[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

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86、約束 3

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 遺跡調査、発掘担当者は主に現場に出ていると言う。なので今日会う人物はこの部署を預かっている他部門の兼任者だ。

「これはようこそおいで下さいました。ゴーリッシュ騎士団長殿とご一緒するとは思いもよりませんでしたよ?」

 小さな執務室、と言っても同じ様な作りの執務室がズラッと並んでいる奥の方に目的の部屋があった。ノックをし、入ってみると、茶髪の髪をキッチリと後ろへ撫で付けて整え、少し気難しそうに見える文官が出迎えてくれた。気難しそうと言うのはヒュンダルンとは顔見知りであるようなのに、挨拶の際、ニコリともしなかったからだ。濃茶の瞳は眼鏡で隠れてこちらも笑ってはくれないようである。
 しかしその隣に控えていたのは……

「あ、ライーズ副書記官長様!」

「ちっ……」

 見覚えある人がいるだけでも場が和む…今、舌打ちのようなものが聞こえた気がしましたけど、きっと気のせいですよね?

「ご機嫌よう!アクロース侯爵子息様!もうすっかり宜しいのですか?」

「はい!医師の方にも動いていいと言われまして…」

「ウリー。」

「あ!申し訳ありません!」

 何という失礼な事を…ライーズ副書記官長様は既知の方だけれども、隣に立っている方は初めてお会いする方でした。

 ヒュンダルンに声をかけられてウリートはすぐに姿勢を正す。

「まさか貴殿がこちらにはいるとは思いませんでしたよ?レオドル卿。」
 
「陛下の命とあれば、断れないのが臣下ですから。貴方の方から私を外してくれるように陛下に進言くださいますか?」

 レオドル卿はヒュンダルンにこの任から解けと国王に進言して欲しいのだそう…そんなに大変な所なのだろうか…?

「…無理でしょうね?貴殿の能力が買われたのですから、諦めてください。さて、紹介がまだでした。こちらは私のウリート・アクロース侯爵子息です。」

 初対面なのだから、こうして紹介があって会話をするものなのに、先走ってしまったウリートは丁寧に頭を下げた。

「ご紹介に預かりました。ウリート・アクロースです。この度は遺跡調査に同行させて頂きたくお願いに参りました。」

「ゴーリッシュ騎士団長殿、アクロース侯爵子息殿、ご婚約、まずはお祝い申し上げます。私は財務官をしております、イリーズ・レオドルと申します。普段は財務局の方におりますが、こちらを兼任せよと命を頂きましてね…財務局も暇ではないのに、こうして駆り出されてきたわけです。」

「それは、申し訳ない事を…?」

 もしや、遺跡の見学をしたいなんて事を言い出したから?それでしたら何と申しわけのない事を…お祝いの言葉を頂くときにもレオドル卿はニコリともしないのは、きっと酷くご立腹だからでは?

「ウリーの所為ではない。遺跡からは時折過去の財宝や価値のあるものが出土する。それらを見定める為にも財務局から人が来るのだから。」

「そうなのですか。」

 自分の我儘の所為ではないと分かってホッとする…

「そうです。誰が抜けようとも、財務局の方は忙しいに変わりありません。ただ、兼任させようとする王に言いたい事は山の様にありますがね?」

 兼任できる管理職、きっとレオドル卿は仕事が出来る方に違いないのだ。が、普段からの疲労が鬱憤となって山の様に溜まっていそうで、勤める事への覚悟が必要そうである。

「私達は陛下への鬱憤晴らしの為にここににたのではないのですが。」

「分かっています。こちらに控えているサイラス・ライーズ副書記官長は、アクロース侯爵子息殿とは既知のご様子。古語に精通している者の一人として、書記官であるにも拘らずこちらに兼任してもらってます。」

 兼任、にどうもかなりのご不満がある様子で……ここは専属部署として機能していない事が伺えた。

「卿、長くなりますから、座っていただきましょう。」

 ウリートの事もそれとなく把握しているライーズ副書記官長が着座を進めてくれる。ありがたく、ヒュンダルンのエスコートでウリートは柔らかなソファに座った。そしてお茶を飲みながら遺跡についての注意事項などを一通り聞くことになる。

 遺跡は王都から離れておらず、逆に近距離な場所に見つかった。遺跡の範囲はかなり広く、小さな町一つ分はあろうかと予測されている。まだその全貌が明らかにはなっていない為に実際の範囲は分からないそうだ。何しろ古代の物でそれも王都の直ぐ側で発見されている貴重な物で、研究する価値は未知数なのだが、王都に被ってしまった場合を考えるとその作業は難航する事間違えなさそうな場所ではある。今ある城壁を壊すわけにもいかず、されど捨て置くのも勿体無い…出来るところまでは全て発掘せよ、それが今の方針のようで、その為に仮の部署が作られているのだそうだ。

 そしてこの貴重な遺跡、オークツ国だけでは無くて諸外国の注目の的にもなっているのだ。時には他国から来る文官やら、学者やら、王侯貴族の見学者やらの対応もしなくてはならない。
 国に取っては他国に対する良い交渉の材料とも言える貴重な財産の一つとなっていた。その為に警備は厳重、常に騎士団の巡回警備はもちろんの事、現場で働いている一般の市民の有志による自警団迄あるそうだ。

 それもそのはず、時折ではあるが小狡い窃盗が発生するらしい。

「ですから見学の際の警備の方は厳重に騎士団の方にお願いしたく思います。貴人をお迎えする時には特に気を使いますので…」

 レオドル卿はウリートを貴人として扱う。王家に連なるヒュンダルンの伴侶として…























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