか、はたまたロレール医官かウリートに用事があって待っててくれたのかもしれない。
「お入りください。ゴーリッシュ騎士団長。ウリート様が城へ上がる事は問題ありませんよ。けれどまだ、激しい運動とかは避けてくださいね?」
「はい。城へ行っても僕はお茶会くらいにしか出席しませんので…」
「おやそうなのですか?勿体ない…いきなりは無理でしょうけど、少しずつなら、どうかな…騎士と同じくは無理でしょうけれど…」
むむむ…と考え込んでいるロレール医官はなんだか少し幼く見えて可愛く感じる。
「ふふ。無理しない様にします。」
「終わったか?」
「終わったも何も、ずっと部屋の外にいたのでしょうが…では代わりましょう。」
しょうのない人ですねと、ロレール医官は苦笑と共に退室して行った。
「お待たせしましたか?」
「嫌、ちっとも。それより大丈夫そうだな?ウリート…」
ホッとした様なヒュンダルンの表情で心から心配してもらっている事が良くわかる。
「はい。少しなら動いてもいいんですって!僕、何しようかなぁ…?」
小さい頃から何もできなかったと言っても過言ではないウリートだ。何かを思い描いてワクワクしているウリートを見て、ヒュンダルンはなんとも言えない微笑みで見つめている。
「あ!団長!ショーンが廊下で迷ってたので連れて参りましたよ?診察でしょう?」
エーベ公爵家の侍女に案内でもされたのか、公爵邸に訪問中であったリード・サラント副騎士団長が、嫌がるロレール医官をやや無理矢理に引きずってまたウリートの部屋へと戻って来た様だ。
「サラント副騎士団長様、お久しぶりです。」
「これはこれは!アクロース侯爵子息様。うむ。流石はショーンですね?お顔の色艶が以前と違います。少し肉付きも良くなっておられる様で。見違える様にお元気そうに見えますよ!」
「ありがとうございます。」
「サラント副騎士団長!もうウリート様の診察は終わったのですよ!いい加減手を離してください!私はまだ騎士団に帰らなくては…」
「おや?そんなに急がなくても、今日はどの隊も怪我人が出る様な訓練はなかったはずです。なんて言ったって武器庫の点検日ですからね?」
「ですが、私にも仕事が!」
「あぁ、だから王城に戻るのでしょう?私もです。団長に急ぎの案件と書類を渡してからまた蜻蛉返りなんで、王城までご一緒しましょう?ね?」
なんだろうか?ロレール医官はとても急いで?いや、焦っている?様に見受けられる。そんなロレール医官に対して、サラント副騎士団長様はなぜこんなにも強引なのだろう?
戸惑いながら、ヒュンダルンを見れば、やれやれと言いたげな冷めた目線を2人に送っている。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか?ショーン?2人で馬車に乗るなどいつもの事でしょう?あ、ちゃんと話しておかないといけませんでしたか?」
「サラント副騎士団長!」
ここにいる誰よりも年配で一番大人であろうロレール医官がワタワタと焦りだす。もしや、ロレール医官はサラント副騎士団長の事が物凄く苦手なのかもしれない。
先日のアランドとセージュの時にもガッチリと押さえ込まれていたセージュのためにウリートはなにもできなかった。今回は弟ではないのだがお世話になって来た医官だ。恩もあるし、助け出してあげた方が良いのだろうか?
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